NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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 そしてこの世界の命運を分ける戦いが始まった。

 進むのか。それとも留まるのか。

 変えたこの世界を護るのか。護った世界へ帰るのか。

 

 その是非は、明言したとおりゲイツに問う資格はない。

 だが、滅びの現象を目の当たりにしては、背を向けるわけにはいかない。

 ――王の、友たらんとするのであれば。

 

「仕方ない。これも救世主修行か」

 戦友先達に切り開いてもらった血路を、生身となった英志が急ぐ。

 せめてこの双方にとって望まざる状況に対する露払いぐらいは、裏方からしてやろうと、先方からは死角となった段差の上で、ゲイツは自身のライドウォッチを手にした。

 

「Oh~! 仮面ライダーゲイツ!  Il Salvatore! 会えて光栄だ」

 と、そこにやたらハイテンションな、白いコートの男が横合いから現れた。

 色眼鏡の奥底に、一方的な感動と憧憬を浮かべて。

 

「……誰だ、お前?」

 不審を露わにするゲイツだったが、誰何することの無為はすぐに悟った。

 腰に巻くは、黄金の三角形のパーツが特徴的なベルト。そしてその余裕ある思わせぶりな態度。

 

 となれば大方、この時代に来たか流れたかの仮面ライダーといったところか。

 そしてライダーなればこそ、今なすべきことははっきりとしているはずだ。

 

「まぁ良い。お前も手伝え」

「おや? 色々と訊かなくて良いのかい?」

「……お前みたいなやつを、詮索しても無駄だと知ってるからな」

 

 どことなく忌々しい知人を想わせる物言いに辟易しながらも、その男と背中合わせになる。

 気づけば、すでに怪物たちの一集団は二人の男をターゲットに選び取っていた。それが賢明な判断であったかは、今すぐにでも判る話だ。

 

〈ゲイツマジェスティ!〉

〈ジュウガ!〉

 

 お互いの戦士名を背越しに、いくつもの顔形を描くウォッチとスタンプ越しに、交わす。

 自分たちのベルトに、叩き入れる。

 

〈G3! ナイト! カイザ! ギャレン! イブキ! ガタック! ゼロノス! イクサ! ディエンド! アクセル! バース! メテオ! ビースト! バロン! マッハ! スペクター! ブレイブ! クローズ!〉

〈レックス! メガロドン! イーグル! マンモス! プテラ! ライオン! ジャッカル! コング! カマキリ! ブラキオ!〉

 

 その力の起源を読み上げる。平成ライダーの時が、遺伝子が、彼らを囲み、そして敵の攻勢から守護する。

 ベルトのロックを拳で解除し、傾けたバックルを一度突き出した掌で抱え込む。

 そのポーズの間合いを見切ったかのような距離感で、背の向こうの男も心底楽しそうに、腕で十字を組んだ。

 

「変身ッ!」

「変身」

 

〈仮面ライダーゲイツマジェスティ!〉

〈スクランブル! 十種の遺伝子、強き志、爆ぜろ、吠えろ、超越せよ! 仮面ライダージュウガ!〉

 

 人々を救いたいと願う覚悟の記憶が、展開された変換装置に吸い上げられ、赫奕とゲイツを救世主たる姿へと変える。

 究極の闇に呑み込まれた男を、太古の記憶が極彩色に彩る。黄金の装甲へと換わる。そして……どこか既視感のあるデザインの、凄まじき戦士へ。

 

 ゲイツはオルフェノクやファントム、そして完全体ロイミュードらのコピー体を相手取る。

 ジュウガというライダーが向かい合うのは、ヒューマギア、本を埋め込まれた幻獣類、悪魔の化身、植物のツタや古代生物を想わせる怪物やそのどれにも当てはまらない、人為的な歪まされ方をしたモンスター。

