NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
互いの威力を相殺し、もつれ合いながら、地上へと両者は失墜した。
大凡の人がまず聞いたことのないような破砕音とともに硬いコンクリートに激突し、地を揺らす。
互いに最新鋭の装甲が無ければ、まず命はなかった。
だがダメージは相当なもので、変身は強制解除された。ファイズのベルトが外れて何処かへ転がっていった。
――幸か不幸か。
英志が身を起こして見渡せばそこは、工場の裏手へと続く専用道路。目的地は、目と鼻の先。
「――お前、なんでそこまで」
食い下がるのか、と。
膝を立てて上体をもたげた巧が問う。
「世界と、皆の夢を守るため……かな」
漠然とし過ぎてはいるが、それが今の英志に用意できる、ありのままの答えだった。
巧がそれに何を想ったのか、陰鬱に伏せた表情からは窺い知ることはできない。
苦笑と共にそう言い放った彼の背に、無数の足音が迫る。
顧みれば、灰と骨が生前の動植物を形作ったかのような、色を持たない異形の群れ。
「こんなところで、時間食ってるわけにはいかないのにっ……」
他と同様、意志も感情も持たない人形たちに応戦すべく、よろめきながらも立ち上がる。
だが、彼らと英志の間を、上空から注がれた機銃の嵐が隔てた。
天を仰げば煙を吐く盾を携えた人型ロボットが、こちらに下降しつつあった。
「気が変わった」
ぞんざいな物言いとともに、着陸した人機に巧は歩み寄った。手には、それを呼び出したらしい、旧世代式の携帯端末――この世界でも見た、いわゆる『ガラケー』が握られていた。
〈Vehicle mode〉
胸のボタンを強く押し込めば、それは巧の乗っていたバイクへと変形し、その背にくくりつけられていた、企業のロゴの表記されたケースをとった。
中に納められていたのは、銀色のベルトだった。刻まれた細かな傷が、そこに至るまでの戦いの数と熾烈さを想わせる。
そして端末を一度銃型に変形させると、連射して追いすがってくる怪人たちを退かせる。
生じた隙に、ベルトを自らの腰に巻く。
5
5
5
感触を、確かめるように端末のボタンを押す。
〈Standing by〉
充溢する心気のままに、その腕を突き出すと、
「変身!」
そう、声をあげる。
〈Complete〉
端末をセットされたベルトから伸び上がる光の奔流が、再び彼を包み戦士と変える。
いくらか装甲を削ぎ落としてシンプルになった、ファイズの姿へと。
それこそが元祖の、いや本来のファイズなのだろう。
「お前は先に行け」
バイクのハンドルを引き抜き、ファイズエッジとすると、英志の前に立って敵を火花を散らして斬り伏せていく。
旧式であるにも関わらず、その冴えは心無しかこの形態の方が上回っている気がした。
「え、でも……」
正直に言えば先の勝負は、英志が押され続けていた。
対抗できていたように見えて、諸々の性能は一世代分、ダークドライブが上回っていたにも関わらず。
最後のキック合戦とて、あえて仕掛けなければ巧が勝っていたかもしれない。
そんな自分は巧を納得させられるだけの力を示せていたとは、思えないが。
「早くしろ! 俺は移り気なんだよ!」
敵の爪牙や武器を剣と蹴りとで退けながら、巧はぶっきらぼうに言い放つ。
呆然としたまま頷き、英志は最後の戦場へ向けて踵を返した。
ただの照れ隠し、とも取れなくもないが。
実際、英志の言葉や健闘に、完全に絆された訳ではないのだろう。ただ灰色の境界線の上に立つ彼が、左から右へとブレたきっかけに過ぎない。
「あいつに教えてやれっ、過去にしがみついてないで、誰かの夢のために身体張るのも、悪くないってな」
迷いながら前へと進む。進みながら問い続ける。
それこそが彼の生き様、乾巧としての、答え。彼の歩く道なのだろう。