NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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1.

 二〇三六年になっても、猛暑と蝉の五月蠅さは変わらない。

 むしろ、年々酷くなっていく。

(なんてことを、きっと二十世紀の人たちも同じように思ってただろうな)

 などと、うだる脳みそで(とまり)英志(エイジ)はぼんやりと考えて、久瑠間(くるま)ドライビングスクールへと入った。

 もちろん、免許の更新のためではない。目的とする場所は外れた地下にある。

 一般人にはスタッフの専用口としか見えないような通路を介し、専用エレベーターに乗り込む。

 カモフラージュを兼ねた雑多さに反した、洗練された様々な生体認証をパスして地下へと進む。

 設備の保持のために、肌寒いぐらいの気温に設定されている。英志は首元のタイを締め直した。

 

 そして目当ての施設に入るなり、開口一番、

「お疲れー、チェイス復活した?」

 と軽い調子で尋ねた。

 

「あのねぇ、冗談でもそういうこと言わない」

 中にいた白衣姿のパーマネントの女性追田(おった)りんなは、嗜めるように言った。

 モニターを介して来ていることは分かっていただろうから、お互いに驚きはない。そのやりとり含めて、慣れ切ったものだった。

 

 様々な時代、年代を駆け抜けていった仮面の戦士、仮面ライダー。

 その平成中期を中心に活躍した先輩たちと世界の命運を巻き込んだ戦い、所謂『ギルガメッシュ事件』から一年が経過していた。

 

 その時は英志もまた、仮面ライダーダークドライブとして中心にいたが、すでにその力も失われ、そして変身機構も返上してただの大学生に戻っていた。

 だが、その決断に後悔はない。あの時世界を救ったという手応えは、彼自身の中に確かにある。その自覚が、前を向かせる原動力になっている。

 今は、出来ることを一つ一つこなし、学校で、あるいはこうして実地で、技術や知識を身につけていく。

 

(そしていつかは)

 と、彼はかつて自身が使っていたベルトやブレスを括られた、物言わ直立する鋼の人形を見遣る。

 

 そのボディに、特状課の仲間、そして英志にとっても大恩あるロイミュード、チェイスの精神を呼び戻す。

 それがチームメンバーの悲願だった。

 たとえ、その道のりは遠くとも、諦めない。

 

「ところで、進ノ介くんたちは? 休みとったって聞いたけど」

「父さんの実家。なんか、英介(えいすけ)爺ちゃんの墓参りだって」

「あぁ、もうそういうシーズンなのねぇ」

 りんなは納得の面持ちで頷いた。

「で、君は行かないの?」

 という問いかけに、英志は言葉を濁した。

 

「だって僕、爺ちゃんのことよく知らないし……正直言ってあんまし関係ないかなって」

「関係ないってことはないでしょー? その名前だって英介さんの『英』から来てるって聞いたわよ」

「それ、父さんからも行きがけにお説教喰らったけど、そう言われてもピンと来ないよ。僕が生まれる前に爺ちゃんもういなかったし。なんかスゴイ刑事さんだったってのは聞いてるけどさ」

 

 そうぼやきながら、部屋に備えてある愛用キャンディ、『ひとやすミルクネクストスペシャル』を一包み解いて口の中へ放る。

 その隣で、野菜やフルーツや、様々な仮面ライダーのフィギュアグッズが山積みになっていた。

 

「泊英介。警察内部でその名を知らない者はいない、と評されるほどのグレートな刑事」

 そう言ってサングラスに白衣の男は、備品のミキサーの中へと手当たり次第に野菜を放り込んでいく。

 

「その父の気高さ無くして、泊進ノ介は仮面ライダーになり得なかった……親、あるいは創造主。そう言った自分自身のルーツに向き合うことこそ、ライダーに課せられた使命なのかもしれないね……イエァアアア……!」

 

 裂帛の気合いと共に、リンゴを粉砕。その果汁をさらに容器へと搾り落としていく。フタを閉めて、スイッチオン。

 

「かく言う私も、亡きダディとは色々あったものさ。今にして思えば私も若かったよ」

 

 そうして出来上がった、不可思議な色味のミックスジュースをなみなみとグラスに注ぎ、それを飲みながらしみじみと述懐する。その様子を飴を舐めながら眺めていた英志は、思わず声をあげた。

 

 

 

「…………いや、誰!?」

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