NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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〈Faiz Blaster, Materialize〉

 

 呼び出された巨砲からの一撃を、英志の掌の雷球が相殺する。

 衝突により飛散したエネルギーが方々に散って火柱となる。

 

 それを手の甲で払いながら、ダークドライブは挑みかかる。

 出し抜けの飛び膝蹴り――命中。が、のけぞりさえしない。ファイズはこれを正面の分厚い装甲で受け止めている。

 そしてその間隙に手の中の重火器、ファイズブラスターなるそれを剣に組み換えて横薙ぎの一閃。受けられたと察した瞬間突き出した腕の甲で受け止める。

 

 飛んで退いて威力を殺し、次に備える。

 ファイズエッジとの二刀流にて英志に肉薄せんとする巧に対し、今度は英志が受けて立つ。

 海面を潜行する鮫が如く、鋭く飛んで来た赤き剣閃を、横にローリングして回避しつつ、自身もブレイドガンナーからの青き一斬を放ち返す。

 双刀を支えにそれを凌いだファイズに、さらなる連射を浴びせかかる。ファイズブラスターは、それ自体の重さもあってバランスを崩して取り落とされた。

 

 量は相手に軍配があがる。しかし、工程の省略化による形態(スタイル)の切り替えの早さは、ネクストドライブシステムの方が上だ。

 

 無理に競り合う必要はない。欠点を強いて補う必要はない。

 持ち味を活かす。この対手には、ありのままをぶつけるよりほかない。

 

〈タイヤコウカン! Next Deco Traveler!〉

 ネクストデコトラベラー。ネクストスペシャルと共に復帰した、補助機が一。

 トラクター型のそれをベルトに読み取らせて、タイヤの色を同じ紫へ。

 

 我からファイズに接近戦を仕掛けつつ、アッパーを食らわせる。

 これは腕で防がれる。その間にもう一方の手に握るファイズエッジを、刺突がために引く。

 

〈Traveler!〉

 だがそれより先に、イグニッションキーを回して車体をブースト状態へ。

 シフトカーより読み取られた情報が、その突き出した腕部にブースターを展開させて、威力、速度を倍加させる。

 

 そして、ファイズを彼方空中へと吹き飛ばした。彼の手を離れたファイズエッジが金音と共に橋上に転がる。

〈Knuckle mode〉

 ところがその頭上にて、彼は一切の動揺も見せずにスマートフォンをガントレットに構える。

〈Exceed Charge〉

 赤熱する拳が、英志の予想を超えた速度で、隕石が如くに向かってくる。

 

 命をいくつも持つのならともかく。

 この身はただ一つ。そして世界の命運を握るとなれば、それは受けるわけにはいかない。

 

「くっ」

 歯噛みしつつ、手慣れた捌きで新たなシフトカーを再装填。

〈Next Hunter!〉

 ネクストシフトカーと共にタイヤが赤いラインのものと切り替わる。手に創り上げた格子のプレートを投げれば、英志の八方に、立方に、光線で互いを繋ぎ合わせて檻となる。

 それは敵を遮り封じるものではない。自らを防護する障壁として用いる。

 

 だが、威力を殺しきれない。砕かれる。

 半減しつつも十分な破壊力を帯びた拳がのけぞった英志の横顔をかすめる。耳元に、摩擦熱と火花が叩きつけられる感触、そして金属の擦れる音が押し寄せる。

 振り下ろされたパンチが地面を穿ち、彼らの足場に大きな亀裂を入れた。

 

 脚部でドリフト的に自らを急旋回させながら、体勢を整えながら、再び斬りかかる。

 悠然とバックルにデバイスを戻し、ファイズエッジを拾い上げて、

〈Ready〉

 その光刃を再び伸び上がらせる。

 

 そして、再度の交錯。

 お互いの胴を抜かんとした剣筋は、重なり合ってこすれ合う。

 その間際に、ファイズの剣先が逸れた。ダークドライブの水下を捉えた。そのうえで、片手で画面をタップする。

 

〈Exceed Charge〉

 

