NEXTジェネレーションズ Day After Tomorrow ~仮面ライダーダークドライブ~   作:大島海峡

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3.

 父親に強引に連れて来られたのは、郊外の食品工場だった。

 その勝手口の、コンテナの陰に、隠れる一人の男がいた。

 英志の父、進ノ介の義弟、詩島(しじま)(ごう)である。

 

 ただし彼の格好も例によって異なり、小洒落たパーカーではなくカーキ色のシャッポを被り、写真家というよりは新聞記者の様相だった。

 

「どうだ、様子は?」

「進兄さんの読み通りだよ。ロイミュードの奴ら、ここをアジトに性懲りも無く悪事を企んでやがった」

「ロイミュード!?」

 声をあげた英志に対し、

「声が大きいッ」

 と二人して口を塞ぐ。

 

「この通り、証拠もバッチリさ」

 得意げに、何かの袋詰め作業をする機械生命体を隠し撮りした写真を披露する叔父に、父は満足げに

「さっすが、もう一流のブン屋だな。剛」

 と頷き返す。

 

「連中、百八万個のかしわ餅に特殊な下剤を混ぜて、来年の端午の節句に配るって作戦らしい」

「なんだと!?」

「しかも、一ヶ月は下痢が続くキッツイ奴をね……」

「なんて恐ろしい作戦なんだ……そんなことをされたら、日本の未来ある子どもたちのお尻はおしまいだ!」

「いや、気長すぎるでしょ……」

 

 そんな英志のツッコミも虚しく、いきり立った進ノ介は、

「こうしちゃいられない! すぐにでも踏み込むぞッ」

 と勇み立った。

「えぇ? いや、増援を待った方が」

「待ってられるか、突入ーッ!!」

 剛が止める間もなく、拳銃を引き抜いた父は、先陣を切って工場へと突っ込んでいった。

「やれやれ、子ども出来てもコレだもんなぁー。ま、そこが進兄さんのイイとこでもあるんだ・け・ど」

 大仰に肩をすくめて、両手を掲げた変なノリで、剛も追従する。

 英志もまた、首を傾げながらもついていく以外の選択肢はなかった。

 

「そこまでだ! ロイミュードたち!! この世に特状課ある限り、悪の栄えたためしはない!」

 そこまでの潜伏はなんだったのか。そう言いたくなるような大音声と共に、父は施設内へと身を乗り入れた。

 

「ふふふ、現れたか。泊親子よ」

 それに応える声がある。

 大型機械の上に足をつけた、見るも怪しい青年が。

 

 赤いダブルのスーツに、襟を立てた黒いマント。手には心臓の飾りのついた黄金のステッキ。

 

「やはりお前の仕業か……ハート教授!」

「イカにも! そして君が邪魔に来ることも、我らロイミュードには予測の範囲なのだよ」

「なんだと!?」

「出よ、我が同胞たち!」

 

 と唱えると同時に、プレーン体のロイミュードたちがぞろぞろと姿を見せる。

 その胸部プレートにはいずれも四桁以上の数字が無理やりに縮小して彫られており、遠目からはもはや判読できない有様だった。

 

「かかれっ」という号令一下、英志たちにその機械生命体たちが甲高い怒号とともに、どっと殺到する。

 

「行くぞぉォォッ!」

 進ノ介は、拳銃を投げ捨てて特攻を仕掛けた。

 

「えぇーっ!?」

 止まる間もなく、徒手空拳でその集団に切り込んだ父は、そのまま肉弾戦を展開。鋼鉄の怪人相手に、一歩も退かない戦い方をする。

 ……まぁ一応、現職の警察官であるからして、それなりに手足の動きや集団相手の捌きはサマにはなっているが、それでも重加速(じゅうかそく)という、生身ではどうしようもない特性を持つ相手に対する戦法ではない。

 

(……いや、というかそもそもあのロイミュードたち、重加速粒子を発生させてない……?)

