あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 カーマイン姉妹の丁重なおもてなしを受けたあなた。

 クラリッサをそれはそれは丁寧に可愛がった。

 これでクラリッサも立派な大人だ。

 

「見た目が幼い自覚はあるけれど、年齢で言うとちゃんと大人なんだからね?」

 

 ぷんすこと怒られてしまった。これは大変失礼した。

 まぁ、以前にも20は過ぎていると言っていたか。

 

「まぁ……私たちはタイトのサイキックで生成された分身みたいなものだから、年齢を適用していいのかもわからないけれどね」

 

 それもそうだ。

 まぁ、タイトと同じと言うことでいいのでは。

 

「じゃあ1000歳くらいね。年金の受給はまだかしら……」

 

 そんなに長生きしてるの……あなたは思わず驚く。

 ドラゴンくらいでしか聞いたことのない長寿だ。

 

「人類の科学、その到達点においては寿命は克服し得る一要素でしかないわ。まぁ、タイトは単にサイキックの作用で不老長寿なだけなんだけど……」

 

 なるほど。それでアルメガ誕生以前から生きていると。

 おや? アルメガはもっと昔に誕生したものなのでは?

 1000歳だとアルメガ誕生から遥か先のような……。

 

「そーね。いまは西暦1万年、100世紀くらいのはずだから。タイトから聞かなかった? サイキックのクローンが大量に作られたって」

 

 つまりなにか。タイトもそのクローンとか言うのだと?

 

「そうよ? 1000年くらい前に作られたクローン。まぁ、自己は引き継いでいるけれどね。タイトのサイキック因子は古く強大なもの。『アルメガ』同様、サイキックを媒質にして自我総体を維持できるわ」

 

 つまり?

 

「まったく同じ能力を発現したクローンがいれば、その能力からタイトと言う自己を再構築できるの」

 

 実質的に不滅の存在と言えるのでは、それは。

 

「完全な細胞を元にクローンを作っても、同じ個体って早々作れないのよ。遺伝子が発現するかどうかは色んな要素が絡むから。この7000年で、たった1人しか成功しなかったくらいにね」

 

 クローンと言うのはよく分からないが。

 限りなく似通った存在を作る技術と言うのは分かる。

 そして、その技術をもってしても同じ存在を作るのは難しい。

 そうなると、自然かつ偶発的に誕生するのは奇跡以上の奇跡か。

 不滅ではあるかもしれないが、机上の空論に近い。

 

「そうね。『アルメガ』ほど不滅じゃないの」

 

 光を媒質にして存在するとか言うインチキ存在だったか。

 

「そう。サイキックを用いて光を媒質にしているから、光かサイキック、どちらかを封鎖しないといけないわけね。あの超絶のサイキック、どうやって封鎖したものか……」

 

 さぁ? 残念ながらあなたはサイキックではない。

 そのあたりは力になれそうもない。

 

「まぁ、そうよね」

 

 クラリッサが大きく溜息を吐く。

 申し訳ないが、サイキックに関しては本当に門外漢なのだ。

 あれは生来の素質が物を言うので……。

 

 

 

「昨夜はお愉しみだったわね!」

 

「昨夜はお愉しみだったのです」

 

「昨夜はお愉しみだったね」

 

 起き出して部屋から出ると、カーマイン姉妹にそう言われた。

 なんか以前タイトにも同じことを言われたが。

 その文句は流行っているのだろうか?

 

「いや、うーん……様式美なんだよ。8000年くらい前から受け継がれる伝統と言うか」

 

「すごいわよね。元ネタのゲームのことも知らない人が多いのに、この文言だけは今も受け継がれてるわ」

 

「とりあえずエロいことした後の相手にはこれ言っとくことになってるのです」

 

 8000年……それはまたなんとも。

 それほどまでに長い伝統があるとは思わなかった。

 文化的、宗教的に重大な意味のある言葉なのだろう。

 あなたは感慨深くその言葉を受け止めた。

 

「いやぁ、それにしてもすごい夜だったわ。まったく、あんなにすごい経験ったら早々ないわね」

 

 クラリッサは広間のイスに座ると、笑いながらそのように言う。

 

「私たちと来たら地球時代は降下、偵察、ご飯、ゲーム、寝るの繰り返しで。まぁ、そもそもそれを言ったら第4特殊降下兵団、タイトチームはみんなそうだったわけだけど」

 

 仕事して遊んで、後は寝る。まぁ、健全と言えばそうだが。

 健全な青少年ならエッチなことにだって興味は湧くだろうに。

 タイトたちは分身と言う事情もあって、当人同士で発散とはいかなかったのだろう。

 

「流石に周りに自分自身がいる中で、ねぇ? 自分で自分を慰める、セックスはスポーツ、シングルの部を開催とはいかないわけでしょう?」

 