 自らの腹部で高まる力を感じ、咄嗟に浮かばせた両脚で、ファイズを蹴った。振り抜かれた剣閃は英志を直撃すること能わずとも、損傷を与えながら吹き飛ばす。

 

 起き上がった時には、すでに巧の姿はない。

 だがすぐに、その存在を痛感することになる。

 

〈Start up〉

 そんな音声が聴こえてきたかと思えば、紅の直線が英志を中心点に、幾度となく交錯する。

 高速にて駆け巡るファイズは、ダークドライブの知覚センサーをもってしても断片的に影を捉えるのみ。ただ自らの防御性を頼りに、踏み止まるよりほか手立てがない。

 

〈3・2・1……〉

 刻まれる音は行動限界を示すものか。あるいは破滅へのカウントダウンか。

 ダークドライブの周りを、ぐるりと無数のポインタが囲む。

 

 避け切れない。防ぎ切れない。

 そう判断するや、英志はダークドライブを自動操縦に切り替え。装着者たる自身をその後背へと緊急離脱させる。

 

〈Time out〉

 キックと思しき連弾連打が、ダークドライブを破壊する。

 

「……ッ、変身!」

〈Drive! Type Next!〉

 爆風に煽られつつも地を転がって熱を避け、かつシフトカーを再装填。

 ブロック状に散らばったダークドライブの破片は、英志の身に再形成される。平常態に戻って両雄は、再衝突して剣で格闘で互いの身を削り合う。

 

 だが、そこで互いに予期せぬことが起こった。

 激闘の末に重ねられた負荷に、ついに橋が限度が来た。

 支柱の一つが折れて大きく傾き、それが吊るワイヤーにも負担をかけて、ついに断線に至る。

 

 ふいに足下に生じた亀裂に引きずられ、飲み込まれる形で両者は断崖へと放り出される。

 

「くっ」

 歯噛みして、英志はシフトカーとタイヤを交換する。

 

〈Next Builder〉

 という音に合わせて、腕を突き出す。質量を伴って実体化した重機のアームが、橋下の無事な梁を掴む。

 

 だが、巧の方はどうか――

 そう敵ながらに案じたが、

 

〈Jet Sliger, Come closer〉

 

 それは杞憂に終わる。

 超大型バイクに搭乗するファイズは、その後方に取り付けられたブースターによる逆噴射とともに浮上し、宙吊りの英志の前にて留まった。

 コンソールを操作すると、ロックオン。

 内蔵されていたミサイルの類が、白煙を吐いて群れを成し、蛇行して迫る。

 

 心身を抉るような決断の連続だが、猶予はない。

 英志は即決とともに腕を離して身を投げた。

 

 ――ビークルならば、こちらにもあるゆえに。

 

 ネクストライドロンが、彼の身柄を救い上げる。

 開けられたドアに飛び込むかたちで我が身を滑らせた英志は、自らハンドルをとってミサイルを回避し、あるいはプラズマを射出して撃墜した。

 

 バイクと、自動車。

 本来飛行などするべくもない形状同士による、ドッグファイトが展開された。

 技量と技術を差し引き、拮抗。埒が明かない二人は、橋を超えたはるか上空にて、車外に総身を乗り出した。

 

〈Faiz Pointer Materialize〉

〈Ready〉

 こちらの覚悟を問うがごとく、パネルを押されたファイズのベルトが平坦に音を発する。その足首に、ポインタが出現する。

 

〈Next!〉

 それに応えて英志も、ベルトのキーを絞る。

 

 垂直に向きを変えた互いの車体を蹴って勢いをつけながら、仮面ライダーたちは互いの意志を乗せた飛び蹴りを放つ。

 紅蓮の円錐がダークドライブを捉え、それに貫かれまいと、青雷が槍となって抗う。

 さらに前に、より強く。そう念じる強さは体勢に現れ、現象として表出する――双極より力の螺旋を紡ぐ。

 

 それが最高潮に達した瞬間、遥か彼方にさえ届く、火柱があがって、二つの影を呑み込んだのだった。

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