あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あれやらこれやらの話を聞き終えて、あなたは重たく感じる脳に思わずため息を吐く。

 いろんな事情やら説明やらをねっとり流し込まれて疲れた。

 今はいいからすべてを忘れて休みたいところだ。

 

「そう言えば、療養中なのでしたね。これは失礼を」

 

「まぁ、クライアントのことですから。おっぱい揉ませてあげればすぐ治りますよ」

 

「まさか」

 

 そうそう、いくらあなたでも体調不良はおっぱいを揉むのでは治らない。

 

「そうですよ、晶さん。いくら女好きの方とは言え、そのように粗雑に扱うのは……」

 

「なるほど、失礼しました。じゃ、おっぱい吸わせてあげれば治りますよね」

 

 治る。

 

「ええ……」

 

 レイに呆れられた。

 

 

 ひとまず聞きたいことは聞けたのでとのことで。

 いったん話を切り上げて、あなたはカル=ロスと共に部屋に下がった。

 なんだかアレコレといろんな事態の連続で疲れた。

 8割くらいあなたが招いた事態な気もするが、それはさておき。

 

 あなたはゆっくりと読書でもすることにした。

 エルグランドで買い漁って来た書籍はさっぱり読んでいない。

 後は備忘録を丁寧にまとめ直す作業とかもやっておきたい。

 

 備忘録は備忘録でしかないので。

 冒険の記録をきちんと清書するのは大事だ。

 荒っぽく書いた字を丁寧に書き直して可読性を高めるという意味でも。

 粗雑な紙類から造った備忘録より、きちんとした紙に清書して保存性を高めるという意味でも。

 

 そして、あなたはその作業を同時にやった。

 だらだら本を読み、気が向いたらだらだらと清書し。

 また気が向いたら本を読み、時としてぼけーっとしながら茶を啜る。

 

「だらつきモードに入っちゃいましたか。じゃあ、おやつでも作ってきますか」

 

 カル=ロスはあなたのこんな姿を幾度か見たことがあるらしい。

 ほどほどにやりたいことを同時に2つやるのをそう呼ぶようだ。

 本読みながら清書。両方ともだらだらやるので、進捗は遅い。

 1個に集中したら、倍くらいは捗るのだが。

 でも、こうやって気が向いた時だけやるのが一番楽しいのだ。

 

 あなたはのんべんだらりと作業を進めた。

 

 

 

 ぼんやり休みつつ読書したり作業したり。

 眠気が来たらちょっとうたた寝をしたり。

 そんなまったりとした作業を進めるうちに休憩がしたくなった。

 そろそろ昼時だろうか。そう思いながら、縁側にごろりと転がる。

 

 この縁側と言う場所、とても心地よい。

 庭の見えるテラスに寝心地の悪いカウチを置いてくつろいでるような。

 そんな気分にさせてくれる空間だ。

 

 床が板間なので、長時間転がってると体が痛くなるのが難点か。

 まぁ、クッションでもマットでも持って来ればいいのだが……。

 そんなことを考えながら、やわらかな眠気を弄ぶ。

 そうしていると、毛布を手にした人影。

 その姿を視認して、あなたはそれがレイだと気づいた。

 

「体が冷えませんか。よろしければ」

 

 とのことで、毛布を渡された。

 あなたはそんなに寒くないから大丈夫と答えつつも。

 クッション性のある毛布は欲しかったので、体の下に敷いた。

 これだけでずいぶんと寝心地がよくなる。

 

「くつろいでいらしたんですね。縁側でくつろぐのは心地よいですからね」

 

 あなたは頷く。

 まあ、部屋でだらだらと本を読むのもいいが。

 なにもせずにだらだらとだらけるのも悪くない。

 

「読書ですか。なにをお読みになるんですか?」

 

 さっきまでは『サメ×少女』のエロ本を読んでいた。

 

「堂々とアレなことをおっしゃいますね……」

 

 レイに苦笑されたが、あなたはエロ本はいいぞ……と力説した。

 美しい空想の世界に耽溺し、さまざまな艶姿に胸を高鳴らせる。

 そして実用性も抜群。エロくていろいろと捗ってしまう。

 

「ほう、捗るのですか」

 

 捗る。お気に入りの本は100回は使ったね……あなたはそのように断言した。

 

「100回は使いましたか……やはり、お気にのオカズは3ケタ行きますか」

 

 行く。

 

「正直なことを言えば……あなたが羨ましいと思います」

 

 ほう? 突然どうした?

