クロモリとひと悶着あったりもしたが、なんだかんだ和解した。
存分にイロイと触れ合ったり、ブレウと語らったり、ギールと飲んだり……。
そしてサシャの執筆中の冒険記を少しだけ試読させてもらった。
読み書きが上等過ぎるせいでうまくないのでは……。
と不安に思っていたが、その心配は杞憂だった。
文章は平易で分かりやすく、娯楽として面白くできていた。
小説家としても十分に大成できそうで安心した。
そして翌日。あなたはソーラスへと出向いていた。
特にこれと言って深い理由があるわけではないが。
サーン・ランドかソーラスかと考えたら、ソーラスだった。それだけだ。
もう1日、ベランサでイロイやサシャと戯れてもよかったが……。
せっかく2日あるんだから、存分に楽しみたい。
「ここがソーラスですか。テーマパークみたいでテンション上がりますね~」
「睦美には何が見えてるんですか?」
「
「見えんでいい」
そのまま直行しようと思ったのだが。
自宅ならともかく、町中では……とのことで。
仕方なく一度戻って『アルバトロス』チームの1セクションを連れて来た。
「まぁ、それはさておき。どちらに行かれるのですか?」
「やはり、ナンパですか……いつ出発されますか?」
「私も同行します」
「扶桑院」
なんぼなんでも4人も女の子連れてナンパは難しい。
なので、すでに堕とし済みで、なおかつ突然6人で尋ねても咎められないところ……。
まぁ、普通にカイラしかいないか。では、カイラの家に行こう。
「ヤンデレの家に平然と行こうとするところが凄いですよね」
「刺されない自信があるんでしょうか……」
「刺さらない自信じゃないかと思います」
「なるほど。クライアントって剣刺さんないらしいですもんね」
たしかに、あなたに剣は刺さらない。
刺さらないけど、痛くないとかそう言うことではない。
なので基本的には刺されたくはないのが本音である。
「刺さらないけど痛い……?」
「そりゃまぁ、模造刀で切りつけたら切れなくても痛いでしょうよ」
「鉄の棒で人の頭ガンガン叩いたら死にますしね」
「せめて木刀ですよね」
そう言う問題だろうか。
まぁ、ともあれ行き先はカイラの家だ。
ヤりたい気持ちも山々ではあるが。
普通に助産についての感謝を重ねて伝えたい気持ちがある。
やはり、出産というのはどうしても危険な行為なのだ。
それを的確に助けてくれる伝手は堅持したいものだ。
そう言うわけで、カイラの自宅兼『
一等街区に存在する、白とピンクで塗装されたやたら少女趣味な豪邸。
それがカイラの自宅であり、ここにカイラとその仲間たちが住んでいる……。
そう言うとカイラがリーダーのようだが、一応リーダーはリーゼである。
「立派なお宅ですね。アスマん家くらいありますよこれ」
「うちはクソ田舎の米農家だから家がデカいだけです」
「いつも米送ってくれてありがたい限りですよほんとに」
「私たち全員、生まれた時からどんぶり飯ですからねぇ」
『アルバトロス』チームの雑談を背に浴びながら、門を開ける。
「あら~、ようこそおいでくださいました~」
さっきまで居なかったはずなのだが。
門を開け終えたらそこにカイラが立っていた。
門は格子状のもので、開ける前から奥が空けて見えていたはずなのだが……。
「なんだろう、心霊現象みたいなことするのやめてもらっていいですか」
誰が言ったかは分からないが、そんな震えた声が聞こえた。
あなたも気持ちは同じだ。カイラの行動が怖過ぎる。
時空間の乱れもないので転移ではないだろうし。
透明化や隠形ならば気配察知で気付ける。
すると、カイラはそこに忽然と現れたことになる。
「もうほんとに心臓止まるかと思いましたよ。時でも止められたのかと」
「催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてないですね」
「もっと恐ろしいものの片鱗を味わいましたよ」
「実際のところ、魔法かサイキックによる瞬間移動だとは思いますが……」
瞬間移動、つまり空間転移だとは思うが。
あなたの感じる限りでは空間の揺れはなかったのだが……。
「うふふ~、すみませんね~。瞬間移動ではないです~。チャチなもんですみませんけど~。ただの超スピードでごまかしたに過ぎませんよ~」
そして、カイラによる訂正。
ただの力技だったらしい。
「あなたに譲っていただいた『加速』の魔法の応用なのですけどね~」
なるほど、たしかにそれなら……。
あの魔法は術者の力量によって威力がかなり異なる。
カイラの魔法の技量は極めて高い。
認識を振り切るスピードくらいは出せるだろう。
それをあなたに察知させずしれっとやってのけるところはすごいが。
