あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 アウェー感を味わったあなた。

 このままカイラとしっぽり……と行きたかったのだが。

 なんか、そう言う感じのノリではなくなっていた。

 カイラはずっとはしゃぎながらロボットなるものについて語らっている。

 

 あなたはなんだかなーと首を傾げる。

 人の好きなものを腐すのも不躾なので口にはしないものの。

 ドラグーンのどこがどういいのかはよく分からない……。

 

 あなたは手元のお茶を飲む。

 ほんのりと甘みを感じるうまい茶だ。

 そうすると、対面側に座っているクロモリと目が合った。

 そう言えば、ここに来てからと言うものクロモリは発言していない。

 なにか、ドラグーンに思うところでも?

 

「あ、いえ……その……」

 

 その?

 

「カイラ殿は凄腕の薬師と聞いて、お話をお伺いしたく思って話を纏めていたのですが……」

 

 そう言うクロモリの手には分厚い紙束。

 どうやら、カイラと問答をするための質問集か何からしい。

 クロモリがまとめた渇水病の治療法についての書もあるようだ。

 

 クロモリはそれが専門と称するだけあり、渇水病に関しては大陸屈指だと言う。

 それは『アルバトロス』チームも太鼓判を押している。

 その評価に甘んずることなく、未だなお向学心旺盛でもある。

 同じく凄腕の医師だと言うカイラを相手に医師として、薬師として、高めようと思って来たと。

 

「……残念ですが、お話できるような雰囲気ではありませんね」

 

 たしかにそんな雰囲気だ。

 なんでこんなに熱く盛り上がっているのだろう。

 

「それは私にもわかりかねますが……」

 

 あなたもまったく謎である。

 なにがどうしたのだろうか……。

 

 

 

 しばらく話し込んでいるのを眺めていたが。

 いつまで経っても熱が冷めることはなく。

 あなたはすっかり飽きてティーカップを弄んでいた。

 こんなことならサーン・ランドにいけばよかったか。

 いや、今からでも遅くない。まだ昼前だ。サーン・ランドに行こう。

 

 エキゾチックな美女であるリン……キヨもいい……。

 おいしいネコミミ美女であるメアリもいい……。

 最近はハンターズとは没交渉だったし、ここらで一発……。

 

 あなたは頷くと、サーン・ランドに向かうべく立ち上がった。

 

「あれ、クライアント。どうされました?」

 

 サーン・ランドに行って来る……のだが。

 楽しそうに話している『アルバトロス』チームを連れて行くのも可哀想だ。

 なので、ちょっとお手洗いに、とだけ答える。

 

「場所は……お分かりでしたよね~?」

 

 以前に泊まったこともあるので問題ない。

 そのように頷いて、クロモリに目線をやる。

 

「あっ、でしたら、私も……」

 

 あなたはクロモリと共にトイレに向かった。

 

 

 

 屋敷内に入り、そのままトイレへと。

 そして、あなたとクロモリは適当なところで窓から外に出た。

 そのまま庭の塀を飛び越え、大通りまで出る。

 

 カイラの探知能力はけた外れに高い。

 だが、さすがに家の中にいると思っている相手を詳細に追いかけてはいない……。

 ……いないと思いたいが、カイラのことだから、どうだろう。

 普通ならやっていなくても、あなたのことは24時間監視してる可能性が……。

 いや、ともかく、露見の可能性が低い脱出が出来ればそれでいい。

 

「ふぅ。ここまでする必要はあったのですか?」

 

 『アルバトロス』チームを置いて行きたかったので。

 あんなに楽しく話しているところに水を差したくない。

 

「なるほど」

 

 それに護衛とは言うものの、どう考えても必要ないし……。

 女の子を複数人連れ歩けるだけでうれしいあなたは気にしていなかったが。

 さすがにぞろぞろと何人も人を引き連れていくのは迷惑だろうし。

 

 さておき、サーン・ランドに行くとしよう。

 

 

 

