あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 前哨基地に戻り、あなたは謝罪行脚をした。

 

「痴情のもつれで……それで中止になったのね。いや、そう言うエロい報告されてもちょっと困る……」

 

 まず本来なら編成されていた攻略班。

 クリーブランデラやテトラヒメナ、そしてアクア・コンデンス。

 あなたと面識があったり、人格的にまともな者。

 そう言ったものがわざわざ選別されて編成されていたらしい。

 

 つまり、部外者であるあなたを気遣っての編成……。

 本当に申し訳ないことをしてしまった気持ちで一杯だ。

 しかし、後悔はしていない。同じことがあったらまたやる。

 

 攻略班の者たちは、各々カレーとか酒を奢ってくれたら許してくれるらしい。

 やっぱりカレーらしい。この基地の者たちのカレー好きには参った。

 

「そんなことがあったのね……」

 

「はわわ、あの爆乳お姉さん、そんなインモラルな人だったのですか……」

 

「やたら胸を強調したエロい服着てるのは、そう言うお誘いだったんだね……」

 

「ふ、風紀が……風紀が乱れてるわ! そんなのってよくないわ!」

 

 もちろん、偵察班であるクラリッサらにも謝罪を。

 こちらもやはりカレー食べ放題で手を打つとのこと。

 

「なんで置いてったんですかクライアントォォォ!」

 

「マジのガチで焦ったんですからね!?」

 

「私のサイコメトリ捜索範囲内から離脱しないでくださいよもう!」

 

「次にやったら最強カード切りますからね!?」

 

 ヘロヘロになって宿舎に戻ったら、『アルバトロス』チームにガチ詰めされた。

 そう言えば、あなたの護衛班をソーラスに置き去りにしたのだった。

 あなたはすまんすまんと謝った。疲れていたのだ。

 

「誠意が感じられないのでお父様に報告します」

 

 あなたはカル=ロスに土下座した。

 それだけは……それだけはご勘弁を……!

 無茶苦茶殴られた上、エルグランドに連れ帰られる羽目になる。

 そしてあなたは少なくとも1年は毎日ねちねちと虐められる。

 それはもうネチネチネチネチと執拗に虐めて来るのだ……。

 

「少しくらい虐められた方いいんじゃないですか」

 

「反省が必要ですよ、反省が」

 

「報告してこいカルロ」

 

「お父様の虐めは見てるこっちも割とキツいので、謝罪の意思があるならすべきではないかなと……」

 

 カル=ロスもあなたの最愛のペットの所業は知っているらしい。

 まぁ、親子だから当然か。しかしそうなると未来であなたは虐められることが確定している……。

 あまり知りたくなかった情報だが、まぁ、所業を改めるつもりはないので当然か……。

 

「夫婦喧嘩なんですよね?」

 

「お父様は精神攻撃が得意なので。お母様のベッドに乞食の死体を投げ込んでおくとかしますよ」

 

「嫌がらせが壮絶過ぎる」

 

「あと、いよいよとなると、お母様の前で自殺とか」

 

「自殺!?」

 

「切腹が多いですね。子宮を引きずり出して、お母様の前に投げ捨てて叫ぶんですよ。もうこんなのは必要ないって。そんで自分の首を刺して、嘘つき嘘つきって叫びながら事切れます」

 

「ええええええええ……」

 

「やり口が凶悪過ぎる……それもう虐め通り越してますよ」

 

「壮絶ですよね。それをやられてもなお浮気し続けるお母様もお母様ですが」

 

「ええ……」

 

「クライアント……生きてて恥ずかしくないですか?」

 

「へ、ヘイトスピーチ……!」

 

 たしかにそれをやられると精神にはクルのだが。

 なんのかんの言っても3日したら蘇ってくるわけで。

 

「……そう言えばそうでしたね」

 

「エルグランド、それは神秘の大陸……」

 

「蘇る意志さえあれば3日後に蘇生できるとかキリスト教徒マジギレ不可避ですね」

 

「あれ、なんで蘇生するんでしょうね。経験しても全然分からないんですよね」

 

 たぶん、あなたのペットが精神攻撃をするのはそれが理由だ。

 肉体的に痛めつけても、なんだかんだ冒険者は慣れている。

 肉体攻撃の極限は殺害なわけだが、エルグランドでは些事なので……。

 

「なるほど、だから折檻は精神攻撃が基本に……」

 

「精神攻撃が基本となると、必殺技はレッドアウト・ゴールデンマキシマム・バーニングですかね?」

 

「赤くて金色ですからね……ああ、そうか。3日ありゃ蘇るんですから1週間もありゃ楽勝と……なるほど」

 

「世界滅亡も神がマジギレしながら直してくれるんでしたっけ……」

 