「まぁ、ともあれ~、どうぞおあがりくださいな~。今日は日差しがあたたかいですから、お庭のほうへどうぞ~」
以前、剣の受け取りに来た時にも案内されたガゼボ。
そこへと案内され、メディシンフォージドのカイル氏によってお茶の給仕を受けた。
ガゼボ自体に気温を維持し、風をほどよく遮る魔法がかかっている。
そのため、そよそよと頬を撫でる風はほどよく涼しく温かい。
ただの『環境耐性』とも違うし、空間を遮るだけの魔法でもない。
繊細で、なおかつ発展的な魔法の使い方だ。
あなたにはできないタイプの使い方でもある。
あなたは威力を追求するタイプの使い方が中心なので。
それにしても、前回も思ったが、立派な庭だ。
よく手入れされているが、それでいて作為をあまり感じないというか。
かっちりと作り込んだ、人工物のような庭ではない。
ほどほどの手入れと、ほどほどの年月が形作った庭。
そんな印象を感じさせる、落ち着ける空間だった。
そして、その庭の中心に堂々たる態度で屹立する鋼のひとつ目巨人……。
「いやぁ、素敵なお庭ですね。自然に満ちたイングリッシュガーデン風味で」
「まあ、ここはマフルージャなのでマフルージャガーデンと言うべきですかね」
「自然に満ちた庭、蔦の這うガゼボ、屹立するドラグーン、冬
「軽量型ドラグーン、ライデン。ステークアウトショットガンとライデンソードが標準武装のはずですが、ソードしか持ってませんね」
『アルバトロス』の面々はドラグーンについて知っているらしい。
このソーラス迷宮の9階層で出現する敵であり。
人類の科学力によって作られた、純粋科学技術によるゴーレム……それも人が乗り込めるタイプの。
以前、あなたがカイラに売りつけた品である。修理したらしい。
「よくご存知ですね~。買い取ったドラグーンをサンコイチ、ヨンコイチして、どうしても足りない部分は適当に埋めて修理したんですよ~」
「そうでしたか。さすがはカイラさん。科学技術への理解はすばらしいですね」
言いながら、ムツミが『ポケット』から紙束を取り出す。
あなたには読めない文字だが、幾度か目にした文字だ。
ニホン語。『アルバトロス』チームが母語として用いる言語。
口語会話は比較的容易ではあるのだが。
同音異義語が異常に多く、1つ1つイントネーションや発音を覚える必要がある。
まぁ、母語として使っている相手ならば、割と汲み取ってくれるらしいが……。
あなたはまだ本格的に覚えておらず、簡単な単語をいくつか喋れる程度だ。
「いかがですか。ドラグーン、ライデンのマニュアルです。お安くしときますよ」
「なるほど~……商売上手ですね~……」
「まぁ、こちらはお近づきのしるしに差し上げます」
「あら? 商品なのでは~?」
「それはただの目次ですから。ライデンのマニュアルはもっと分厚いです」
「なるほど……読みたければ払えと」
「ええ」
「おいくらですか~?」
「あのライデンを1体」
「それ譲っちゃうと、マニュアルの意味なくなっちゃいません~?」
「フレームの新造くらいはお出来になるのでしょう? そもそも、純粋科学の産物であるドラグーンはカイラさんにとってさして重要ではないでしょうし」
「でしたら、そのドラグーンのマニュアルもさして重要ではないと思いませんか~?」
「このマニュアルは、もっと根源的なマニュアルです。技術書、と言うべきでしょうか。ネジ1つ、金具1つをとっても詳細に解説された、本当の意味でのマニュアルですよ」
「……なるほど」
カイラの笑みの質が変化した。
獲物を狙う肉食獣のような。
逃がさん……と書いてあるような笑みだ。
「わかりました。買います」
「では」
ムツミが『ポケット』から妙なものを取り出す。
それは黒く薄っぺらい箱状と言うか板状のものだ。
ほどよく滑らかでざらついた質感で、手馴染みがよさそうだ。
そして、その反対側には灰色のうっすらと透き通った面がある。
「これは?」
「PDFデータです。印刷などしていられませんよ。A4用紙にして何万枚あるとお思いで?」
「なるほど、そんなレベルと」
「ドラグーンは元々民間用の作業機から発展した兵器です。民生レベルのセットアップを軍用に組み替える検証を重ねながら誕生した兵器なのですよ。特に、ライデンは初期の機体ですから」
「あ~、なるほど~……」
「この電子ペーパー端末はサービスにしときますよ」
「それはどうも~」
なんだかよく分からないが、交渉が成立したらしい。
マニュアルとのことなので、あのドラグーンとか言うのの詳細な説明書のようだが。
しかし、『アルバトロス』チームはドラグーンなんか手に入れてなにを……?
