「『アルメガ』も『インメタル』も、その本質は天体制圧兵器」
「それはそのまま、私たちの存在規模も天体規模ってこと」
「惑星質量の個。さぁ、どう戦う?」
『インメタル』が、加速度的に大きくなっていく。
それは瞬く間に見上げることすらもできないほどの巨躯へ。
まさに、大地を覆う神話の巨人としか形容のできない姿。
この夢の領域にすら収まらないほどの巨躯。
領域の境を引き裂き、次元構造そのものを破壊して君臨する。
その指先に、ひとつの町が乗るだろう。
否、その指先に国が興り、その国同士での戦乱すら起きうるだろう。
『インメタル』のスケールとは、それほどのもので。
その中で、ひとつの生態系が、文明が完結し得るほどの。
あなたはどうしていいか分からず、でたらめに魔法を乱射した。
まだ手元にあった『呪詛の祈祷書』から『たいよう』『ほうかいのおと』『うみのかなた』『とおいそらへ』『つき』を連打したのだ。
「ばかばかばかばかしぬばかしぬわばかばかばか!」
「『神話級呪文』を小パン感覚で連打してるんですが!」
「は、は、走れぇぇぇ!」
あなたがむちゃくちゃやってる中、他の面々は必死で逃げ惑う。
転移魔法で離脱できれば速いが、危険すぎてできない。
『インメタル』はこの次元界の構造そのものを破壊しているのだ。
有視界内を目標に転移するならともかく。
記憶を頼りに「あそこに飛びたい」などとやったらどうなるか。
その「あそこ」とやらがなくなっていたらどうなるか分からないし。
最悪は『インメタル』に破壊された空間内がそこだとどうなることやら……。
ゲートまで走って、そこから離脱するしか手がないのだ。
そのためには『インメタル』を迎撃するしかない。
あなたの放つ『たいよう』による超大規模爆発。
『ほうかいのおと』による崩壊音波攻撃。
『うみのかなた』による500メートル級大津波で押しのけてみたり。
『とおいそらへ』で遥か彼方に追放してみたり。
『つき』で巨大な岩塊を召喚してぶつけたり。
それだけやっても、『インメタル』はまるで堪えた様子を見せない。
「もっと強いの! もっと強いのないの!」
「終末兵器とやらがあるんでしょう! 使ってくださいよ!」
いつになく焦っているコリントとジル。
あなたはよし来たと『四次元ポケット』から終末兵器を複数取り出す。
まずは小手調べと『てのひらのはめつ』をぶん投げた。
光の筋となって飛翔した『てのひらのはめつ』。
直径500キロはあろうかと言う岩塊を握り潰していた『インメタル』に激突し、起爆。
その腕を根こそぎ吹き飛ばすほどの超大規模爆発が発生した。
すごい! 『たいよう』なんか目じゃない威力!
あなたは『てのひらのはめつ』の初爆発に大興奮だった。
「反陽子爆弾にしても威力あり過ぎませんか……? 大陸が丸ごと消し飛ぶくらいの威力ですよ?」
「絶対にトン単位の反陽子入ってたでしょアレ!? どこで使うつもりだったの!?」
「じゃ、じゃが、威力はバッチシじゃ! さらにもう1発じゃ! 泣きを見せたらもう1発じゃぞ!」
あなたはエルマの促しに応じ、『てのひらのはめつ』を10個まとめてぶん投げた。
「マジでさらに持っとったんじゃが」
「なんで惑星1つ消し飛ばせるだけの爆弾を個人が所有してるの?」
「エルグランドの民だから……」
しかし、『インメタル』が『てのひらのはめつ』の脅威を正確に察知。
着弾する前に迎撃に移り、『インメタル』の遥か手前、あなたたちに比較的近い位置で火球が発生した。
あなたたちを地面に押し潰すほどの凄まじい衝撃波が駆ける。
相手も愚か者ではない。迎撃くらいはするか。
あなたは目くらましに『ナイン』をありったけ投げつける。
約150発の『ナイン』と、それに織り交ぜて『てのひらのはめつ』を40個弱。
あなたの持つ『ナイン』と『てのひらのはめつ』はこれでカンバンだ。
そして、空中で信じ難い規模の爆炎が花開いた。
全部まとめて迎撃するという単純な手段に出たらしい。
体表を構成する巨大な鉄板を発射するという至極単純な迎撃。
だが、1枚1枚が王都ベランサを覆いそうな規模の鉄板だ。
