あなたはハウロとメチャメチャ楽しんだ。
それはもう死ぬほどに楽しんだ。朝が来ても楽しんだ。
あなたの予想した通り、ハウロはメチャメチャ上手かった。
あなたも少し酔いが回っていたせいか、感覚が昂った。
そのせいもあってか非常に気持ちよかった。
まぁ、負けじと反撃してハウロをメチャメチャにしてやったが。
「はぁー……すごすぎ……バカになるっつーの……」
そうぼやいて情事の余韻を愉しむハウロ。
そんなハウロにあなたは優しく囁く。
男に性転換したら2度と出来ないよ、と。
「ぐっ……! いやでも、でもな……!」
即決は出来ない程度に迷っているらしい。
まぁ、今はその程度で十分だろう。
無理に女のままでいることを強要しても反発される。
ここは時間をかけて、じっくりと……。
幸いと言うべきか、ハウロが落ち着くつもりの村は分かっている。
この村に『引き上げ』のマーキングを残して、度々見にくればいい。
その都度ハウロを体でもてなし、女同士のよさをたっぷりと教え込めばいい。
気長にやろうではないか。
あなたはそのように考えた。
さて、ハウロがこの村に腰を落ち着け。
あなたが薬品調合の技術を幾人かに授け。
診療所にしていた家に
そうした準備を整えて、あなたたちは村を発つ。
あなたの目的は東部地方の見分なのだ。
この村1つに留まるつもりはない。
さあ、いざ往かん! 新たなる村! 新たなる土地へ!
そして見つけようではないか、新たなる未知を!
「一応は療養中なのだから自重しろ、我が鼓動……」
「ご主人様、体が万全じゃないなら旅はやめた方がいいと思います」
「魂の傷と言うのは分かりかねますが、無理は禁物ですよ!」
そう意気込んだところで、あなたは自重を求められた。
言われてみるとぐうの音も出ないほどの正論ではあるのだが。
しかし、そうなるとこの大陸での活動自体を自重しろと言うことになる。
この開拓村で診療所を続けるのはもう飽きたし。
「飽きたんじゃないでしょ。手っ取り早く食えそうなのを食べ尽くしただけでしょ」
そう言えなくもない。
あなたはレインの指摘に目を逸らして答えた。
ほんの2週間ほどであるが、そのようになった。
「帰ろう。帰ればまた来られる。無理をしていいことは何もないぞ」
レウナにまで促され、あなたはそうするかと頷いた。
しかし、ボルボレスアスをガッツリ旅行するつもりで来たのだが……。
何の山場もなく終わってしまった気がする。
「旅行なぞそんなものだろうが」
「と言うかボルボレスアスの東部まで大陸を横断するレベルの旅行をしたのを、あっさりと流さないで頂戴……」
言われてみればそうかもしれない。
レインの言うことにも一理ある。
たしかに大陸横断旅行はなかなかの大事ではある。
たとえそれが船を使った船旅であっても、移動距離はただ事ではないし。
「ほら、そう言うわけだから、帰るわよ」
「ボルボレスアスの旅行自体はいつでもできる。油断大敵、無理は禁物だ」
「と言うか、我が鼓動よ。いくらなんでも留守にし過ぎると、領地が荒れるぞ」
イミテルの指摘にあなたは渋い顔をする。
分かってはいたが、現実逃避していたかった。
あなたはアノール子爵領の統治をやりたくなかった。
だって、めんどうなんだもん。
屋敷の管理はポーリンがしてくれはするが。
領地の管理まではやってくれない。そんな技術を持っていないからだ。
代官を雇い入れるにしても、あなたには伝手なんてないし。
そうなると、あなたがやるしかないのだ。
あなた自身、領主の技術なんて持っていないのに……。
あなたはドでかい溜息を吐いて、この大陸の旅行をやめることを宣言した。
あなたはまだ続けたかったが、しょうがない。
実際、続けていられない状況になったのはたしかなのだし。
そんなわけで。
あなたはボルボレスアスから現大陸……リリコーシャへと引き返して来た。
行きは大変でも、帰りは『引き上げ』の魔法でびゅーんひょい。
便利で速いのは確かだが、やや風情に欠けるような気はする。
まぁ、そんなことは気にせず効率を追求するのもまた一興……。
「あら、ミストレス。御帰りですか?」
あなたが下賜された領地、アノール子爵領。
その領主屋敷に直接転移したところ、偶然にも目の前にポーリンがいた。
あいかわらずレインによく似た美女っぷりにあなたは辛抱がたまらない。
そんな彼女に、ちょっと旅行に支障が出たので帰って来たと答えた。
「そうでしたか。領地に関しては……」
今聞きたくないのでパス……あなたはそのようにげんなりと答えた。
領地の報告を受け取らなくてはいけないのは分かっている。
分かっている……分かってはいる! 分かってはいるが……分かりたくないのだ!
