パーティーは10日後。
それまでにたくさんの料理を用意しなくてはいけない。
パーティーを催す者、招待する者として、客人はもてなさねばならない。
『アルバトロス』チームにも手伝ってもらいつつ、大忙しで準備をする。
客を楽しませることが招いた者、ホストの責任だから当然だ。
「こんな
たしかに僻地ではあるが。
招待客はその僻地にいる者たちなのだが。
「お母様の友人でしたか。素敵だ……ならば、私にとっても友人同然です」
「新しいご友人……楽しい時を過ごしましょう」
「ご友人……私はあなたと上手に踊れるでしょうか? 心配だ……けれど、それよりずっと楽しみです」
「スロー、スロー……クイック、クイック、スロー……スロー、スロー……クイック、クイック、スロー……」
突然ダンスのリズムを取り始めるアキラ。
なるほど、ダンスで歓迎というのも悪くないかも。
あなたも母にハイランダーの伝統舞踊を教わっている。
気分が盛り上がった時、悲しい時、楽しくなりたい時。
そんなときに誰かと踊っていたこともあった。
時と体感を共有する心地よいリズム。
それこそがダンスであり、人と人を繋ぐ鼓動だ。
歓迎として、心を交わす瞬間として、悪くない。
しかし、あなたはこの大陸のダンスは知らない。
そしてタイトたちは地球出身だ。余計に知らない。
……いや、『アルバトロス』チームは地球出身。
別次元の地球とは言え、伝わっているダンスは同じかもしれない。
なるほど、アキラはそのためにダンスのリズムを。
あなたはアキラにぜひそのダンスを教えてくれと頼んだ。
「えっ、あっ、す、すいません、私は実はダンスはさっぱりでして……」
「すみません、お母様。私たちはネットミームを表に出すクッソ恥ずかしいコミュ障のカス共なんです」
「拾ってもらえないネットミームほど恥ずかしいものはないというのに」
「それでも口が勝手に動き出す恥ずかしいカスなんです。優しく殺してください」
どういうこと? あなたは首を傾げた。
「そ、そうだ! ビンゴだ! ビンゴやりましょう! ビンゴ! 余興と言えばビンゴ!」
「天才! それですよ晶! エルグランドにもビンゴはありますしね!」
と、カル=ロスが同意を求めてきたが、あなたは首を傾げた。
ビンゴってなんだろうか? ちょっと初耳なのだが。
「あれっ? え、でも、小さかった頃は毎週ビンゴゲームしましたよ? 町にはビンゴホールって言って、ビンゴでギャンブルする施設もあったくらいで……」
エルグランドにそんなものがあるとは聞いたことがない。
そしてもちろん、あなたはそんなゲームに興じたこともない。
もしかしたら名前が違うだけで既知のゲームかもだが……。
「ビンゴゲームと言うのは……」
あなたはビンゴゲームについて説明を受けた。
いろいろとバリエーションはあるものの、エルグランド方式はこうだ。
5×5の25のマス目のあるカードが配られる。
中央の1マスを除いた24マスには1~75の数字の24個が振られている。
あとは抽選機、またはくじ引き方式で数字を引き当てていく。
1列揃ったやつから景品を入手できる。シンプルなギャンブルだった。
「どうですか、覚えがあるでしょう?」
まったくない。初耳だ。
エルグランドにそんなゲームはおそらくない。
仮にあるにしても、どこかの地方特有のゲームだ。
少なくともメジャーではないし、ビンゴホールなんて存在しない。
「もしかして……カル=ロスがここで教えたから、クライアントがエルグランドに持ち帰ってやるようになったんじゃ」
「クライアントってエルグランドに商業施設大量に持ってるんですよね?」
「文字が読めなくてもできるゲームですから、客引きに使うには便利なような……」
言われてみるとたしかにその可能性は高い。
あなたはエルグランドで各種の商業施設を保有している。
それらの施設で客引きし、景品を配ることで宣伝効果を狙う。
やはりギャンブルと言うのは人を呼ぶものだし、ワンチャンあると思えばとどまりたくもなる。
そして、次もまたやるよ、と言えばそれを狙ってやってくるものだし。
そうして集まったやつの中からは、景品を待っていられず買う者も居るだろう。
「そうだったんだ……いや、でも、腑に落ちると言えばそうかも……あのビンゴホール、お母様の持ち物って言ってたし……」
まぁ、そのあたりの経緯はともかくとして。
このビンゴゲームと言うのはシンプルで面白そうだ。
景品の用意にちょっと悩むが、余興としては悪くない。
このアイデアはいただこうと思う。
あとは景品の選定となるのだが……。
ビンゴゲームの景品はさっぱりだ。
