あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 エロ友ができた。

 そして、この次元のすばらしきエロコンテンツの一端を知った。

 やはり、エロはいい……人間の根源とすら言える。

 それはこの次元でも変わらない神聖なる真実。

 エッチなの最高、100万年無税。あなたはそのように確信した。

 

 さて、そんなあなただが。

 さすがにいろいろと、懲りた。

 秋水をバチギレさせたのが特に危なかった。

 あれは晶が援護してくれなければ負けていた。

 それはそのまんま、あなたの死を意味している。

 

 その次に来たレイは至極冷静だったが……。

 あれはそもそも晶を娘と認識していないという……。

 一応シーではあるらしいが、若干距離があるらしい。

 

 なんでも、レイを異性として意識してるシーとは距離を取ることにしてるらしいので。

 そう言えば、晶の異性の好みは女装男とか言っていたか。

 たしかにレイはその好みにピタリ当てはまる……のか?

 結局、レイが本当に男かは確かめていないのだ。

 

 まぁ、そのあたりの晶の性癖はともかく。

 この調子で他の娘たちの親をマジギレさせていったら、マジで死にかねないので……。

 さすがにちょっと、自重しようかなと、そう言う……。

 

「はい、もう、そうしてください」

 

 カル=ロスには呆れ半分に肯定された。

 各々の子たちに親の戦闘力聞き取りをするのも考えたが。

 当人らがそれほどでもないと思っていても。

 じつは秘匿していた実力が凄まじい可能性は否めない。

 

「そうですね。もえぎの母親は制限時間ありですが、エルグランドの民と同じく加速できますから」

 

 ほう、それはなかなかめずらしい。

 それで、どれくらいまで加速できるのだろう。

 

「1秒間だけ3000倍速になれます」

 

 思った以上に凄まじい強さであなたは言葉を喪う。

 3000倍速て。1秒だけと言う制限はなかなか厳しいが。

 しかし、3000倍速になれたら実質50分だ。強いどころの話ではない。

 今のあなたは10倍速までしか加速できないので、戦ったら負けるだろう。

 

「ですよね。エルグランドでも早々はいないほどの超スピードですからね……」

 

 カル=ロスの言う通り、エルグランドでもそうはいない速度だ。

 超人級冒険者でも最上位層にまでいかないと3000倍速はなかなか……。

 戦闘速度、29倍速。これを超える者を超人級冒険者と言うのだが。

 100倍速でも1000倍速でも2000倍速でも超人級冒険者と言うので。

 と言うか、その理屈で行くともえぎの母親は超人級冒険者の括りに入れてよいことになる。

 

「あー、言われてみると……他の基礎身体能力値は低いんですけどね……まぁ、ご高齢ですので、いたしかたなしと言うのもありますが」

 

 どうにせよ、その速度はあまりにも脅威だ。

 そんな手合いの怒りを買ったら命が危ない。

 そう言うわけだから、さすがに自重する。

 したくはないが、やむを得ないので……。

 

 って言うか、今まで散々に遊び惚けていてなんだが。

 調子に乗って遊び過ぎた。体がキツくなってきた。

 

「やっぱ無理してたんですか」

 

 じつはしてた。

 いや、あんまり自覚はなかったのだが。

 

 別次元と言う未知の世界に来たことと。

 あちらでは『アルメガ』由来の女を抱くなと苦言を呈されていたこと。

 その2つの事情も相まって、テンションが上がり過ぎた。

 

 途中で体調を崩して1度失速したのだが……。

 ものすごいあっさりと治ってしまったので、勘違いした。

 なんとなく体調が復調して来ている気がしたのだが。

 あれはたぶん、この次元の薬が物凄く効くだけなのだ。

 

「そんなに効きますかね。べつにそんな変わらないような……いや、もしかして、お母様って抗生物質使うのはじめてですか?」

 

 抗生物質。たしか、もらった薬の種類だったはずだが。

 抗生物質と言う薬自体が初耳だったので、まず間違いなく使ったのは初めてだったろう。

 あれはものすごい効いた。飲んで2日したらあっと言う間に治った。

 7日分処方されたのは過剰ではと思ったが、なんか必要だったらしい。

 

 なお、全部飲み切れと言いつけられていたが1錠だけ残してある。

 帰ったら錬金術などを用いて解析してみるつもりだ。

 

「なるほど、そのせいですかね。初めて使った薬品の効果って劇的に感じますもんね……」

 

 たぶんそう言うことなのだと思われる。

 

「薬が効いたせいで治ったと勘違いして無理するのはあるあるですね……幼児に鎮痛剤処方しないのは割と定番らしいですし」

 