 

「私は晶を含め、たくさんのバブちゃんたち……われわれで言うところの、シーと言う間柄の相手を多数持ちます。チャイルドのシーです」

 

 というと、子供のことだが。

 義理の親子関係だろうか。

 

「はい。私はエム……マザーとして、彼ら彼女らを慈しみ、導いてやり、時として慰めてあげるものです。その中には、添い寝をして肯定感を与えてやることもあります」

 

 あなたならそのまま食う。間違いない……。

 

「それをやると、シーとエムの関係は解消することになっています。親が子に欲情することはあってはならないし、逆もまた然りですから」

 

 あなたは自分に突き刺さる常識的発言に苦笑した。

 分かってる。義理とは言え娘に手を出すことがおかしいだなんて。

 でも、背徳感コミで気持ちいいんだからしょうがないだろ……!

 

「つまり、そう言うことですよ」

 

 …………ん? どういうことだ?

 あなたは突然切り出された言葉に首を傾げる。

 

「おわかりになられませんか。よいですか。冷静に考えてくださいね。私はたくさんのシーを持つので、慈しみ、慰める相手を多数持ちます」

 

 それはわかる。

 

「そして、私はエムとして彼ら彼女らを導いてやり、添い寝などもしてやる必要があります」

 

 それもわかる。

 

「しかし、私は間違ってもシーに性的な意味で手を出すことは許されません」

 

 それもわかる。

 それがつらいと言うのはわからなくもないが。

 べつに、ほかのシーとやらではない相手に手を出せばいいだけでは。

 

「ああ、そうか。落ち着いて聞いてください。私のシーは、約2万人います」

 

 あまりにケタの違う子供たちの数にあなたは目を白黒させる。

 2万人って……毎日1人と添い寝しても、1週するのに50年はかからないか……?

 

「まぁ、累計ですから。現時点では2000人くらいですし……しかし、いずれにせよ私が1人寝出来る日はきわめて稀です」

 

 なるほど……そもそも部屋に女を連れ込むこと自体が無理と。

 

「それどころか、部屋に淫靡なものを置くこともできないのですよ……エロ本も、アダルトビデオも、私は所持すら許されないのです……」

 

 きっつ。

 あなたなら3日で発狂する。

 

「メイドロボとして部屋に置いてたセクサロイドはなくしてしまいましたし、最後にその手の行為をしたのは25年前です」

 

 に、25年……あなたは驚愕する。

 そんなに長く人間とは禁欲できるものだったのか。

 

「私の体質のおかげもありますが……慣れたとは言え、なかなかキツいものがあります」

 

 あなたはあまりに憐れなこの青年に思わず涙した。

 そして、せめてもの情けにと、あなたはお気に入りの『少女×少女』の本を渡してやった。

 

「これは、なるほど、エロ本……うおっ、これはエロ過ぎ……!」

 

 レイが食い入るようにエロ本を読み出した。

 プレゼントはしてやれないが。せめて目に焼き付けるといい。

 

「うおおおお……これはエッチだ……! すごい……!」

 

 思った以上の熱中ぶりにあなたは苦笑する。

 それはもう穴が開くほどの集中ぶりである。

 溜まってる……ってやつなのかな?

 あなたも欲求不満にうっぷんが溜まることはあるが。

 肉体の方には物理的に溜まるようなものがないので。

 正直、男性の溜まってると言う感覚を理解してるとは言えない。

 

「いけませんか」

 

 レイの問いに、あなたは首を振る。

 人間、そんくらい欲望に正直な方が正常だ。

 節度や分別は必要だが、それはあなたが言える筋合いではない。

 なので、あなたはしょうがないやつめ、と笑って流すことにした。

 

 

 

 しばらくレイと並んでエロ本の世界に耽溺した。

 やはり、エロ本はいい。人間の欲望をシンプルに肯定してくれる。

 空想の世界だからどんなドえぐいシチュエーションもOKだし。

 

「ふぅ……このエロ本は流行る。間違いありません……ちょっとお借りして、スキャンさせていただいても?」

 

 あまり長期間は貸せないが……。

 

「ほんの数十分あれば終わります」

 

 そう言うことなら構わない。あなたは許可した。

 そうしたところ、レイが懐から妙な板切れを取り出した。

 それを開いた本にかざし、じっと静止している。

 これはいったい? カル=ロスの使っていたスマホとか言うのに似ているが。

 

「マルチデジタルデバイスと言いまして。物理的デバイスが必須の機能をひとつで実現するための道具ですね。カメラにスキャン機能があるのです。このとおり」

 

 そう言って見せてくれた板には、なんとあなたが貸した『少女×少女』の本が映し出されていた。

 まるで紙面を切り取ってそのまま写し込んだかのような……。

 ちょっとかざしただけで、これほど完璧な写本を実現するとは。

 とんでもない道具だとあなたは心の底から感心した。

 