 『引き上げ』の魔法でサーン・ランドへと転移する。

 すると、暖かく爽やかな風があなたの頬を撫ぜた。

 透き通った蒼い海と、そこから香る爽やかな潮風。

 この大陸最南端の町、サーン・ランドには心地よい陽気が満ちていた。

 

「おお……暖かいですね」

 

 まだ真冬と言っていい時期のはずなのだが、非常に暖かい。

 まぁ、この大陸の標準的な気温自体があなたにしてみれば爆裂に暖かいのだが……。

 この大陸に来た当初は真冬を春先だと勘違いしていたくらいだ。

 

「それほどエルグランドは寒いのですか」

 

 とても寒い。真冬なんか瞬く間に死ねるほど寒い。

 釣った魚をそこらにぶん投げておけば勝手に凍るくらいだ。

 うっかり深呼吸をすると肺を傷めるし、場合によってはそのまま死ぬ。

 

「そんなに……うーむむ……私はそこでうまく生きていけるでしょうか……」

 

 不安げにするクロモリだが、そう心配はいらない。

 たしかに外気温は爆裂に寒いものの、家の中は暖かく保たれている。

 それに、暑さ寒さに対する耐性を得るための装備も容易く手に入る。

 

 まぁ、火炎や氷雪のエネルギーとはまた話が別なので。

 その暑さ寒さへの耐性装備は割とすぐさま諦められる傾向にあるが。

 実際、あなたの装備には暑さ寒さに対する耐性は存在しない。

 火炎や氷雪には完全な耐性があるが、暑さ寒さには打ちのめされる。

 まぁ、冒険中ならともかく、普段ならそう言った装備で暖を取ればいい。

 

「なるほど」

 

 そんな話をしながら冒険者学園へと向かう。

 卒業してまだ丸1年と経っていないので度々顔見知りと出会う。

 あなたのお目当ては先ほども述べた通りの相手だ。

 サーン・ランド冒険者学園の生徒であるハンターズたち。

 

 彼女たちと仲良くしたくてたまらない!

 そんな気持ちでOGとして堂々と学園へと足を踏み入れる。

 まぁ、元々この学園はそれなりにオープンな学び舎だ。

 部外者も度々立ち入ることがあるので、それほど咎められはしない。

 そして、あなたは遂にハンターズの下へと辿り着く。

 

「アトリもキヨもメアリもリンもいねぇな。2年次の女組は練習航海で留守だ」

 

「今いる『ハンターズ』は残念ながら僕たちだけだねー。ごめんねー」

 

 そして、あなたの目論見は打ち砕かれた。

 サーン・ランドは船関係の依頼が極めて多い。

 そのため、船に乗って船酔いに慣れる授業が幾つかある。

 そのタイミングにかち合ってしまうとは運がなさ過ぎる。

 ちくしょう、なんてことだ。今日は厄日だ。

 

 なによりもあなたを打ちのめしたのは、迎えてくれたモモロウとトモ。

 2人ともに、大変に可愛らしい容貌の持ち主である。

 

 が、しかし。

 

 少し前まであった、まろやかな膨らみは消え去り。

 その相貌には以前になかったやや精悍なキレがある。

 モモロウとトモは、男に戻っていたのである。

 

「あんたのせいだ。あんたの」

 

「やっぱり、依頼とかって継続して引き受けてコネとかツテって作らないといけないでしょ?」

 

「だが、あんたが男たちを片っ端から女にしてたせいで、男じゃないと憚られる依頼はここ3年ほど滞ってたらしくてな」

 

「で、僕とモモくんは戻れるから、せめて2人だけでも船に乗ってくれってね……卒業試験でもないのに」

 

 なるほど、そう言う……。

 ここ、マフルージャにおいて、船に女を乗せてはいけないと言われる。

 さすがに客船でまでそんなことは言われないのだが。

 漁船や交易船、そう言ったものには男しか乗せるべきでないとされる。

 

 理由は様々だが。まぁ、なんと言うか。

 やはり閉鎖環境に女少数、男多数を置くとよくないので……。

 なにしろ船の上となると、逃げようにも逃げ場がないし。

 なので漁船や交易船では女を乗せるべきでないとされるのだろう。

 必然、そうなると船関係の依頼は男に回されるわけで。

 