「持ち帰るのが大変ですが……念願の人型ロボットですね……!」
「私にも乗せてくださいね。1回乗って見たかったんですよ」
「人工知能乗ってるんですよね。やはり、AIとのコミュニケーションはロマン……!」
「軽ドラグーンはあんまり得意じゃないんですが、文句は言えませんね。スコーチング・タイタンとか出て来ないかな……」
売約が成立したことで、わいわいと騒ぐ『アルバトロス』チーム。
なにやらはしゃいでいる調子で、あなたは首を傾げる。
ドラグーンと言うのは、そんなにはしゃぐほど嬉しいものなのだろうか?
「人型ロボットはロマンですよ。夢があります。日本人なら6割は好きですね。間違いありません」
「そして、頭部と胴体の区別がほぼ無いメックに近いデザイン……世界中に存在する人間の4割がこれを好みます」
「さらに機械的ながらも学習能力を有し、ユーモアを解すAIが搭載されている……これが嫌いなやつは人の心がありませんよ」
「ドラグーンは兵器類の中じゃ格安なのも見逃せませんね。ライデンとか2600万円くらいのはずですし」
ムツミだけ実利的な理由で好んでいるらしいが……。
他の3人はやたらと嬉しそうではしゃいでいる。
まるで、子供が英雄譚の戦士について論じているかのような雰囲気だ。
ドラグーンと言うのは彼女らの幼心をそれほど刺激するのだろうか?
デザインはサイクロプスの出来損ないに見える。
あなたにはそんなにカッコいいとは思えなかった。
喋ることについても、べつに喋る道具くらい探せば他にいくらでもあるだろうに。
値段は……よく分からないが、それははしゃぐ要素ではなさそうだ。
「はー……クライアントはぜんぜんわかってない……」
「これだから女受けばっかり考えてる人は……」
「がっかりですよ、クライアント……」
「値段は嬉しい要素ですけど? 2600万ですよ? 10トンクラスフォーク並の値段ですよ?」
『アルバトロス』チームからの呆れかえった目。
なぜこれほどまでに呆れられなくてはいけないのか。
『アルバトロス』チームが特殊なだけなのでは?
あなたは思わずカイラに助けを求めるように目をやる。
「私が何のためにドラグーンを買ったと思います~?」
普通に、ドラグーンが技術的に有用だからでは?
「検分のためだけなら、べつに修理なんかしなくてもいいです~。人型ロボットが欲しかったんですよ~! やっぱり、人型ロボットはロマンですからね~!」
なんて嬉しそうに声を上げるカイラ。
どうやら、カイラは心情的には『アルバトロス』チームの味方らしい。
「人型ロボット……いいですよね~……」
「いい……」
「実際いい……」
「とてもいい……」
「あーいい……あー、きく、きく……遥かに良い……遥かに良いです……」
『アルバトロス』チームとカイラが分かり合っている。
あなたはドラグーンへと目をやる。
直線を主体として構築された鋼の人型。
胴体には目なのだろう、輝く丸いものがついている。
しかし、手足は四角い箱のようだし、特に装飾もないし……。
なにがいいのだろう、これ。
あなたは意味が分からず首を傾げた……。
文字数はどの程度が好ましいですか?
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2000文字前後
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3000文字前後
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4000文字前後
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5000文字前後
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6000文字前後
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7000文字前後
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8000文字前後
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9000文字前後
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1万字前後