あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あなたはカル=ロスを筆頭とした『アルバトロス』チーム。

 そして、同行して来たクロモリとそれはそれは愉しんだ。

 待機時間だからしょうがない。迂闊に外出できないのだから。

 

「お母様のガキの言い訳同然の自己弁護は見てて笑えます」

 

「自分すら騙せない詭弁(きべん)ですけど、自分を騙そうとも思っていない開き直り方が凄いですよね」

 

「この人、これで既婚者なんですよね? よく結婚生活送れてましたね?」

 

「浮気はしまくりますが、誠実ではありましたからね」

 

 さんざんな言われようだが、甘んじて受け入れよう。

 世間一般の一夫一妻のそれとはまったく異なるそれである自覚はある。

 

「まぁ、お母様のことはさておきまして。私たちは魂の姉妹でありつつ、穴姉妹になったわけですが……」

 

「嫌だなぁ、その姉妹」

 

「穴兄弟ならともかく、穴姉妹て」

 

「お母様は個々人に合わせて使う道具を変えて来るので、棒姉妹になっていない可能性が高いですからね」

 

「ええ……」

 

 さすがは娘と言うべきか、カル=ロスはあなたのことがよく分かっているようだ。

 そう、体格や筋肉の発達度合い、また年齢などの条件で使う道具は変わってくる。

 カル=ロスたちは体格と年齢は似ているが、身体操作技術にやや差がある。

 

 アキサメはやや太めでも平気だった。

 アストゥムは細めでないとダメだった。

 カル=ロスは太いのもいける欲張りさんだった。

 アキラは指しか入らなかった。

 

「ちょっとやめないか」

 

「き、聞きたくねぇ~……!」

 

「晶は……清純派ですか?」

 

 カル=ロスの疑問にあなたは頷く。

 あなたの肌感では、おそらくアキラは自慰行為の経験すらない。

 そう口にしたところで、アキラがあなたの口を物理的に塞いできた。

 

「そんなことは言わんでいいのです!」

 

 そりゃすまんかった。

 でも、既に口にしてしまった。

 

「清純派ですね」

 

「しかし、サイコダイブによってお母様の経験を追体験しているはず」

 

「自分の肉体での自慰行為の経験はゼロでも……」

 

「私たちの追体験で百戦錬磨の自慰行為経験が……!?」

 

「よーし、死ぬか!」

 

「落ち着いてください」

 

 そんなつもりじゃなかったのだが。

 なんだか悪いことをしてしまった。

 と言うか、経験と言う意味では他の面々もそう変わらないのに。

 つまり、カル=ロス以外は経験がなさそうだった。

 以前、カル=ロスからもらった手紙では経験があるとのことだったが……。

 

「追体験はしてるので、実質経験あるものだとカウントしてたんですが」

 

 その理屈で行くと12人全員経験あることになるのでは……?

 

「でも、お母様のやることなんとなく分かってた感じだったでしょう」

 

 たしかに、あなたと共寝をした経験があるような感じではあった。

 そう言う意味では、たしかになるほど?

 経験があると言えなくもないか。

 あの追体験は体感すら伴うものだ。

 経験にカウントしてもいいのかも。

 

「カル=ロスの追体験のせいで、自動的に調教されたようなものだったのが困りものなんですよね」

 

「カル=ロスのお母さんを見てると、自動で体が準備万端になってしまうのですが!」

 

「抗えない……! カル=ロスのお母さんに、授乳されたくなってくる……!」

 

「えっ、それは……」

 

「晶……私とアストゥムは特にそう言うことはないです……」

 

「えっ?」

 

「秋雨の言う通りです。それは……晶にそう言う趣味があるというだけでは……」

 

「えっ、えっ……?」

 

「ようこそ、晶! 歓迎しよう! 盛大にな! うちに来てお母様のおっぱいを吸っていいぞ!」

 