そのあたりは力になって欲しい。
「そんなことならお安い御用です。まずは金一封ですか。冒険者集団で金持ち多いですし、金貨100枚くらいとか?」
「1位はそれでいいでしょう。ギャンブル要素として現金は欠かせないところありますし」
「金だけだと生臭過ぎるので副賞もつけましょうよ。お菓子とか家電製品とか……」
「それもそうですね。まず1位の副賞としては……」
あなたは『アルバトロス』チームとの会議に集中した。
そうして苦心してビンゴゲームの景品を決めた。
それからはビンゴゲームに使うビンゴマシンの作成。
そのビンゴマシンに入れるための番号を刻んだ玉……。
日々料理をしたり、パーティー会場を整えたり。
その合間には、もちろん『トラッパーズ』の女の子たちと仲良くしている。
今日はクラリッサらカーマイン姉妹の宿舎にお呼ばれしているところだった。
夜の帳が降り始めた中、あなたは篝火に照らされながら食卓を囲んでいた。
「さぁ、いっぱい食べてね! 私、アンジェリカ・カーマインの特製カレーよ!」
そう言って、たっぷりのライスにたっぷりのカレーをかけてくれるクラリッサ。
具を細かく刻み、肉はなんと挽き肉を使った独特のカレーだ。
スパイスの薫り高い芳香が空腹を誘い、見ているだけでよだれが垂れそうだ。
あなたはさっそくカレーを口に運ぶ。
挽き肉と細かく刻んだ具でカレーはどろりとしている。
それをライスと混ぜ合わせて口に運び、咀嚼する。
すると、スパイシーながらもコクのある甘味が舌を撫でる。
その後にやってくるのはジリリと熱い旨辛さ。
これは抜群に旨い。ライスとの相性が最高だ。
あなたはアンジェリカの特製カレーのうまさに驚いた。
「どうどう? おいしい?」
アンジェリカの問いにあなたは頷く。
とても美味しい。お世辞でもなんでもない本音だ。
抜群にうまい。これはなるほど、ライスが無限に消える。
「よかった! あなたにたくさんカレーを食べさせてもらったから、いつかお返しにカレーをご馳走したいと思ってたの!」
「今回の迷宮攻略完遂でたっぷりと報酬をもらったからね」
「その報酬で特製カレーの材料を隙なく掻き集めたのです」
「あ、付け合わせのサラダと、半熟卵のうまうまフライもあるのよ。食べてちょうだいね」
なるほど、迷宮の攻略報酬はあなた以外にも当然分配されている。
そして、1層から駆け抜けたカーマイン姉妹の貢献度は大きい。
その報酬はおそらくあなたに次いで多いだろう。
それでカレーの材料も金に糸目をつけずに買えたと。
「そう言うことね。でも、残念ね。私たちはね、実は全員に特製レシピがあるの」
「うん、そうなんだ。本当は私の特製カレーを用意したかったんだけどね」
「さすがに4種類も用意したらお腹が張り裂けてしまうのです」
「だから、じゃんけんして勝った私が作ったのよ!」
なんと、これほどのレベルのレシピをそれぞれが抱えているとは。
カーマイン姉妹は相当な料理上手だったらしい。
「まぁ、趣味レベルよ。ティーなんか2000人分の料理を助手が何人かいれば作っちゃうんだもの」
「やっぱり戦艦の厨房を預かってたプロの料理人は違うね」
「そして、その上でクオリティは抜群なのです。ティーの内臓炒め、どうやってもうまく作れないのです……」
「ティーのハヤシライスも凄いのよね。どうやったらあんなに美味しく作れるのかしらね」
なんともはや。これほどすごいカレーのさらに上を行く料理人だったとは。
家も建てれるし、魔法も使えるし、さらには料理もできる。
そう言えば散髪もできると言っていたので、手術もできるのだろう。
床屋は刃物を使うので、簡単な外科手術が出来る者は少なくない。
「まぁ、でも、私のカレーも捨てたものじゃないでしょ! おかわりあるわよ!」
では、おかわりをいただこう。
あなたはアンジェリカにおかわりをもらう。
このカレー、気付かぬうちに口へと運んでしまう。
やめられない止まらない中毒性がある。
あなたはその後、カレーを2回おかわりした。
腹がさける……今はとても食べられない。
それくらいお腹いっぱいにカレーを食べた。
自分が作るカレーよりもずっと美味しく感じた。
「はい、ラッシーよ。すっきりするわ」
「マンゴーラッシーもあるよ」
「バナナラッシーもあるわ」
「アールー……モモ入りラッシーもあるのです」
ずんずんと4種類の飲み物が出された。
あなたは負けじと全部飲んだ。
女の子が用意してくれたものを断る理由がない。
腹が避けそうでも、今は食べられそうになくとも。
無理やりにでも体の中に捻じ込むのがあなただ。
苦しかったが、味は文句なしに美味しかった。
