マロンちゃんとベルに別れを告げ、広場を後にする。
あなたはサシャと共に繁華街の方へと出向いた。
なにやらあちこちに屋台やら出店が出ている。
美味しそうな香りも漂っているし、珍妙なものも売っている。
あなたはサシャを甘やかすことにした。
ここにあるもの、なんでも買ってあげようではないか。
「なんでも、ですか?」
もちろんなんでも。
あそこで売っている串焼きを屋台ごととか。
あるいは焼き菓子を抱えきれないくらい買ってもいい。
なんだかよく分からないおもちゃを買い占めてもいい。
この繁華街以外の店でもいいし。
「なんでも……本当に何でもいいんですか?」
もちろんなんでもよい。
あなたはペットのために散財することが大好きだ。
「なんでも……なんでも……そ、その……本を買っても、いいですか?」
本。字が書いてある紙の束。
おねだりするにはちょっと珍しい。
たしかに高価なものではあるので、ねだるのは納得だが。
まぁ、サシャが欲しいならなんでもいいが。
「いいんですか? その、本って、割と高価ですけど」
サシャより高い本が存在するとは思えない。
「あ、はい、そうですね……金貨500枚もする本はちょっと聞いたことないですね……」
とは言え、本はどこに売っているのだろうか?
エルグランドでは本と言えば雑貨屋か魔法店に売っていたが。
「だいたいは、書店、ですかね。入ったことはないですけど……」
では書店を探してみよう。
あなたとサシャは書店を探して歩きだした。
しばらく屋台を冷やかしながら書店を探す。
やがて繁華街の外れにまで辿り着いたところで書店は見つかった。
「あ、ここみたいです。本を売ってるって書いてありますよ」
サシャが指差す先には、店舗の前に堂々と銘打たれた書店の文字。
なるほど分かりやすい。
あなたはサシャと共に店の中に入った。
店内は薄暗い。
本が劣化しないように日光を遮断しているのだろう。
ほのかなランプの明かりが店内をひっそりと照らしている。
「わぁ……すごい……こんなに本がたくさん……」
感動したようにサシャが言う。
たしかに本がいっぱいある。
それも、どれもがしっかりとした装丁のものだ。
印刷ではない、写本の類のようである。
あなたはエロ本なら山ほど持っている。
だが、それ以外の本はさほどではない。
読書が嫌いなわけではないが、さして好んでもない。
そのため、あなたにとっては割と退屈な光景だが……。
サシャにとってはどうやら違うようだ。
キラキラした眼で本の背表紙に記された文字を追っている。
「いらっしゃい。書店に来る冒険者なんぞ珍しいな……なにが入用だ?」
奥まった場所に、店主と思わしき男が座っていた。
妖艶な魔女みたいな女性か。
あるいは狒々のような老婆とか。
そんなのがいると踏んでいたのだが。
なんだ、男か……。
あなたは内心ちょっとがっかりした。
魔女でも老婆でもナンパしたかった……。
ともあれ、あなたはサシャにどんな本が欲しいのかと尋ねた。
「え、えっと、ええと……め、目移りしちゃって……どれにしよう……」
あなたはそんな風におろおろするサシャに笑った。
目移りしちゃうという状況は、どういうものか。
「え? えーと? なにかのなぞなぞですか?」
目移りするとはつまり、1つに絞れないと言うこと。
どれもこれも欲しくてたまらない心理の表れ。
その場合の解決手段はたったひとつ。
目が留まるものを全部自分のものにすればいいのだ。
そう、全部買えばいいではないか!
あなたは店主の男が持つ本をも指差して言う。
本を……それを、よこせ!
それも1冊や2冊ではない……全部だ!
この店の本、そのすべてを!
「えっ」
「おいおい、豪儀なこと言う嬢ちゃんだな。本ってのは高ぇんだぜ」
それのなにが問題なのだろうか。
サシャが欲しい、ならば買う。
当然のことだ。あなたは本気だ。
あなたは続けて言う。
目録が観たいわ!
この店の本をみせてちょうだい!