そう言うわけなので、旅行の疲れが癒えたら受け取る。今はパス!
「力強くダメっぷりを宣言してるんじゃないわよ……」
「レイン、あなたちゃんと旅行中はお酒を自重していたのでしょうね?」
「でもまぁ、たしかに旅行中は少しくらい羽目を外すし、その余韻を愉しみたいわよね! うん、ちょっとくらいパスするのはセーフのはず!」
「レイン」
「ボルボレスアスのお酒は初見で加減が分からなくてちょっと飲み過ぎることもあったと言えばあったかもしれないけれどそれは意図的に泥酔するまで痛飲したわけではなくあくまでも初見のものに対する対処の度合いを見誤ったのが原因で未必の故意ですらないようなささやかな失態よお許しくださいお母様……!」
レインの素早く力強い、そしてみっともない弁解だ。
あなたは仕方ないのでレインの助力をしてやることにした。
船の上では控えることを勧めたらやめていたし、十分自重していたとポーリンに伝える。
「ですが、他の場所では飲んでいたのでしょう?」
だが、正体をなくすほどは飲んでいなかった。問題ない。
ちゃんと最低限の自制は出来ていたと言えるだろう。
「そうですか……ミストレスがそう言うのであれば……」
ポーリンからは納得してもらえたようだ。
あなたはレインからの感謝の視線を受けてウインクをする。
後ほど、ベッドの中でお礼をしてもらうことにしよう。
「ああ、それから、ミストレス」
まだあなたに報告があるらしい。
あなたはポーリンになんだろうと促した。
「ミストレスの御家族を名乗る方がいらしていますが」
あなたは心胆を寒からしめるような情報にヒュッと息が詰まった。
あなたの家族はそれなりの数がいる。
両親、妹、そして最愛のペット。
それから自宅の小城に住む者たちも家族と言えるだろう。
それらのいずれか誰であっても、この状況を見たら苦言を呈すだろう。
あなたの父はなんだかんだ自分も女癖が悪い方だったので苦笑するに留めてくれるが。
あなたの母は娘の性根を叩き直すためにボコってくるし。
あなたの最愛のペットは浮気を咎めるためにボコってくるし。
あなたの妹も浮気についてそれはそれは言葉を尽くして咎めて来るだろう。
いずれにせよ、あんまりおもしろい展開にはならない。
そのため、あなたは深呼吸をして、その家族を名乗る何者かが騙りであることを祈った。
名を挙げた冒険者の家族を名乗って詐欺を働く者など珍しくない。
そうした詐欺師なら適当にバラして捨てるか、あるいは食ってから捨てるかで済む。
あなたは覚悟を決めて、ポーリンに続柄は何と述べていたかを尋ねた。
「娘だとおっしゃっていましたが」
娘……?