 見たところ本1冊丸ごとを中に写本できるらしい。

 いったいどれだけ中に写本できるかは不明だが……。

 ともすると、これ1つで何十冊も持ち運べるのではないか。

 そして、その上で閲覧もできる。夢のような読書道具だ。

 あなたも叶うことなら欲しいが……。

 

 こういう感じで、見るところが光る道具。

 これは充電が必要なものだろう。それも、結構頻繁に。

 カル=ロスがマフルージャではスマホの充電に困るとか悩んでいた。

 

 なんか電気の形態やらなんやらが違うとかで。

 こちらで作られた道具を充電するのは無理らしい。

 レイの道具も同じことで、充電はできないだろう。

 仮に出来ても、あちらこちらで充電できるほど電気は普及していないので冒険には持ち出せないし。

 かと言って自宅でやるなら普通に持ち運びに苦慮しないから本を読めばいいわけで……。

 

 あなたはこの次元の技術が羨ましいとぼやいた。

 

 

 

「スキャン完了。ありがとうございました」

 

 どういたしまして。

 あなたは戻って来た本を受け取る。

 

「お礼と言ってはなんですが……よければ、ごらんになりますか」

 

 そう言ってレイがポケットから取り出したのは先ほどのとは別の板切れ。

 そして、レイがそれをシャカシャカと操作し、あなたへとみせる。

 そこに映し出されていたのは……とてつもなく滑らかに動く絵姿だった。

 

 その絵姿が示しているものは。

 顔がぼやけた男に抱かれる女の姿。

 あなたはこれはすごいと勢いよく覗き込む。

 

「この次元用に、晶さんに用立てていただいたスマホです。こちらのスマホはシーたちのチェックが入らないですからね……こういうアダルトコンテンツを購入しておけるのですよ。資金不足で大量は無理なのですが」

 

 むほほほほ、エッチだね~!

 あなたは大興奮で映像に見入る。

 これはたまらん、エロ過ぎ、やばい。

 

 惜しむらくは、男と女の絡みと言うことか。

 できることなら女同士の絡みが見たかったところだ。

 男のケツはべつに見ても楽しくないので。

 

 まぁ、よがっている女の姿を見れるだけで楽しい。

 それに、映像に出ている女性は大変美しくて可愛らしい。

 それが悦んでいる姿はまったく楽しいことこの上ない。

 

 娼婦の技術を弁えるあなたからすると、演技8割くらいなのはわかるが。

 それはそれ、これはこれだろう。演技があるからなんだと言うのか。

 目で見て受け取り、感じたもの、それが娯楽を楽しむ時のすべてだ。

 演技10割の舞台劇や芝居は楽しいのだ。演技8割のセックスだって楽しいに決まってる。

 

「そうですよね。演技があるから楽しめないなんて、そんなことないですよね。やはり、エッチなものはエッチなのですから」

 

 まったくその通りだ。

 あなたは力強く肯定した。

 

「わかっていただけますか……いいですよね、エロいこと……」

 

 いい……あなたはしみじみ頷いた。

 なかなか話のわかるやつだ。

 あなたはレイのことが好きになって来た。

 

「世の中にはもっといろんなアダルトコンテンツがあります。VRアダルトビデオなんてすごいですよ。この次元では機器が必須なのですが……」

 

 それはいったいどんなものなのだろう?

 

「まるで実際に体験しているかのようなリアル映像が体感できるのです。さすがに五感付き(センス)映像(ビデオ)ほどリアルではないのですが……」

 

 なにそれすごい。

 ぜひとも体験してみたいものだ。

 やはり、この次元でなんとかして稼がなくては。

 この次元のエロいコンテンツをたっぷり買い漁って帰らなきゃ……!

 

「いずれ私にもちょっと見せていただけますか」

 

 構わない。

 まぁ、この次元でどれだけ収集できるかは不明だが……。

 持ち物を見せるくらいはかまわないだろう。

 

「ありがとうございます。この手のことを共有できる友人はいなかったので、なんだか新鮮な気分です」

 

 なんて頬を染めながら言うレイ。

 あなたも笑って頷いた。

 こういうの共有できる友人はすばらしい。

 正直を言えば、同性じゃなくて異性なのが残念なところだが。

 レイは直球であなたに劣情を向けてきたりはしていない。

 そう言う理性的で紳士的な部分は好感が持てる。

 

 あなたは新しくできたエロ友を歓迎した。

 やはり、エロはいい……あなたにはそれが必要なのだ。

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