 

 いわゆる『どんより』という感覚も無い。

 周りの空間のスピードが鈍重化している気配もない。

 それどころか人間相手に手こずり、わざわざ一体ずつ攻めかかっているせいであまつさえ押し負けかけている。

 

「おのれぇ……しぶとい奴め!」

 自前にステッキを膝で折り、『ハート教授』は切歯する。

 そんな彼の足下に、他とは一線を画す様相の怪物たちが、侍る。

 

「ならば行けっ! ナンバー四千飛んで五十五、柏餅ロイミュード! 同じく四千飛んで二十五、鮭ロイミュード!」

 

 と呼ばわれば、食品類を鋼のサンプルでアレンジしたような意匠の怪人二体は、それぞれに哄笑と奇声をあげる。

 

 それらが挟み込むように進ノ介に迫る。

 だがその間際、高みへと彼は飛び上がった。捉えるべき目標が自分たちの間をすり抜けたことによって、怪人たちは派手に衝突した。

 

 そしてクレーンの腕に乗った父の身には、すでに手放したはずのあのベルトと補助デバイス、ドライブドライバーとシフトブレスがいつの間にか巻かれていた。

 ギチギチと、顔の横で鳴るほどに握りしめたのは、黒に紫のラインが入ったシフトカー。おそらくはシフトスピードのプロトタイプ。

 

「ライダー……変、身!」

 

 かつてより大きく豪快に、そして長く間をとって両腕を回した進ノ介は、その勢いのまま腕のブレスにシフトカーをセットして上下させながら飛び上がった。

 

〈Drive! Type Speed!〉

 空中で展開したアーマーが宙返りする彼を覆い、着地と同時に身を切り返したその肩に、赤いタイヤ型の装置が袈裟懸けに嵌まる。

 

「……俺は、今を覆う闇を振り切る戦士、仮面ライダー……ゼロ、ドラァイブ!」

 腕で空を切りながら、名乗りをあげる姿は、本来のドライブではなく、プロトドライブとの複合型。歴史の歪みに際して原点として現れる、特異点。それが仮面ライダーゼロドライブ。

 嘘か真か、父が昔語りに言っていた姿が、そこにあった。

 

「これじゃ、平成ジャンプして昭和だよ……」

 その様を、呆然と見守っていた英志は思わず呟いた。

 

「フッ……ハッ!」

 そんな我が子の混乱をよそに、久しぶりにドライブに変身した進ノ介は鮮やかな立ち回りで敵を撃退し、雑魚を散らしていく。

 その合間に英志に首を振り向け、

 

「英志ッ、どうして変身しない!?」

 と、そう叱責を飛ばした。

 

「いや、変身って言われても……僕、ダークドライブになれないし」

 ぼやく英志は、ふと腰周りに違和感を覚えた。次いで手首に。

 見れば父と同じ装備一式を、剛が勝手に英志に取り付けていた。

 

「よし、これで準備オッケー」

 流れ作業で手渡されたのは、鮮やかな赤が輝くシフトカー。

 これこそ、本来の父がメインとして使っていた、正規版のシフトスピードだ。

 

「え、まさか……」

「ほら、さっさとするっ」

 

 両手を激しく動かすその身振りで、叔父は変身を促してくる。

 取るべき行動は分かっている。問題は気持ちだが……

「ええい、もう考えるのはやめだ! ……いったんっ!」

 

 アドバンスドイグニッションを回し、ドライブドライバーをスタンバイ状態に。そこに、補助役であるクリムの意志(AI)は感じられないが、問題なく起動は出来そうだった。

 

 そしてシフトブレスにシフトカーを滑り込ませ、

「Start Our Engine……」

 と呟いて後、

「変身ッ!」

 と唱える。

 

 ――が、なおもベルトは待機中。

 

「え、なんで」

 戸惑う英志に、慌てた様子で剛が己の手首を反対の指でせわしなく叩いてみせる。

 

「あ、あぁ……旧式はそうだったね。変身!」

 シブトブレスのランディングパネルを上下させて、あらためてシフトカーの情報を読み取る。

 

〈Drive! Type Speed!〉

 今度こそ、あらためて英志はその身を戦士のものへと変える。

 軽妙な音楽とともに、紅のパワードスーツが彼の身体をまとい、工場の外部から飛んで来たタイヤがその身体に嵌まるも、

 

「いったァ!? お腹に、モロに響いて来た……」

 身体がバラバラに砕けてしまいそうなその衝撃に、英志は情けなく、苦悶の声をあげた。

 

 ともあれ、変身が完了した。

「僕が、ドライブに……」

 こんな異常な状況でしか叶いそうにないシチュエーションに、複雑な感情を抱えることになりつつも、

「まぁ、ひとっ走り付き合えよ!」

 と、ヤケクソに決まり文句を放ったのだった。

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