「娘!?」
「あなた子供産んでたの!? あ、いや、エルグランドなら女でも女を孕ませられるんだったわね……」
「我が鼓動の娘だと……!?」
仲間たちも驚いているが、あなたも驚いている。
実際のところ、エルグランドにはあなたの血を引いた子供もいる。
しかし、ここまで尋ねて来るようなバイタリティある子はいないはずだ。
「お連れしますか?」
では、そうしてもらおう……と思ったところで、あなたはこちらに近づいて来る気配を察知した。
そちらへと目をやって、あなたは娘を名乗る人物の正体を理解した。
「こんにちは、お母様」
その少女は黒い水兵服に、黒いベレー帽を被っていた。
年のころは、10代の半ばから、20代の手前くらい。
腰あたりまで伸びた長い黒髪。その下から覗く瞳の色は、あなたと同じ赤。
肩にスリングベルトで吊っているのは、エルグランドで用いられる銃器、機関銃だ。
その少女のことをあなたは知っている。
会ったのはほんの1度切りだが、女の個人情報をあなたが忘れることはありえない。
カル=ロス・ケヒ。あなたの娘を名乗る人物であり、そしてそれはおそらく事実だ。
ただし、現在のあなたから見て、十数年は未来の話だが……。
さておいて、あなたはカル=ロスに久し振りだねと返事を返した。
元よりずいぶんと時間のズレた存在なので、本当に久しぶりなのかは不明だが……。
「久し振りなのですか?」
あなたの返事にカル=ロスはそんな疑問を返して来た。
あなたはちょっと考えて、2~3カ月ぶりくらいだと返した。
「そうでしたか。ところでお母様、友人を紹介したいのですが、よろしいですか?」
あなたはもちろんと頷いた。
友人と言うのは、以前に会った時にもいたアキサメと言う子だろうか?
そう思ったのも束の間、カル=ロスの来た方向からぞろぞろと現れる人影。
「…………あなたすごいわね。どうやって、こう、どうやって産んだの……?」
「腹が裂けてしまうぞ!」
「えええええ……エルグランドの人間って……」
それは全員が全員、カル=ロスと同じ姿をした少女だった。
黒い水兵服に黒いベレー帽、そして腰元まで伸びた黒髪。
肩に吊っている銃もまったく同じものであるのが分かる。
その数、なんと11人。カル=ロスを合わせて12人に及ぶ。
あなたは仲間たちに違うと反論した。
12人姉妹に見えるが、ちゃんと見れば違う。
全員それなりに顔立ちや体格は異なっている。
化粧と服装、立ち居振る舞いの統一で似せているだけだ。
「さすがはお母様ですね。女の鑑別眼にかけては右に出る者がいません」
パチパチとカル=ロスが拍手をしてくれた。
「紹介しましょう。まず、以前にも会った、
一番右端に立っている少女があなたに手を振ってくれた。
あなたも手を振り返す。
「そして順に、
一気に言われてもなかなか覚えられないが、あなたは気合で覚えた。
みんな似たような姿形をしているが、それでも気合で覚えた。
よくよく探れば、なんとなくでも違うところがあることが分かる。
例えばヒフミと言う子は武僧の心得があるらしく氣の扱いができることが分かる。
アキラと言う子はサイコパワーの発露を感じるのでサイキックなのだろう。
アストゥムと言う子は強力な死のエッセンスを感じるので、なにかしらの異常存在と関りがある。
そのように、各々に存在する隠しきれない特徴と名前を気合で結び付けて覚える。
あなたは女と言う存在を認識し、理解することに懸けては誰にも負けない。
「われわれ12名、アルバトロスチームは依頼により指定期限までのあなたの警護任務を受託いたします」
そうカル=ロスが言い、親指と小指を除いた3本の指をそろえて敬礼をした。
あなたはその敬礼に対し、最上位礼を取って返しつつも首を傾げた。
あなたの警護任務とはどういうことだろうか? 誰が依頼したのだろう?
「ご本人です」
すると、未来のあなたが依頼をしたということだろう。
後遺症のことを覚えていて依頼を出したのだろうか?
あるいは単に、現在のあなたの未来なので、カル=ロスたちが来たことを覚えていたか……。
あなたはなぜわざわざそんな依頼を? とカル=ロスに尋ねた。
「その辺りは私たちには分かりかねます。われわれは依頼を受け、それをこなす。それだけのことですので」
まぁ、冒険者ならそれもそうか。
未来の自分の思惑は分からないが、なにかしら意味のあることなのだろう。
「さて、それに伴いまして、こちらの屋敷の滞在、また特定の機材類の設置などの許可を願いたいのですが、よろしいでしょうか?」
あなたは好きなようにしてくれと答えた。
そして、指定期限までの期間はどれほどかと尋ねた。
「そちらも分かりかねます」
なんだか随分とふわっとした話だ。
まぁ、屋敷に華が増えるのはいいことだ。
あなたはカル=ロスたちの来訪を歓迎した。
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