「そうそう。船の護衛は男冒険者にしか回されねぇわけだ」

 

「僕らは人間相手は難しいから、漁船の方の護衛にしてもらったけどね」

 

 あなたはこの町の学園生徒を片っ端から女にして食った。

 そして、もちろん、冒険者同士仲良くしたいという理由で男冒険者も女にして食った。

 この町に3年も滞在していたのでフラストレーションがたまっていたのだ。

 

 その結果、この町は女冒険者の比率が高まり過ぎた。

 すると当然、男しか乗せることのない依頼は滞る……。

 なるほど、そう言う理由だったのかとあなたは頷く。

 それを思うとちょっと悪いことしてしまったかもしれない。

 

「ちょっとどころじゃないだろ」

 

「君はね、もうちょっと申し訳なさそうにしても罰当たらないと思うよ……」

 

 あなたは悪くない。だって向こうからやってくれって頼んで来た。

 しかも、彼女たちはタダでエルグランドの最高級娼婦抱けたのだから得しかしていない。

 

「こいつほんまに……」

 

「うん……」

 

 呆れられてしまった。

 まぁ、大体の理屈は分かった。

 モモロウたちが戻った理由も。

 

「ま、そろそろ戻りたかったとこだしな」

 

「そうそう。女の子の体も楽しかったけど、やっぱり男の子の体の実感ってすばらしいし」

 

 それはやはり、ここに来るまでに度々見かけたメス臭い男たちが理由か。

 なんと言うか、まぁ、男たらしをやっているのだなぁ……という感じだ。

 

 

 

 久方ぶりに会ったハンターズと談笑をしていたところ。

 ふと思い出したように、モモロウがクロモリに目をやった。

 

「ところでよ、その後ろの姉ちゃんは見ねぇ顔だが……」

 

 そう言えばクロモリは初対面だったか。

 あなたはモモロウとトモにクロモリを紹介した。

 

「クロモリ・ダイと申します。どうぞ、見知り置き願います」

 

「おっ! おう。モモロウって言うんだ……あー、えーと、そう、よろしくな~」

 

 ぺこりとクロモリが頭を下げる。それによって位置の下がる胸元。

 あなたの趣味でクロモリの衣服の胸元は大変強調されている。

 露わとなった谷間をモモロウが伸びあがって見つめる。

 あなたも同じ立場だったら同じことをするので気持ちは分かる。

 

「僕はトモだよ。よろしくね、クロモリちゃん」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 自己紹介が恙なく終わったところで、特に示し合わせることなく歩き出す。

 町中に出て、どこか適当な酒のある店で話し合いたいところだ。

 学園の食堂に入るのもいいが……レナイアに見つかると絶対に面倒くさい。

 

 学園のコウハイちゃんたるレナイアは常軌を逸した女好き。

 性欲に死ぬほど卑しく、女と寝るなら土下座も辞さない。

 あなたが見つかれば足元に縋りついてヤラせてくれと喚くだろう。

 レナイアとヤルのもいいが、今日中、遅くとも明日の朝には帰らないとまずい。

 レナイアの性欲は異常なので、行為が2日3日くらい続くことがザラなのだ。

 

「ここ1年で出来た店とかあったかな?」

 

「いや、なかったんじゃねえかな。まぁ、落ち着いて飲めるところならどこでもいいだろ」

 

 あなたも店にこだわりがないのでどこでもいい。

 そう思いながら歩いていると、道の曲がり角にふと話し込んでいる男と少女。

 

「おいおいなんだ、銀貨3枚ぽっちかよ。もっと売ってこいよ!」

 

「はぁ!? 十分だろ! あたしがパクられたらどうしてくれんだよクソオヤジ!」

 

「私娼が早々捕まるもんかよ! 俺が女だったら俺が売りてーくらいだ!」

 

「キモ! 働けよクソオヤジ!」

 

