NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~ 作:大島海峡
「これで、身に染みて分かっただろ」
枯れた声音で、シンジは嗤う。
「どれだけ高い志や信念を持っていても、圧倒的な力の前には屈するしかない。技術や装備の差の前には無力だ」
ここまで、何度もくり返してきたことをここに来てシンジはあらためて言った。
まえうでそう己自身に言い聞かせるように。
その凶暴魁偉なそのマスクを突き出して、英志の顔を窺う。そして些かもその意志の輝きに鈍るところがないと知るや、舌打ちを発した。
「……なんでだよっ!?」
と憤りを発する。
「このままじゃみんな死んじまう! オレはそれを目の当たりにしてきた!! だからこれがベスト! 人類がここで立ち止まらないと、未来はダメになるんだッ! この世界こそが理想なんだ!」
と、当たり散らす彼は英志の二の腕を掴み上げた。
「……頼むよ、この世界を、オレを、認めてくれよ……ッ」
時間さえ操る怪物と化した少年。それが自らの障害へと向ける言葉は交渉でも恫喝でもなく……心からの懇願だった。
「もし、この世界がお前の理想だって言うなら」
と、英志の眼光は少しの揺らぎもなく、静かに問いを返した。
「じゃあなんで、お前は最初に会った時から……
今まで、うまく言葉にできなかった感覚が、英志の中でハッキリと形になった。
それこそが、常に英志の中でシンジに、そしてこの世界に付き纏っていた違和感の根幹。
英志にこの世界を拒ませた要因のうち、大きなものの一つ。
「本当は分かってるんだろ? 自分がただ、『今』から逃げているだけだって。今だって後悔してるんだろ、立ち向かわなかった自分を……今この世界に、納得していないのはお前自身だ」
「うるさいッ!」
英志の指摘は図星を突いた。いや、突き抉り過ぎた。
胸ぐらを掴まれ、人外の怪力で激しく揺さぶられる。訴えかけられる。
「じゃあどうすりゃ良かったんだ!? 終わった世界で誰も救えない中で、誰も救ってくれない世界で! それでもオレはアンタたちのために……!」
「お前を犠牲にした妥協の世界なんて、僕は要らない!」
脳を揺さぶられる衝撃の中で、英志は片手でアナザーライダーを掴み返す。
もう一方の手で、硬い感触を握り込めながら。
「だから僕が証明してみせる! まだ僕にとっての未来は閉じていない! たとえこの先が闇に覆われていても、その中を突き進んで道を照らすっ! この『
――策は、あった。
多分に危険な賭けながら、たとえ乗る以外に手が無くとも。
キックを喰らってトライドロンに激突した折、己を庇う小さな力の作用があった。
英志を爆発の熱から逃したそれ――飛来して来たコア集積装置の存在は、ハートらの再消滅と、彼の託した想いを伝えるに十分すぎた。
と同時に挽回の一手を着想する。
先に垣間見た泊エイジの記憶、それを盗み取ったロイミュード108と、父との戦い。
その、ドライブ復活劇。
だからシンジを喝破する傍らで、脳波で命じた。
それを踏襲したことを、自らの身体の裏に潜伏させたシフトカー、ネクストビルダーに。
今日に至るまで、ネクストライドロンに記録されていたダークドライブの全ミッションデータを、この装置にすべて転送せよ、と。
雷とトライドロンキーのバックアップを頼りに、ベルトに復元した泊進ノ介の如く。
元より、上級ロイミュード三体を受け入れるポテンシャルがあるのだ。きっと能うと信じていたし、だからこそハートは自分にこれを託してくれた。
シンジに向けた言葉、それも無論、偽らざる想いだ。だが最後まで足掻く。そのための布石を打つ。
虚実を入り交ぜてこそ、己の姿はある。
そんな半端で弱い自分を受け入れて、前に進む。
それこそが――
僕は――
「仮面ライダーダークドライブだっ!」
手の内で、青い光が爆ぜる。
それは眼前のアナザーダークドライブを吹き飛ばし、背後においては限界に達したネクストライドロンを誘爆させる。
しかしその車体は灰燼に帰さず。包む火焔ごとに量子データと化してその装置へと収束される。
黒く塗装された車体に、蒼雷が刻まれる。あえて呼称するなれば、シフトネクストライドロンと言ったところか。
〈Fire All Mission!〉
ディスプレイに、四台の次世代型シフトカーのシルエットが映し出され、待機状態へ。
「――変身……!」
十字に組んだ腕、その頂に立てたシフトブレスに、改めてそれをセットしレバーを上下させるとともに、腕を先へ、シンジへ、未来へ伸ばす。
〈Drive! Type NexTridoron!〉
ダークドライブの変身音を豪壮にした感じの起動音と共に、データ化されたネクストライドロンが背に迫る。分離、物質化しながら、受容したデータを下に、クリムのAIが新たなモデルを構築する。
タイプトライドロンをベースに、それをネクストライドロン型へと
「仮面ライダーダークドライブ タイプネクストライドロン」
自らのすべてを包括し変じたその姿を、その字を静かに定めながら英志は拳を固めた。
「これは未来へ向けたドライブ――さぁ、ひとっ走り、付き合えよ」