まぁ、さすがに同じ本を買う気はない。
なので、目録の本を全部と言う意味で全部欲しい。
「それにしてもすげぇ額になるがな……一応、そう言う豪儀なことを言うやつはたまに来る。そら、うちの店にある本の目録だ。下に総額が書いてあるぜ」
あなたは渡されたリストを受け取る。
そして、その下に記された金額を見やる。
〆て総額金貨386枚らしい。
僅かに144種類しかないくせにその額とは中々に凄い。
金貨1枚でエールが樽で2つ、つまり2バレル。
リットルで言えば200リットルくらい。
またはよく育った豚が5頭。
あるいはチーズ200キロ。
それほどにこの大陸の金貨の価値は高い。
本は1冊辺り確実に金貨2枚を超える。
なるほど、高額な買い物だ。
が、あなたにしてみれば大した額ではない。
エルグランドで金貨386枚なんてはした金もいいところだ。
宿に3回泊まったらほぼ無くなる。
こちらで言うと、銀貨10枚くらいの価値しかない。
あなたは金貨の詰まった袋を出して見せた。
男は中身の金貨を試し、噛んだりナイフで削ったりして純度を確かめていた。
そして、納得行ったところで、あなたはめでたく店の本を全て買い上げることに成功したのだった。
「お大尽は大歓迎だぜ。ありがとよ。本は全部持っていくか?」
もちろん全て持っていく。
数は凄いことになっているが。
サシャには魔法のかばんがあるのだ。
「ほう、すげぇもん持ってんな。それなら心配いらねぇか」
店主が次々と本を取り、サシャへと渡していく。
サシャは眼を白黒させつつも、魔法のかばんへと本を突っ込んでいく。
やがて、144冊の本全てを受け取り、店主が金貨を仕舞いこんだ。
「ありがとよ。さぁさ、今日はもう店じまいだ。写本師どもに仕事を出してやらなくちゃなんねぇ」
とのことなので、あなたとサシャは店を辞した。
「あ、あの、ご主人様……その、本当によかったのですか……?」
なにが? サシャは本が欲しい。
あなたはサシャを甘やかしたい。
ならば本を買い与えるのは当然のことだ。
そうだとあなたは思いついた。
買い上げた屋敷にサシャ専用の図書室を作ろうと。
あちこちに冒険した際に書店をめぐり、本を買い上げて行くのだ。
そして、それらを家に蔵していけば、素晴らしい図書室になるに違いない。
「え、ええっ!? だ、だって、図書室はもうあるんですよ?」
あれは元ザーラン伯爵家の蔵書だ。
サシャのものではない。
現状の所有者はあなたと言うことになる。
これはべつに、あなたのものだからサシャが読むのはダメと言うことではない。
あなたのものをサシャが使うのはなんら問題ないことだ。
だが、それはやはりサシャのものではない。
やっぱり好きなものは自分のものにしたいのが人の性だ。
自分専用と言う称号は、何物にも代えがたい宝物だろう。
それとも、サシャは自分用の図書室は必要ないのだろうか?
「あ、あう……それはその……ほ、ほ……ほしぃ、です……」
最後は消え入るような声だったが、サシャはそう答えた。
あなたはよく言えましたとサシャの頭を撫でた。
どうせなら、立派な図書室にしようではないか。
いや、どうせ屋敷の敷地はまだあるのだ。
新しく図書室ではなく、図書館を作ってもいい。
つまり、庭にサシャ専用の図書用建屋を作るのだ。
そこにサシャの部屋を移し、本に囲まれて1日を過ごす。
これは本好きにはたまらない環境ではないだろうか?
