『ぐっ、まだだ!』
あなたと秋水の剣が激突し合う。
秋水の持つ剣は恐ろしく重く、重厚だ。
あなたの剣は人間用のそれに相違ないが。
使う人間の圧倒的な剛力と完璧な機動性による精妙さ。
それらが合わさり十分に拮抗していた。
『私!
『アホだよそれは』
晶の鋭いツッコミ。
べつに秋水に届いてはいないようだが。
あなたがひとりではないと実感させてくれる。
あなたは秋水を殴りつけて距離を離し、『超電磁虐殺銃』を発砲する。
神速の抜き打ちでの発砲。辛うじて秋水が剣でそれを受け止めるが、剣が弾き飛ばされる。
『サーベルが! ならば、いけよ
秋水の鎧、タテエボシから分離し、飛来してくる剣。
あなたはそれを真っ向から迎え撃ち、弾き飛ばす。同時にあなたは飛翔する。
追いすがってくる剣に向かって、『魔力の破砲』を放つ。
『魔法の矢』の強化版である魔法を3発連続詠唱。
ほぼ同時に発射された強烈な純粋魔法属性の弾丸が飛ぶ。
それは3本の剣に激突すると、それを粉々に砕いた。
『くっ、剣が! 具足ビームッ!』
謎の宣言と同時、放たれるは桃色の弾丸。
いつの間にやら背に回していた銃を手にしている。
放たれた特大の弾丸をあなたは横合いに殴りつけて弾く。
弾丸の特性はおおよそ見切った。
運動エネルギーが高まっているので強力でこそあるが。
弾丸の大きさがそれなりにあるので、横から力を加えて弾けばいい。
今までの未来予知めいた先読みがなければこんなものだ。
秋水はめげずに弾丸を連射してくる。
だが、あなたはそれをことごとく打ち払って前進する。
『当たれ! 当たれぇ! なんてしぶとい! うっ! もうパワーがやばい!』
『ドカドカ撃ち過ぎですよね、バーカ』
『なんだと! 誰だ貴様!』
『げっ、知覚能力がまだ伸びてるのか! もっと力を込めて封じ込めないと!』
秋水の知覚能力は封じ込められてもなお晶の意志を察知するらしい。
サイキックとしての能力は秋水の方が格上ということか。
だが、そのサイキック能力をあらかた封じ込められている。
格上ではあっても絶望的な差があるほどではないらしい。
あなたはその援護もあり、ついに肉薄に成功、手にしていた銃を切り払った。
『ライフルが! ええい! こうなったら、
タテエボシが腕を広げ、あなたへと襲い掛かる。
あなたはタテエボシの脇を切り払って離脱しようと隙間を抜けようとする。
だが、その前に驚異的な反応速度で腕があなたを捕らえた。
『ナックルボンバー!』
秋水の裂帛の気合と共に放たれる拳。
鋼鉄の拳はあなたの顔面を的確に捉えた。
その強烈な打撃にあなたの意識が一瞬飛ぶ。
手甲をつけた腕で殴られるよりはるかに強烈だ。
『ダイナマイトキック!』
続けざまに放たれる鋼鉄の足があなたの胴体にめり込む。
肺の空気がすべて吐き出され、あなたはくの字に折れ曲がる。
『コレでトドメだ! スピンストーム!』
タテエボシの腕があなたを捉える。
離脱も間に合わず、あなたはガッチリと抑え込まれてしまう。
そして、あなたの世界がすごい勢いで回り出した。
『死ねぇ!
