盗賊に襲われてからは特にアクシデントはなく。
平穏に2日目の旅程が終わった。
昨日と同じく交代で不寝番をして野営をし。
なんと言うこともなく2日目の夜も終わった。
そして、3日目も何事もないまま終わりを迎えようとしていた。
ふつう、宿場町を使わない強行軍は過酷なものだ。
あなたもそれを思って厳しいものと思っていた。
が、襲撃が1度あったきりで、むしろ暇ですらあった。
つまらない。実につまらない
護衛依頼ならもっと襲撃があるだろうに。
「つまらないって……襲われたら大変ですよ?」
それはまったくその通りではある。
だが、ヒマなのである。
何か事件が起きて欲しい。
伝説のドラゴンが復活したとか。
隣国の軍が攻め寄せて来たとか。
そう言う感じの事件が欲しい。
「大事件じゃないですか……本当に起きたらどうするんですか」
がんばって戦う。
それだけの話だ。
伝説のドラゴンからはさぞや凄いものが手に入りそうだ。
ドラゴンと言えばため込んだ財宝だ。
「鱗とか爪で武器とか防具を作るだけで凄いものになりそうですけど」
あなたはそれを笑い飛ばす。
ドラゴンの爪や鱗が優れた品などと言うのは大間違いだ。
それは単純におとぎ話の読み過ぎである。
もちろんそこらの安物よりは高性能だが。
強力なエンチャントのされた武具の方が強いのは間違いない。
「そう言う方向性でおとぎ話だと断言されるとは思いませんでした……」
少なくとも、あなたにとってはその程度。
ドラゴンとはややでかい爬虫類でしかない。
あと、たまにドラゴン肉が食べたくなった時に狩ったり。
あとは畜肉として牧場で増やしてみたりもしたことがある。
「牧場で増やしたことがある」
エルグランドではよくあることだ。
ドラゴンとはその程度の存在なのだ。
「意外と簡単に倒せたりするんでしょうか……?」
そんなことはない。
ドラゴンと言うのは強大な存在だ。
その点は疑うべくもないことだろう。
強靱な肉体に優れたる魔法の力。
その総身に畏怖すべき力を宿している。
その絶大な力は単なる人間の軍を纏めて捻じ伏せる。
万軍を1匹のドラゴンが滅ぼすこともある。
ドラゴンとはそう言う絶対的な力の象徴だ。
「ご主人様の強さと言うのがよく分からなくなってきました……」
少なくともサシャよりは強い。
それは間違いない……のだが。
他の比較対象を出せと言われると、困る。
あなたは神様とケンカ出来るほど強い。
しかし、それがどの程度なのか。
肌感でわかるのは、同じく神様とケンカ出来る者だけ。
サシャの知る最強の存在と比較したとして。
どちらが強いかは答えられるだろう。
だが、エルグランドにいない生物の強さは分からない。
逆に、エルグランドにいる生物と比較したとき。
現大陸とエルグランドで同じ強さかは分からないのだ。
「なるほど……ドラゴンの鱗は城塞に匹敵するほど堅固だと言いますが……」
城塞くらいなら問題ない。
石ころを投げれば突破可能だ。
「城塞を石ころで突破できるんですか」
少なくともエルグランドでは投石で城壁を爆散させたこともある。
「王都の城壁を爆散させた……まさか、戦争に行ったことがあるんですか?」
城壁に石ころを投げて遊んでいただけだ。
友人たちと一緒に城壁に石ころを投げる。
一番城壁を大きく吹っ飛ばしたものが勝ち。
「遊びで城壁壊したんですか!?」
何か問題でもあったろうか。
「いえ、大問題ですよね!? 普通、そう言うのって兵士とかに怒られたりしませんか? 下手したら死刑では?」
あなたは何も言われたことはない。
たぶん友人たちも言われたことはないだろう。
エルグランドとはそういうところだ。
そもそも3日もあれば城壁など元通りだ。
「3日で元通り……?」
エルグランドではそうだ。
建築速度がとんでもないことになっている。
どうやってやっているのかは知らない。
巨人とかドラゴンとかでも使役しているのだろう。
具体的な工事の工程は見たことがないのだ。
気付いたらいつの間にか修復が終わっている。
「ご主人様の故郷って本当にいったい……」
常識外の場所であることは保証する。
あなたはそう告げた。
「いえ、もうそれは十分にわかります……」
サシャは疲れたように頷いていた。
旅の疲れでも出たのだろうか?