『ナイン』の爆風を余裕綽々で遮ってしまうほどだ。
そして、あなたと『インメタル』の間に横たわる、数百キロメートルの距離。
その距離を高速で駆け抜けて見えるそれ。
迎撃しなければ、あなたたちをひき潰すだろう。
あなたは『ポケット』から本気装備を抜き、『ファイアボール』を詠唱する。
空間位置指定をし、連続詠唱による多重発動。
範囲拡大1500倍の増強回路を増設しての発動だ。
都合20発のファイアボールのエネルギーが空間を伝播する。
数千億度の火球が鉄板を一瞬で熔解・蒸発させて消える。
「っょぃ」
「ぁゎゎゎ……」
「は、はわわ……びっくりしたぜ……」
あなたは凄まじい苦闘に思わず笑みがこぼれる。
強い敵、早い敵、硬い敵、いろんなのと出会って来たが。
ただただひたすらに大きい敵。それにここまで苦戦するとは。
大した強みにもならない特徴も、突き抜ければ違う。
大きいことは、ただそれだけで武器である。
その単純な理屈を改めて思い知らされた気分だ。
ならばとあなたは『ブラック・ブレイカー』を起動。
ロ・ラの魔科学文明の寵児、『ホワイト・ブレイカー』の強化版。
曰く、超高出力のガンマ線を高密度に照射すれば最強ではないか。
『ブラック・ブレイカー』は使用負荷をさらに上げて、威力を底上げしたもの。
『ホワイト・ブレイカー』で間に合わないことなんてまずなかった。
だから、『ブレック・ブレイカー』の無意味なはずの威力が今は愛おしい。
照射される漆黒の光線。
手を突き出して受け止めようとした『インメタル』。
光線の命中した部位が、ぞりりと抉れて消えた。
超高出力ガンマ線による、力づくでの
防御不能の光線により、『インメタル』の腕を根元から切断する。
さぁ走れとあなたは仲間たちに促す。
手を切除すれば、少しの間は攻撃できなくなる。
今のうちにゲートに辿り着くのだ。
「必死で走ってんだよコレでも!」
「って言うか、飛空列車の発車駅まで行って、それから月まで……?」
「無理よ死ぬわ……!」
喚くハウロ、嘆くコリント、絶望するジル。
全員が苦境にあるが、気合で頑張ってほしい。
あなただって頑張っているのだから。
「わかってるけど! わかってるけど!」
「どうしたらええんじゃ……」
「あたしらじゃ手も足も……」
などと言っている間に、遥か遠方の『インメタル』が腕を再生させた。
鋼色の、顔貌すらないのっぺりとした巨人が再生した腕を突き出す。
突き出された前腕から、なにか輝くものが無数に放たれた。
それは瞬く間に距離を超えて飛来し、あなたたちの周囲に着弾。
強烈な熱波と爆風を巻き起こしていく。
あなたは自分基点にした『崩壊の音色』を起動。
攻撃範囲100倍にした上での魔力制御。
効果範囲内にさらに音響作用の減殺を創り出す。
仲間たちには音を聞こえさせつつも、ダメージを及ぼさない。
そのような神業染みた精密な呪文制御を行い、爆風を相殺する。
「なんですかこれは!」
「なんらかの重粒子ビームよ! 荷電粒子砲!」
「無敵の魔法でなんとかしてくれよォ――――!」
ハウロが泣き言を言うが、そんなのは聞きたくない。
あなただって一生懸命頑張っているが、これでは手が足りない。
『インメタル』の攻撃を迎撃しながら、牽制に攻撃もする。
ただでさえ移動しながら魔法を使っているのだ。
大き過ぎて距離があり過ぎる。それゆえ後手後手なのだ。
せめて、迎撃か牽制のどちらかを誰かが担当してくれないと。
もう少し派手なアクションを取るには時間が足りなさすぎる。
「分かりました、遠距離攻撃は私が迎撃します」
「わ、私もやるわ。荷電粒子砲なんぼのものよ! そのくらいなんとかして見せるわ!」
「じゃ、じゃあ、あたしはあんたのことを体を張って守るよ!」
「儂は、いざという時に備えて魔法を準備しておく……1度くらいは攻撃をなんとかしてみせる」
「ふぅむ……ならば、私は切り札を用意しておくとしよう……熱血の闘士の誇りに懸けて、1度くらいは痛打を与えてみせる……」
「俺は……その……あの……おっぱい、揉む……?」
揉みたい気持ちはやまやまだが、さすがに忙しい……!
