あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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「すごい……! 気持ちいいです! あの2人よりもずっと、ずっといい……! 私、あなたでないと満足できなくなってしまいます!」

 

「うわ、わぁ……わあぁ……お、お母さん……すごく……すごい、エッチだ……」

 

 あなたは2人を纏めて可愛がった。

 克己の若々しくも熟れた情熱を秘めた肉体……。

 睦美の瑞々しい若さに満ちながらも柔らかな肢体……。

 

 どちらも最高においしい。たのしい。エロい。

 もう、張り切り過ぎて2人で10回くらいしてしまった。

 克己も性欲が強いという自己申告通りの欲深さで、5回を超えてもねだって来て……。

 結局、睦美と3回、克己と7回と欲望の限りを尽くした。

 まったく大満足で気持ちよくて、たまらなかった。

 

 そして、あなたは完全にダウンした。

 

 

 

「お母様も風邪ひくんですね……38度2分。高熱ですよ」

 

扁桃炎(へんとうえん)だな……なんか不衛生なものとか口にしなかったか?」

 

 不衛生なものなど口にしていない。

 酒も控えているし、辛い物も控えている。

 ごく普通の食品類くらいしか口にしていない。

 強いて言うなら、大和と克己と睦美のやらしい液をたくさん飲んだくらいか。

 

「原因それだよ……」

 

 大和に呆れられた。原因それかぁ~……。

 

 

 あなたは睦美と克己をたっぷり可愛がった翌日、体調不良でくたばっていた。

 寝る前からなんか喉がかゆいような気がしていたのだが。

 起きてみたら高熱があるし、体はだるいし、喉は痛いし……。

 

 まぁ、べつに動こうと思えば全然動けるし。

 なんならこれからナンパに繰り出そうという意気込みもあるくらいだが。

 いま無理して動いたら絶対に悪化する確信がある。

 なので渋々ながらも大人しくしているというわけだ。

 

 しかし、カル=ロスと大和が診察してくれたが……。

 扁桃炎なる病気はちょっと聞いたことがない。

 手持ちの薬草類で対応できる病気なのだろうか。

 いつもは喉の痛みにはリコリスの煎じ薬を出すが……。

 

「薬局で喉の痛みに効く薬……でも、扁桃炎ってなると抗生物質だよなぁ、やっぱ。市販薬だと痛み抑えるくらいだし」

 

「そうですね……やはり、ここはひとつ、医者を呼びますか」

 

「ツテ、あんの?」

 

「はい。優花のお母様が正規の医師免許を持つ、闇医者です」

 

「闇医者なのに正規の医師免許持ってんのか」

 

「開業届け出さないで個人診療所を経営してるので、広義の意味で闇医者ですね」

 

「そこは出せよ……」

 

「開業届け出しちゃうと、裏渡世で頻発する銃創、刀創の治療に際して、報告の義務が生じますからね……」

 

「そう言う屁理屈みたいな抜け道あるんだ……」

 

 どうやら、カル=ロスが往診を頼んでくれるらしい。

 それも優花の母親とのこと。なるほど、これは楽しみだ。

 

「お母様? 新しい女性が増えるからって粉かけようとか思ってませんよね?」

 

 目ざとい。あなたはカル=ロスの指摘を咳込んでごまかした。

 

「じゃあ、ちょっと呼んできますから。大人しくしててくださいね」

 

「まぁ、俺が見てるから」

 

「すみません、大和さん。お願いします」

 

 カル=ロスが立ち上がり、玄関の方へと向かう。

 そして、空間が歪む感触がした。

 どうやら靴を履いた後、転移で出向いたらしい。

 

「まぁ、大人しくしてな。茶でも飲むか?」

 

 あなたは頷いて、大和にお茶を淹れてもらうことにした。

 

 

 それからしばらく大人しくしていると。

 空間の歪む感覚がして、玄関先に誰かが現れたのが分かった。

 転移魔法に慣れ親しむと、空間の歪む感覚が分かってくるのだ。

 召喚魔法の察知や、空間転移の察知などが出来るのでお得な感覚である。

 

 体質や才能もあるが、空間の歪みをより詳細に探知できる者もいる。

 そう言う者は短距離転移を魔力消耗無しで使えるようになったりもする。

 残念ながらあなたはそちら系には才能がなく、会得はできなかったが……。

 

 さておき、その感覚から数十秒後、あなたの予想通りにカル=ロスが戻って来た。

 

「ただいま戻りました。お母様、失礼のないようにお願いしますね。本当に。私たちもお世話になってるお医者様ですからね」

 

 あなたは頷いた。

 カル=ロスはあなたの顔をまじまじ見た後、溜息を吐いた。

 なんとなく理由はわかるが、失礼では?

