NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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10.

 次の日の昼下がり、呼び出しを受けた英志は、なんとか周囲の目をかいくぐってチェイスと合流した。

 ビジネス街と住宅街とをつなぐ大橋の上、そこに待ち受けていた彼は、英志の姿を見るなり、わずかながらに顔をしかめた。

 

「あぁっ、まぁ言いたいことは分かるよ。うん」

 英志は、整髪料で七三に無理やりに分けられ、タイトなスーツ姿だった。

 慣れないネクタイが、首筋を圧迫して少し息苦しい。

 とりあえずこの好みならざる髪だけでもなんとかしようと、ぐしゃぐしゃと掌で潰しながら乱す。

 

「なんかこっちの僕は刑事らしくて。ほんとはまだ学生だってのに、朝っぱらから無理やりこいつに着替えさせられたり、現さんに張り込みに引っ張り出されたりさぁ。今ドキあんパンに牛乳って……あ、でもここだとそれが普通(イマドキ)なのかな?」

 

 そうせかせかと言う英志に対し、チェイスの怪訝は解けないようだ。

 いや、そもそも容姿やファッションを気にする性分でもないだろう。だとするならば、一体なにを不審がっているのか。

 

「あの、どうかした?」

「いや」

 重く低く、彼は言った。

 

「ただ、こういう状況だというのに、楽しそうだな」

 ――であればこそ、その率直な所感は英志の胸を突いた。

 

「そっ……そんなわけないでしょ!? ヘンなこと言わないでよ」

 否定する声は、上ずっていた。

 新鮮な体験、そこに浮かれる気持ちや奇妙な充足感がなかったかと言われれば……おそらく嘘になるのだろう。

 

 それをごまかすように、まだ聞いてもいな行先に向けて、歩を速め、話題を切り替える。

 

「そう言えば、あんたは叔父さんに会わなくて良いの? ダチなんでしょ? いやまぁ、本人覚えてないんだけどさ」

 

 職務の中、協力者たる当人にそれとなく触れてはみたが、いまいちピンときていないようで会話が噛み合わなかった。

 そもそも、そんな憎悪と種族を超えた先の友情関係など、この世界では築かれていないのだ。

 ――だが、在りし日の彼を語る叔父の表情は、いつも寂し気だった。自身の頑なさと激情が招いた過失を、悔いていた。

 その心の痛みは、容易に癒されることはないのだろう。

 だったら、いっそ無かったことになってしまえば……

 

 そう思いかけた己を恥じ、英志は首を振った。

 駄目だ。今は何を考えても、変な方向に逸れていく。

 それに、一方が覚えていなかったとして、チェイスの方は記憶しているだろう。

 いかに機械生命体としても、友に忘れられる心痛たるや、どれほどのものか。

 

「その、残念だったね。それこそこんな状況じゃなけりゃ、またちゃんと再会できたのに」

 そう気遣う英志の背に、

 

「――何か、勘違いをしているようだが」

 と、チェイスの低い声がぶつけられた。

 

 

 

「俺は、詩島剛という男を、知らない」

 

 

 

 英志は足を停めて、引きつった顔で彼を顧みた。

 そんな彼の様子などお構いなしに、畳みかけるように、続けて言った。

 

「そもそも俺は、お前たちの知るチェイスではない。世界の融合による影響で部分的に記憶は同期されているが、それは俺自身の経験ではない」

 

 表情も変えず淡々とそう言う彼からそれとなく距離を取りながら、

 

「それ、どういうこと?」

 

 と張り詰めた息遣いの下、率直に尋ねるとその『見知らぬ怪人』は、

 

「俺は、こことは異なる時間軸から来た――仮面ライダーの存在しない世界から」

 

 と、さらに事態を混沌せしめることを言い放ったのだった。

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