「ち、違う! 私は、私はそんな、そんな変態趣味を持ってたわけじゃ……!」

 

 気付かぬうちにアキラの特殊性癖を発掘していたらしい。

 あなたはアキラを優しく抱き締める。

 

「はうっ。な、なんのつもりですか……?」

 

 そして、あなたはアキラの耳元で囁く。

 アキラがして欲しいなら、いつでもしてあげるよ、と。

 

「やめろぉぉぉおお――――! 脳が破壊されるぅぅぅう――――!」

 

「ああっ、晶が自分の特殊性癖を肯定できずに自我崩壊を!」

 

「落ち着きなさい晶! あなた元から育ての父をママと呼んで甘えてたでしょう!」

 

「言っちゃなんですが業の深さではあなたが一番酷いですよ!」

 

「うおおおおおおお!」

 

 暴れるアキラ。元気いっぱいだ。

 あなたと『アルバトロス』チームは楽しくやっていた。

 まぁ、ちょっとアキラの自我が崩壊しかけたが。

 最終的に問題はなかったので、元気でやっているのは確かだ。

 

 

 

 数日ほどして、ティーがやって来た。

 以前に言っていた通り、連絡役だろう人物を連れて。

 前回来ていた、独特の甘ったるい香りを漂わせていたジャンゴではない。

 レインよりも明るい翠髪をクラウンブレイドに纏めた美少女だった。

 

「連れて来たよ。こいつはテト。異常者だ」

 

「ひどない? ぼくは異常者じゃないが?」

 

「あのね、異常者は「ぼくちん異常者でちゅぅううう!」なんて言わねーんだよ。そんなこと言うのは異常者ごっこして頭おかしいって言われて喜ぶ凡人くらいだ」

 

「はーん……?」

 

 なにやらいまいち納得していない様子の少女。

 ティーとは異なり、種族はおそらく人間だろう。

 ハイランダーのように人間と一切変わらない外見の異種族かもしれないが……。

 

「ま、いいや。ぼくはテト。テトラヒメナ・アークス。よろしく」

 

 差し出された手を握り、あなたは握手をする。

 そして、あなたは何の気なしに可愛い子とは特に仲良くしたいよ、と軽口をたたいた。

 

「おお! わかってるじゃないか! そう、ぼくは可愛いんだよ! 世界一可愛いだろ?」

 

 えっ、あ、うん。

 あなたは勢いに圧されて思わずうなずく。

 

「ぼくが世界一可愛いって自明の理を分かってくれる人は少なくて困るよ。まったく、どいつもこいつもなにも分かっちゃいないんだ。ぼくは可愛い。神聖なる真実だろ?」

 

「……と、まぁ、このような異常者なので、適当に相手してやってくれ」

 

 あなたは深く頷いた。

 たしかにこれは……相当な異常者だ……。

 なにが異常者って、本気で言っているのが分かるのだ。

 この少女、冗談抜きで自分が世界で一番可愛いと思い込んでいる。

 

 あなたはとりあえず、すごく可愛いことは肯定した。

 実際、100人いれば100人が美少女と太鼓判を押すだろう。

 それほどまでに美しい少女なことは確かだ。

 世界一かはともかく、可愛いことは間違いない。

 

「えっと……私たちも言った方がいいですか。世界一可愛いですよ」

 

「超かわいいですよ、テトラヒメナさん、こっち向いて!」

 

「ファンサしてくださーい」

 

「お美しやテトラヒメナ上……」

 

 『アルバトロス』チームもややおざなりな調子で可愛いことを認めた。

 が、それに対しテトラヒメナが首を振った。

 

「美しいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、生憎ぼくは世界一可愛いけれど、世界一美しくはないんだよね……まぁ、可愛くて美しいからね、美しいって言うこと自体は否定しないけどさ。やっぱり、世界一可愛いよって言ってもらえるかな?」

 

「あっはい……」

 

 誉め言葉にまで注文をつけてくるとは、なかなかの異常者っぷり……。

 こんなのでいっぱいなのだろうか、トラッパーズとやらは。

 あなたはこれが最大の特殊例だと言ってくれとティーに問いかけた。

 

「あー……テトはぁ……マシな方……かな?」

 

 これで!?