 

「本当に、本当に頼みますよ? ……では、呼んできます」

 

 カル=ロスが引っ込んで、それからすぐに優花と共に戻って来た。

 そして、優花に続いて入って来たのは、小柄な女性だった。

 

 染髪しているのだろう、栗色の淡い髪色の女性だ。

 洒落た品の良い服装をしているが、その上から白く野暮ったい上着。

 手にでかいカバンを持っている以外は医者っぽさはまるでない。

 

「お母さん、こちらがカル=ロスのお母様でいらっしゃいます。本当に、本当に失礼のないようにお願いしますね。本当に。ヒポクラテスの誓いを守ってください。マジで頼みますよ!?」

 

 優花も母親だと言う女性に力強く念押ししている。

 そして、女性はうるさそうに手を振って頷く。

 

「ああ、ああ、わかったわかった。私も闇医者とは言え正規の医師免許を持つ仁術の担い手だぞ。そんな心配はしなくていい。ヒポクラテスの誓いなんて古風なもの、意識するでもなく守るさ」

 

「でもお父さんとの馴れ初め……」

 

「あーそれはなー! 若さ溢れる彼が私の魅力に参ってしまって強引に迫って来たんだ! そうなんだ!」

 

「診察受けた後、睡眠薬盛られて強引に迫られたって……」

 

「わ、わわ、若さに対する治療だ! うん! 年若い青少年が性犯罪に走る前に、私が身を挺して治療したと……そう言う感動的な流れなんだ!」

 

「…………」

 

 優花がジト目で女性を見ている。

 女性は迫真の勢いで誤魔化しているが……。

 医者が患者に薬を盛るのは……だめだろ。

 

「ゴホンッ! ゴホンゴホンッ! は、はじめましてだな……私は迫水(さこみず)鮮香(せんか)。優花の母だよ」

 

 ファミリーネームが違うが……何か複雑な……?

 

「うちは夫婦別姓でやってるよ。まぁ、戸籍上は赤木(あかぎ)鮮香なんだが。裏渡世では旧姓の方が通りがいい」

 

 なるほど? なんだかよくわからないが。

 複雑な家庭環境と言うわけではないならいいのか。

 

「まぁ、君んところと同じく、うちも血縁はないがね。そのくらいだよ」

 

 普通に複雑じゃんか……そう思ったが、鮮香からすると、そうでもないらしい。

 まぁ、あなたもそのくらいの感覚でいるが、珍しい感覚な気がする。

 

「さておき……診察をはじめる。君たち、出ていきたまえ」

 

 大和が素直に立ち上がり、無言のまま出ていく。

 優花も出て行ったが、カル=ロスはそのまま残った。

 

「君も出て行きたまえ」

 

「私は患者の親族なので付き添いです」

 

「ということは、君がカル=ロスくんか。すまんね、君らは見分けがつかん。間違えても許してくれ」

 

「見分けられる方がムカつきますのでお気になさらず」

 

「そう言うもんかね。ま、ともあれ、診察をはじめよう」

 

「おねがいします」

 

「まず、自覚症状は?」

 

 喉の痛み、体のだるさ、それから熱。

 唾を呑み込むのも、食事をするのも痛い。

 

「典型的な扁桃炎の症状だね。一応聞こうか」

 

 鮮香が聴診器を取り出し、それを装着する。

 そして、患者の体に当てる側を手のひらでぐいっとこすっている。

 

「じゃ、前をはだけてくれたまえ」

 

 あなたは促されるままに服をはだける。

 そして、あなたの素肌の上を、冷たい金属が滑る。

 

「ふむ…………背中を向けて」

 

 言われるがままにする。

 

「うん……うん、正常だね。じゃ、次」

 

 鮮香がカバンから紙の板を取り出す。

 それをベリッと破ったかと思うと、中から木の板が出て来た。

 

「はい、お口開けて」

 

 あなたは口を開けると、口の中に木の板を突っ込まれた。

 それで舌を動かされて、喉の奥を見られる。

 

「うむ。典型的な扁桃炎だね。原因に心当たりは?」

 

 女の子3人とキモチイイことした。

 いっぱい舐めて、いっぱい飲んだ。

 

「確実にそれだな……性交が悪いとは言わんが、体調不良時は控えるようにしたまえ。しかし女の子3人とは……」

 

 難しそうに鮮香が唸っている。

 

「一応聞くが。ここ1か月で性交した人数はどれほどだね?」

 

 問われて、あなたは指折り数える。

 先月となると、切り札による受傷前だ。

 

 ジル、コリント、メアリ、サシャ、レイン、フィリア、レウナはもちろんのこと。

 『アルバトロス』チームのみんなともイイコトしたし。

 救児院の子供たちも優しく丁寧に可愛がって思い出作りしたし……。

 屋敷のメイドたちも美味しく頂いたし、領地で結婚する娘の初夜を2人ほどいただいたし……。

 

 まぁ、軽く30人くらいかなと。

 

「なんて?」

 

 30人くらい。

 

「1か月だぞ?」

 

