あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あなたはモモとレウナの会話を傾聴した。

 思い出話半分、情報交換半分と言った調子の話だ。

 レウナが繰り広げたという大冒険の話は聞くだけで心躍った。

 

 アルトスレアのある町で、レウナはある2人の少女と出会った。

 その少女たちと下水道掃除の互助組織の創立メンバーとなり。

 そこから冒険者の互助組織へと発展し、やがて一大勢力となり。

 その果てに、その組織『トンネルワーカーズ』の頭目率いる冒険者チームが星屑戦争終結の立ち役者となったという。

 

 星屑戦争……空に数多の星屑が降り注いで始まったという大戦。

 その大戦を、いち冒険者チームが終結に導いたとは。

 まず滅多に聞くことのない話なだけに実に楽しめた。

 

 詳細について聞くと時間が足らないので概要のみとなったが。

 レウナの繰り広げた冒険譚と、話の端々に登る数多の英雄たちの功績。

 僅かに漏れ聞いた行いだけでも、綺羅星の如く輝く逸話が多かった。

 それと同じくらい奇人変人変態のエピソードが多かったが……。

 

「言ったろう……ざっと50人くらい、あの店のオーナーみたいな知己がいると」

 

 『トンネルワーカーズ』はなかなかすごい集団だったようだ。

 って言うか、話を聞く限り、50人では済まないのでは?

 

「だが100人まではいなかった」

 

 あまりにも雑多過ぎる抵抗にあなたは思わず額を抑える。

 まぁ、レウナが自身の精神の安定を守りたいなら、それでいいのではないか。

 

「しかし、レウナちゃんはこの大陸の迷宮を巡れと神託を受けたとはねぇ……神託ねぇ……」

 

 ボルボレスアスの民にとり、神と言うのは遠い存在だ。

 むしろ、存在を信じていない者すらもいるほどに神の息吹は薄い。

 別大陸を旅した経験のあるモモロウですらも訝し気な調子だった。

 

「神託っつーのは、そう言う抽象的な感じのやつなのか?」

 

「抽象的なことばかり言うお方だからな……」

 

「そう言う個神差みたいなのあるんだ……」

 

 まぁ、神にだって性格くらいある。

 あなたの父が信仰しているフェイウーフ・オルヴィも抽象的なことばかり言うし。

 

「つーことは、EBTGといっしょに冒険するのか?」

 

「今はソーラスを最深層まで潜ろうとしているので、その間は同行するだろう。そのあとのことは分からない」

 

 あなたはソーラスの攻略が終わったら、続々他の迷宮も攻略する予定だ。

 そのため、レウナさえよければ同行してもらっても構わない。

 むしろ高位の神官がもう1人居るというのは安定感が段違いだ。ぜひ同行して欲しい。

 

「とのことなので、方針をたがえるまでは同行することになりそうだ」

 

「ふーん。この女たらし、すげえコマしだから気をつけろよ。俺な、女の子の時は、この人がいないと生きていけない体にされちまったよ」

 

「気持ち悪いことを言うな!」

 

「でも本当なんだって。マジで変幻自在の指使いで、一瞬でコテンパンにされるんだよ……うっ、思い出しただけで濡れて来た……」

 

「汚い! 椅子から立て!」

 

「冷たくねェ?」

 

「やかましいわ! さっさと立て! 椅子に布を敷いて座れ!」

 

「へいへい……でもマジで気をつけろよ。無理やりもいける人だし、レウナちゃんを本気で犯そうとしたら勝てないだろうし……」

 

「彼女は善き人だ! それくらいは分かる! 私の友を愚弄するようなことを言うのはやめてもらおう!」

 

「おいおい、そっち方面から既にだいぶ攻略されてるよ……どこまでいったの?」

 

 あなたはBと端的に答えた。

 

「陥落1歩手前じゃん……」

 

「う、うるさい! わ、私にできるのがそれしか! 彼女の献身に報いれる手立てがそれしかないのだ!」

 

「ええ~? 俺も頑張って献身するから俺にも報いてよ」

 

「要らんわ!」

 

「ぴえん、冷たい」

 

