どれだけ校正しても誤字がなくならないのはなぜなんでしょうね?
ゆっくりとお昼寝をした。
それからあなたは何事もなく1日を過ごした。
何もせずにぐうたらする日があってもいい。
自由とはそう言うものだ。
部屋でクッキーとお茶を用意。
そしてだらだらと本を読み耽る。
そんな日があってもいい。
あなたが読んでいる本はサシャに買い与えた本だ。
サシャは仲間たちに快く本を貸し出している。
まぁ、独占してなにか得があるわけでもないし。
自然なことと言えばそうであるが。
あなたが読んでいる本はいつぞやの時代の戦記である。
あなたはこの大陸の地理や歴史をさっぱり知らない。
そのせいもあって、あなたにはよく分からない部分が多い。
それでも読んでいるとそれなりにはおもしろい。
この手の戦記は、かつての名将が取った戦術や秘策などが記されている。
そのため、そうした生業に就く者にとっては垂涎の品となることもある。
より詳細な、兵法書の類となると、もう秘伝の品とかになる。
特定の家系にのみ受け継がれているなんてこともある。
知とは力であり、立場や地位ある者にのみ与えられるものである。
あなたにしてみれば力とは純然たる武力である。
こういうのを外に出さない不文律を守るつもりがない。
どれほど素晴らしい戦略と戦術を以て挑んでも。
雑兵100万対あなたでは、あなたの方が勝つ。
『滅びの呪文』を2~3発ほど打ち込めばそれで勝利だ。
もはや疲れる余地もない。戦いではなくただの処理だ。
くぅ~、疲れませんでした。これにて滅亡です!
などと煽るくらいの余裕だってあるだろう。
「サシャって、どうして本が好きになったの?」
「ええと、読み書きを教わった先生が本好きだったんです。それをいろいろ読ませてもらって……」
「へぇ。裕福な人だったのね」
「いえ、そこまで裕福ではなかったですね。病気を患ってる方だったので……」
「ああ、外に出るのも難儀する類のね……書痴だから患ったって線もありそうだけど」
あなたも本の収集には余念がない。
積読など1冊たりとも作らない。
手に入れた以上は1回は使う。
それがあなたの信念だ。
「でも、サシャの読み書きは完璧だし、いい先生に当たったのね」
「そうですね……変わった方でしたけど、とてもいい人でした。薬師もされている方だったので、信頼の篤い人でしたし」
「本をたくさん読ませてもらえただけでも、滅多にいないほどいい先生だったと思うわよ」
「それはまぁ、たしかにそうですね……本って高いですから……」
本は高い。まぁ、高い本と安い本があるのだが……。
あなたたちが手にしているのは高い本だ。
安い本はもっとしょうもないことが書いてある。
まぁ、そう言う本ほどおもしろいのもたしかだが。
そう言えば、スルラの町には書店があったのだろうか。
サシャは書店を見たことがあると言っていた。
他の町に出たことはないだろうから、あるのだろう。
後々、ブレウの勧誘に出向いた際には書店に立ち寄り、サシャに本を買い与えてやらなくてはいけない。
あなたはサシャを甘やかすことに余念がない。
「あ、本と言えば……ご主人様、ウカノ様の聖典ってないんですか?」
聖典。たしかにそう言ったものはある。
だが、ウカノはたくさんの神々が存在する神話体系の中の一柱である。
そのため、ウカノにだけ絞った聖典は存在しない。
「そうなんですか?」
「神様なのに聖典がないなんて、そんなことあるの?」
レインもサシャも疑問そうだし、フィリアも不思議そうにしている。
これはウカノの属する神話体系に理解がないと分かりにくいだろう。
ウカノが属する神話体系の神々はあまりにも膨大だ。
そのため、神話体系そのものの理解こそが重要なのである。
ウカノの属する神話体系はアニミズムの価値観に根差している。
そのため、ありとあらゆるものに魂があり、神が宿るとされている。
つまりは剣の神もいれば、草の神、なんなら便所の神、米の神、麦の神だっている。
膨大な数ゆえ、やおよろずという言葉までもがある。
八百万と書いてやおよろず。それほどまでに神がいるとされているのだ。
「な、なるほど……そう言う宗教観もあるのね」
「でも、ウカノ様は豊穣の神様なんですよね?」
だから大事なのでは?
