NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
破滅は、夜明けとともにやってきた。
何処からともなく、レトロな街並みに。逆行した市井に、怪物たちが出現した。
まるで、そこまで抑え付けられていた反動のように。生物非生物、人間型非人間型を問わず。そして無作為に、衝動のままに人々を襲い始めていた。
「これは……っ!?」
来るシンジとの決戦に、装備を整えて出撃した英志たちは、高所から阿鼻叫喚の様を眺めて絶句した。
「滅びの現象、その一端だろう」
と、チェイスだけが淡々と端的に、その所以を答えた。
地を満たすほどの数の怪物たちを見るのは、ギルガメッシュとの最終決戦以来だった。
だがその物量以上に、シンジとの決着をつけない限り世界はさらに混沌を深めて共倒れ、破滅の一途を辿るということだ。
「どうする?」
試すように、ハートが問う。
すなわち、今ここで襲われている人々を救うのか、それとも当初の目的通りシンジを捜すのか。
英志は躊躇わず答えた。
「当然、両方!」
そこに住まう市民も救う。その上でシンジと戦う。
たとえそれが偽善であっても。ここで起こったことの全てがいずれなかったことになるにせよ。
それが、この世界を選ばなかった自分の義務だ。
〜〜〜
すでに市街地では、この世界の泊進ノ介がすでに孤軍奮闘している。
「くそっ、いったい何なんだこいつら!?」
様々な時代、世界、技術によって生み出された怪物たちに面食らいつつ、そして本来前世代機たるゼロドライブながらも、改変を受けてもなお変わらない不屈の闘士と熱き正義心はそのスペックを超えた働きを見せて敵の波を切り裂いていく。
しかして衆寡敵せず。遠巻きになっていく敵は遠距離を重点とした攻めに切り替え、めいめいの銃器類で釣瓶撃ち。
「うわぁーっ!?」
集中砲火を浴びたゼロドライブは、派手に吹き飛んだあと地に屈した。
破損したドライブドライバーが、虚しく転がって、その赤いベルトを力なくアスファルトに投げ出した。
「ああぁっ! 進にいさーんっ!」
と物陰に隠れながら剛が声をあげたが、彼の存在も気取られて、合わせて取り囲まれる。
第二射を放つべくロイミュードならざる濃緑にペイントされた機械兵たちが砲身を向ける中、もはやこれまでか、と二人して目を瞑る。
だが、突如として。
青い光風が尾を引きつつ、敵陣を外周から切り裂いていった。
時に直線的に、時に螺旋を描いて機械兵たちを薙ぎ倒し……そして最後には、自ら電柱に頭から突っ込んで倒れ込んだ。
それが、泊英志だった。
彼が変身しているのはドライブ、タイプフォーミュラー。
F1カーをモチーフにした……というよりも上半身はそのものといった具合だが、他の追随を許さぬ速度が持ち味である。
「いったぁ〜」
……もっとも、それがゆえにもっとも扱いが難しい形態ではあるが。
〈やれやれ、少し足腰の踏ん張りが利かないんじゃないかね?〉
と、彼が装備するベルトが呆れながらに言った。他ならぬ、クリムの人格を乗せた本物の『ベルトさん』である。
「うるさいねっ」と軽く返しつつ、彼はベルトを外した。
「英志……てかベルトが喋った!?」
初体験のように……というより実際そうなのだが……仰天する進ノ介にその子は自身の、否彼の本来の
「返すよ、父さんに」
「え?」
「あーもうっ」
キョトンとする父に焦れて、手ずからベルトを巻いてやる。
〈Fire! All engine!〉
と、その手でシフトトライドロンのスイッチを押して、シフトブレスに嵌まったプロトタイプと交換する。
「変身っ」
〈Drive! Type Tridoron!〉
というクリム自身の掛け声と共に、待機させていたトライドロンが分離、パージ。父の身体に纏われる。