 挙句、自慰行為すらロクにできなかったと。

 それはもはや人格が歪むほどの苦痛では……。

 

「それはクローンとして再誕しても変わらないわけで、熟成され切った童貞と処女が勇気を振り絞って男とか女引っかけたり買えるわけもないわよね」

 

 少なくとも1000年は生きているというのだから。

 熟成され切った歪みは相当なものだろう。

 サツキのやや極まったところのある性癖とかもそうだし。

 

 クラリッサは性癖的にはノーマルで逆に困惑するところだったが。

 典型的な高年齢の処女みたいなところはあったので、いろいろ難しくはある。

 高年齢の処女も、高年齢の童貞も、異性に慣れていなさすぎるところがある。

 そのため、異性の性器がグロテスクに見えてしまい、異性とヤれないというのは珍しくない。

 クラリッサもたぶん、男とはヤれないのではないだろうか。

 

「そこに来て超絶のベテランが手取り足取り腰取りと教えてくれるものだから、もうアダルトパワーには参っちゃったわ!」

 

 そこまで言い切って、クラリッサがほうとため息を吐く。

 そして、やや紅潮した頬で、感慨深そうにつぶやく。

 

「ああ、気持ちよかった。私はもう、閨のことときたら、全く夢中なのよ。いよいよこんどは、地獄で房事をやるかなってなもんよ」

 

 なるほど、いい思い出になったならよかった。

 また今度、たっぷりと遊んであげるとしよう。

 

 

 

 クラリッサの言葉もあり、他の面々もほどほどに興味が湧いたらしいが。

 さすがに昼間から床入りするわけにもいかない。

 昼間はパーティーの準備で忙しく働いている最中なのだから。

 

 そう言うわけで、商業スペースの方に買い出しへ。

 今日はジューンの移動商店が来る予定なので逃せない。

 食品類は手持ちのものがいくらでもあるわけだが。

 酒類に関しては自分自身で頻繁に消費するのであまりないのだ。

 

「げぺぺぺぺ……これはこれは、ようこそおいでくださいました『紅の聖女』様。げひゃひゃひゃ!」

 

 あい変わらずの三下口調のジューン。

 見た目は黒髪をツインテールにした可愛らしい少女なのだが。

 なにをどうしたらこんな口調になるのかは謎だ。

 

「前回ご注文いだいておりやした酒類に関しては、こちらのリヤカーにご用意してござぁます! どうぞおあらためくださいませ!」

 

 とのことで、あなたは注文した品の確認を行う。

 ジューンも同様にメモと照らし合わせながら商品の確認をしている。

 

「これほどたくさんの酒、パーティーでもおやりになるんで? 豪勢なパーティーになりそうですねぇ!」

 

 ご明察と言ったところか。

 世話になった『トラッパーズ』の者たちへの礼のパーティーをするのだ。

 

「ここの『トラッパーズ』の皆さぁ方は、誰もかれも親切で丁寧でやすから気持ちは分かりまさぁ。ニコニコ現金払いで無暗な値切りも出し渋りもしないで、本当に優良なお客様ばかりでござぁますからね」

 

 あなたも同じ気持ちだ。

 ここの『トラッパーズ』のメンバーは礼儀正しい。

 とても統制が効いていて、軍人だと言うのもうなずける。

 規律正しく高潔ながらも気さくな感じだ。とても付き合い安い。

 

「ええ、ええ。まったくまったくそのとおり! 『グレイスメイデン』の皆さぁ方とご同僚とは聞いておりやしたが、ほんとにまったく立派な将校さンでござぁますとも。あたしゃは皆さんのためなら骨を折ってもいいと思っておりますんでここに商売に来てるんでさぁ」

 

 こんなところに商売に来ているのはそんな理由だったらしい。

 もちろん金になるから商売に来ているのもあるのだろうが。

 それでもこんな僻地にまでくるのは相当な苦労があるだろう。

 その苦労を甘受してでも来るのは人品に惚れているからと。

 行いと言うのは他人を通して自分に帰ってくるものだと言うが、まさにその典型か。

 

「まぁ……以前、相当稼がせていただいたんで、その恩返しもありますがねぇ……げえっへっへっへ……」

 

 なんかでかい商売をしたらしい。

 その商売ができたのも、ジューンの誠実な商売が故だろう。

 タイトたちがジューンを重用するのもそれだ。

 

 タイトたちの行いがジューンを引き寄せたのだとして。

 そのジューンを重用するのは、ジューンの誠実な行いがゆえ。

 そう言った善意と誠意の輪が繋がった、気持ちの良い関係というわけだ。

 

「そ、そう言われると照れやすねぇ……まぁ、なんです。皐月さんはご存知で?」

 

 もちろん知っている。

 性癖がヤバめで、頭の具合もややヤバい美女だ。

 あなたはそんなヤバ女のママをして甘やかしている。

 