サシャはそう言いたげだが、特にそう言うことはない。
どちらかと言えば、福徳の神として信仰される7柱の神の方が知名度は高いのではないだろうか。
あと、太陽信仰に近い考え方もあったため、主神である太陽神信仰が強かったように思う。
「はぁ……七柱の神、ですか」
福の神、破壊神、福禄寿の三要素の神、武神、神官、長寿の神、芸術学問の女神。
この7柱をまとめて崇める特殊な信仰も存在するくらいである。
「……破壊神は福徳の神なの?」
福徳の神だ。
なんでそうなのかはあなたも知らないが。
そうだと言われている以上はそうなのだろう。
「というかお姉様、人間が混じってませんか、それ」
たしかに人間が1人混じっている。
だが、神として信仰されている。
なら、神だ。
「ええ……」
「ざ、雑……」
「人を神として信仰するのは不敬なのでは……」
そんなこと言われても……。
そうだとされている以上はそうなのだ。
それに、神とはそう言うものだとあなたは思っている。
元から神として生まれたわけではないものもまた、神となる。そう言うものだ。
「お、思った以上に柔軟と言うか、複雑な宗教なんですね」
「柔軟通り越して雑になってない?」
「う、ううーん……昇神したならともかく、人間のままで神に……?」
全員が微妙な顔をしている。
なにか文句があるなら相手になってやる。
遠慮せずにかかってこいとあなたは宣言した。
論戦も宗教戦争も受けて立とうではないか。
あなたは基本的にウカノの狂信者だ。
その信仰を守るためなら命すらも惜しくはない。
神話体系に文句があるなら徹底的に相手になる。
「ひえ」
「な、なにもないわ、ええ」
文句があるなら聞きたかったのだが……。
あなたはちょっと残念になった。
解釈違いだと言うのなら、その解釈に至った経緯をくわしく聞きたい。
信仰の在り方は人それぞれだ。
であるがゆえに、その解釈も人それぞれ。
その数多の解釈を知ることで、神々への理解を深めることができる。
あなたは少なくともそう思っている。
まぁ、解釈は神に直接聞けばいちばん楽なのだが。
しかし、その言葉の意図を深く考察するのも大事だ。
悩むという行いにこそ信仰の在り方が問われる。
少なくともあなたはそう思っている。
無遠慮に「神様そこまで考えてないと思うよ」などとほざく輩は血祭りだ。
「……お姉様って、わりと神学者寄りの考え方なんですね」
というより、この神話体系はそう言う性質が強い。
無数にある法典、経典、聖典には数多の矛盾事項がある。
それをどのように解釈し、自分の中で消化するか。
と言うか、この神話体系は少なくとも3つの神話体系から成立している。
そのため、矛盾するのは当たり前だ。
むしろ矛盾のない解釈をする方が不自然ですらある。
そこにどのように折り合いをつけ。
自身の信仰をどのように形作るか。
そう言った性質が元からあるのだ。
「ははぁ、考えることが前提の教えで……その考えも、矛盾して決して正しくはならない……すごく複雑ですね。だからそうなってしまうと……」
あなたは法典、聖典を読み漁って勉強したが。
それでも分からないことが無数にある。
あなたからちょっと聞いただけではなおさらだ。
全てを理解するのは無理無謀だろう。
なにしろ話してる当人が理解できてないのだし。
「んんん……もしかして、ウカノ様の信仰を知るためには、神話体系そのものを勉強しないといけない……んでしょうか?」
あなたは頷いた。
べつに信仰するだけなら、ただ信じればよいのだが。
しかし、ウカノの信仰を知るなら、その前提を知る必要がある。
あなたは知りたいなら教えるつもり満々だった。
「えと、はい。ぜひ」
「後学のために、私も聞いていいですか?」
フィリアも知りたいようだ。あなたは快く受け入れた。
レインも席を離れる様子はないので、聞くつもりのようだ。
あなたはとりあえず神話体系をあなた自身が編纂した本を取り出した。
