あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あなたはサシャとドロドロのグチャグチャになるまで(たの)しんだ。

 結果(けっか)、サシャが完全にダウンしてしまったので、予定どおり冒険はあさってからとなった。

 

 1日中献身的(けんしんてき)世話(せわ)してやり、夜にヤリ(おさ)めに1発……いや、2発……3発……いや、5発、10発……。

 ともあれ、ヤリ納めも無事に終え、お互いのコンディションも完調(かんちょう)であなたとサシャは冒険者ギルドに出向(でむ)いた。

 

 冒険者証(ぼうけんしゃしょう)提示(ていじ)すると、まずあなたはギルドで注文していた指輪(ゆびわ)の冒険者証を受け取った。

 注文していたのをすっかり忘れていたが、携帯(けいたい)しやすい冒険者証を注文していたのである。

 あなたは空いている指に指輪を付け、同様にサシャにも指輪を渡してつけさせた。

 

 それからあなたは、自分の強さを簡単(かんたん)証明(しょうめい)できる依頼(いらい)()けたいと伝えた。

 エルグランドなら、アホの英雄志願(えいゆうしがん)様とバカにされそうな要望(ようぼう)だったが、たぶんここならいけるだろうと踏んでのことだ。

 実際、受付嬢は特にバカにしたような様子も見せずにすこし考え込むようなしぐさをみせた。

 

「強さを証明できる依頼……ですか。それですと、仕事ではありませんが、認定試験(にんていしけん)がございますが」

 

 認定試験とは?

 

「認定試験とは冒険者の強さのおおむねを(はか)試験(しけん)です。通常は依頼の実績(じっせき)などから判断(はんだん)されますが、前職(ぜんしょく)騎士(きし)傭兵(ようへい)であるといった方のための制度(せいど)です」

 

 なるほどとあなたはうなずき、それはどのようにすれば受けられるかを尋ねた。

 

受験料(じゅけんりょう)は1人銀貨(ぎんか)2枚となっております。ギルド職員(しょくいん)との試合(しあい)を行っていただき、それでおおよその強さを判断いたします」

 

 そんな簡単なことでいいなら自分とサシャの2人が受けるとあなたは伝えた。

 銀貨4枚を支払うと、受付嬢(うけつけじょう)案内(あんない)されて、試験会場(しけんかいじょう)と言う名のギルド併設(へいせつ)広場(ひろば)へと連れていかれた。

 出迎えたのは、筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の男性。上半身(じょうはんしん)(はだか)でたいへんむさくるしい。まぁ、冒険者とはこんなものだが。

 

「ほう、(じょう)ちゃんが試験を受けるのか。威勢(いせい)がいいな。ルールは簡単だ。好きな武器(ぶき)を使って相手をぶん殴って、まいったと言わせたほうが勝ちだ。(ころ)すのは厳禁(げんきん)だが、まぁ、安心しろ。殺しやしねぇさ」

 

 とてもシンプルで、それゆえにわかりやすいルールだった。

 広場にはあちこちに木で作られた模擬(もぎ)武器がタルにつっこまれており、それを自由(じゆう)に使えと言うことらしい。

 あなたは近場(ちかば)にあったタルから木剣(ぼっけん)を取り、自分はこれでいいと伝えた。

 

準備(じゅんび)はいいんだな。なら、ジェラの姉ちゃん、合図(あいず)をたのむぜ」

 

 受付嬢のことだろう。ジェラと呼ばれた受付嬢はうなずき、腕をあげた。

 

「では、始めて下さい」

 

 その腕が振り下ろされると、あなたと男性はおたがいに(うご)かなかった。

 

「どうした? 来ないのか?」

 

 その前にあなたはひとつ質問(しつもん)をした。

 殺すのが厳禁とのことだが、自分は殺してもかまわないのかと。

 