現れたのは、いくつかの奇怪な形態を超えた先にある、紅き装甲。シンプルにして究極の一機。
仮面ライダードライブ タイプトライドロン。
この世界では失われていた、最強のフォーム。
進ノ介とクリム、そして愛機トライドロンが三位一体に融合した姿だった。
「なんだこれ!? おい、どうなってる!?」
事態が飲めずに戸惑うばかりの進ノ介に
〈OK! では私がまず手本を見せよう〉
と言うや視覚を確保する黄色いランプが赤く渦へと、そして操縦権がクリムへと切り替わる。
どちらかといえば猛攻速攻を得手とする進ノ介とは一転、正確な見切りからのカウンターアタックを主軸とする、スマートな体捌き。
一種の舞いのごとく見える動作で敵の攻撃を流してからの、鋭い蹴り。
散らされた敵の中心に、脇に抱え込んだトレーラー砲を向ける。そして、その上部装填口に、シグナルカクサーンをセット。
〈Signal On!〉
と、自身の音声を鳴らすとともに、光の散弾が敵を牽制、撃破。
そうして今度は上空で陰らせる、植物に寄生された城塞のような怪物に、砲口を転じる。
〈ヒッサーツ! Full throttle! FullFull Big 大砲!〉
シフトテクニックとランブルダンプをエネルギー源とした砲撃は、緑碧のドリルとなってその胴体を穿ち抜く。そして余波にて殲滅。爆風が、上空すべての敵を焼き尽くす。
〈さぁ、今度は君の番だ――大丈夫! たとえ君が記憶を失おうとも、刑事としての君の魂が、走り方を覚えているはずだ!〉
そう熱く訴えかけるクリムは、武器を納めると同時にふたたび肉体の主導権を進ノ介自身へ還した。
「まったく……むちゃくちゃなベルトさんだな! ……まぁ、不思議と悪い気はしないけどなっ」
まだ戸惑いは引かない様子の進ノ介だったが、持ち前のキザっぽさで取り繕いつつ、現場検証にあたり、手袋を締め直すようなジェスチャーとともにすぐさま戦闘態勢を整えた。
「良いね! やっぱドライブは、父さんとクリムじゃないと!」
と嘆を発した英志の裏をチェイスが横切り、腰を抜かしていた剛の腕を引っ張り上げて立ち上がらせた。
「詩島剛だな?」
「な、なんだよ。誰だよアンタ」
「手が足りん。お前も手伝え」
と、まったく面識がない相手に一方的に言い切るや、剛の腹にマッハドライバーを押し当て、マッハのシグナルバイクを握らせる。
そして自身もシグナルチェイサーを片手にすでに装着していたドライバーにセット。
〈シグナルバイク!〉
という二重奏のもと、チェイスは初めてとは思えないキレのある所作で、
「変身」
淡々と。
「だぁ、もう! 何がなんだかわかんねーけど……レッツ、変身!」
と、剛はやぶれかぶれな調子でシグナルマッハを挿入。
各々に、戦士となるべくお決まりの号令をポーズとともに唱える。
〈ライダー! マッハ!〉
〈ライダー! チェイサー!〉
それぞれのベルトのマフラーが炎を噴いて、剛は色褪せない白いスーツとメットの、文字通りの『ライダー』マッハに。
片やチェイスは一端は怪人魔進チェイサーとなるも、その重装をパージした。シンプルで流線形のボディを銀色に煌めかせ人類の守護者としての姿、仮面ライダーチェイサーと化した。
「行くぞ、剛!」
という勇声を放つ。それに呼応するように、敵を薙ぎ倒しつつ自身に向けて吸い寄せられたシンゴウアックスを強く握りしめて、チェイサーは先陣を切る。
「勝手に仕切ってんじゃねぇっ! ……てアレ? なんか、ミョーに懐かしいような……?」
と、デジャヴに首を傾げつつも、マッハもそれに追従した。
そのことを確信した英志は、クリムやチェイスとアイコンタクトを取った後、強く頷き合う。
そして彼らにその場を任せて、押し寄せる敵を掻い潜りながら、因縁の少年の影を捜すのだった。