 そして、あなたは調子に乗って無理した。

 無理したつもりはなかったが、快方に向かっていると思い込んでしまった。

 だから、ちょっと羽目を外しても大丈夫だろうと……。

 

 実際はそんなことはなく、疲労は積もり積もった。

 そして、その疲労が今になってあなたに牙を剥いている。

 これは本当に休まないとまずい。そう言う危機感が襲って来た。

 ここでさらに無理をすると、ものすごく後を引く羽目になる。

 

 かつて、あなたは1度完全に体を壊したことがある。

 まだあなたが冒険者としての経験が浅い、10代の終わりごろだったか。

 

「そんなことあったんですか?」

 

 あった。

 冒険者として脂が乗り出した頃だ。

 あなたは11歳で冒険者になったので、冒険者歴7~8年ほどか。

 

 その頃のあなたは、10代特有の全能感に酔い痴れていた。

 悪いことに、あなたには才能があり、素質があり、実力があった。

 それは冒険者として多大な実績をあなたへと齎すだけのものがあったのだ。

 

「たしかに、お母様が姉妹で1番才能があったとお爺様は言ってましたね」

 

 その通りだ。あなたは両親の才能を最も的確に受け継いだ。

 ハイランダーの強靱な肉体と、妖精の豊かな魔法の才能。

 それら2つは常人の範疇においては比肩するものがないほどだった。

 

 その才覚をもって、あなたは13歳の頃にエルグランドで大きく名を挙げた。

 エルグランドに眠る究極の秘宝、『真実の眼』を手に入れた。

 それから別大陸にまで出向いて、そこでも大冒険を繰り広げた。

 

 アルトスレア西部で起きた、国家存亡レベルの魔神討伐作戦。

 ボルボレスアス北部で発生した国家存亡を懸けた超巨大飛竜モンテルグレワム討伐作戦。

 そう言った大冒険を経て、あなた2つの大陸で救国の英雄の名を得た。

 

 それらの実績は、あなたに慢心をもたらした。

 あなたが増長し、驕り高ぶっていた、もっとも悪い時期だ。

 

「……意外ですね。お母様って、昔から自制的で自分の功績を誇らないタイプなんだとばっかり」

 

 まぁ、外面的には割とそんな感じに映るかもしれない。

 当時のあなたもそんなに功績を声高に喧伝はしていなかった。

 そう言う英雄譚に心惹かれ、話を聞きたがるのは男が多いので。

 

 しかし、あなたの内心は壮絶な驕りに満ちていたのだ。

 自分は超一流冒険者で、なんでも成し遂げてみせると。

 それは自負であり、自信でもあったが、やはり驕りだったのだ。

 

「うーん……たしかに、自負と言えなくもない範囲ではありますか……むずかしいところです」

 

 あなたはあちらこちらの迷宮に挑みかかり。

 町に帰ればナンパに精を出し、呼ばれれば娼婦として客先に出向いた。

 家に帰れば可愛いペットたちと遊び、娼婦のあなたを求めて来た客を迎え入れた。

 博物館や商店の経営がうまく回り出したのもこのころだ。

 

 たくさんのペットたちを養うための金が必要だった。

 商店に置くための商品、博物館に置くための展示品。

 強力な武具のために鍛冶の腕も鍛えなくてはいけなかった。

 もっと強くなるために技も磨きあげなくてはいけなかった。

 学び出した魔法を鍛えるために新しい知識が必要だった。

 

 自分ならできるという驕り。

 そして、もっと強くなれる道筋がそこにあり。

 あなたは自分の限界を弁えずに挑み続けた。

 

 そして、ある日のこと。

 

 あなたはちょっと体調を崩した。

 単に疲労が溜まっていたのだろうが。

 そのくらいの体調不良はよくあることだった。

 だから無視して、そのまま活動を続けた。

 いつもなら半日もすれば復調したからだ。

 

 だが、回復することはなく、あなたの体調はどんどん悪くなった。

 まるで坂を石が転がるがごとく、体調は悪くなり続け。

 やがて、あなたは完全に寝込んでしまった。

 

 回復するまで2週間もかかった。

 ペットたちの献身的な看護を受けてそれ。

 金回りに余裕はあったので、薬も食料も上等なものがあったのに。

 

 そして、回復しても、完全には復調しなかった。

 すぐに体調を崩すようになり、無理が効かなくなった。

 めまいや動機、吐き気や片頭痛、動悸、そして異様な疲労。

 あなたの体はどこかおかしくなってしまった。

 

「うーん、自律神経失調とかだったのかもしれませんね」

 

 厳密な病名のことは不明だが。

 結局、あなたが完全に回復するのに2年ほどかかった。

 それまでは本当にまったく無理が効かなかった。

 

 町に繰り出してナンパをする元気すらなかった。

 家にいるペットたちと愛を深め合うので精一杯。

 

「ヤることはヤってはいたんですね……」

 

 でも新しい愛を育むことはできなかった。それは悲しいことだ。

 なにより、あなたがそんなに大人しいことはめったにない。

 

「それはたしかにそうですが……」

 

 そんなことにまたなってしまったら大変なことだ。

 マフルージャにも、トイネにも、あなたのまだ知らない女の子がたくさんいる。

 それを前にして指をくわえて見ているなんて、耐えられない!