 

「自己愛の権化なだけだからね。人に迷惑はかけないし、攻撃したりしないし、禁止薬物乱用したりしないから」

 

 たしかにそうかもだが。これが、マシな方……。

 なんだかトラッパーズに合流したくなくなってきた。

 

「とりあえず、比較的まともなやつ教えとくから、コンタクトはそいつらを介するようにしときなよ」

 

 あなたは頷いた。

 エロいことに誘う分にはどういう性格でもいいが。

 冒険者としての仕事をする分には、まともな相手であって欲しい……。

 

「だよねぇ……」

 

 ティーが深々と溜息を吐いた。

 あなたも溜息を吐きたい気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

「へー、新しい迷宮の探索をね。いいねぇ」

 

 あなたたちの要望を聞いて、テトラヒメナはそのように頷いた。

 特に忌避はないような顔だった。

 

「新しい迷宮を探す分には掣肘(せいちゅう)する理由も筋合いも無いからね。ぼくはいいと思うよ」

 

「しばらく離れてるから分かんないんだけど、本隊的にはどういう方針で進んでんの?」

 

「どうって言われても。そもそもぼくたちは趣味で迷宮攻略してるような集団だし……」

 

「それはそうなんだけど」

 

「あくまで趣味だから、一緒にやりたいって言われたら、邪魔されない限りは拒否んないし。譲って欲しいって言われたら理由次第じゃ普通に譲るし」

 

「ああ、そう言う、ダル緩い感じなんだ、今……」

 

「うん。だから、この子たちが一緒にやりたいって言うなら全然オッケーだし。やり方教えて欲しいって言うなら教えるし。そもそも、特別な探し方してるわけじゃないし」

 

「まぁ、私には分かんないから、任せるよ」

 

「あいあい。んじゃ、さっそくいこっか?」

 

 言って、テトラヒメナが不思議な石を取り出す。

 そして、それをなぜかティーへと渡した。

 

「テレポさんおねがいします」

 

「あいよ。えーと? カルモシアナ平原か。サークル発動するぞー」

 

 言いながら、ティーが呪文回路の形成を始めた。

 種別は召喚術……転移魔法の類だと思われた。

 非常に複雑細緻なもので、かなり高位の呪文と思われる。

 

「『リコール・テレポート・サークル』。転移魔法の媒体を召喚する魔法だよ。コレでぼくたちの仮拠点に飛ぶよ」

 

 聞いたこともない魔法だった。

 作用、性能次第では覚えてみたいところだった。

 ティーが使うところを見るに、転送専用だろうか?

 

「そうだよ。まぁ、術者も飛べるけどね。さっきぼくが渡したレコードストーンに転移先座標が記録してあんの。未見の場所でもそれで跳べる」

 

 なるほど、便利だ。

 自分で使う分には『引き上げ』のマーキングでいいわけだが。

 あなたが記録して、レインに使わせる、と言うことができる。

 ぜひとも覚えてみたいが……レコードストーンはどう作るのだろう?

 

「レコードストーンも魔法で作るよ。そんなむずかしくない。まぁ、現地で誰かに教えてもらうといいよ」

 

 ようやく楽しみになって来た。

 叶うことなら、教えてくれる人が異常者でないといいのだが……。

 

「よし、発動いけるぞー。60秒しか保たないから、早く飛びなよ」

 

 ティーがそう宣言し、その足元に転移魔法の魔法陣が展開された。

 自分の体を転送させる感覚を受け入れ、あなたたちは転送先へと飛ぶ。

 なかなか面白い魔法だ。ぜひ覚えたい。

 火山の火口の上とか記録して友人を転送してみたい。

 

