NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
次の日の昼下がり、呼び出しを受けた英志は、なんとか周囲の目をかいくぐってチェイスと合流した。
ビジネス街と住宅街とをつなぐ大橋の上、そこに待ち受けていた彼は、英志の姿を見るなり、わずかながらに顔をしかめた。
「あぁっ、まぁ言いたいことは分かるよ。うん」
英志は、整髪料で七三に無理やりに分けられ、タイトなスーツ姿だった。
慣れないネクタイが、首筋を圧迫して少し息苦しい。
とりあえずこの好みならざる髪だけでもなんとかしようと、ぐしゃぐしゃと掌で潰しながら乱す。
「なんかこっちの僕は刑事らしくて。ほんとはまだ学生だってのに、朝っぱらから無理やりこいつに着替えさせられたり、現さんに張り込みに引っ張り出されたりさぁ。今ドキあんパンに牛乳って……あ、でもここだとそれが
そうせかせかと言う英志に対し、チェイスの怪訝は解けないようだ。
いや、そもそも容姿やファッションを気にする性分でもないだろう。だとするならば、一体なにを不審がっているのか。
「あの、どうかした?」
「いや」
重く低く、彼は言った。
「ただ、こういう状況だというのに、楽しそうだな」
――であればこそ、その率直な所感は英志の胸を突いた。
「そっ……そんなわけないでしょ!? ヘンなこと言わないでよ」
否定する声は、上ずっていた。
新鮮な体験、そこに浮かれる気持ちや奇妙な充足感がなかったかと言われれば……おそらく嘘になるのだろう。
それをごまかすように、まだ聞いてもいな行先に向けて、歩を速め、話題を切り替える。
「そう言えば、あんたは叔父さんに会わなくて良いの? ダチなんでしょ? いやまぁ、本人覚えてないんだけどさ」
職務の中、協力者たる当人にそれとなく触れてはみたが、いまいちピンときていないようで会話が噛み合わなかった。
そもそも、そんな憎悪と種族を超えた先の友情関係など、この世界では築かれていないのだ。
――だが、在りし日の彼を語る叔父の表情は、いつも寂し気だった。自身の頑なさと激情が招いた過失を、悔いていた。
その心の痛みは、容易に癒されることはないのだろう。
だったら、いっそ無かったことになってしまえば……
そう思いかけた己を恥じ、英志は首を振った。
駄目だ。今は何を考えても、変な方向に逸れていく。
それに、一方が覚えていなかったとして、チェイスの方は記憶しているだろう。
いかに機械生命体としても、友に忘れられる心痛たるや、どれほどのものか。
「その、残念だったね。それこそこんな状況じゃなけりゃ、またちゃんと再会できたのに」
そう気遣う英志の背に、
「――何か、勘違いをしているようだが」
と、チェイスの低い声がぶつけられた。
「俺は、詩島剛という男を、知らない」
英志は足を停めて、引きつった顔で彼を顧みた。
そんな彼の様子などお構いなしに、畳みかけるように、続けて言った。
「そもそも俺は、お前たちの知るチェイスではない。世界の融合による影響で部分的に記憶は同期されているが、それは俺自身の経験ではない」
表情も変えず淡々とそう言う彼からそれとなく距離を取りながら、
「それ、どういうこと?」
と張り詰めた息遣いの下、率直に尋ねるとその『見知らぬ怪人』は、
「俺は、こことは異なる時間軸から来た――仮面ライダーの存在しない世界から」
と、さらに事態を混沌せしめることを言い放ったのだった。