領主の仕事は政治だ。
そして、政治とは簡単には芽吹かぬもの。
1年後、10年後、100年後に実を結ぶものもある。
それが政治であり、領主の仕事と言うもの。
そして、その感覚だけで生きてるとドジこくのが現実である。
「まぁ、当たり前ですよね。農民は明日の命も知れないわけですから」
フィリアがそのように頷いた。
そう、領主の仕事は未来を育てる仕事である。
しかして、同時に民草を統べるのも仕事なのだ。
そして民たちは1年後はともかく10年後、100年後なんて考えていられない。
長期的視野を持てない。いや、持つ必要がないと言うべきか。
そんな民に、10年後に必要なことだと言って理解してもらえるわけもない。
そんな民の目線で物を考えれなければ、民の支持など得られない。
民に長期的視野を持て! などと叫んだところで意味がない。
毎日生きるのに精いっぱいなのだから、出来っこないのだ。
近視眼的な物の視方は批判されがちではあるが。
巨視的な物の視方も批判されてしかるべきと言うわけだ。
「その辺りの感覚はしっかりしているようで安心しました……」
ほっと一安心と言った調子のフィリア。
あなたはきわめて裕福な家庭で生まれ育ったが、一応は庶民の出だ。
そのあたりの一般的な民の視点は多少なり持っているつもりだ。
なんなら冒険者として駆け出しだった頃にもっとひどい視点も得た。
食うや食わずで必死で毎日生き延び、空っぽの財布に涙し、ひもじさに耐え兼ねて靴を齧った日……。
「靴!?」
フィリアが驚いているが、靴は食える。
さすがに木靴は食えないが、革靴ならまぁ。
なめし方によって処理の程度が違ってくるが……。
一般的な、植物の渋を使ったなめしだと何回も茹でこぼす必要がある。
「ええ……そんなの食べて大丈夫なんですか……?」
まぁ、少なくとも死にはしない。そう、死にはしない。
飢え死に寸前でもなければ2度と食べないとは思った。
あと絶食状態でいきなり靴1足分食べたせいか。
あるいは単純に渋が残っていたせいかは不明だが。
物凄い腹痛に悩まされたのが悪影響だろうか。
「お姉様も苦労されて来たんですね……私はそこまで飢えた経験はないですから……」
フィリアはそう裕福ではない生い立ちだ。
と言うより、清貧を旨とする修道院の出だ。
その生活は質素で倹約を重ねたものだったろう。
しかし、飢えに苦しむほど貧しいわけでもなかったらしい。
少なくともEBTG随一の恵体になれる程度には満たされていた。
そう言う影響もあり、フィリアの生活感覚は割と独特なものがある。
フィリア自身は孤児であるが、幼少期に魔法に目覚め修道院に入った。
やはり、修道院と言うのは俗世から切り離された空間だ。
一般人とは感覚もなにもかもが違っている。
「お金と言うものに対する感覚も、普通とはだいぶ違ったと思います。冒険用具は、値段が明示されてるので分かり易かったんですが……技術料とか、材料費とか、難しかったです……」
そんなフィリアの手による、ザイン神の教会建立計画はひどかった。
すべての工事が完全に滞りなく進み、すべてが計画通り。
すべての職人が常に100%の実力を発揮する。そんな前提の計画だった。
あと給料も計画通りの予算案だった。
もちろんそんな計画がうまく行くわけもない。
野外で建築するのだから天候の影響だって受けるし、季節の影響もある。
職人だって傷病で動けないタイミングがあり、他の仕事だってある。
その辺りの余裕も盛り込んだ計画案を建てさせなくてはいけなかった。
少なくとも、職人100人を100日働かせたら、銀貨100枚を100日と言う計算はまずい。
ちゃんと大工の親方らから工賃の見積もりを出させないと話にならない。
「うう、お恥ずかしいです……ひどいものをお見せしました……」
そんな感じで幾度も計画案を修正し、ブラッシュアップを重ね。
最初はまさにド素人の雑な見積もりだったわけだが。
いろんな人間の意見を聞いたり、勉強したりで、今はいい計画案になった。
そうして案が通り、ザイン神の教会建立がはじまったわけだが。
その時になって、ようやくフィリアはあなたの行動に目が行った。
要するに、領主として圧政を敷いていないかが気になったらしい。
もちろんあなたは領主として善政を敷いていくつもりだ。
その、まぁ、初夜権の行使とか、領民の女のコとか……。
そう言うアレソレに関しては、ちょっと褒められた感じではないかもだが。
それ以外は、できる限り頑張るので勘弁してほしい。
しかして問題は、地獄への道は善意で舗装されていることだ。
あなたがよかれと思ってやったことで領民が死ぬことだってある。