 なんでそちらに話が? あなたは首を傾げる。

 時々『アルバトロス』チームの会話の飛躍は分からない……。

 

「まぁ、そんな冗談はさておき……お母様、護衛を置き去りにしないでくださいね」

 

 カル=ロスの苦言にあなたは頷く。

 気遣って置いて行ったが、それはあなたの勝手。

 彼女らの職務をあなたの都合で放棄させたことになる。

 たしかに、それはよくないことだ。

 

「次にやったら、カイラさんにお母様の自宅の所在地を教えますからね」

 

 むちゃくちゃ怖い。

 なにされるか分かったものじゃない。

 カイラには謎の部分が多過ぎる。

 

 まぁ、未来では自宅の場所は知られているらしいが。

 もしや原因はコレだったりするのだろうか……?

 

「さあ、どうでしょう。ともあれ、護衛を置き去りにしないこと」

 

「本当に頼みますよ。仮に置き去りにするにしても、私から半径300キロ以上離れないでください」

 

「もしくは離れる前に一言連絡をしてください」

 

「晶がサイコメトリで追跡しますから」

 

 次からはそのようにしよう。

 あなたはそう頷いて、一通りの謝罪を終えた。

 

 

 

 そして、翌日からあなたは精力的に冒険を再開した。

 テトやクリーブ、そしてカーマイン姉妹と冒険に出て。

 カル=ロスたち『アルバトロス』チームと戯れ。

 夜には娼婦の仕事を存分に満喫する。

 

 忙しくも充実した日々は楽しい。

 こんな日々が果てなく続いて欲しいとすら思う。

 だが、迷宮に底はあり、冒険に果てはある。

 

 あなたたちが迷宮の本格攻略に乗り出して5日。

 それが迷宮の底を浚うまでの時間だった。

 

 

 

 巨大な緑色の牡羊のように見える巨大な怪物。

 それはぐらりと崩れ落ち、地面へと倒れる。

 ぼふん、と柔らかい音を立てるのは、羊毛ではない。

 それは木の葉で出来ており、その額の角のように見えたものは木の枝。

 

 バロメッツ。植物によって作られる、リーフゴーレムの一種である。

 ドルイドなどが刈り込んで形を整えて作るものだが。

 まぁ、既にアイアンゴーレムが出現していたのだ。不思議でもない。

 

「ふうー。庭師でもやっていけるかしら!」

 

「銃を手に4人で自宅に押し掛けたら誤解されそうだね」

 

「強盗に間違われること間違いなしね……」

 

「警察の世話になるのは御免なのです」

 

 そのバロメッツを伐採したカーマイン姉妹たち。

 やはり植物の伐採と言えばノコギリなわけで。

 もちろん、あなたもノコギリハンマーたるサワーハンマーで伐採した。

 

「ククク、やつは四天王の中でも最弱」

 

「カーマイン姉妹ごときに負けるとは……」

 

「四天王の面汚しよ……」

 

 あなたたちの戦闘を見守っていた攻略班がそのように囁く。

 なんでバロメッツ側に立って発言しているのかは謎だ。

 なお、メンバーはテトラヒメナ、クリーブランデラ、アクア・コンデンスだ。

 そして実のところ、あなたの組み分けはこちらだったりする。

 偵察班4人、攻略班4人、補助班2人の10人編成なのだ。

 

「なかなかやるなぁ。俺ら要らなかったんじゃないか?」

 

「まぁ、少なくとも私は要らないですね……」

 

 補助班2人はジャンゴとカリーナ。

 ジャンゴは呪歌(まがうた)による支援を。

 カリーナは順当に荷物持ちと、いざという時の撤退要員だとか。

 

「ま、次々行ってきな。ほらほら、戦利品の回収は俺らに任せな」

 

「まぁ、バロメッツは鉄より硬い枝くらいしか価値無いですけどね。伝承じゃ木綿が取れるはずなのに」

 

 ジャンゴとカリーナが戦利品の回収もしてくれる。

 あなたたちは戦闘とギミックの解除に集中するだけ。

 楽ではあるのだが、なんだか分業のせいで冒険をしているというより作業をしているような感がある。

 

 ともあれ、あなたは先に進もうと歩を進める。

 バロメッツが背後に置いて守っていた扉へと。

 

「30層だし、そろそろ終わってくれないかしらね……」

 

「さらに続きがあるとなると、野営することになるしね……」

 

「迷宮内の泊まりはキツいのです……できればやりたくないのです……」

 

「元気ないわねー! そんなんじゃだめよ!」

 

 偵察班は結構な戦闘の連続で割と疲れている。

 戦闘班はもちろん戦闘をするためにいるのだが。

 成長を促すべく、偵察班で片付くものは任せることが多い。

 戦闘班では糧にならない相手も、偵察班ならば糧になるので。

 そのため、割と攻略はゆっくりとしたものになっている。

 