 1か月だ。

 

「1日1人計算だが?」

 

 実際のところしばらくエロいことしてない時期があったので。

 1日あたり2~3人計算の方が正しい。

 

「半年で30人とかじゃないのだな?」

 

 半年なら桁がもう1つ上がる。

 

「…………ご職業は?」

 

 娼婦兼冒険者。

 あなたの自覚的な本業は冒険者。

 公的な職業と言う意味では娼婦。

 

「あー……言い難いかもだが、その、仕事上で、病気の可能性がある相手とは……」

 

 最近は地元を離れているので、仕事はしていない。

 冒険者はやっているが、娼婦はさっぱりだ。

 この1月で相手した30人はプライベートでのことだ。

 

「……ふむ。カル=ロスくん」

 

「はい」

 

「彼女、せん妄状態だったりするかね? 現実と夢が判断できない精神状態とか……」

 

「すみません……この人はマジで言ってますし、マジです……」

 

「そうかね……なるほど、大変好色なことは分かった……」

 

「すみません……」

 

「君が謝ることかね。うん、すまないが、血液検査もしておこう。腕、出してくれるかね」

 

 言われるがままに腕を出す。

 すると、ゴム紐で腕を縛られ、注射器で血を抜かれた。

 

「君にはちょっと聞き入れにくいかもだが。性病等の感染がないかを検査する。そのため、結果が出るまでは性交を控えたまえ」

 

 控えると言うことは……1か月あたり3人までならセーフ……?

 

「すまないな、言い回しが悪かったようだ。性交はしないようにしたまえ」

 

 どうしてそんなことをしなくてはいけないのか。

 いや、理屈は分かる……病気を移さないためだ。

 あなたも誰かに病気を移すのはよくないとわかる。

 そのために性交を控えるくらいの良識もある。

 

 だが、他人に言われると、これほど嫌だなんて……!

 

 あなたは変なところがへそ曲がりだった。

 性欲に死ぬほど卑しいと言うだけでもあるが。

 

「それから……」

 

 それから?

 

「君は、脳機能になんらかの問題の可能性がある……正式な検査を受けよう」

 

 なんで?

 

「いいかね……1か月で30人は異常だよ」

 

 異常だろうか。健康な時なら50人くらいは行くと思うのだが。

 まぁ、1か月ずっとヒマな時なんかまずないので。

 50人と言うのもあくまでも予想だが……まぁ、行くだろう。

 

「ますます異常だよ。性欲の異常亢進(こうしん)状態は明白な病態だ。脳の検査の後、ホルモン検査……カウンセリングも受けた方がいい」

 

 そこまで大袈裟な話になるとは。

 たしかに、色に溺れる人間の大抵はなんらかの問題を抱えている場合がある。

 強いストレスを抱える生活をしているとか、頭に重篤な傷を負ったとか。

 おそらく鮮香はその手の心配をしているのだろうが……。

 そのタイプの人間は、そう言う生活を楽しんではいないことが多い。

 

 あなたは全然楽しんで今の生活をやっている。

 だから、たぶんその手のタイプには当てはまらないと思うのだが……。

 

「そう言うこともあるが、そうでないこともある。まずは検査をして、異常がないかを確認しよう。大丈夫、私がいる。専門は外科だが、脳に食い込んだ銃弾を摘出したことだってあるんだ。脳下垂体の手術だってできる。君がよくなるまで、ちゃんと面倒を見てやるからな」

 

 鮮香はそのように言って、あなたを安心させるように笑った。

 その微笑みは、まさに医療に携わる者が持つべき慈愛のまなざしだった。

 この人になら任せても大丈夫……そう思わせるような、安心感を抱ける。

 そして、そうなるとたしかに、自分っておかしいのかな……? とも思う。

 

「……言われてみると、お母様って異常ですね」

 

 カル=ロスまでもが愕然とした顔でそんなことを呟く。

 

「言われるまでもなく気付きたまえよ……」

 

「いえ、しかしですね、私が拾われてからこの方、ずっとこんな調子だったものですから……」

 

「君、自覚していないようだから言うが、それは一般的には虐待だよ」

 

「えっ」

 

「子供に性行為を見せる、感づかせるのは、虐待だよ。異常だよ……」

 

「い、言われてみるとたしかにおかしいかなって……」

 

「君にもカウンセリングが必要だな……生憎、私はその手のには詳しくないが……同期にそちら系に行った者がいる。紹介状を書くとしよう」

 

「お、おねがいします」

 

「君はまずはMRIが撮れる病院に……しかし、その前にまず、君は漂流保護手続きと就籍届だな。漂流者は5割負担だが、金持ってるかね?」

 

「あ、私が払います」

 

「そうかね。さて、では紹介状を書くので少し待ちたまえ」

 

 ……なんだか、大問題になってきていないか?

 あなたはただの扁桃炎が大事になっていくのを感じていた。

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