それは庶民感覚とのズレが招く惨事であり、あなたの見識が試される。
だからこそフィリアはあなたの見識を確かめに来たということらしい。
まぁ、もちろん問題はなかったわけだ。
フィリアも安心して自分の提案、ザイン神の教会の建立について専心できるだろう。
「子供に物事を教えるって難しいわ……」
あなたの前ではレインがどでかい溜息を吐いている。
そして、あなたが供した紅茶を一口飲んで、また溜息。
『ポケット』からビンを取り出し、その中身をどぷりと注いだ。酒だった。
「すでに最低限文字の読み書きができて、その上で賢い子供を選抜して魔法を教えてるけど、なかなか……」
孤児と言っても、その元来の素性は様々だ。
気付いたら孤児だった者も居れば、親が死んでそうなった者。
親に捨てられた者、どこからか流れ着いて来てしまった者。
誰かの所有物だったが主人の死で宙ぶらりんになった奴隷。
そんな様々な孤児の中には、読み書きの技能を持つ者も居た。
上の上の筆記能力を持つサシャ並の者はさすがにいないが。
それこそ新聞をすらりと読み下せる程度の読み技能があったり。
口語会話を書き起こせる程度の筆記能力を持つ者がいたり。
そうした技能を持つ者を選抜し、レインが魔法を教えているのだ。
これによって魔法使いを養成しようというわけだが……。
まぁ、最初からうまくいくなんてうまい話があるわけもなく。
「まず、椅子に座って講義をちゃんと受けるところからはじめなきゃいけなくて……私の家庭教師ってどうやってたのかしら……」
遠い目をするレイン。
たしかに、子供と言うのは落ち着きがないものだ。
年齢にもよるが、椅子に座って授業を受けられればそれで上等だ。
ちゃんと授業内容を書き記しておくなんてできる者はまずいない。
「ちなみにあなたはどうだった?」
あなたの場合、読み書きは両親に教わった。
家庭教師、と言うような存在は雇われていなかった。
ただ、あなたの父のペット、つまりは仲間だが。
それらも同居していたので、彼女らに勉強を教えられた覚えはある。
しかし、あなたはいつでも大喜びで授業を受けていた。
女であるならそれだけで大満足のあなただ。
それがマンツーマンで授業をしてくれるなんて喜ばないわけがない。
特に、当時のあなたはまだ幼くピュアだった。
性欲にまどわされることがなかったので、授業にもかなり集中できていた。
「なるほど……まず、集中できる環境を作るところからね……」
あなたならばレインが授業をしてくれるだけで大興奮だ。
しかし、子供たちに女の色香が通用するかと言うと微妙だ。
「そもそも使わないわよ……色香を振りまく相手なんて、あなたくらいしかいないもの」
なるほど、嬉しい。あなたはニヨニヨと笑った。
しかし、子供たちを集中させる方法……。
やはり、物で釣るのが一番手っ取り早くはあるのだが。
そうすると、物がないと努力しないようになってしまう。
ここはひとつ、競争原理を働かせるのもアリだろうか。
なんの報酬もなくとも、1位と言う響きを欲しがるものもいる。
まぁ、ただ、元来の技術の差のせいで1位が固定されるような事態になると。
努力しても勝てないと諦める者も出て来てしまうが……。
「うーん、なるほど……まず、やる気を出させるところから……やる気を出させるところから……やる気……」
レインが頭を抱え出してしまった。
あなたもそこらへんはなんとも言えない。
あなたもレインもサシャもフィリアも。
やる気と言うものは基本的に常に持っている側の人間だ。
冒険と言う大目標のために、小目標を達成していく気概がある。
孤児たちにはそんなものがないのだ。
今日の食べ物、今日の寝床、その2つしか興味がない。
そして、救児院に居ればそれはひとまず満たされる。
追い出されない程度に適当に乗り切ろうとする者の方が多いのだ。
読み書きが出来るようになる必要も。
魔法が使えるようになる必要も。
今の待遇がよりよくなる必要も。
自分には必要ないと思っている者も、居るのだ。
待遇がよりよくなるという報酬があるのは分かっていても。
今日の食べ物と、今日の寝床、その2つがあれば十分だと。
「現状に満足した者を動かす方法なんてわからないわよ……」
あなたも正直そこらへんは分からない。
まぁ、いろいろと方法とかはあるだろう。
『アルバトロス』チームは学校教育を複数乗り越えていると聞く。
彼女らにそのあたりの話を聞いてみてもいいかも。
「へぇ、高度な教育を受けてるのね……ちょっと聞きに行って来るわ」
酒と紅茶が1:1の混合液を飲み干し、レインが部屋を出ていく。
悩みは尽きないようだが、ひとまず動く気概はまだあるらしい。
ひとまず、期待して見ていることにしよう。