 ややモモのセクハラ癖が酷いように思うが……。

 どちらも遠慮のないやり取りができていて楽しそうだ。

 日が暮れ始めるまで話し込んでしまったほどにエピソードも豊富だった。

 

 2人の話は実に楽しかった。また存分に聞きたいものだ。

 概要しか聞けなかった星屑戦争の話をもっと聞きたい。

 モモは明日からまた学園なので、長く引き留めることは出来ないのだ。

 

「今年バカンスどうすんの? その時は?」

 

 申し訳ないが先約がある。

 ハンターズと湖水地方に行くのは無理だろう。

 

「ああ、そうなのか。ま、しょうがねぇな」

 

 まぁ、夏本番はまだまだ先だ。

 おおよそだが、1か月は後だろうか。

 それまでの間になにかしら機会はあるかもだ。

 

「そうだな。ま、俺らはどうせ学園に通ってるだけで忙しくもねぇさ。そっちの都合に合わせるよ」

 

 そうしてくれると実にありがたい。

 

「おっし、んじゃそろそろ帰ろうかな。送ってってもらえるかな?」

 

 もちろん構わない。

 あなたはモモを連れて学園へと転移した。

 

「じゃ、またな」

 

 そう言いつつ、モモがあなたの頬にキスをした。

 そして、静かに……のジェスチャーの後、耳元で囁いた。

 

「今度はトモちんにもレナイアにも内緒で、浮気えっちしよーな……?」

 

 いたずらっぽい声が脳に染み入って来る。

 内緒で浮気えっち……なんてすばらしい言葉なのだろう。

 あなたは小悪魔的な微笑を残して走り去っていくモモを見送りながら、次はトモから寝取るつもりで本気えっちしてやろうと決意するのだった……。

 

 

 

 

 帰宅し、常と変わらぬ夜を過ごし。

 明けて翌日、朝食を食べた後のことだ。

 カイラとバカンスの予定について詰めるべく出かけようとしていたのだが、あなたの手元に突如として魔法の便箋が届いた。

 

「お母様から?」

 

 レインの言う通り、魔法の便箋の送り主は王都のポーリンだ。

 なにか緊急事態があれば連絡して欲しいと渡しておいたものだ。

 その内容を見れば、高位の来客者の文字があった。

 

「高位の来客者……いったい誰かしら?」

 

 最悪の場合を考えると、王都ベランサのことは諦めてもらう必要があるかもしれない……。

 あなたがレインに重苦しくそう答えた。

 

「……いったいなにをしたの?」

 

 べつになにもしていない。していないが……。

 濡れ衣を着せられる余地は割と山ほどある。

 あなたは恨みを買うことをあまり気にしないし、恨まれるに任せるタイプだ。

 そのため、理不尽な謀略に絡め捕られることも割とある。

 

 まぁ、そのあたりは力づくで突破してしまうのだが。

 最悪の場合、王都が綺麗さっぱり更地になる可能性がある。

 こう、めんどくなって『ナイン』で全部吹き飛ばすとか……。

 

「……もうちょっと、理性的に、ね?」

 

 あなたはがんばってみるとだけ答えた。保証はできない。

 とりあえず、なにか危険な事態の可能性もある。

 そのため、あなた1人だけで出向くことにしようと思う。

 

「もしも、あなたが帰ってこなかったら……どうしたらいい?」

 

 あなたはレインに『ミラクルウィッシュ』のワンドを渡した。

 そして、ウカノ神の降臨を願うように頼んだ。

 

「神の降臨……」

 

 本当なら大きな代償がいる行為なのだが、ワンド経由なら問題ない。

 その召喚したウカノ神に王都の制圧を頼めばいい。

 普通は神を使役するなどできることではないが……。

 

 あなたと言う特別な信徒の救助のためなら骨を折ってくれるだろう。

 どうせ降臨するのはウカノ本体ではなくアヴァターラだし。

 変幻自在の呪術と、人海の如き分身の術で王都くらい一瞬で制圧してくれる。

 

「そんなことにならないといいんだけど……」

 

 とりあえず3日ほど様子を見て欲しい。

 それでも帰ってこなかったら実行して欲しい。

 

「わかったわ」

 

 レインに決意を宿した眼で頷かれた。

 まぁ、そんなことにはならないと思うが。

 レインの強い決意を無下にするのもよくはなかろう。

 あなたはレインに力強く頷きを返すと、転移で王都へと向かった。

 

 

 

 王都に転移すると、むっとするような熱気が漂っていた。

 人口密集地帯だからか、やや熱気が籠ったような雰囲気がある。

 屋敷に入り、手近にいた使用人に客人について尋ねる。

 

 すると、すぐにあなたが連れていかれたのはお針子用の部屋だった。なんで?

