さておいて、野営である。
今日は調理をすることにあなたは決めていた。
特に理由はなく、なんとなく料理をしたい気分だったからだ。
「へぇ、料理をするのね。そこらで食べられるものでも集めてくる?」
あなたは断った。理由は単純で、どれが食べられるかわからないから。
エルグランドにおいては食べられるものを集めるなど朝飯前だったのだが。
もしも毒のあるものなどを間違って拾ってきても、見分けることができない。
「なるほど。確かに私も完璧とは言えないものね」
なにより一番の問題は、あなたには毒がほぼ効かないことだ。
毒があるものを調理して、味見をしても、気付くことが出来ない。
一応毒による不調は起きるものの、生命力総量が多過ぎるのだ。
常人なら100度死ねる猛毒も、あなたなら掠り傷だ。
それこそあなたの生命力は常人の数千数万倍なのだから。
なにより生命力の強靱さは解毒能力の強靱さも意味する。
不調に気付く前に解毒が完了していることもザラだ。
ゆえに猛毒シチューを作ってしまった場合、あなたは平気だ。
だが、他の3人はのたうちまわって苦しむかもしれない。
「ああ、そう……」
そうなっても解毒の手立ては持ち合わせがある。
が、だからと言って苦しませたいわけでもない。
なので今回は手持ちの食材を使って調理をすることとした。
あなたは手持ちの調理器具を取り出してさっそく料理の準備を始める。
「……あなたそんなものまで持ち歩いてるの?」
レインが呆れたような眼で見て来た。とても便利なのだとあなたは反論した。
「いえ、まぁ、便利そうなのは分かるけど……そこまで本格的な調理器具を持ち歩いてるとは思わなかったわ」
持ち歩けるから持ち歩く。それだけの話である。
あなたはいつも通りに卵を取り出し、それを用いて調理を始めた。
出来上がった料理を次々とテーブルの上に並べる。
すると、フィリアとサシャが喜色を浮かべた。
「わぁ! すごく豪華ですねお姉様!」
「デザート付きですか? すごいです!」
「おかしい……! 絶対におかしい……!」
サシャとフィリアが賞賛する中、レインだけが理不尽を口にして現実を呪っている。
あなたにはなにがなんだかよくわからない。
あなたが用意した夕飯は野営と言うこともあって2品のみだ。
メインディッシュはアツアツほくほくのイモのシチュー。
彩り豊かな野菜に、ごろごろイモ。そして肉の滋味豊かなシチューだ。
チキンスープストックをふんだんに使っており、店に出しても恥ずかしくな逸品だ。
そしていつかも食べた、ふかふかのパン。
バスケットに山盛りのパンを食べたいだけ食べる。
これもあなたが作ったが、料理したわけではない。
そして、デザートには少女風レアチーズケーキだ。
やはり、作ったあなたからしてもどこが少女風なのかは不明だ。
だが、これも考えるのではなく感じるものなのだ。
きっと、ドントシンクフィールと言うやつだと思われる。
飲み物にはミルクを用意してある。
あなたの『四次元ポケット』にストックされたペット産ミルクだ。
ストックは膨大で、いくら飲んでも尽きることは早々ない。
「炭火を使ってレアチーズケーキ……!? 意味が分からない……! そもそも卵しか使ってなかったじゃない……!」
よく分からないクレームをつけられ、あなたは首を傾げた。
分からないなら分からないなりに納得するしかないのではないだろうか。
あなたがレインにそのように告げると、レインは諦めたような笑みを浮かべた。
「なにがおかしいのか分からないっておかしなことする人に言われたわ……」
「ご主人様はそう言う人ですから……ええと、諦めてください」
「そうする……」
諦めきった顔でレインは頷いた。
なにがおかしいというのだろうか。
あなたにはさっぱり分からなかった。
「ごほん……シチューとケーキね。野営にしては豪勢ね!」
レインはなにやら空元気を出しているようだ。
大丈夫なのだろうか?
仲間たちと話し合っているだろうか?
「話し合いが通じないから諦めてんのよ! 元凶がなにをほざくか!」
あなたは納得いかなかったが、とりあえず自分が悪いらしいことは理解した。
やはり、ところ違えば常識も違う。
そう言った差と言うものはたしかにあるのだろう。
異文化理解と言うのは実に難しい。
「ええ、そうね。私もエルグランドとやらの常識が異次元過ぎて理解の範疇を超えていると実感させられたわ」
たしかにエルグランドはおかしいところがある。
それはあなたも認めるところだ。
あなたからすると、そうかな? と思うことでも、別大陸から見れば違う。
そのため、エルグランドがおかしいという点についてはなんらの否定もしなかった。
「さぁ、食べましょうか。あなたの料理はおいしいから楽しみだわ」
「そうなんですね……お姉様の手料理……な、なんだか、胸がドキドキしてきました」
期待に応えるだけのものは作って見せたとあなたは自負している。
そのため、なんらの気負いもなく、遠慮せずにお食べと促した。
夕飯は好評に終わった。
文字数はどの程度が好ましいですか?
-
2000文字前後
-
3000文字前後
-
4000文字前後
-
5000文字前後
-
6000文字前後
-
7000文字前後
-
8000文字前後
-
9000文字前後
-
1万字前後