 荒い口調で言い交わす内容はどうにもクズい物だ。

 自分の娘に私娼をやらせ、金を巻き上げていると。

 正直、そう珍しいことではないが、見ていて愉快なことではない。

 

 あなたは自分がなんとかしようとそちらへと向かう。

 そして、あなたと同時に前に踏み出したのはトモだった。

 

「あ。僕は右ね」

 

 右と言うと……あなたたちから見て右は……父親だろう男。

 なるほど、そう言う……かなり笑える。

 

「あのー、ちょっといいかな?」

 

 トモが声をかける。それに振り向く男。

 

「あ? なんだ?」

 

「売ってくれるなら僕が買いたいんだけど。いいかな?」

 

「ああ、いいよ。銀貨5枚な」

 

「わぁ。じゃあ、ぜひ買わせて欲しいな」

 

 言って金貨を取り出して握らせるトモ。

 それに男が頷くと、少女が前に出る。

 が、あなたも金貨を取り出して少女に握らせる。金貨3枚で買おうと。

 

「は? いや、こっちのやつが先でしょ」

 

「え? 僕は君を買ったつもりはないけど?」

 

「は?」

 

「僕はこっちのお父さんを買ったつもりだよ」

 

「…………えっ? 俺?」

 

 まさか自分が買われたとは思いもしなかったのだろう。

 男が愕然とした顔をしているが、その腕をトモが掴む。

 

「じゃあ、行こうか。男同士でも入れる連れ込み宿があるんだよ」

 

「は……? ま、待て……待てよ! 俺は、違う! 俺は違うんだ!」

 

「さっき女だったら自分が売ってるって言ったじゃない! 男でも売れるんだよ! ほらほら、行こうよ!」

 

「あーっ! 待て! 待ってくれぇ! うわぁぁ力強ぇぇぇぇ!」

 

「だーいじょうぶ! 痛くしないよ! 気持ちよくしてあげるからね!」

 

 ボルボレスアスの民は基礎的な身体能力が高い。

 狩人はもっと高く。重量武器である戦槌を使うトモはさらに高い。

 トモに引きずられる男はまったく抗えずにズリズリと連れ去られていった……。

 

「……マジ?」

 

 マジだ。こういうこともある。

 あなたはそのように頷いて、少女に改めて金貨を握らせた。

 

 本当はハンターズの誰かと楽しみたかったが……。

 誰も居ないのだからしょうがない。

 それに、この少女は初顔だ。ぜひとも買いたい。

 ただ一応、女同士でも大丈夫かな? と尋ねた。

 

「女同士なんてやったことないよ。でも、こんだけもらえるなら……うん、いいよ」

 

 交渉成立だ。では、行くとしよう。

 あなたはモモロウとクロモリに、そう言うわけだからと断って連れ込み宿へと向かった……。

 

 

 

 

「俺たち置いて、しれっと買春してんじゃねーよ……」

 

「すみません、私の(あるじ)が……」

 

「ああ、いや、すまんな、くだらん愚痴言った。帰るか」

 

「帰るのですか?」

 

「2対2ならともかく、さすがに初対面の男とサシで酒場に行きたくはねぇだろ?」

 

「そう言うものでしょうか」

 

「俺は学園に戻るから、あんたは適当にどこぞで宿でも取りな。あ、金持ってるか? ないなら貸すぞ」

 

「いえ、持ち合わせはあります……ですが、よろしければ、一緒に呑みませんか?」

 

「え? いやいや、あんた酔い潰してお持ち帰りするかもしんねーぞ? やめとけって」

 

「そんなことを言う方はそんなことをしませんよ。初見の町に来たからか、なんだか呑みたい気分なんです」

 

「あのな、俺はこんな可愛いナリしてるけど、ちゃんと男だからな? 力もメチャメチャ強ぇーんだ。無理やりベッドに連れ込むくらいワケねーんだぞ?」

 

「ふふふ……モモロウさんは良い方ですね。大丈夫ですよ、行きましょう。いいお店を紹介してくださると助かります」

 

「う~ん……? まぁ、そうまで言うなら……呑みに行くか~」

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