クリーブは美しかった。本当に美しかった。
脱がしてもおおよそ美しかった。
そして、ほどほどに無体を働いた。
やはり、例に漏れず未経験だったらしいので。
「あーしの美しさ、存分に堪能してくれたかな? 過剰摂取しても、オーバードーズを起こしたりはしないから安心していいんだよ」
そしてクリーブは変わらず平常運転だった。おおよそ無敵だ。
はじめての行為に戸惑ったり、喜んだり、不安を感じたり。
そう言う要素は一切ない。ただただ自分の美しさに絶対の自信がある。
なにをどうしたらこんな破綻した人格を獲得するのやら。
「また、あたしの美しさに溺れたい時もあるでしょ? そう言う時は、特別にベッドの上であーしの美しさ、堪能させてあげるよ?」
そう言って、いたずらっぽく笑うクリーブ。
先ほどまで処女だったというのに、この小悪魔的仕草は……!?
クリーブの持つ自身の美しさへの絶対的な自負。
それがもたらす余裕と確信は、ある種の
なるほど、たしかにこれは溺れたいほどの美しさだ!
「まぁ? 君もあーしほどじゃないけど、美しいし可愛いし……あと、ちっちゃい子に好き放題されるの、ちょっと癖になりそうだし。あーしも楽しめたから、またやろーね」
あなたは頷いた。
こういう気楽に行為だけ楽しむ関係もいいものだ。
「このちっぱいに吸い付くのがさ~、結構楽しいんだよね」
あなたの胸元を這う熱く濡れた感触。
クリーブの赤い舌があなたの胸をなぞっている。
若返り、幼くなったことでその膨らみはほんのわずか。
クリーブの舌を柔らかく受け止めるばかりだ。
「ん~、ちゅ……おいし。味するわけじゃないけどさ~、おいしいよね……」
最後にあなたの敏感な先端をひと舐めして、クリーブの舌が離れる。
じんわりと沁みて来るような快感が名残惜しい。
「次も特別に、あーしの大きいおっぱいでたっくさん包んであげるからね~」
不意打ちでクリーブのド迫力の胸が襲ってきた。
あなたの頭がクリーブの乳房で包まれる。
蒸れたクリーブの香り、乳房の圧力、柔らかい天国がそこにあった。
溺れる! 溺れてしまう! いろんな意味で!
あなたはクリーブのものすごい
やはり、でっかいことはいいことだ! 大は小を兼ねる!
あなたは狂喜した。
クリーブが帰った後、あなたは軽く昼寝を楽しんだ。
ほんの30分ほどの睡眠でも、割と変わるものだ。
あなたはずいぶん爽快な気分で目覚め、部屋を出る。
すると、むっとするような機械油の臭いが鼻を突いた。
「おや、おはようございます、お母様」
カル=ロスら『アルバトロス』チームが武器の手入れをしている。
屋内でないとやり難い作業とは言え、なかなかしんどい。
商売道具の手入れを怠るよりはずっといいが、同居人としては……。
テーブルの上に大量のライフル弾が転がっている。
カル=ロスたちはそれを1発1発手に取って確かめているようだ。
そしてあるものはバケツに投げ入れ。
あるものは油を塗って箱に収め直している。
使えるものと使えないものの選別だろうか?