あなたは可愛いペットを癒す手立てに思考を向けた。
3日目も何事もなく終わった。
そして、4日目も何事もなく終わってしまった。
昼前に目的地の町へと辿り着いていた。
そこで報酬をもらって、現地で解散である。
あなたは旅の間の禁欲により、性欲を持て余していた。
「あの、ご主人様。これからどうなさるんですか? お仕事も終わって報酬も頂きましたし、帰る……のは時間的に厳しいですよね」
基本、旅立ちは朝にするものだ
それがいちばん移動時間が稼げる。
だから明日の朝までこの町で過ごす。
必然的と言える流れだ。
実際は魔法で転移すれば一瞬なのだが。
しかし、もしそうした場合、サシャは死ぬだろう。
転移であっても同じことだ。
「私が死ぬ!?」
このまま宿に泊まったとする。
あなたは4日も性欲を溜めている。
退屈な旅路でストレスも溜まっている。
そのストレスを発散するゴミも湧いてこなかった。
あなたにはいろんなものが溜まりに溜まっている。
このフラストレーションをどうするか。
これを叩きつけた場合、サシャは間違いなく死ぬ。
出立前にあった、あの激しい夜。
あれよりも何倍も激しい夜が来る。
体が保つ自信があるのだろうか?
「やめてください、死んでしまいます」
サシャが顔を蒼くして拒否って来た。
あなたはちょっと傷付いた。優しくするのに……。
さておき、だ。
あなたは2日ほどこの町に滞在するつもりだ。
娼館でフラストレーションを発散する予定だ。
娼館がダメならそこらで女を引っかける。
金を積めば靡く女と言うのは一定数いる。
「は、はぁ……あの、その間、私はどうすれば?」
あなたは金貨をひと掴みサシャに渡した。
そして2日の滞在で全額使い切って来るようにと命じた。
「全額使い切るんですか!?」
高級な宿に泊まれば半分は無くなる。
食事などで豪遊すれば残りもなくなるだろう。
使い切らなかったらベッドの上でお仕置をするとも伝えた。
「全額使い切ってきます……」
全額使い切れたらベッドの上でご褒美を上げるとも伝えた。
「どっちにしろ襲われる……! でも、ご褒美の方がマシな結果になる……の、カナ……」
とぼとぼ、と言った調子で歩いて行くサシャ。
それを見送ると、あなたは娼館を探しに出かけた。
娼館でたっぷりと楽しんでやる。
娼館側が迷惑に思おうが知ったことではない。
貸し切って娼婦を思うさまに食い散らかす。
そうしてフラストレーションを消化する。
余人が立ち入れないあなただけのパラダイス。
そのためにはいくら金を使っても惜しくない。
故郷では自宅に帰れば同じことが出来た。
あなたにはたくさんの可愛いペットがいたのだ。
だが、今あなたのペット、もとい奴隷はサシャ1人。
1人にその負担を押し付ければ死ぬ。
あなたが故郷での冒険の初めから連れ添った最愛のペット。
彼女ならば余裕綽々で相手をしてくれるのだろうが。
残念ながらサシャはまだまだ未熟な少女でしかない。
一晩中ベッドの上の大乱闘が出来るのはまだまだ先だろう。
そんなことを考えながら歩いていたのだが。
どうにも目当ての場所が見つからない。
どの町にだって娼館の1つや2つくらいはある
だが、それらしい場所がちっとも見つからない。
来るべき方向を間違えたのかもしれない。あなたは嘆息する。
エルグランドでは表通りの方に娼館があった。
この大陸では裏通りの方が普通なのかもしれない。
「ああ、やっと見つけたわ」
どのあたりにあるだろうか?
想像を巡らせていたあなたの背に声がかかる。
振り返ってみれば、そこには翠髪の少女、レインの姿があった。
「ねえ、少し付き合ってくれない?」
あなたは喜んで頷いた。
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