回転しながらの、急降下。
そして、あなたが地面へと叩きつけられた。
全身を突き抜けるすさまじい衝撃にあなたは呻く。
頭から落としやがった。殺意あり過ぎだろ。
『クライアント! しっかりしてください! 起きてください!』
大丈夫。まだ動ける。地面が土だったおかげだ。
あなたは『サンダリングボール』を発動させる。
強烈な轟音の波動により、周辺に激震が走る。
あなたが埋め込まれていた地面もやわらかに耕される。
地面から体を引き抜き、あなたは再度タテエボシに相対する。
『がっ、う、ぐぅ……! 頭痛が、吐き気、めま……た、立っていられ……ぐぅぅおお……』
タテエボシはガクガク震えていた。
あれ、なんでこんな状態になってるんだろ……。
そう思ったが、考えてみれば『サンダリングボール』を使った。
あれは轟音によって周辺に音波ダメージを与える魔法。
人間に叩きこめば肉をもろもろと崩れさせ、聴覚を破壊し、脳にまで響くダメージを与える。
肉を崩れさせるほどの威力はなかったが、聴覚を破壊することが出来る威力はあった。
なるほど、トウセイグソクなるものは音波耐性はないのか。
『そうか、音響兵器……旧式の当世具足にはその手のフィルタリング装備がない……』
晶が思いつかなかったと言わんばかりにこぼしている。
なるほど、音波耐性がないどころか弱点と。
あなたは『サンダリングボール』を3連発した。
『ひっ……! うぐっ、うっ……うぶっ……うぶぉろろろ……』
『ああっ、秋水さんがキラキラしたものを! あるいは虹色のものを! これはひどい!』
あなたは勝利した。
「……殺しなさい。勝機は潰えました」
介抱してやって、武装を解除したところ。
秋水が横たわったままそのように求めて来た。
殺すつもりなんてさらさらないのだが。
「情けなや……娘を辱めた愚物を殺そうとして、返り討ちにされた挙句……このように生き恥を晒そうとは……あな口惜しや、口惜しや……末代まで呪うてくれようぞ……」
やめてくれ。
呪いはやめろ。
やめてくれ。
「殺しなさい……」
わかった。後で殺してあげるので。
とりあえず聚楽氏や一二三たちに事情を説明して欲しい。
殺すのはそのあとでいいだろうか。
「……貴様のことです。大方、殺す前に私を閨で辱めようというのでしょう。甘んじて受け入れようではありませんか」
あなたは首を振った。
あなたもまた、ひとりの名誉を知る戦士だ。
秋水が戦士として名誉ある死を求めるのならば。
その選択を尊重し、その命を天に還す手伝いをしよう。
性欲的に切羽詰まっていたらともかく。
今は体調不良もあって本調子とは言いがたいし。
そもそも可愛い女の子いっぱいで満たされてるし。
なにがなんでも秋水とエロいことしたいわけでもなし。
久方ぶりの苦戦をさせられた相手だ。
それを尊重し、後ほどしっかり殺してやろうではないか。
「……くっ、生かせ!」
なんて?
「武士としてカッコいいこと言ったはいいが、まだ見たい映画もアニメもあるし、やりたいゲームもいっぱいある! だから、なんとか命だけは勘弁してください!」
秋水は毅然とした態度でそのように宣言した。
なんて堂々とした情けなく見苦しい命乞いなのだろうか。
でもいっそここまでくると清々しいな。
だいたい、最初に殺すつもりはないと言ったのだが。
その後に再度殺すよう迫って来たので頷いただけで。
まぁ、ここまで本気で命乞いするなら、せっかくだし要求は出すか。
あなたはイイコトさせてほしいと頼んだ。
「へへへへ、もちろんです! 尻の穴でも舐めますよ!」
そう言うプレイはちょっと。
いや、やってできないことはないが。
べつにしたいわけではないので。
あなたはノーマルな行為の方が好きだ。
「そうだ、いっそのこと秋雨もいっしょと言うのはどうでしょう! 私も秋雨もオッケーです!」
なんだって、それは本当かい?
あなたは食い気味に尋ねた。
「ええ。私は他者の心を読むくらいは容易いのです。あの子が私のことをちょっとエッチな目で見ていることくらいは知っています」
なるほど、秋雨はそう言う趣味があったらしい。
まぁ、秋水ほど神秘的な美貌の持ち主が傍にいたらそうもなろうものか。
中身は結構なレベルの俗物だと言うことが分かったが。
「そして、私も秋雨のことをちょっとエッチな目で見ていました!」
なんて?