おそらくはお互いの時代の領分を、自然受け持つことなっていた。

 

 ~~~

 

 正直に言えば、アテはない。

 だが不思議と足の動きに迷いはない。何かに導かれるように。そしてその先に、彼が待っているのを予感した。

 見上げる先には、山道とその先にある廃工場の煙突。青空をちょうど半々に分ける雲は、黒く異様な重圧感を帯びている。

 

 ――しかし、その前途に、図抜けたような高笑いが轟いた。

 見ればハート……教授が悠々とした足取りでステッキを掌に打ち付けながら、無数のロイミュードを伴い道を塞いでいた。

 

「仮面ライダードライブ! 泊英志! 今日こそが貴様の命日だ!」

 と、恥ずかしくなるような決まり文句を浴びせかけられる。先ず来るのは、呆れによる脱力。だが焦りと苛立ちがすぐにそれに勝った。

 

「あのさぁ、状況分かってる!? 世界が終わるかどうかの瀬戸際に、お前らの相手してる余裕はないんだって!」

「無駄だ」

 

 英志の訴えに対しそう断じた声は、前からではなく後ろから。

 同じ顔が異なる装束で、英志を挟み込んでいる。

 

 別ルートからここまで来たらしいハートたち三人が、彼らの間に割り込んだ。

 

「こいつらに、状況を把握する感覚などありはしない。所詮都合の良い人形に過ぎんからな」

 そして、と傍目からも分かるほどに強く奥歯を噛みしめながら本物のハートは、

 

「俺の、俺たちのもっとも憎むべき相手だ」

 

 ――底冷えするような、静かな怒りとともにそう宣った。

 

「泊進ノ……いや、泊英志。ここは俺たちが引き受ける。お前はお前の因縁にケリをつけろ」

「でも!」

 

 いくら本来の歴史より弱体化しているとは言え、この数だ。それもハートたちは急ごしらえの不完全な復活体に過ぎない。そんな戦力比で相手取るには、さすがに厳しいのではないか。

 そう危惧する英志に、ハートは、

「ちょうど迎えも来たようだしな」

 と、顎で自分たちの目上を見るよう促した。

 

 その動作の指すところ。山道に、一台の特徴的な意匠のバイクが人を乗せて停まっている。

 その操縦者は、ヘルメットをつけているものの、バイザーを開けて見せた物憂げな目元には憶えがある。

 

「……乾巧」

 仮面ライダーファイズ。

 

 彼は英志と目が合った瞬間、スタンドを蹴って道路を駆け上がり始めた。

 ついてきたけりゃついてこいと、その走りが語る。

 

「――分かった」

 自分の本懐を、そして何より彼らの意志を組んで英志は強く頷き、

「こんな形だったとしても、父さんのライバルのあんた達に会えて良かったよ」

 と、最後に言い添えて。

 

 ~~~

 

「しかし、ずいぶんとあっさり信じるんですね。敵だってことは泊進ノ介から聞いているでしょうに。あのこだわりの無さが今流なんですかねぇ」

 と、ブレンが妙に老け込んだことをしみじみとぼやいた。

 

「ほう? 見たところ、同じコピー元のようだな。貴様らも、我が軍門に馳せ参じたというわけか」

 と、自身の並行同位体らしきロイミュードがそう言うのを、冷ややかな目線で返す。

 

「ふざけるな」

 と。

 

 たとえその姿が模造だったとしても。

 たとえその気質が模倣だったとしても。

 

「――俺たちは人間から感情を学び、進化し、自らの足と意志でその道を全うし、誇りと共に散った。貴様のような木偶と同じであるものか」

 

 ハート教授は、舌打ちするとともに、

「ならば、もう一度散れぃ」

 という恫喝のもと。黄金に輝く巨躯のロイミュードと化した。

 ハートロイミュード。己の本来の姿も、威容も、まったく同じ。

 曲がりなりにも、超進化には到達しているらしい。

 

「とはいえハート様と同じお顔、同じお姿……少しやりづらいですわ」

 悩ましげにメディックが嘆くのに、ハートは穏やかな物言いで、

「大丈夫だよ、メディック……こいつらに振るうのは、俺自身の拳だ」

 そう、告げた。巻いたベルトは英志の使っていたドライブドライバーをアップデートしたもの。そして手首には、かつて彼らを復活に導いた、シフトブレスに形を寄せた、コア集積装置。

 それでもって、二人の友に、これから何をするのか、どうすべきかを伝える。

 

「ハート様の、望まれるがままに」

「貴方が美味しいところを持っていくのはいつものことだ。じゃあ、やりますか」

 

 一も二もなく了承するとともに、ブレンとメディックは自らのボディを放棄した。

 抜け殻となったプレーン体が崩れ落ちると同時に、彼らのコアはブレスの中に、そしてハート自身も、同じくその存在の大半をそこへと注ぎ込む。

 

〈Drive! Type Miracle〉

 クリムを真似た統制AIの声に耳を傾けつつ、猛る心をその拳に。

 だが言葉や静かに涼やかに、

 

「変身」

 と、友と同じように唱える。

 

〈Heart the Kamen rider!〉

 

 彼を包むは、紅くコーティングされた車体。その激情を覆うは、クワガタや鬼のごとき角兜。

 好敵手への敬意と、ハート自身の熱意とを掛け合わせた姿。

 信念のもとに散っていった友たちの、ロイミュードの矜持の守護者。未練を断ち切る者。

 

 それこそが戦士、仮面ライダーハートだった。

 

「ドライブ流に言えば、ここからフルスロットルだ」

 という言霊のもとに、ハートは気炎を放った。

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