「商業地区の方に行ったら、在庫一掃クリアランスセールとか、頭痛が痛いみたいなこと言ってタダ同然で弾が叩き売られてたんですよ」
「サイズが一定じゃないのが謎ですが、640発入り缶が銀貨5枚とか、500発入りが銀貨3枚とかで安かったので」
「まぁ、お値段でお察しですが、サビ弾が結構ありまして。選別中です」
「いつもならナシな選択肢なんですが、供給が限られてる中でコレはありがたいです」
カル=ロスらの弾薬は、ニッポンから持ち込んでいるという。
大量に購入して来てはいても、やはり使えばなくなる。
そこに来て安く購入可能とあっては飛びつかずにいられなかったと。
「このサビ弾を選別してる時間で仕事して、その報酬でピカピカの弾買う方が賢いですからね……」
「でもここでは入手手段が限られますからね。しょうがないです」
「よっぽどサビだらけなのかと思いましたが、思ったよりは悪くないですね。1割あるかないかですか」
「まぁ、目に見えないサビが進行してる可能性もありますので、これは訓練弾として使う予定です」
カル=ロスたちもなかなか苦労しているらしい。
まぁ、頑張って欲しい。あなたでは手伝えないし。
教えてもらえばできるかもしれないが、そこまでして手伝いたくない。
さて、どうしたものか。せっかくの休みだ。楽しまねば。
今日明日は休みとのことなので、1日か2日、どこかで泊まってくることもできる。
もちろん、今日明日をこの前哨基地で女漁りに費やしてもよいが。
昨年あたりまではEBTGのメンバーの育成に気を尖らせていた。
なので、気楽な休みはずいぶんと久しいような気がする。
今までは休み過ぎないよう、訓練し過ぎないようにしていた。
降って湧いた休みに気楽に喜べるのは久しぶりだ。
少し考え、あなたはマフルージャに戻ることにした。
やはり、出産間もないブレウに会いに行きたい。
なにより、生まれたばかりのイロイにも会いたい。
ちゃんと苦労をねぎらって、育児にも参加しなくては。
乳母もいるが、やはり夜にミルクを求めて泣く赤子の世話は大変だ。
ただでさえ産後の疲れがあるのだから、その苦労を軽減してやらなくては。
あなたがそう言うわけでマフルージャに戻ると『アルバトロス』チームの面々に告げる。
「あー……さいしょはグー」
「じゃんけん」
『ほい』
4人が一斉に手を突き出す。なにをしているのだろう?
握った拳、人差し指と中指を突き出す手、そして手のひらを見せつけるように開いた手。
『あいこで』
『しょ』
引き分けだったのだろうか? 4人が1度手を引っ込め、再度手を繰り出す。
そして、1人……アキラが拳を突き出し、他の面々が人差し指と中指を突き出している。
「じゃ、私が行ってきます」
「おみやげよろしこ」
「うまいもので」
「仕事ですよ」
どうやら勝負がついたらしい。
どうも、手の形で相性が異なるものらしい。
拳だと、人差し指と中指に勝てるようだ。
すると、拳では手のひらに負けるのだろう。
逆に手のひらは人差し指と中指に負けると。
3すくみの形で勝負を決する手軽な遊戯だ。
その遊戯で1人だけ選抜して、あなたにつけるつもりらしい。
そう言えば『アルバトロス』チームはあなたの護衛だったか……。
「では、行きましょうか。クライアント」
その前に、クロモリはどうしたのだろう?
「クロモゥリ先生ですか。お部屋にいらっしゃると思いますが」
「ダクタァ・クロモゥリ、最近お忙しいみたいですよ」
「割とよく患者が来てますし。往診にもよく行ってます」
「部屋に籠って薬でも作ってるか……あるいは、疲れて寝てるか」
特に音はしないが、まだ寝てるのだろうか? もうすっかりお昼だが。
そう思いつつ部屋をノックすると、すぐにクロモリが出て来た。
「どうされましたか、あなた様」
そう言うクロモリからは、濃ゆい緑っぽい匂いがした。
緑っぽい匂いと言うのも珍妙な表現だが、それが一番しっくりくる。
要するに、生薬類を磨り潰したような濃ゆい匂いがする。
本職である……いや、薬師の前が冒険者なので、本職はそっちか?
ともあれ、薬師として薬作りをしていたらしい。
あなたは王都ベランサに戻る予定だが、一緒に行くかと尋ねた。
滞在は1日か2日泊まる程度。いずれにせよ3日後の早朝には戻る予定だ。
「ああ、ちょうどよかった。であればぜひ同行させてください。ちょうどハチミツがなくなりそうでして。他にも幾つか買いたい薬草があるのです」
薬師としての仕事がなかなか捗っているらしい。
『トラッパーズ』は割と気軽に医者にかかるのだろうか。
「ええ、かなりしょうもない理由で来る方もいますね。二日酔いに効く薬をくれとか、胃のむかつきとか……」
そのくらい我慢しろよ。あなたはそう思った。
二日酔いぐらい、水飲んで寝てれば治るだろうに。
気軽通り越してしょうもない理由で医者にかかり過ぎである。
まぁ、クロモリが儲かる分にはいいのか……。
「ですが、ジューンの移動商店で素晴らしい本を買えたのです! 『オールディズーズ・リカバリー』に『フィーバー・セオリー』と言った、種々の病態についての本で、処方薬についても記述があるのです!」
嬉しそうに言うクロモリの手には薄めの本がある。
クロモリが言った通りの題名に、なにやら複雑な図形が併記されている。
医学書となると割と貴重品なのだが、そんなものまで買えるとは。
題名からすると、総合医学書である『オールディズーズ・リカバリー』と。
熱病に対する専門書である『フィーバー・セオリー』か。
クロモリはどうやらこれに記述のある薬を処方しているらしい。
「『オールディズーズ・リカバリー』には二日酔いに効く薬の記述があり、『フィーバー・セオリー』には胃の調子を整える薬があり、とても勉強になるのです。今は処方を片っ端から試しております」
『トラッパーズ』で人体実験中らしい。
まぁ、勉強中の医者にはよくあることか。
「ですが、薄皮の種であるオレンジや、リコリスの根など独特の原料を使う婦人病の薬などもありまして。薬屋に行きたいと思っていたのです」
なるほど。では、準備をするように。
「はい! すぐに参ります!」
クロモリが薬を粉末にしていた器具を片付ける。
……見たことのない道具だが、これも買ったのだろうか。
中心の木の棒を差し込んだ円盤に、薬を入れるのだろう舟型の容器。
あれをゴリゴリと回しながら、容器の壁面にこすりつけるのだろうが……。
しかし、クロモリは石製のものを使っていたようだが。
青銅製や磁器製のものもあるようで、足元にいくつも並んでいる。
いったいなんだってあんなに種類があるのだろう……?
