NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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31.

 まるで台風の目のように。

 元に戻りゆく世界の中、決戦の地だけが最後まで形を保ったままだった。

 その中に、変身を解いた英志とダメージによる軽い失神から目覚めたシンジが取り残されている。

 

「……もう、終わりだ。全部、台無しだ……」

 シンジは膝を折り、背を丸め、頭を抱え、声を湿らせる。その姿は傍目から見れば敗者そのもので、余人にはかける言葉も見つからないほどに痛ましい。

 

 だがそれでも、英志は彼に歩み寄って踏み込む。

「まだ終わりじゃないよ。ここから始まるんだ」

 彼が真に敗けたのではないと、知っているからこそ。

 

 漫然と顔を持ち上げた彼の背を支えるようにしながら、自らへと視点を定めるのを待ってから、彼は告げた。

 

「始まり? ……過去は変えられなかったじゃないか……!」

「……確かに、お前にとっての過去は変えることが出来なかった。それでも」

 此方への無念と忿懣をぶつけてくるシンジの眼差しをまっすぐ受け止めながら、英志はなお続ける。

「僕にとっての今を、変えることは出来るはずだ」

 

 聞こえようによっては、同じような意味合いを持つだろう。

 英志はまさしくそう言いたげな少年の肩に手を移した。

 

「過去を変えるんじゃない。世界を変えることが出来るのは、今その時を生きる人間の意志だけだ。だから」

 

 英志はそう宣って、自らの首元からネクタイを外す。

 それを、シンジの二の腕へと巻いた。

 

「約束する。いずれこの世界が破滅に向かうなら、そのことを知った僕らが、世界(いま)を変えていく。最悪の未来になんて、させやしない」

 まっすぐに伝える。気休めではない。本当に実現させたい夢だからこそ。

 

「だから……信じて、未来で待っていて欲しい」

 肩に手を置きながら、願う。

 アナザーライダーの魁偉なそれとは打って変わって、思ったより華奢な肩だった。その肩で、彼は絶望の未来を孤独に戦い抜いてきたのだろう。

 

「お前のやり方は、間違っていたのかもしれない。それでも、お前がこの道を教えてくれたんだ……ありがとう。ここからは、僕たちに任せてくれ」

 シンジは、大きくその双眸を開いて英志を見上げた。

 だがすぐに唇と睫毛を震わせて、俯いた。

 

「――ここまで自分に、嘘を、ついてきた……」

 少年はおそるおそる口を開き、か細い声を紡ぐ。

 

「世界よりも何よりも……本当は、アンタや母さんに褒めて欲しかった。とても、辛い目に遭い続けて来たことを、訴えたかった……また逢いたかったんだ……」

 

 己の腕に巻かれたネクタイにそっと指先で触れたシンジの頬を、今まで己の内に押し込めていた涙が伝う。だが表情は、晴れやかな笑みに満ちていた。

 

「やっと、願いが叶った」

 

 最後に英志を見つめたまま、別の呼び名のために唇を動かした。

 少年の姿は、光の泡となって溶けていく。空に、残すところわずかになった裂け目へと昇って吸い込まれていく。彼が在るべき時代へと送り返されていく。

 

 ――そして、全てが元へと戻った。

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