 

「おかえりなさいませ、旦那様」

 

 出迎えてくれたブレウは前回とそう変わらない様子だ。

 まぁ、孕ませてから約1か月しか経っていない。

 そのため、詳しくはブレウの最後の月経日を聞かないと分からないが、妊娠2か月にもなっていない。

 もう1月もすれば、あからさまな兆候が出始めるだろう。

 

「お客様はポーリンさんと、マーサさんが応対してくださってます。私は旦那様への説明を頼まれまして」

 

 なるほどとあなたは頷く。

 本来なら接客には専門のメイドを使うのだが。

 どうせ来客などないので雇用を後回しにしていたのだ。

 接客専門メイド……パーラーメイドは顔採用なので、そう簡単に雇えないのである。

 

 そうなると、スチュワーデスのポーリンとハウスキーパーのマーサが応対するのが妥当と言えばそう。

 相手に対する最大の誠意、という意味では分かりやすい配慮だ。

 

「それでお客様なのですが……トイネの貴人のようなのですが、よほどの貴人のようで……名乗ってもいただけないようなのです」

 

 トイネ。

 ここマフルージャ王国の隣国であり、エルフが多数いると言われる国だ。

 そのため、別名をエルフ王国と言うほどだとか。

 

 しかし、あなたはその国と一切接点がない。

 なぜトイネから客人が来るのだろうか?

 

「ですので、作法として直答(じきとう)を許すの返事があるまでは、お付きの方とのみ対話していただくように、とのことでした」

 

 その辺りの指南のためにわざわざブレウに引き合わされたらしい。

 あなたも一応その辺りの作法は弁えているが、あくまでエルグランドのもの。

 こちらとは文化も風習も違うのでその辺りの配慮はありがたい。

 

「では、ご案内します」

 

 あなたは頷き、ブレウに案内を頼んだ。

 そして、すぐさま連れていかれたのはこの屋敷の応接室だ。

 扉をノックして誰何(すいか)した後、入るように内部から声がかかる。

 

 入室すると、見慣れたポーリンとマーサの姿。

 そして、見慣れぬ客人が2名いた。

 

 ソファに座っているフェイスベールを着用した少女。

 顔貌を隠す意図はないようで、透けて見えるほどに薄いものだ。

 その後ろに立ち、侍っているのは武官だろう、鍛えられた雰囲気のある少女だ。

 どちらも長く尖った耳を持っており、エルフであることが分かる。

 外見こそ少女だが、実際の年齢は見た目では推し量れなかった。

 

「イミテル」

 

「着席を許すと(おお)せだ」

 

 ソファに座っている方がややでかい声で武官の名を呼ぶ。

 こういう時は、もうちょっと静かな声で喋るものだが……。

 まぁ、生来の性格から声のでかい者もいるので、そのせいかも。

 あなたはイミテルと呼ばれた武官であろう少女の言葉に着席をする。

 

 対面からちょっとずらして着席したあなたは対面の少女を見やる。

 まずあなたが零したのは、微かな驚きの溜息だった。

 めっちゃかわいい。つまりはそう言う溜息だ。

 

 貴人であろう少女は極めて色素の薄い豊かな金髪が美しい。

 細く軽やかな髪の束をいくつか巻いており、衣服に沿って流れる柔らかなさま。

 頭頂近辺に身に着けた白金(プラチナ)製であろうサークレットの輝きも美しい。

 透き通って大きい蒼の瞳、桃色の薄い唇、驚くほどきめ細やかで白い肌。

 そして、衣服の上からでもわかるほど豊満で、むちっとした魅惑の肢体……。

 