「幼き頃から大切に育てた娘……そんなもの、嫁に出す前にちょっと味見して……何が悪いと言うのですか!」
なにがって、まぁ、全面的に悪いと思うが。
しかし、あなたもまったく同感なので深く頷く。
「そもそも、うちは一般的な親子関係ではありません。聚楽様に育てるように言われたので秋雨を引き取って育てただけで、実際的には聚楽様の御息女を養育したようなものと捉えています」
まぁ、なんかそんな感じの距離感だよな、とは思った。
母親の割には妙に秋雨に対して丁寧だった。常に敬語だったし。
比較的気安いような雰囲気ではあったが親子と言うにはやや遠い。
「主君の御息女をこの手で養育……エロゲーだったらメインヒロイン待ったなしですよ。成長した御息女は今は亡き主君の面影を感じさせつつも、自らを父と慕う……エロゲーですね」
エロゲーと言うのがなにかは分かりかねるが。
なんかエロい本とかでありそうなシチュエーションと言うのは分かる。
「そんな若衆がいて、
わかった。わかった。よくわかった。
秋水はとてもがまんした。大変えらいし、えろい。
そんな秋水にこんな要求をするのも無体だろうが。
エロいことがしたいのでエロいことさせろ。
そして、その際には秋雨も呼ぶように。これは命令である。
応じなければ命をもらい受けるとしよう。
「かーっ! 命を引き換えに出されては従わないわけにはいきませんねこれは! かーっ、天下泰平のこの世で命を
納得いただけて幸いだ。
では、そのように。
「はい。わかりました」
ところで、今までの発言から察せるが。
やはり、秋水はその手の経験は……。
「ああ、そうですね。豊富というほどではありませんが、まぁ、それなりにと言ったところですか」
なるほど、であれば心配はいらないようだ。
愉しませてもらうとしようではないか……。
「……あなたのように積極的な人も久方ぶりですね。昔はよかったです。軍にはエッチなお姉様がいっぱい居ましたから」
なんで軍にそんなにエッチなお姉様がいるんだよ。
規律はどうなっているのか、規律は。
普通、そう言うのは禁じられてるものでは。
「ええ、軍紀で禁じられていましたよ。不純異性交遊が。同性はセーフでした」
なんで……?
「異性だと子供ができてしまいますが、同性なら子供はできませんからね」
なるほど、エルグランド以外だとたしかにそうだ。
しかし、子供が出来なければそれでいいというのもどうなんだろう。
「同性でも問題があったのは確かですが、やはり性欲の発散は軍において懸念点ですから。妥協ですね」
売春宿に繰り出すとか……。
「当時は別大陸への遠征軍がありましてね……妊娠・出産で不名誉除隊されても困るし、除隊狙いで妊娠する不届き者もいたそうで。現地に規模の大きい街でも作れればよかったのですが……」
とてもではないが不可能だったと。
恭順する現地住民とかいなかったのだろうか。
仮にいたにせよ、需要を賄えるほどではなかったのか。
「機会的同性愛の形で性欲を発散できるなら、まだしも妥協できるということだったのでしょう。だから同性愛はとても盛んでしたよ。男女ともに」
男の方は聞きたくないのでどうでもいい。
「軍の女衆にはエッチなお姉様がいっぱいいて、同じくらいエッチな妹たちがいっぱいいたのです。私もその1人だったのですよ」
とんでもない軍だ。よく維持できたものである。
同性愛者だらけの軍隊ってどうなんだろう。
そもそも目を盗んで異性愛に走るものもいたんじゃ。
「まぁ、居ましたね」
やっぱ居たのか。
「みんな死にましたけど」
なんで……?
「不純異性交遊は死罪だったので……」
罰則が厳し過ぎる……。
「そんな状況で同性愛ならOKと言われれば、大抵の人間は同性愛に走りますよ、そりゃね」
なるほど、納得いく話だ。秋水もその口だったと。
まぁ、多分に生来の趣味もありそうな感じだが。
そう言う状況でなければ同性愛に覚醒していなかった感じなのかも。
「さて……そろそろ起き上がれそうですし、戻りましょうか」
そう言いながら、秋水が体を起こす。
ようやく気分がよくなってきたらしい。
聴覚の破壊による体調不良は回復魔法が効きにくいのだ。
「はぁ、台所を破壊してしまいましたし、説明に関して気が重い……」
まぁ、がんばって説明して欲しい。
あなたは頷いて、連れ立って家へと戻った。
家に戻ると、なぜか庭に白い布切れが張られていた。
そして、その布切れの中央部には青い布が敷かれ、その上には畳が2枚。
濡髪姿の聚楽氏が、敷かれた布と同様の色合いの服を纏って待っていた。
「来られたか」
来たが……これはいったい何の騒ぎだろうか?
秋雨がボロボロ泣いていて、一二三とカル=ロスが慰めているようだが……。
あなたは秋水に尋ねようとして、秋水が顔面を蒼白にしていることに気付いた。
「あ、あの、聚楽様……」
「秋水。そなたも支度をせよ」
「支度とは、その」
「うむ。客人に無体を働いた咎、切腹を許す」
なんて?
「私もそなたの監督不行き届きの咎に
つ、つまり……。
以前に秋雨が冗談で言っていたやつ……。
薬袋秋水と家波戸部聚楽が腹を切ってお詫びするという……?
「左様。
堂々たる態度で聚楽氏はそのように言う。
なんだか大変なことになったぞ……?
文字数はどの程度が好ましいですか?
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2000文字前後
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