NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
その無人の工場に入った瞬間、空気が変わったのを英志は肌で感じ取った。
まるで、すべての時から隔絶されたような。あるいは逆に、すべての可能性と繋がっているかのような。
そして職員用の駐車場に至った時、前進を雷で打たれたような衝撃が、英志の頭から足の爪先まで駆け巡った。
脳裏に渦巻くものがある。網膜の裏に、明滅する何かがある。
咄嗟に顔を押さえて英志は蹲った。
視神経と繋がったそこは、ここであると同時に、そうでない場所。
高くそびえる建物の合間。
割れたガラス、遠くで焼けて融ける近未来的な塔やビル。
力なく蹴り転がされる自分が最期に視るそれは、外れたベルトと擦り切れた赤いネクタイ。ネクストライドロン。
それらを奪い取って勝ち誇る――もうひとりの自分。
「……今のは……というか、この場所は」
「そう、別の時間軸における二〇三五年。もう一人のアンタは、ここで死んだ」
起き上がった英志は、悪夢から醒めて現実を直視した。
今まさに、目前に歩み寄ってくる少年と決着をつけなければならない、ただ今を。
「ロクでもないやり方でダークドライブの力を取り戻したようだけど、その力……おそらくは元はロイミュード108の……元をたどればその『泊エイジ』から抽出されたものだ。クォーツァーの誰かかな」
忌々しげに舌打ちしながら、十数歩分の間合いをとって彼……シンジは足を止めた。
「だから、この異常な状況とこの場所に影響されて、その記憶の一部がアンタにリフレインされた。まぁそんなところだろうけど……でも分かっただろ?」
「何が……?」
「アンタだって、滅びの未来から過去を変えようとしたってことさ」
「けど失敗した。時間改変は果たせず、彼はその計画をパラドックスに乗っ取られた!」
「それでも結果として未来は変わったじゃないか。なのに、どうしてオレが同じことをしようとしたらジャマすんだよ? ここから迎える滅びを想えば、理想の世界だろ」
「――何が、理想の世界なもんか」
戦傷と頭痛によろめきながら、英志は自らを叱咤して立ち上がってシンジを指弾する。
「本来だったらこの世界にはクリムもチェイスも存在しなかったことになってる、ロイミュードたちは雑な敵キャラとして使い捨てられる! 父さんの恰好はダサイし、りんなさんはノーベル賞物理学賞を取り損ねて独身だし、春奈さんにいたっては五流アイドルだ!」
この世界への未練も断ち切る。それを兼ねて、英志は気概を上げる。
「どうでも良いだろそんなことはッ! 特に己の分もわきまえず、無計画にテクノロジーを増長させるような、科学者なんて生き物はな!」
科学、技術に対する不信と憎悪。それを露わに歯を剥くシンジは、
「――せめてアンタにだけは、分かって欲しかったのに……」
肩で一度大きく息をしてから、息を整えた。
「でももう良いや……もうひとりの自分と同じ運命を辿りなよ」
〈DarkDrive〉
彼の内から響く禍々しい声が響く。砂嵐がその肌や衣服を覆い、朽ちた車輪が彼と合一して、痛ましい怪物の姿へと変貌させる。
「いいや、
シフトカーを手に握り、ブレスへと走らせる。
「それに君は勘違いしている。過去を捻じ曲げることに、何の意味もない。どこかでいずれ綻びが出る。本当に変えるべきものに気づかないままの君に……いや、
〈Drive!〉
「へぇ……その口ぶり、気づいたんだ? オレの正体。アンタにとって、オレが何なのか」
僅かな呼吸を置いた後、アナザーダークドライブはコンクリートを踏み抜いて、英志へ向けて疾駆する。
「だったら、なおさら許せないなァ!!」
「……変身ッ!」
〈Type Next!〉
英志はダークドライブの装甲を纏いながら、それを迎撃に出た。
長く伸び上がったアナザーライダーの爪に、ブレイドガンナーの蒼刃を打ちつける。
裂ける空の下、散らされた火花こそが、最後の戦いを告げる狼煙だった。