1冊あたり400ページほどの大判の本が6冊である。
これを読めば、ウカノが属する神話体系のおおよそを理解することが可能だ。
「へぇ、割と少ないのね」
「おおよそ、なんですね」
もしも完璧に理解しようというなら、生涯を捧げる覚悟が必要だろう。
また、完璧でなくとも、とりあえず全て覚えようというのでも年単位が必須だ。
ウカノの神話体系は複数の宗教が融合して出来ている。
多大な影響を与えている宗教の1つを理解するだけで何十年とかかる。
重要な経典とされている、上位存在になるための修行法を説いた経典。
これは時代によって複数存在するが、もっとも後期のものとなると600冊にも及ぶ書からなる。
通読するだけでも数か月、あるいは年単位が必要となるだろう。
「ろ、600冊……」
「で、でも、それを読めば、大体理解できる……んですよね」
あなたは首を振った。
この600冊を読んで理解できるのは、修行方法だけだ。
もちろん、その修行を通じて到達点へと至るのだ。
ある意味ではそれがすべてと言えるのだろうが。
しかし、その宗教を知るならば。
過去の聖人たちの行いや言行。
その考えまでも理解する必要があるだろう。
そうなると読むべき書の数は指数関数的に増大する。
「ちょっと想像を絶してたわね……」
「それをこの6冊にまとめたんですか……」
まぁ、そこまで複雑な部分は取り込まれていないし。
もしくは、独自解釈で取り込まれているというか。
ともあれ、ウカノの属する神話体系を理解するにはこの6冊を読み込んでいけばなんとかはなるだろう。
ただ、問題があるとすれば、これはエルグランドの言語で記されていることだ。
「あ、そっか。ご主人様、最初はこのあたりの読み書きできませんでしたもんね」
「そうだったの?」
あなたは頷いた。
興味があるならエルグランドの読み書きも教えてもいい。
いずれ必要になるが、今のところ必要ではないので、そこまで教えることに意欲はない。
なに、どうせエルグランドに移住したら必要に駆られて覚えるようになる。
「ううん……さすがに、そのためにもう1つ言葉を覚えるのは……」
まぁ、気長に覚えてみてもいいのではないだろうか。
覚えておいて損はしないことを保証する。
「そうですか?」
なぜならサシャとフィリアは絶対にエルグランドに連れて行くつもりだからだ。
その辺りのことは口にせず、あなたの手持ちの本の類を読むなら必要だからと答えた。
あなたが持っているのは色んな意味で実用的な本ばかりだが、当然全てエルグランドの言語で書かれている。
サシャとフィリアに教えている複数の技術に関する専門書などもあるため、読めて損はない。
「でも、覚えるのに何か月もかかりますよね」
あなたは頷いた。
1つの言語を覚えるのに1週間足らずで終わるのは普通ではない。
あなたの場合、鍛えに鍛え抜いた頭脳と肉体のおかげで無理やり覚えられただけだ。
あなた以外が覚える場合、やはり何か月もかけて覚えることになるだろう。
「う~ん……まぁ、暇があれば……」
サシャの反応は芳しくはない。
あなたはそれもいいだろうと頷いた。
サシャは今、複数のことを覚えている最中だ。
同時にいくつも教えても、全部中途半端になる。
なら1つ1つに絞った方がいい。
肉体を扱う技術なら同時に複数覚えても、反復して行くうちになんとでもなる。
だが、頭で覚えなくてはならないことは、複数同時に進行させるとこんがらがるだけだ。
今のところは、サシャに読み聞かせなどしてやってもいいかもしれない。
あるいは、あなた自身の時間が取れるのであれば、こちらの大陸の言語に翻訳してもいい。
まぁ、どうにせよ、今はヒマな時間などないのであったが。
文字数はどの程度が好ましいですか?
-
2000文字前後
-
3000文字前後
-
4000文字前後
-
5000文字前後
-
6000文字前後
-
7000文字前後
-
8000文字前後
-
9000文字前後
-
1万字前後