あなたはハウロの精一杯の気遣いを泣く泣く断った。
あなたの要請に応じ、全員が各々の力を発揮しだす。
あなたたちは正しく冒険者たちとして動き出した。
『インメタル』と言うあまりに強大な敵を前にしたとしても。
その能力値で足元に及ばないのだとしても。
出来ることはいくらでもあるのだということを教えてやろうではないか。
あなたたちは無力な、踏みつぶされるだけの虫けらではないのだと。
コリントが言うところの、荷電粒子砲とやら。
それが無数に飛来してくる。
ジルとコリントが踏み込み、消失。
その一瞬後、数百メートル上空に出現。
拳打、蹴りで荷電粒子砲なるものを弾き飛ばしている。
武僧の技のひとつに、そうした飛来武器を弾く技があるが。
荷電粒子砲なるやつにも使えるとは知らなかった。
「すっげ……荷電粒子砲ってそんなカジュアルに防げるものだったんだ……」
ハウロがぼやく。
それを後目に、あなたは連続詠唱に連続詠唱を重ねる。
呪文強化を付与した呪文を連続詠唱で複製するのはかなり難しい。
超絶の実力を持つあなたですら、3回複製できるかどうか。
その3回を、どれほど厳しい状況でもやってのけるのが冒険者だ。
そして、あなたは生粋の冒険者である。
距離拡大、呪文数増加、範囲拡大、威力増強などの増強。
それらを付与した『大源の波動』。純粋魔法属性の爆破だ。
『インメタル』に届かせる、それだけで距離拡大の増強に数千倍が要求される。
数千倍の増強はそのまま数千倍の魔力消費となって現れる。
呪文数増加の増加分だけそれは増え、範囲拡大でさらに数千倍。
あなたのあまりにも膨大過ぎる魔力容量ですらも厳しい負担。
1発で並の魔法使い数百人が死に至るほどの激しい消費。
いったいどれだけこの攻防を続けていられるかわからない。
魔力を回復する術がないではないが、無限ではない……。
戦いの土俵に立つだけでこんなにも苦しい……!
あなたは血反吐をぶちまけながら戦っていた頃を思い出す。
そう、昔はいつもこうだった。いつもギリギリだった。
必死で戦っても届かなくて、成すすべなく殺されることだってあった。
それでもあきらめなかった。必死で戦っていた。
限界の壁に頭をぶつけ、絶望的な強敵にくじけ。
あなたはいつだって挑戦者だった。
負けたくなくて、だから死ぬほど頑張って来た。
今日も負けたくない。
あなたは全身全霊の宣言詠唱をした。
『大源の波動』が炸裂した。
鋼色の巨人、その巨躯が純粋魔法属性の波動に砕かれる。
手足を砕き、胴体を吹き飛ばし、その全体の3割を一瞬にして破壊する。
『インメタル』の躯体が蠢き、破壊された部位を捕獲、吸収し、再生する。
真っ先に再生が完了した右手を開き、こちらへと向けて来る。
その手のひらには巨大な穴が開いており、そこから飛び出して来たのは……。
真っ黒い、球体? あなたの眼には少なくともそう見えた。
それは近付くにつれ、赤い光を帯びだしていく。
ゆっくりして見えるが、距離が距離だ。
実際の速度は相当なものなのだろう。
それを見て、コリントが血相を変えて叫び出した。
「エルマ! 1回くらいはなんとかして見せるのね!? なんとかできるのね!?」
「う、うむ。あれはそんなにまずいものなのか?」
「マイクロブラックホールよ! 近付いたら問答無用で
「どういう破壊をもたらすんじゃ? 着弾した場所で爆発するのか?」
「近付くにつれて全てを吸い込んで、やがて吸い込めるものがなくなると蒸発するわ。その時に強力な目に見えない光線を発すると思ってちょうだい」
「20秒ほど時間を飛ばす。それでなんとかなるな?」
「そんなこと出来るの!? やってちょうだい!」
「ええじゃろう」
エルマが複数の魔法を連続で発動させていく。
そして、あなたたちを巻き込んで、エルマが転移魔法を発動させた。
「受け入れよ! 飛ぶぞ!」
あなたたちはその空間から消える。
その際に、あなたは奇妙に感覚がブレると言うか、引き伸ばされるような違和感を覚えた。
この感じ、転移を阻害されている感覚に似ている……?
あなたが不思議に思っている中、物質世界ではマイクロブラックホールが地表に着弾。
周囲の全てを吸い込み、飲み込み、それらをすべて分解し、エネルギーに変えて放射。
膨大なガンマ線を撒き散らしながら蒸発していった。
その甚大極まる破壊が放たれた後、あなたたちは現実世界へと出現する。
転移してから、およそ20秒の後のことだった。
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