NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
――西暦二〇五五年。
世界は、地獄の焔に包まれた。
そこに緑は無く、命もない。
機械が跋扈し、黒き煙に絶えず陽の光は遮られ、大気は汚染される。
限られた生き残りは最後の抵抗に打って出るも、ネットワークで一切のラグもなく完璧な統制の取れた無数の敵にはなす術なく、一人、また一人と同志は倒されていく。
ついに最後となった少年にはもはや戦意らしきものさえ無かった。
敵に背を向けて遁走する。
物陰を伝って逃げ惑い、寸時の安息を得た。
だが自らの命運が風前の灯であることを、彼はよく知っていた。
ひとときの安堵と共に、絶望が襲ってくる。膝を折る。
「無理だよ、こんな……」
自分に後を託して死んでいった人々。その重みに耐えかねて、彼は煤まみれの涙を流した。
咽ぶ彼を、殺人兵器たちが見出すのは時間の問題となっていた。
だがそこに、思いもよらない輝きが、啓示の如く開かれた。
ちょうど窓ほどの大きさの、雷光にも似た渦。
そこから、一つの影が半身を乗り出していた。
ノイズ混じりに、叫ぶ声が聴こえる。
『間違えた……僕たちは/私たちは、間違えたッ!』
奇妙な声だった。
二重にも声が、言葉遣いが、重なっている。
それを張り上げる人間は、見慣れた男の姿にも覚えのない女の姿にもなっていた。
『その間違いを、君が正してくれ!』
懸命に手を伸ばした先に、何かを握っている。
それを少年の足下に取り落とすと、遺言めいた言葉を託す。
その間際、彼もしくは彼女は、機械的な、それでいて鬼のような異形の姿に変わり、そして爆発した。
108。
虚空に浮かんだそのナンバーの残影が、二つに割れて砕けた。
あれほどに派手な登場と退場であったにもかかわらず、敵が感知した様子はない。
そのサーチライトの中、無我夢中でその落とし物を拾い上げる。
それは、壊れた時計だった。
いや、最初からそれのみが、何者かの思念、ないし亡霊を乗せて、ここに流れ着いていたのかもしれない。
〈D……D……Dr、Dr……〉
と、音声を途中で詰まらせては巻き戻る。
だが、ただの壊れた小道具かと思った矢先、彼の掌の中でそれはスパークと共に、形を取り戻していく。
否、フレームの色味に黄金が加わり、プリントされた禍々しい怪物の顔も、似て非なる別物へと変化していった。
巻き戻るように手の中で修復は続く。
巻き戻る。やり直す。くり返す。
……間違えた、と『彼』は言った。
誤ったことは、巻き戻して、やり直せば良い。
そして、それ以上進まないよう、同じ時の中を繰り返せば良い。
「……そうだ。彼らは間違えた。こんな
〈DarkDrive〉
夢か現か、判別つかないままに、彼がそのボタンを押すと、地の底より響くような音とともに、その時計型のデバイスは閃き、虚空に悪鬼の顔を浮かび上がらせた。
そして彼の手の中、腕の中に取り込まれていく。
胸の内にこみ上げる、吐き気を催す異物感。さらに濃く暗く、深く堕ちていく絶望感。
そして身体の奥底より湧き出でる、無尽蔵の力の衝動に、少年は喉を枯らして叫んだ。雷光が、雷鳴が、彼の身体を変化させていく。
やがてその力の奔流は嵐となって一帯を、そして世界を、敵味方の別無く飲み込んでいった。