仕事をこなしながら冒険について想いを馳せていると、クロモリがやって来た。
「あなた様、子供たちの訓練についての報告ですが……」
あなたは聞こうとクロモリに続きを促した。
「はい。まず、最低限の運動能力の獲得と言うラインは到達したとのことです……こちらは『アルバトロス』チームからの報告です」
あなたはよくやってくれたと頷いて労った。
まだまだはじまったばかりで、小さな小さな一歩だが……。
それはきっと、救児院と言う組織にとっては大きな一歩となった。
最低限の運動能力の獲得と言うのは、本当に最低限だ。
衰弱状態だった子供たちがいなくなり、全員が訓練を全うできるようになった。
つまり、これからメキメキと能力が伸びていく段階に入ったということだ。
「次に、手先の器用なもの、目端の効く者などに医術を仕込んでおりますが、あまりうまくは……」
クロモリが溜息を吐く。あなたは仕方ないと頷いた。
回復魔法と言うのは神よりの授かり物である。
使い手は増やそうと思っても増やせないのだ。
ならば、軍隊に必要なのは回復魔法の使い手ではない。
薬師としての技能と、医師の技術を持つ者である。
これならば教育によって増やすことが可能だからだ。
しかし、これは魔法使いの教育と同じく座学が中心となる。
そう易々とうまく行かないことは分かり切っている。
まだまだこれからだ。気長に進めて行って欲しい。
止血。この1点を重点的に会得させていけば十分役立つ。
兵士たちの救命には何よりもまず止血だろうから。
「はい、かしこまりました。それから、あの、お願いがあるのですが……」
あなたはなんとなくクロモリの要求を察した。
察したが、まぁ違うかもだし……と思って要求を言ってみるよう促した。
「はい……その、今日も、いただいても……?」
あなたは溜息を吐いて、しょうがないな、と答えた。
それにクロモリがパッと顔を明るくした。
そんなクロモリがあなたの傍に跪き、うやうやしく両手を皿のように揃えて差し出して来た。
その上にあなたは自分の腕を持っていく。
そして、ナイフであなたは自分の腕、その血管を抉った。
血がどくどくと勢いよく溢れ出して来る。
「ああ……きれい……」
流れ出す血をクロモリが陶然とした面持ちで見ている。
クロモリの手の中に満たされていく血。
それがいっぱいに溜まったところで、クロモリがそれをコクリコクリと飲み下していく。
クロモリには血液愛好症と言う特殊性癖があった。
血を見ると性的に興奮し、飲むのも飲まれるのも好き。
マゾやってるのも、自分の流血が好きだからなのかも。
やがて、あなたの血を飲み干しクロモリが自分の手を見下ろす。
あなたの流した血でべっとりと汚れた手。
それを愛おし気にクロモリが見つめ、それを舐める。
あなたは血液に興奮するような趣味はない。
だが、あなたの血液を欲する者に血を提供する寛大さはある。
なにより、それで性的に興奮しているなら出さない理由がない。
あなたの裸体に興奮するのと何ら変わりないからだ。
「あなた様の血が……生命が……私の中に満たされて行きます……私の中で、なにかが芽生えて来るような……ああ……」
恍惚の表情で笑うクロモリ。
そんなクロモリに、次は自分の番だねとあなたは笑った。
「はい……あなた様……どうぞ……」
胸元をはだけ、体格の割に大きな胸を差し出して来るクロモリ。
これこれ、おっぱいとはこういうもの……あなたは喜んでクロモリの胸を揉みしだいた。
「んっ……ふっ……ん……ぅん……んっ……!」
あなたのテクニカルな揉み方に甘い声を漏らすクロモリ。
嬌声を押し殺そうとする姿のエロいことエロいこと……。
今日はそろそろ仕事を終わりにして休もうと思っていたところだ。
クロモリは今日これからの予定は……。
「はい……万事、滞りないよう、終わらせてまいりました……」
なるほど、クロモリも準備は万端と言うわけだ。
では、これからどうするか、分かるね?
「はい……お部屋にまいりましょう、あなた様」
大変結構。
あなたはクロモリの腰に手を回すと寝室へと向かった……。
血を飲ませるだけでエロいことを素直にさせてくれるのだ。
こんなの飲ませる意外にないではないか!
なんせ、喪うのは血液だけだ。そんなものすぐ治る。
血液は生命力とほぼイコールの存在なので。
失血量によってはごっそりと生命力が削れるが……。
それもやはり、回復魔法で回復するので問題ない。
その程度のものでエロいことさせてくれるなら安過ぎる取引だ。
まったく、滾ってたまらない。
今夜は眠れないな!
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