 

 この次元にもあなたのまだ見ぬ女の子がいっぱい居るのだ。

 療養期間が終わったら、おさらばだなんて悲し過ぎる……!

 いずれまたこの次元に来て目いっぱいナンパしまくるんだ。

 そのためにも、ここで完全に体を壊すわけにはいかない。

 

 悔しいことこの上ないが……ちゃんと休もう。

 そして、完全に復調してから無理をしよう。

 最低でも3割くらい身体能力が回復してからとか。

 そのくらいまで回復したら体調を崩すことはもうないだろうし。

 

「ひとついいですか」

 

 意気込むあなたに胡乱気な顔でカル=ロスが一言。

 

「最初からそうしてください」

 

 あまりにごもっとも過ぎて、あなたは反論の言葉を持たなかった。

 この次元があまりにも楽し過ぎるのがいけないのだ。

 そして、『アルバトロス』チームの親たちがイイ女過ぎるのがいけない。

 

 克己も大和も鮮香も聚楽も、みんな最高過ぎた。

 体調が復調したら他の親たちにも粉をかけたい。

 レイも女にして食べてしまいたい。きっとすごくおいしいぞ。

 

「……まぁ、体調が回復したら好きにしてください」

 

 溜息を吐かれてしまった。

 まぁ、吐かれるようなことはしている。

 あなたは本腰を入れて療養することに決めた。

 

 

 

 ベッドに身を横たえ、ゆっくりと休む。

 そうしていると、ヒマだ、なんかしたいようと言う想いが込み上げてくる。

 だが、そこをぐっとこらえてしっかり休むのが療養。

 ハンパに元気があるのがよくないのだ。

 受傷直後の半死半生の方がよっぽど素直に療養していた。

 

「まぁ、大人しくしててください。お話でもして気を紛らわせましょう」

 

 付き添ってくれているカル=ロスの提案にあなたは頷く。

 とは言え、なんか話題でもあっただろうか?

 

「うーん……そうですね……あ、そう言えば、薬。抗生物質ですけど」

 

 あなたが先日処方された薬のことだ。

 まぁ、抗生物質と言うのは総称のことらしいのだが。

 

「エルグランドの抗生物質っていったいいつからあったんでしょう? 少なくとも今はないんですよね?」

 

 カル=ロスの言葉にあなたは頷く。

 抗生物質なんて、見たことも聞いたこともない。

 あなたはそんなに薬学に精通してるわけでもないが。

 あれほどすさまじい薬効を発揮できる薬ならウワサにはなるだろう。

 あなたはその手の情報には聡い方だし。

 

「私が……少なくとも5~6歳の頃には既に抗生物質ってあったんですよね」

 

 とすると、これから発明されるか、どこからか齎されるのだろう。

 あるいは、あなたが手にしている1錠の抗生物質。

 これをコピーしたものが出回っていたりするのかも。

 

「しかし、色んな種類の抗生物質があったので、それのコピーだけでは……うーん、なんか……カイラさんのような気がする……」

 

 ソーラス在住のヤンデレ少女カイラ。

 彼女は結核にかからなくなるという奇跡の薬品を作っていた。

 たしか、BCGワクチンとか言っていたか。

 それに加えて天然痘ワクチンも作ったとか。

 

「彼女、エルグランドにいろんなもの持ち込んで来た人で、特に医学方面での活躍が顕著ですからね……」

 

 たしかに、結核や天然痘に罹らなくする薬を作ったのだ。

 次はそれを治療する薬を作ってもなんらおかしくはない。

 

「個人的には、サシャ(ねえ)の著書を翻訳した激ヤバヤンデレ女と言う印象でしかないんですが、本当は薬学の権威なんですよね」

 

 と言うか、その論調からすると。

 カイラってもしかして未来ではエルグランドに住んでるのか。

 

「そうですよ」

 

 なるほど、怖い。

 あなたを求めて別大陸に移住と言うのは心打たれる話だが。

 しかし、それがヤンデレ少女カイラだと思うと、怖い。

 寒気がして来たのでやめてくれ……。

 

「なんかすいません……」

 

 謝られたが、べつに謝罪はいらない。

 ただ、やめてくれ……。

 

「はい……」

 

 あなたとカル=ロスの間に変な空気が流れた……。

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