「おぉ……イピフィシスよ……イピフィシスよ……あるいはエピフェインよ……この者に新たなる光を授けたまえ……イピフィシスよ……」
「フーッ……フーッ……! せ、聖母様……お、俺に光をお授けください……ああ、ああ……」
救児院の宿舎を尋ね、キャロラインの担当部署に向かう。
以前、ボルボレスアスで大量に買い集めたタタミなるマット。
それを敷き詰めた屋内の訓練場で徒手格闘を教えるのがキャロラインの仕事だ。
以前に視察した際は、厳しくも的確に徒手訓練をしていたのだが……。
今日は、椅子にベルトでしっかり固定された少年と。
医療用のドリルを手にしたキャロラインの姿があり。
キャロラインはそのドリルを少年の頭に宛がっていた……。
「スタァァァァァップ! てめーは法を犯そうとしている! すぐに手を降ろせ!」
モモロウが飛び込んでキャロラインを止める。
「ほう……? 懐かしい顔ぶれだ……そうとも、思い出とは深く懐かしいもの……しかして、座り過ぎれば、饐えた匂いを放つもの……思い出とは椅子のように一時腰かけるにとどめるべきなのだ……クックック……」
「相変わらずよく分かんねーこと言うな。なにをしようとしてた? あ?」
「見て分からんか……?」
「分かんねーよ。よしんば分かるとして分かりたくもねーよ」
「ならば教えよう。これはトレパネーション……奇跡の医療だ……真の叡智に目覚め、
「どうするよ」
モモロウが問うて来たので、有罪と答えた。
まさかこんなことをしているとは思わなかった……。
「だとよ。大人しくしろ! テメーを牢屋にぶち込んでやる!」
「おお、貴公。なにをする。おお、貴公」
「大人しく……おと……おと……! こいつすげぇ力してんだけど!」
モモロウがキャロラインを捻じ伏せようとする。
が、キャロラインがそれに抗い、拮抗した様子を見せる。
モモロウの剛力に抗うとは、キャロラインは見た目によらず力が強い……。
あなたたちは総出でキャロラインの捕縛にかかった。
さすがに多勢に無勢でキャロラインの捕縛には成功。
あなたはキャロラインに厳しい目線を向け、何をしていたのかと尋ねた。
「先ほども述べたように、トレパネーション手術だ……奇跡の力に目覚める……案ずるな……私は幾度となく施術を成功させてきた……」
「コイツ、クビにした方いいぞ」
そうするつもりだ。
さすがにこれはちょっと。
「なに……? 何ゆえそのようなことをする……?」
「おまえはやっていいことと悪いことの区別もつかんのか?」
「無論つく……そう、私のようなか弱い女を乱暴に組み伏せるなど……紳士たらんとするならば、すべきではなかろう……」
「コイツ、この期に及んで被害者面なの無敵すぎねぇ?」
何より一番の問題は、自分をか弱い女だと思っていることだと思う。
何をどう間違えたらキャロラインがか弱い女になるのか。
レウナの拳、膝蹴りを喰らって、1ミリも堪えた風な様子がなかったのに。
……もしや、そんなに頑丈だからトレパネーション手術を軽々に考えているのでは。
トレパネーション手術。
穿頭手術とも言うが、要するに頭蓋骨に穴を開けることを言う。
これは非常に危険な手術だが、これでないと救えない患者がいる。
打撃武器による殴打を頭部に受けた場合、傷次第で予後が違う。
打撲によって腫れが出るが、出血がない場合と。
打撲によって皮膚が破け、骨が取れるほどの場合。
どちらが重体化しやすいかと言うと、前者なのだ。
前者も軽傷なら死なないが、骨折するほどの殴打の場合は大抵死ぬ。
そこで皮膚を切り開き、頭蓋骨に穴を開ける。
すると、前者の場合も予後が良好となり、救命率が劇的に向上するのだ。
前者の傷を受けて死亡した者の頭部を開くと、血の塊が出来ていて脳が潰れているという。
そのため、その血が固まる前に、外に出してやることで救命できるわけだ。
「詳しいな……まるで脳博士だ……」
ここまで堂々と語ったが、実のところクロモリの受け売りである。
エルグランドではこんな医療技術が発達する余地がない。
回復魔法が非常に気安く使われているし。
手術して回復させるとなると、数週間から数カ月もの療養が必要だ。
治療費も療養費もかなりかかってしまうだろう。
なら、穴を開けるべきは頭ではなく首だ。
3日後に五体満足で蘇ってくる。金もほぼかからない。
「で……トレパネーションとやらすると、なにか変わんのか。勃起不全でも治るってか?」
「受けたいんですか? たしかに、モモって不能気味ですしね」
「ぜんぜん勃つわ!」
「でも、一晩で2回は厳しいって……その若さで……」
「俺は人間じゃねえんだよぉぉぉ!! 1日1回できる時点ですげーんだわ! これでもな! がんばれば3回まではできるしな!」
そう言えばモモロウはドラゴニュートだ。
繁殖力が低く、それに伴って性欲も非常に薄いとされる。
それこそ月に1回するかどうかとか、そのくらいとのこと。
ただし、妊娠可能な周期に重ねさえすれば、妊娠率はほぼ100%らしい。
子作りを制御しやすいと言う意味では面白い進化の仕方かもしれない。
しかし、同じドラゴニュート同士ならともかく。
人間からドラゴニュートの男がどう見えるかと言うと。
月1でしかできない不能野郎に見えるわけで……。
「大体1回しかできなくたって、1時間持続させりゃあいいだけの話だろーが!」
「
「制御してんだよ制御! 1時間かけても出ねぇわけじゃねえわ! お相手した子はみんな満足させとるわ!」
まぁ、モモの下半身事情はともかくとしてだ。
実際、トレパネーションをすると何の意味があるのか。
あなたの知る限りでは、頭部外傷への治療効果しかないはずだが……。
「先ほども言ったであろう……真の叡智に目覚め、
なんだ、松果体って……。
人間の脳にそんな怪しい部位ある?