「ここに来てもっとヤバい女湧いてきやしたね……ま、まぁ、その皐月さんのお持ちのサイキック……武器だの兵器を召喚するアレでござぁますが」

 

 実際に武器を召喚しているのは見たことがないが。

 タバコを召喚しているのは見た。包み紙が綺麗だったのであなたも貰った。

 

「アレに似たことが出来るお方が居やしてねぇ……それで相当荒稼ぎさせていただきやした。まァ、あたしゃも相当アレコレ格安で売りやしたがね」

 

 なるほど。あれで手に入る武器類を買い取って、代わりにあれこれ格安で売ったと。

 サツキの持っている武具類がどれほどの性能かは知らないが。

 無制限に手に入るものならば、無制限に稼げるということでもある。

 相当な巨利を得たことだろう。便宜を図るのも当然か。

 

「ま、そう言うわけでござぁます……っと、これで終いでござぁます」

 

 ジューンのチェックリストをあなたも確認する。

 あなたも注文した通りの品があることは確認した。

 料金は先払いで渡してあるので、商品はすべて受け取った。

 

「げへへへへ……ニコニコ現金先払いの大商い、まことおありがとうござぁます! 今後ともごひいきに!」

 

 あなたは頷く。誠実な商売をしてくれてありがたい限りだ。

 まぁ、その誠実さがちょっとニクいところもあったりするが。

 金だけとって逃げでもしたら、取り立てる権利があなたにはある。

 地の果てまで追いかけて代金分を体で堪能したかった。

 正統取り立てックス……代金分を堪能できる最高のプレイだ。

 むしろ逃げててくれた方がありがたかったくらいだ。

 

「……!? な、なんかゾワッと来やしたね……か、風邪でもひいちまったかな……」

 

 ずいぶんと勘がいい。

 あなたはそう思いつつも、態度には出さず笑顔で身体を労わってねと気遣った。

 

「げへ……どうも失礼しやした。では、毎度ありがとうござぁます! またの御来店を!」

 

 あなたは頷いて、ジューンの店を辞した。

 

 

 宿舎に戻ると、相変わらず『アルバトロス』チームの浴場は大繁盛していた。

 『トラッパーズ』の入浴好きはかなりのもので、日参している者も少なくない。

 日中も夜も大繁盛で、常に誰かしら客がいるほどだ。

 これでいままで風呂がなかったのが信じられないくらいだ。よく我慢していたものである。

 

「あっ。おかえり、ママ!」

 

 そして、その風呂の前ではサツキが商売をしていた。

 軍需品ならいくらでも召喚できるので、それを売っているのだ。

 

 タオルや石鹸、歯ブラシと歯磨き粉と言った衛生用品。

 風呂上りにピッタリのビールやラムネと言った嗜好品。

 一服して休むためのタバコに、疲れを癒す甘味……。

 そんな種々様々な雑貨を、格安で。結構繁盛しているらしい。

 

 現に、今もサツキが売っているタオルを肩にかけている者が風呂から出て来た。

 以前に何度か見かけた覚えがあるので、おそらく攻略班だろう女性だ。

 

「さーつきちゃん! はーあーい! もうお友達が出来たのかい? うん! みっちゃんって言うの! ラムネくれよ」

 

「忙しいやつだね……銅貨1枚」

 

「あいよ」

 

 銅貨と引き換えに受け取ったラムネを手に、近くの休憩所へ向かう女性。

 元々、あなたと『アルバトロス』チーム、そしてクロモリが整えた場所だ。

 あなたたちが朝食と夕食を摂るのにも使っているが、それ以外の時間は休憩所として開放している。

 

 そこにはサツキが用意したボードゲーム類やらが並べられており。

 マナーを守る限りは自由に遊んでよしと言うことになっている。

 まぁ、ボードゲーム中は菓子をつまみたくもなるし、タバコも吸いたくなるのが人のサガ。

 サツキが商売を円滑に進めるための、ちょっとした工夫だろう。

 あなたたちも夕食後に使わせてもらったりしているので文句はない。

 

「ママも、お風呂入っていくかい? 今は男は入っていないよ」

 

 『トラッパーズ』はとても仲がいい。

 そのため、以前は全員いっしょに風呂に入っていたらしい。

 元が同一人物とは言え、性別の垣根を超越しているのはすごい。

 

 そのため、誰もかれも気にせず混浴しているわけだが。

 さすがにあなたや『アルバトロス』チームは気にする。

 そのあたりを把握しておいてくれるのはありがたい。

 

「入るなら、石鹸とラムネサービスしとくよ」

 

 では、せっかくだから入るとしよう。

 クラリッサとの秘め事の痕跡がまだ残っている。

 

 女の子を堪能し、軽く用事を済ませ、朝風呂……。

 まったく、優雅な1日だ。

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