 

 

 あなたたちは転送された。

 時空間の揺らぎが収まっていく。

 湿気の混じった、濃い緑の香りが漂っている。

 どこか騒がしい、人の声、喧騒が聞こえる。

 

 時空間の揺らぎが完全に収まる。

 すると、そこが熱気林の中に作られたベースキャンプであることが分かった。

 先ほどまで昼だったはずが、周囲は暗く闇の帳が落ちている。

 

 広場の中央で煌々とかがり火が焚かれている。

 そこを取り囲むようにして、男女混合の集団が酒を酌み交わしていた。

 

「お、テトか。おかえり~」

 

「ただいま~」

 

「あれ、お客さん? 見ない顔だけど、だれ? どうした?」

 

 テトラヒメナに真っ先に気付いた女性がそう声をかけて来る。

 黒髪に黒目の人間に見える女性だ。

 

「ティーの紹介でぇ、説明すると長くなるんだけど……」

 

「じゃあ、立ち話もなんだし、しゃがめよ」

 

「座らせてよ」

 

「まいにちしゃがめよ、どこでもしゃがめよ、いつでもしゃがめよ」

 

「座らせてよ」

 

「しゃがめよ」

 

「頼むから座らせてよ」

 

 なぜか執拗にしゃがませようとしてくる女性。

 なるほど、なかなかエキセントリックだ。

 

「とりま、タイトに話通すよ」

 

「ん、そーしといて。あ、私はアクア。アクア・コンデンスね。よろしく」

 

 そう言ってウインクをしてくるアクア。

 さきほどティーに、まともなやつと教えられた者の1人だ。これで?

 顔を覚えておこうとしっかりとその顔を脳裏に刻み込む。

 そして、あなたはテトラヒメナに先導されて、奥まった部分で車座になっている集団の方へと向かう。

 

「おーす、タイト。ティーは元気そうだったよ。もちろん、ぼくは世界一可愛いしね」

 

「ああ、おつかれ。後ろの人は……お客さんか?」

 

「うん。紹介するよ、あの雑魚がタイト。ぼくたち『トラッパーズ』の頭目だよ」

 

 そう紹介されたのは、20そこそこくらいに見える青年だった。

 黒髪に黒目で、平坦な顔立ちだ。そして、何も目立った特徴がない。

 戦闘技能はほぼ無いように見えるし、なにか特別な能力があるようにも見えない。

 ただ、『トラッパーズ』が変人変態異常者の巣窟であることを思うと……。

 

 たぶん、彼だけが『トラッパーズ』を纏められるか。

 あるいは、異常者連中の行いをなんとか正当化できるか。

 どちらにせよ、調整型のリーダーなのだと思われた。

 

 変人集団のリーダーと言うのは物凄く苦労する。

 誰も代替出来ない、したくない立場である。

 それをやってのける彼は敏腕なのだろう。

 

「タイトだ。『トラッパーズ』のリーダーをやっている。見て察しているだろう。事務型のリーダーとして頭目をやっている」

 

 あなたの予想を見抜いてかタイトがそう自己紹介をして来た。

 あなたは差し出された手を握って握手をする。

 やはり、戦闘をする者の手ではなかった。

 

「用件はともあれだ。歓迎する。『トラッパーズ』前哨基地にようこそ。ここにいる全員が『トラッパーズ』だ」

 

 そう言って、タイトが示す所帯の数は、凄まじいものだった。

 広場に集っている人間、その近傍に林立する建築物の中にも気配がある。

 その数は優に100を下らず、200も軽々と超過している。

 

 冒険者と言うだけで、それなりに癖のある人間たちだ。

 それをこの規模で構成し、取り纏めている。

 戦闘技術はほぼ皆無でも、かなりの異能と言えるだろう。

 

 なるほど、なかなか面白い集団のようだ。

 あなたはこれからの冒険がちょっと楽しみになって来た。

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