秋水に襲われ、なんとか返り討ちにし。
エロいことする約束をして許したが。
聚楽氏が死をもって償うとか言い出した。
その際、秋水にも同様に死をもって償わせると。
事態が急展開過ぎて頭痛すら覚える。
飲み込むのに苦労するほどの急展開だ。
頭痛すら覚える事態にあなたは思わず唸る。
そんなあなたの下に、わんわん泣いている秋雨を連れてカル=ロスがやって来た。
「あの、お母様……なんとか止めてください……秋雨が泣き止みません……」
そんなこと言われても……。
「うっ、うっ……お父様はやると言ったら、やります……どうか、止めてください……! なんとかしてください! おねがいです!」
秋雨が泣きながらそう叫ぶ。
そんな秋雨を抱き締め、心配要らないとあなたは返した。
聚楽氏に切腹されても困るし、秋水に切腹されても困る。
特に秋水とはエッチなことする約束をしたのだから。
「お父様とお母様が死んじゃったら、どうしよう! うわぁぁあん!」
秋雨が泣きながらあなたをぎゅうと抱き締める。
不安でしょうがないのだろう。それは当然の想いだ。
彼女らに血縁がなくとも、大事に育てられてきたことはよく分かる。
秋水には邪な想いもあったのだろうが、それ一辺倒だけでもあるまい。
なにより、聚楽氏も秋水も凄まじく強い。
そんな2人が死ぬ心配などしたこともなかったろう。
にもかかわらず、その2人が死にそうになっている。
泣き出してしまってもしかたがないだろう。
「私、私、どうしたら……! 追い腹を……切って……私も……」
……追い腹?
「主君が死んだ時に後追い自殺することを追い腹を切ると言います」
あなたの疑問に気付いたのか、カル=ロスがそのように補足してくれた。
なるほど、聚楽氏を止められなければ、秋水と秋雨も死ぬと。
薬袋秋雨及び、薬袋秋水と家波戸部聚楽が腹を切ってお詫びいたします。
昨日、秋雨がそんなことを冗談として口にしていたが。
まさか本当にそんな事態が訪れるとは夢にも思わなかった。
いや、普通はそんなこと想像しないだろ、常識的に考えて。
この次元に来てからと言うもの、常識的に考えてありえないことばっかり起こる。
想像上の果物をもぐとか、無を切り出して調理するとか、謝罪の切腹とか……。
異次元を旅することの醍醐味が詰まっていると言えばそうだが、もうちょっと手心と言うか……。
なんとか、なんとかしなければ……!
決意を胸にあなたは聚楽氏の下に向かう。
秋水の姿はない。先ほど項垂れた様子で屋内に入っていったのが見えた。
おそらく、聚楽氏の命令で切腹の支度をしに行ったのだろう。
「申し訳ないが、しばしお待ちいただきたい。秋水には急ぎ支度をさせておりまする」
あなたへの謝罪が主眼であるからか、態度が随分と違う。
今までは物言いこそ丁寧であれ、こちらを目下として扱っていたが。
今は明らかにあなたの方が格上と言う体で扱ってくる。すごく居心地が悪い。
そんな聚楽氏に、あなたは切腹なんてやめようと提案した。
「されば、斬首に処しまする」
違う、そうじゃない。
「では、磔に……」
そうじゃない、そう言うことじゃない。
そもそも死刑をやめようねと、そう言いたい。
命は大事なのだ。それを簡単に捨てるのはひどいことだ。
だから、死刑なんてやめるべきだ。
……何を言ってるんだ自分は?
あなたはエルグランドの民だぞ?
命を大事にしない大陸の民。
蘇るから命を最高に粗末にするやつら。
そんなやつらが命を大事にしろて。
こうまで白々しい言葉があるか?
そして、それを言わせるような状況がどれほど異常か。
あなたは怒りすら感じて来た。
もっと命を大事にしろよ。
遊びでやってるんじゃないんだぞ。
命は文明を支えている大事なものなのだ。
それはそう簡単に喪っていいものじゃないだろうに。
だいたい、何が楽しくてわざわざ割腹自殺なんかするんだよ!?
あなたは謝罪の意思があるなら無料でヤらせてくれる権利を寄越せと怒鳴った。
死体なんか見たってなにも楽しくないし、謝意も感じない。
それよりも、その身を捧げて謝罪の意思を示された方がいい。
ベッドの中で謝罪ックス。これ以上のものがあるか。いや、ない。
「しゃざ……? よくわかりませぬが、貴女が望まれるならばそのように」
もちろんだが、秋水にも同じように罪を償ってもらおう。
つまりはベッドの中でエッチなことし放題の権利だ。
その際には娘の秋雨も拒否権無しでイイコトさせてもらわないと。
「むぅ。一族郎党すべてと……たしかにそれも相応と言える、か……では、そのように」
よし、これにて一件落着!