 それもあって深層にまでくると、往復するだけで一苦労でもある。

 1日経つと敵が復活しているので、深くなればなるほど往復に時間がかかる。

 30層を超えるようであれば、30層で野営をするという話になっている。

 

 ただ、この30層と言う数値ですらも、割と緩い数値だったりする。

 あなたの莫大な生命力でギミックをゴリ押ししているからこそだ。

 そうでなければ20層くらいで既に野営しなくてはいけなかったろう。

 クリーブやアクアの使える回復魔法では、回復に時間をかけなくてはいけない。

 回復量はそう悪くないが、消費した魔力の回復の方に時間がかかるので。

 

「さーて、次の階層はどうなってるのかしらーっと……」

 

「どれどれなのです」

 

「私にも見せてよ」

 

「じゃーん! ドアが開いたわ!」

 

 カーマイン姉妹が次の階層への扉を開ける。

 そして、そこには図書室のような空間が広がっていた。

 

 古い地下室のような匂いが漂ってくる。

 その中に混じった本の香り。

 迷宮にはあまりに不似合いな空間だった。

 

「はわわ……この感じ……」

 

「最深部……みたいだね。雰囲気がガラリと変わるのは大体そうだよ」

 

「じゃあ、とりあえず入って見ましょうか」

 

「そうね。私たちの役目だもの!」

 

 カーマイン姉妹が2人中へと入る。

 そして、内部の図書棚の本を適当に引っ張り出したりしている。

 しばらく検分した後、最後にあからさまに目立つもの……。

 

 部屋の中央部、台の上に鎮座したジュエリーボックス。

 中にはベルベット敷の高級感に違わぬ黄色い石……。

 軽く、20個ほどは入っているだろうか。あれがこの迷宮の財宝?

 卵型で艶があって、宝石と言っても過言ではない外見ではあるが……。

 

「なにかしらこれ」

 

「とりあえず触ってみるのです。叩くのです。転がすのです。こねこねするのです」

 

 クラリッサとブリジットが黄色い石を手に戻ってくる。

 

「アクえも~ん、この石がなにか教えてちょうだい」

 

「誰がアクえもんよ……どれどれ」

 

 アクアがクラリッサの持ってきた石を手に取る。

 

「ああ、賢者の石だね、これ」

 

 手にした石を一瞥し、少し考えてからアクアはそう言った。

 賢者の石。エルグランドにおいては卑金属を貴金属に変える技、錬金術の秘奥とされるものだ。

 効能は諸説あるものの、不老不死になるとか、無限の黄金をもたらすとか……。

 まぁ、世俗的な欲望を叶えてくれる感じの代物である。

 

 ただ、エルグランドにおいてはあくまで伝説の存在だ。

 実在するものかも定かではなく、錬金術師たちはそれを探求していたのだが……。

 

「賢者の石ってコトは……1個で金貨何千枚もの価値があるやつ!?」

 

「そうそう。錬金術の技能がある者が使えば鉛を黄金に出来るね」

 

「そして、そうでなければ回復魔法の込められたポーションに混ざれば、蘇生の霊薬になる……だったよね?」

 

「よく知ってるね、ドロレス。この大陸で言う『真なる復活』……最上位蘇生呪文のポーションになるわけだ」

 

 なるほど、それならたしかにすごい価値がある。

 あれは最低でも金貨2000枚は金がかかる。

 そのポーションとなると壮絶な価値があるだろう。

 

「これが20個……ゴツイお宝だね」

 

「生命力を散々捧げた末に、死者蘇生を可能とするアイテムの原料……」

 

「なにか意味深なのです!」

 

「まぁ、迷宮にそんな意図あるかは謎だけれどね!」

 

「山分けしても、1人あたり数千枚は行くね」

 

「ぼく、ジューンの店でダッツ大人買いする」

 

「あーしはポッピングシャワー大人買いするわ」

 

「じゃあ、私は鼻が長くて赤ら顔のナイスミドルのビーフジャーキーでも大人買いしようかな……」

 

 『トラッパーズ』のメンバーはふつふつと喜びが込み上げているようだ。

 あなたは割と「あ、そんなもんか……」くらいの受け止め方だ。

 たしかにすごいお宝ではある……あるのだが……。

 あなたは自前で蘇生魔法が使えるし、金にも困ってないわけで……。

 

 正直、賢者の石とやらよりも周囲の本の方が気になる。

 見たことのない文字で内容が書かれているが、図解などがあって意図は分かる。

 どうも、錬金術か何かの本のようだが、同時に魔術の記述もある。

 

 有用かは不明だが、持ち帰ればサシャは喜んでくれるだろう……。

 あなたはひとまず、その本を『ポケット』に収めることとした。

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