 どれをとっても美しいとしか言いようのない要素が固まっている。

 こんな美少女とベッドの中でくんずほぐれつできたら最高だろう。

 しかし、貴人に手を出すのは色々めんどくさい。

 レナイアみたいな異常者なら割と遠慮なく手を出せるのだが。

 

「イミテル」

 

「は……これより行うのは極めて内密の話。尊き御方の下げ渡される依頼を聞く者は当人のみでよい」

 

 あとは分かるな? という調子で言う武官の少女。

 あなたはポーリンとマーサに退室するように言葉短く告げた。

 2人は深々と礼をすると、一言も発さぬまま退室していった。

 

「イミテル」

 

「は。尊き御方より、貴様に依頼を与える。御方様より直の説明があるゆえ、しかと拝聴せよ」

 

「イミテル」

 

「は」

 

「イミテル」

 

「……は」

 

「イミテル」

 

「……は」

 

 説明は?

 貴人の少女、武官の名前しか呼ばないのだが。

 

「イミテル!」

 

「は……どうされましたか?」

 

 イミテルがそっと小声で尋ねるが、距離が近いのでやはり聞こえる。

 

「……もう普通に喋ってよいのですか? あなた先ほど、(わたくし)に自分の名しか呼ぶなと……」

 

「……はい、お言葉をお授けください」

 

「わかりました」

 

 どうやら事前に言い含められていたのが原因のようだ。

 そのあたりの自己判断ができないほど意志薄弱なのか。

 あるいは、自身の判断よりも配下の判断を信頼する性質なのか……。

 

「では……私はダイア。トイネ王国現王クラウ2世の娘です」

 

 なんかすごいの出て来ちゃったぞ?

 あなたは思わず絶句した。

 なんで異国の姫様があなたを訪ねて来るのか。

 

 (かた)りの可能性もなくはないが、たぶん真実だろう。

 ダイアはあからさまに貴人だし、身に着けているものも高価なことが一目でわかる。

 武官のイミテルも明らかに貴人だが、その上でよく鍛えられていることがわかるし。

 

「単刀直入に言います。あなたに依頼をしたいのです」

 

 先ほども聞いたが、本当にあなたに依頼を持ってきたらしい。

 いや、持ってくるのは分かるのだが、なぜあなたに?

 持ってくるにしてもなんで当人が来るのか?

 不可解過ぎる状況にあなたは首を傾げざるを得ない。

 

 まぁ、その辺りは置いておいて、だ。

 依頼と言うことなら内容次第と言うことになる。

 いかにも面倒臭い依頼ならば断ることもある。

 たとえ相手が貴人だろうが関係ない。

 やりたくないことはやらない。それが自由で冒険者と言うやつだ。

 

 かつてはえり好みせず、なんでもかんでも依頼を請けていた時期もあったが。

 今のあなたは依頼をえり好みできるだけの環境を得たのだし。

 野菜の収穫をしろとか、ある人物を護衛してよその町まで連れて行けとか。

 そう言うめんどくさくて実入りの少ない仕事はお断りだ。

 まぁ、報酬が少ないから断るわけで、報酬次第では受けるが。

 この依頼の報酬は運営資金に回してもよいことになるし。

 

「依頼の内容は、トイネに蔓延(はびこ)る反乱軍の征伐(せいばつ)

 

 超めんどくさそう……。

 あなたは内心で断ることを決意した。

 

 どこそこのモンスターを殺せと言う依頼とあまり変わらない内容だが。

 相手が軍隊となると、潜伏したり、逃げたりと非常にめんどくさい。

 

 加えて、人間相手では完璧に殲滅したと判断するのが非常に難しい。

 モンスターなら痕跡などを見つけやすいが、人間は知恵が回る分だけ隠ぺいがうまい。

 丸ごと焼き払えと言うことなら楽勝だが……。

 その場合トイネは壊滅的な被害を受けるだろう。

 

 気にしないよ、と言うことなら楽でいい。

 あなたも気にせずに綺麗さっぱり消し飛ばす。

 『ナイン』を各地で起爆すれば楽勝だろう。

 

 だが、普通の人間は周辺被害くらい気にする。

 あなたに征伐におけるフリーハンドを与えてくれることはないだろう。

 やり口に口出しをされながら、めんどくさい相手を殲滅。

 しかも依頼に必要な期間も見通しが立たない。

 迷宮探索に差しさわりが出るようではやりたくもない。

 これではどんな報酬であっても魅力とは言えないだろう。

 