三方丸く収まったな! ヨシ!
聚楽氏は死なない、秋水も死なない、秋雨も死なない。
そして、あなたは最大限の謝罪を受け取ることができる。
もうこれ以上になにが必要だと言うのかと言うほどの結果。
なにより、手早く解決したのがよかった。
交渉がうまく行くか、気を揉まずに済んだ。
なんだって謝罪される側が人の生き死にに気を揉まなきゃいけないのか。
死んだら蘇れないんだから命を大事にしろよ。
エルグランドよりもおかしいんじゃないのか、この次元……?
なんだかんだと交渉が完了し、誰も死なずに済んだ。
そしてあなたはエロいことさせてくれる権利をゲット。
まったくもって最良の結果と言っていい形に納まったが……。
だが、疲れた。なんかもう、無暗に、無意味に疲れた。
なんであなたがこんな気苦労をしなきゃいけないのか。
『アルバトロス』チームの親をつまみ食いしようとした罰が当たったとでも?
しかも、秋水はメチャクチャ強かった。
散々殴られて地面に叩きこまれるわで大変だった。
いつもなら平気なダメージも、今はなかなか堪える。
回復魔法で傷は癒えても、傷を負ったことによる精神的疲弊は消せない。
『空白の心』あたりで帳消しにすることはできるが、やりたくない。
だから今はとりあえず、朝ご飯を食べたい。
お腹いっぱいごはんを食べて、満たされたい。
そして、汚れた体を洗い清めてスッキリしたい。
それからひと眠りしたい。
エロいこととかじゃなくてただ休みたい。
何も考えずにぐっすりと眠りたい。
起きてからまだ1時間と経っていないが……。
むしろ二度寝をするにはちょうどいい間隔かもだ。
「すみません、クライアント……朝ご飯はないです……」
が、秋雨が申し訳なさげにそう告げて来た。
朝ご飯がないとは……。
「お母様が吹き飛ばしちゃったので……」
そう言えば台所に殴り込んで来たのだったか。
たしかに朝食も台無しになろうものだ。
無事な方がおかしいくらい無茶苦茶だったもの。
まぁ、おなかは空いたが、耐え難いほどの空腹でもなし。
絶食に耐えるのなんて冒険者には当然の嗜み。
であれば、土埃に塗れてしまったのでせめてお風呂に。
「ごめんなさい……お風呂も入れられないです……」
なんで……?
「お母様が風呂桶を木っ端微塵に破壊したので……」
じゃあ、シャワーだけなら……。
「ウチの給湯器は台所の真後ろにあったので、お母様がそれもぶっ壊しました」
給湯器……察するにお湯を供給する道具か。
水道を開けるだけでお湯が出て便利だと思っていたが。
それ専用の道具を家の外に設置していたからだったのか。
それを破壊してしまったのでお湯が出ないと。
であれば、普通に火を焚いて沸かせばいいのでは。
「風呂のお湯を沸かす方法として火は使えなくて……」
じゃあ、お風呂どころかお湯すら用意できないと。
「七輪で炭を焚いて、お湯を沸かせば、体を拭う分くらいなら……」
まどろっこしいから嫌だ。
じゃあ、公衆浴場とかないの?
「無いですね……」
ないない尽くしである。
逆に何ができるのだろう。
「……私とお母様の母娘丼とか」
……今はいいや。
あなたはそのように頷いた。
いや、食べたい気持ちはやまやまだ。
だが、今の秋雨と秋水を抱くのはちょっとまずい。
命が助かった安堵の直後に抱くと、感情の落差が変な癖になりかねない。
命の危機を感じた後じゃないと燃えない体になられても困る。
「えっ、いいんですか? クライアントなら喜んで私を押し倒すものかとばかり」
あなたにも一抹の理性くらいはあるものだ。
そして、それが時として正常に作動することだって。
「ごく僅かかつ、基本は作動しないって考えてるあたり、自己評価は結構正確ですね……」
では、しょうがない。
あなたは急で悪いが帰ると伝えた。
「お帰りですか……えっと、この場合、どちらに?」
『アルバトロス』チームの家の方に。
朝食の残りくらいあるかもだし。
そうでなくとも風呂には入れるだろう。
食事は『四次元ポケット』からなんか出せばいいし。
「ははぁ、なるほど……なにもお構いできず、申し訳ありません。また後日、謝罪にお伺いしますので……」
まぁ、そこまで気に病まなくていいから。
たしかに襲われたけど、結果的には大した怪我もないし。
わざわざ来てもらうのも悪いし、謝罪は不要だ。
秋水が反省していたのは十分に分かっているし。
「真面目な謝罪には、マイクロビキニとメイド服どちらが必要でしょうか」
メイド服の下にマイクロビキニ。
「猫耳カチューシャは必要ですか」
尻尾も必要だね。
「謝罪にあたって、親子ともどもの謝罪が必須でしょうか」
必要不可欠だ。
「つまり、後日私とお母様が猫耳マイクロビキニメイドで謝罪に伺います」
待ってる。
出来るだけ早くね。
あなたは前言を秒で翻した。
だって、そんなエロいのがわざわざ家に来てくれるなら、断る理由ないだろ……!