カレーでくどくなった口がさっぱりする。
「お粗末様! ゆっくりと食休みするといいわ。おなかパンパンだものね」
「まぁまぁ、よければお喋りでもするのです」
「カレーを食べて汗かいたよね。扇いであげるね」
「私はちょっとお手洗いに……」
クラリッサが退席する中、あなたは至れり尽くせりで世話を焼かれた。
アンジェリカとブリジットと談笑し、ドロレスが立派なうちわで扇いでくれる。
なんだか女王にでもなったような気分だ。とても気分がいい。
「なるほどね~。聞けば聞くほど頭痛を覚えるような女性遍歴ね!」
「まぁ、性病さえ持ってなければ百戦錬磨なのはプラス要素と言えるのです」
「50±50は守備範囲が広すぎるよ。バックスクリーン裏を守ってるようなものだよ。既にそれホームランなんだよ」
あなたの女性遍歴、守備範囲、好みを聞かれて素直に答えたり。
そうして話し込んでいると、やがて完全に日が暮れた。
すっかりと真っ暗になり、篝火だけが周囲を照らしている。
あなたは夜目が抜群に効くのでなんら困らないが。
カーマイン姉妹はそうはいかないので、そろそろ寝る時間だろう。
あなたはそろそろ帰るかと椅子から立ち上がる。
すっかり腹具合も落ち着いたので、夜風に当たりながら帰ろう。
「まぁまぁ、そう言わず。せっかくだから泊まっていくのです」
「トランプあるよ。ウノもあるよ」
「寂しくなっちゃうから帰っちゃだめよ!」
帰ると伝えたところ、熱心に引き留められてしまった。
そう引き留められては帰るのも心苦しい。
あなたはしょうがないな~、とかにやけながら帰るのをやめた。
ブリジットの言う通り、今日は宿舎に泊めてもらおう。
カーマイン姉妹の宿舎は彼女たち姉妹だけで使っているらしい。
あなたが使っている8人宿舎と異なり、4人宿舎なのでちょうど定員なんだとか。
「宿舎の中に入りましょう。そうしましょう!」
「ごーごー。振り返らずいこう」
「遠慮なく入るのです」
誘われるがまま宿舎に入る。
宿舎の内装はあなたが使っているところとそう変わらない。
広間のショボさも大差なく、部屋の数が少ないだけだ。
部屋の数の少なさだけ宿舎が小さいくらいしか違いはない。
「右から順に、アンジェリカ、私、クラリッサ、ドロレスの部屋なのです」
「クラリッサが部屋に泊めてくれるわ!」
「まぁ、ちょっと狭いかもだけど、そこは我慢してね」
そう言えば、そのクラリッサは?
お手洗いに行くと言ってから随分経つが……。
「もしかしたら部屋にいるかもなのです」
「呼んで見るといいわ!」
「そうだね。遠慮なくどうぞ」
それもそうかとあなたは部屋の扉をノックした。
『……どうぞ』
部屋の向こうから声。クラリッサの声だ。
入れということだろうか?
あなたは誘われるがままに扉を開く。
すると、明るい部屋があなたを迎えた。
部屋の中では燭台に何個もロウソクが灯されている。
蜜蝋によるロウソク特有の芳香が立ち込めていた。
その淡い光に照らされるクラリッサの姿。
「あ、あのね、これは私の趣味とかじゃなくてね、あなたへの謝意の表明に意見を募ったら、過激な服装で迎えるべきだって……」
それは、ほとんどが素肌だった。
クラリッサの滑らかで美しい肌が光に映える。
全身をピカピカに磨き上げて来たことが分かる。
クラリッサから漂うのは、あなたを甘く誘う香り。
「だ、だからね、お礼は、わたし……よ?」
肌に纏うのは、細い布切れが1本だけ。
それは金の飾り糸が使われた以外は、赤いだけの布で。
それはいわゆるリボン、それもプレゼントの包装に使うやつで。
つまり、なんだ。この極上の少女はあなたへのプレゼント?
「ごゆっくりどうぞなのです」
「じゃあ、私たち隣の宿舎で世話になるから……」
「明日の朝になったら帰ってくるわね!」
万全のお膳立て、それを応援する声。
あなたの前にはご馳走。
クラリッサは以前に抱いてとあなたに言った。
つまり、これは食べていい女の子。
あなたの理性は崩壊した。
文字数はどの程度が好ましいですか?
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2000文字前後
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3000文字前後
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4000文字前後
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1万字前後