予想ながらそんなことを話すと、サシャは眼を輝かせた。
「本に囲まれて……図書専用の、家……すごい……すてき……」
部屋に入るとたくさんの女の子がベッドの周りで待っている。
女好きのあなたにはたまらないシチュエーションである。
それを本好きに置き換えて言ってみたのだが、正解のようだ。
「ほ、本当に、本当に、いいんですか? その、本って世の中にはたくさんあるし、もっと高い貴重な本とかもあるし……」
そうだとしても、サシャの笑顔には変えられない。
サシャが喜んでくれるなら、あなたは喜んで本を買うだろう。
高いとか貴重とかどうでもいい。
サシャが欲しいなら手に入れる。
何度も言うが、それが当然のことだ。
「あ……わ、私、その、なんて言えばいいのか……その……」
感極まってしまってサシャは泣きそうである。
落ち着かせるように頭を撫でてやった。
そして、あなたは優しい声でささやく。
サシャのことはたくさん可愛がってあげたい。
可愛いサシャのためならいくら使っても惜しくない。
なぜなら、あなたはサシャのことが大好きだからだ。
もちろん、金を使うことだけが愛ではない。
だが、金がなければできないこともたくさんある。
愛する相手に対し、たくさんのお金を使うこと。
それも愛を示すひとつの方法なのだ。
「愛……私、ご主人様に、たくさん愛されてる……私も、ご主人様のこと、大好きです……」
ぎゅうとサシャが抱き着いてきた。
サシャが可愛すぎて、あなたは耳鳴りを覚えた。
危うく理性が蒸発するところだった。
思考回路はショート寸前である。
このまま連れ込み宿に連れ込んでしまうかと。
危うく朝まで激しく愛し合うところだ。危ない危ない。
「もう、離さないで……私、ご主人様がいないと、生きていけません……」
がんばって自制したのに、サシャはもっとかわいいことを言う。
あなたはつらい、耐えられない。
もう理性が蒸発してもいいのでは。
あまりにもサシャが可愛すぎる。
自分無しでは生きていけないなんて。
心臓が止まるかと思った。
サシャを甘やかしまくった成果が通じたのだ。
もうあなた無しでは生きていけなくした。
肉体的にもそうだが、精神的にも堕とした。
もう、サシャはあなたから離れて生きていけない。
ブレウの様子から見て、サシャは裕福ではなかった。
そんな少女に目もくらむような贅沢な生活をさせた。
人は1度上げた生活レベルを落とすのは難しい。
贅沢な生活を知ってしまったサシャは戻れない。
これから、もっともっと深みにハマらせるのだ。
精神的には完全に落ちた。
肉体はまだ完璧ではない。
もっとすごい快楽を教え込んでやる。
サシャの真の性癖を見つけ出し、それを思う様に満たす快楽を教えてやる。
それがどんなものかはわからないが。
あなたにはそれらの性癖を満たす覚悟がある。
そして、それを楽しんでやる気概もまたある。
完璧にあなたの趣味と実益が合致している。
これからもサシャをたっぷりと甘やかそう。
たくさんのものを買い与えて贅沢をさせよう。
美味しいものをたくさん食べさせ、綺麗な洋服を買い与える。
図書室だって、各地に用意するつもりの拠点すべてに用意してもいい。
そこに収める蔵書だって図書室ごとに買い与えてやってもいい。
あなたは純朴な文学少女を金と快楽でもう戻れなくした。
そして、さらに深みにハマらせて行く気満々だった。
率直に言って人間のクズだった。
だが、エルグランドの冒険者とはそんなものだ。
それに、あなたはサシャのことを死ぬまで面倒を見る気だ。
途中で放り投げるつもりなんてない。堕とした責任は取る。
サシャの人生を無理に縛るつもりもない。
好きな男を見つけて結婚したいと言えば許すつもりだ。
エルグランドに行きたくないと言えば、泣く泣く認める気もある。
あくまでもサシャの自主性に任せる。
そのために全力で口説き落とすに過ぎない。
まぁ、クズではあるのだが……。
最低限のラインは守っていると言えなくもない。
あなたはサシャを抱き締め返す。
もっともっと自分に溺れさせてあげると耳元で囁いた。
「はぅう……もっと、溺れさせて、くだひゃい……たくさん、かわいがって……たくさん、愛してください……」
あなたはもうがまんできなかった。
サシャの唇を奪うと、熱く深いキスをした。
そしてサシャを抱き上げると、見当をつけていた連れ込み宿へと連れ込んだ。
今夜は眠れないな!
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