「報酬は望むがまま、私に支払えるものならいずれでも与えましょう。あなたはなにを私に欲しますか?」

 

「直答を許す」

 

 あなたはどうしたものかなと頭を悩ませた。

 断るにしても角が立つような断り方は問題だ。

 なので、絶対に飲めないが、無礼でもない報酬……。

 

 あなたはフリーセックスライセンスを求めた。

 トイネのすべての女と自由にヤれる権利だ。

 男はべつにいらないので、半分ということになる。慎ましい要求だろう。

 

「ふりーせっくす……?」

 

「ば、ば、馬鹿者! 貴様なにを言うか!」

 

 イミテルが激高するが、ダイアはいまいち分かっていない様子だ。

 やや無礼だったが、無礼打ちにかかってこないのでセーフラインだろう。

 

「イミテル、フリーセックスライセンスとはなんですか?」

 

「ひ、ひ、姫様がお知りにならなくともよいものでございます!」

 

「そうですか。では、それを私が彼女に与えることは可能なのですか?」

 

「い、いや、それは……あ、いえ、う、あーっと……と、トイネ王法によると、トイネ国王にはすべての民の初夜権があることが明文化されているので、一応は可能……であるかと……」

 

「そうなのですか。わかりました。では、あなたのおっしゃる通り、フリーセックスライセンスを与えましょう」

 

「えっ!?」

 

 すごい空手形を打ちやがった……あなたは思わず呆然とする。

 というか、ちゃんと説明しないからこうなるのである。

 あなたは武官のイミテルを内心で非難した。

 

「し、しかしですね、姫様! せ、せ……せっ……は、その、つまり……あ、赤ちゃんができてしまいます……!」

 

「え? 女同士でも子供は作れるのですか? 男女のまぐわいで作るのだと……」

 

「あ、いえ、で、できませんが……」

 

「イミテル、あなた言うことが矛盾していますよ。どちらなのですか?」

 

 実際のところ、あなたがやれば子供はできる。

 が、べつにその辺りを説明する必要はないだろう。自分で制御可能だし。

 

「あ、その、つまり、女同士ではできませんが、本来は夫婦の者のみで行うものが、その、せっ、せっ……! で、ですので……」

 

 セックスと言うべきだが恥ずかしく言えない。

 それでも言わなくてはいけないので言葉尻を濁す姿……。

 こういうのには格別なよさがある。あなたは内心で深く頷いた。

 

「つまり、セックスとは子を成すまぐわいのことなのですね?」

 

「は、はい……」

 

「たしかに、本来は夫婦同士で行うもの。それを為政者たる私が軽々に与えてよいものではありませんが……しかし、まぐわいとは子を成すための行いなのではありませんでしたか?」

 

「ま、まさに仰る通りでございます……」

 

「でしたら、女同士で行うのであれば、それはまぐわいではないのではありませんか?」

 

「えっ!? あ、は、う……たしかにその、子を成す行為だけをせ、セッ……と言うのであれば、違う……? あ、あれ?」

 

 そこらへんの定義の話になって来た。

 どうも、ダイアの性知識はかなり四角四面のものらしい。

 快楽目的でやる行為についての理解すらないようなのだ。

 

 まぁ、王族に施される性教育など、子を成すことが本位のもの。

 それを思うと、子を成さないものは性行為ではない、と定義するのも分からなくはないだろうか?

 

「で、ですが、そう言ったいかがわしい行為を許可するのは……!」

 

「いかがわしいのですか? 子供を作ることは神聖な行いのはずでしょう」

 

「たしかにそうではあるのですが……!」

 

「実際に子を成さないまぐわいであれば、何か問題があるのですか?」

 

 なんか面白くなってきた。

 あなたはイミテルとダイアの話し合いを見守った。

 これで手元に酒があれば最高だったのだが……。

 

「お、おい! 貴様、いかがわしい報酬以外のものといたせ!」

 

 ここであなたに話が振られて来た。

 こっちに話を振るとはいい度胸ではないか。

 あなたは話術のスキルを全開にすると、交渉を始めた。

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