「ある……! トレパネーションにより、松果体へと日光を注ぐのだ……! さすれば、得られるであろう! 真なる叡智! 光を! 我ら闘士にもたらされる、叡智の光!」
あなたは困って他の面々を見渡した。
松果体と言うのがあるのかもわからないし。
そんなところに光を注いで効能があるかどうか……。
そう思っていると、コリントが頬を掻きながら口を開いた。
「あの、松果体って……あるのは後頭部じゃないかしら?」
あることにはあるのか……。
しかし、後頭部側にあるとしたら前頭部に穴を開けてもしょうがないのでは……。
「ほう……貴公……コリントであったか……存外、知るものだな……だが、わかっておらぬ。松果体とはそうではない……そうではないのだ……」
「なにがどう、そうではないのよ」
「そう……真なる神秘の概念において、位置や部位など、重要ではない……聖液を拝領するのだ……」
言いながら、キャロラインが妙なポーズを取った。
左手を胸に当て、右腕をうなじに当てる。
その姿勢を取って、軽く胸を反らし……キャロラインの額から、白い液体がねろねろと溢れて来た……。
「いやーッ! なんか出たぁ――――!」
コリントがのけぞって逃げる。
あなたは最近、頭部から変な汁出すやつが多いなと遠い目になった。
サツキが出していた提督汁とやらの亜種か何かだろうか。
「くふっ、くふはははは……くはははははははは! うっ! ふぅ……」
ねろねろと出ていた液体が止まった。
キャロラインが額の残滓をハンカチで拭いとる。
……額に穴とか開いてないように見えるのだが、どこから出ていたのだろう?
「それで、なんだったか。何か用か」
「お、おう……なんでトレパネーションが必要なんだ?」
「松果体に秘文字を刻むことにより、我ら闘士は交信が可能となる。高次元よりの誘いを受け取る奇跡……神秘の触媒たる聖液の拝領が為されるのだ」
「……これおまえのザーメンなん?」
「聖液だ。これこそが熱血たる闘士の用いる秘術の触媒なのだ。すなわち……これにより魔法の真似事が可能となる」
なるほど、そんなことができるとは。
でもそれでトレパネーションはどうかと思うの。
あなたは偽らざるを想いをそのように述べた。
「案ずるな。魔法の治療によって頭蓋の穴は塞がる。1度開ければ以降は開いている必要はない」
そう言われると、悪くない施術……なのか?