「ほっ、本当に威勢のいい嬢ちゃんだ。万一にもんなことはねぇが、意図的(いとてき)に殺さなきゃ大丈夫(だいじょうぶ)だ」

 

 なるほど理解したとあなたはうなずく。

 そして、あなたは男性に向かって歩いていき、無造作(むぞうさ)に片手で剣を振った。

 男性は苦笑(くしょう)交じりにそれを受け止め、手にしていた木剣が木っ端微塵(こっぱみじん)になった。

 

「は?」

 

 あなたは無傷(むきず)の自分の木剣で、男性の(むね)(はら)、首をちょんちょんと突っついた。

 が、気付かれなかったのか、それとも武器の不備(ふび)だとでも思ったのか、男性は反応しなかった。

 

「ちょっと待て、かわりの剣を取って来る」

 

 そう言って男性が剣を取って来て、試合が再開(さいかい)される。

 もっと分かりやすく勝った方がいいのだろうか?

 

「さっきの剣はなかなか悪くなかったぜ。今度は防御(ぼうぎょ)を見せてもらうか」

 

 男性が剣を手に(おそ)いかかって来る。あなたはそれを指で()まんだ。

 ピタリと剣が止まる。

 

「おっ、おっ!? すごい力だ!?」

 

 ピクリとも動かない剣。必死(ひっし)であなたを持ち上げようとするが、あなたは持ち上がらない。

 見た目にはそう見えないが『ポケット』に大量(たいりょう)荷物(にもつ)を入れているあなたの重さは凄まじい。

 あなたのことを持ち上げられるのは、あなたと同格の筋力を持つ冒険者か、大型の起重機(きじゅうき)だけだ。

 

 代わりにあなたは剣を(かい)して男性を持ち上げた。

 

 降参(こうさん)するか? そう尋ねる。

 

「い、いや、こんなはずは」

 

 降参しないようなので、あなたは男性を地面に叩き付けた。

 骨が何本か折れた感じがしたが、致命傷(ちめいしょう)ではないので問題ないだろう。すくなくとも、ただちに影響(えいきょう)はない。

 

「お、おめでとうございます……大変お強いんですね」

 

 受付嬢に祝福(しゅくふく)され、あなたはほほえんでありがとうと(こた)えた。

 いつもならナンパするが、冒険者ギルドの人間はナンパしないとあなたは決めている。

 いろいろとめんどうだからだ。エルグランドで1度ナンパしたが、(そん)な依頼ばかりやらされた。

 まぁ、依頼が終わったらベッドで待ってるわ、とか言われれば、どんな損な依頼でも(こな)したあなたの自業自得(じごうじとく)だが。

 それだけに毎回死ぬほど(たの)しんでやった……と言うか、実際に毎回受付嬢は死んでいたのだが……。

 それを加味(かみ)しても、もとが全然取れていないと思うくらい損な依頼ばかりやらされたのである。

 

「つぎはサシャさんの試験ですが……あの、大丈夫でしょうか?」

 

 白目(しろめ)()いて気絶(きぜつ)している男。手足もへんな方向に曲がっている。

 あなたは魔法でさっさと傷を(いや)すと、男の顔をひっぱたいて起こしにかかった。

 

 無事に目が覚めたのでサシャと戦わせる。

 

 サシャは善戦(ぜんせん)した。身体能力は十分なものがあるが、技量(ぎりょう)がいまだ未熟(みじゅく)なので仕方ない。

 粗削(あらけず)りな荒々(あらあら)しい剣技(けんぎ)で戦うサシャの姿はほほえましくもあり、受付嬢もほほえみながら見ていた。

 問題があるとすれば、サシャはすでに熊と戦って勝てるレベルの身体能力を得ていることだ。

 その膂力(りょりょく)たるや、たとえ木剣であろうと(かす)った部位を(えぐ)り飛ばすほどの威力である。

 1発でもまともに当たったら死ぬと気付いた男は必死だったが、あなたはそれを含めて笑いながら見ていた。

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