「お待たせしました!」
考えているとクロモリが戻って来た。
では、行くとしよう。
あなたが『引き上げ』の魔法でマフルージャ王国は王都ベランサに現れる。
あの熱気林のむっとする熱気とは違う、からりとした暑さがある。
冬場とは言え、昼間は十分に暖かく、動けば汗が噴き出て来る。
「あいかわらず、便利ですね……私も使えればいいのですが……」
クロモリが転移について羨ましそうに言うが、たぶん無理だろう。
いや、エルグランドの『引き上げ』なら教えられるが……。
クロモリは魔法は使えるとは言え、信仰魔法を少々使える程度。
加えてその魔力量は極めて少ない。
残念ながら『引き上げ』を使えば爆散するだろう。
ハーブでねっとりと魔力総量を底上げすれば何とかなるかもだが……?
「諦めた方がよさそうですね……」
それが無難だ。
「では、失礼ながら、私はこのまま失礼させていただきます」
薬屋の場所はわかるのだろうか?
「ええ、なじみのがいくつも。私はもともと、渇水病専門の医師ですので、王都に往診に来ることはとても多かったのです」
そう言えば、そんなことも言っていたか。
それならたしかになじみの薬屋はあるだろう。
しかし、なじみの薬屋はクロモリのことを分かってくれるのだろうか?
「まぁ、得意先と分かってもらえずとも、金を積めば薬は買えますので」
そんなものか。
ではと、あなたは足元にどっかんと木箱を置いた。
極めて頑丈な、オークの木で造られた木箱だ。
上辺が開いており、中には金貨が唸るほど詰め込まれている。
多少重いだろうが、これを持って行って薬の購入資金に使うといい。
「ええ!? しかし、こんなにたくさんのお金をいただく理由は……」
と、クロモリは戸惑うが、あなたはそれを笑い飛ばす。
薬師としての実力が上がるのはあなたとしても喜ばしいことだ。
それに、クロモリは欲がないのか、あなたにものをねだらない。
あなたの血が呑みたいとヴァンパイア染みたことを言うばかりだ。
そんなクロモリが薬を欲しているなら、その資金くらいは出してやるべきだ。
ペットの訓練費用は主人が出すのが当然なのだから。
なにより、ペットを甘やかして可愛がるのは主人の嗜みである。
「そう言うことでしたら……ありがたく、いただきたいと思います」
言いながら、クロモリが『ポケット』に木箱を放り込む。
魔法の心得があったので当然のこととして教えてある。
『ポケット』には金貨の重さがかからない特性がある。
かかる荷重は木箱の重みだけだろう。
まぁ、木箱だけでも十分重いのだが……。
「うぐっ……で、では、行ってまいります」
やっぱりちょっと重かったらしい。
ややしんどそうなクロモリが歩いていく。
まぁ、重たい荷物を持って鍛えるのはよくあること。
あなたも駆け出し冒険者だった頃もそう。
たくさんの荷物を持ったまま冒険して鍛えたものだ。
時折、階段から転げ落ちて大怪我したり。
下手するとそのまま死んだりするのもよくあった。
あなたはなんとなく懐かしい気持ちになって、しんどそうなクロモリを見送った……。
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