無許可でやっていたことは問題だが、子供たちのためを想ってなら……。
いや、でもやっぱりトレパネーションはヤバいぞ。
しかし、治療によって塞がるなら後遺症はないわけで……。
考えた末に、あなたは施術は許可を取ってからやるように……と苦言を述べるに留まった。
「左様か。では、以降はそのようにしよう。失礼したな」
分かってくれればいいのだが……。
とりあえず、少年は開放して施術はまた後日と言うことで……。
少年を開放して、宿舎に帰し。
それからキャロラインに本題を話す。
「まぁ、待て。客人を迎えて、一杯のコーヒーを出さぬのも無作法というもの。手慰みだが飲んでいきたまえ」
今日のキャロラインはなんだか理性的だ。
まぁ、女性から出されたものを断る理由もない。
あなたはせっかくだからと饗応を受けることにした。
「コーヒーね……久し振りに飲む気がする」
「キャロはコーヒー党なのね」
「儂も嫌いではないな」
そんな話をしている間にキャロラインがポットを手に戻って来た。
よく磨かれて美しく輝くポットで、大事に手入れされていることが分かる。
小ぶりなコーヒーカップに注がれる、黒く豊潤な香りの液体。
それが全員に供され、同時にクッキーなども供された。
普段の奇矯な振る舞いとは違い、もてなしはまったく普通だった。
いつもはなんか変なモン入ってないよな……とか不安になるような言動なのに。
「あら、おいし」
「なんか粉っぽくねぇ? いや、ウメェけどさぁ」
「若干とろみありますね。でも美味しいですよ」
「なんかこれ、コーヒー以外も入ってねぇ? うーん?」
「なるほど、チコリ入りですか。カフェイン摂取量が抑えられて体にいいのですよね」
チコリと言えばカイラも使っていた。
キャロラインも使っているらしい。
まぁ、あれはあれで独特の味がしてうまかった。
使って悪いということもあるまい。
「どうかね、諸君。コーヒーはうまかろう」
「悪くねぇな。でも、キャロラインは紅茶とか飲んでるイメージあったわ」
「私は紅茶は好かん。あれは色水だ」
「色水て」
「そこらで手に入るものには毒物が含まれている。紅茶など飲むべきではない」
たしかに安物だとそう言うこともある。
かさましのためにそこらへんの雑草がぶち込んであったり。
1度お茶を出した後の出し殻を、顔料で着色してたり。
その顔料が猛毒だったりすることも稀によくある。
エルグランドもそう言う食品偽装は割とよくあったが。
キャロラインのいたところもそんな感じだったらしい。
「さて、それで、私に何用だ?」
あなたはキャロラインに、故郷であるイリーズに用事があると告げた。
「ほう……イリーズに……して、私に何ができる?」
「端的に言うとだが、そのイリーズとか言うところにいるボケが、クロモリに悪夢を見せている」
「それはいい。貴公、存分に狩り、殺したまえよ。それが唯一の解決策なのだから」
「そのつもりだ。だが、俺たちだけじゃ行くのに問題があってな」
「ああ……なるほど。読めたぞ。私を水先案内人にしようと、そう言うことだな、貴公」
あなたは頷いた。
キャロラインの助力が必要なのだ。
イリーズへと行ければ、後は自分たちでなんとかする。
なので、どうかイリーズへの誘導。それだけはお願いしたい。
「その程度、まったく容易いことだ。貴公には世話になっている。案内しようではないか」
助かる。あなたはキャロラインに礼を述べた。
「よい、よい。して、私はどうすればいい?」
「まず、キャロラインさんを転移用の触媒にします。転移します。それだけです」
「私が能動的にすべきことはない、そのような理解でよいのか?」
「はい。じゃ、やります」
もうか。
あなたは手にしていたカップをテーブルに置く。
「俺らは留守番してるわ。頑張れよ。無事で帰ってこいな」
「モモがクロモリさんと浮気しようとしたら物理的に女の子にしときますので、安心していってきてくださいね」
「やめてもらえるか?」
あなたはメアリの提案に、そこまでしなくていいよと苦笑した。
クロモリが浮気したらまた寝取り返すまでだ。
あなたの性技がモモロウより上であり、クロモリの主に相応しいと。
その身に刻み込み、脳ではなく脊髄にまで理解させる。
「はーん……よし、クロモリを俺のでメロメロにしてやるか……」
「1日1回しかできないのに?」
「回数の問題じゃねえ! 持続時間と、満足感の問題だ!」
「でも、夜明け頃に起きて、もう1回やりたいって言われたら?」
「そ、そん時は、頑張るさ!」
「クロモリさんが、気持ちよくしてあげたいんです……とか言って、挟んでくれたり、咥えてくれたりしたら?」
「さ、3回くらいなら、全力でやればなんとか……! 精力剤とか飲めば……! そ、それに前戯なら出るまでやんなくてもいいし……!」
まぁ、精々頑張るといい。
あなたはモモロウにそのように余裕の笑みを送った。
「はぁーんッ!? あのメスガキ、俺のこと舐めやがってェ! 俺のチンチンがデカくて強くて安心なことを教えこんでやらァ!」
モモロウが猛っている。
そんなモモロウにあなたは笑みを送る。
クロモリはもちろん寝取り返すわけだが。
それはそれとして、後々にはモモロウにもお仕置きをする。
またそのうち、モモロウたちを女の子にする機会もあるかも。
その時にはそれはそれはたっぷりと虐めてあげないと。
モモロウにクロモリを寝取られた苦痛……。
それを教え込まなくてはいけない。
例えばそう、トモをたっぷりと調教し、モモよりもイイと叫ばせるとか。
まったく、楽しみだ……。
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