未来のエッチな約束を取り付け、あなたはカル=ロスと共に『引き上げ』の魔法で帰宅した。
あちらとこちらではやや時差があるのか、こちらの方がやや明るいような気がする。
たしか、こちらがイバラキで、あちらがチバとか言っていたか?
具体的な地理を把握していないので、後で調べてみよう。
「とりあえず……お風呂いきますか」
カル=ロスの言葉にあなたは頷いた。
土まみれなのでそうしたい。
耳の中まで土が入ってる気がする……。
帰宅し、風呂に直行。
体をしっかり洗い清め、風呂から上がる。
そして、飲み物片手にラフな服装でくつろぐ。
家の中はやや静かで、少し物悲しい雰囲気。
どうやら克己と大和は帰ったらしい。
克己は近所に住んでるらしいが、大和は遠方在住らしい。
大和とはしばらくお別れかもしれない。
そのように思いつつものんびりと湯上りの心地よさを堪能している。
「おかえりなさい、クライアント。朝食は食べましたか?」
そのように声をかけてくれた晶にあなたは食べていないと答えた。
もうお腹ペコペコである。なんでもいいから食べたい。
「お茶漬けくらいなら出せますけど。カルロも食べますか?」
「
「そりゃ素ですよ」
「じゃ、梅干しもいただけますか」
「贅沢ですねぇ」
などと言いながら支度をしてくれる晶。
それを見送り、そう言えばアストゥムの姿が見えないなと溢す。
「買い物だそうですよ。睦美は一時帰宅中だそうで」
なるほど。あなたはカル=ロスの言葉に頷く。
帰宅してから今に至るまで、あなたはカル=ロスと離れていないが。
以前に晶のサイキックで意思疎通をしていると聞いた。
それを用いて相互に情報をやり取りしているのだろう。便利だ。
そう頷きつつ、あなたはいまカル=ロスに聞いた情報を噛み締め、再度晶の方を見やる。
キッチンの中でパタパタと動いている晶はわかる。
じゃあ……その晶と一緒に台所に立ってるのは誰だ……?
長い前髪で目元を隠し、服装や所作を統一した仕草。
それはまさに『アルバトロス』チームそのものだが。
アストゥムも睦美もいないなら、あれは誰だと言うのか。
もしや13人目の『アルバトロス』チームが……?
「13人目……なにそれ、かっけぇ~……」
かっけぇ~、じゃなくて。
いや、言わんとするところは分かるが。
「ああ、はいはい。あの人は晶のママ、レイさんですよ」
ほほう、晶の母親!
それは実によい!
「父親ですよ」
ママって言わなかった?
「言いましたね」
ママって母親のことじゃなく?
「晶の実家では、コンパッション・マザー、いたわりの母と言う役職があるんです。その役職に就いている者の直属の人員は、マザーをママと呼ぶ風習があるそうですよ」
マザーなのに男でもなれるんだ……。
「そりゃもう。男だろうが女の子として扱えば女のコになるわけですからね。ママとして扱えばママにもなりますよ」
独特な風習だ……。
「私もそう思います。あそこはほんとに独特な風習のあるところですからね……」
カル=ロスも遠い目をしている。
この次元でもやっぱりおかしいことらしい。
しかし、何をしに来たのだろうか?
「ご挨拶にいらしたそうですよ。娘が世話になってるからと」
あなたは胃がキュッとなった。
克己と鮮香は穏やかに話が進んだが。
大和と秋水は激しく話が進んだ。
レイも穏やかに話が進めばいいが……。
やっぱり、父親って娘には甘いので……。
あなたはまたも殴り合い、殺し合いになる覚悟をした。
こういう時、女たらしはやはりつらい。
だが、自分で選んだ道だ。弱音は言うまい……。
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