魔法の巨人を討ち果たしたサシャ。
だが、サシャも深手を負って相打ち同然。
辛うじて生命力量の差から生き残った感じだ。
あなたはサシャを救助し、口にがぼがぼとポーションを流し込んでいた。
「あぶ、あぶあぶぶぶ……あ、あの、あぶ、ごぼぼ……か、かい、あぼがぼぼ……回復まほっ、ごぼっ、ごほっ!」
できるだけ怪我するなって言ったでしょ……。
あなたはそう説教しながらサシャにポーションをガブ飲みさせた。
時折、なにかに使うかもと思って作っていたポーションである。
回復量はわりと心もとないのが本音なのだが……。
そのあたりは数で補えばいいので、余裕のある時はポーションでもいい。
まぁ、腹の中がたぷたぷになってしまうと言う問題はあるが。
「お、多い……なんかこのポーション多くないですか!?」
一般的にポーションの量はごく少量、30ミリリットルほどである。
一方で、あなたの作るポーションは100ミリリットルほどの分量がある。
水分補給も兼ねられて一石二鳥だ。
「複数本飲む時にはしんどい性質なんですけど!?」
やかましい、黙って飲め。
「あぶぶぼごごごご……」
サシャは腹がちゃぽちゃぽになるまでポーションを飲んだ。
さて、サシャの治療はよしとして。
次にぶっ殺し回った巨人たちの戦利品を回収しなくてはいけない。
これがもう大仕事であり、あなたはうんざりし通しだった。
なんせ巨人だ。ばかでかいから巨人なのである。
しかも、この巨人どもは普通の巨人より遥かにでかい。
そんなのから装備を回収することがどれほど大変か……。
フィリアやレイン、クロモリの手までも借りて戦利品の回収にかかる。
「古代巨人族は大きいとは聞いていましたが、まさかここまでとは……太陽の巨人や魔法の巨人も、標準より大きいですね……強敵なんでしょうね。お姉様にかかれば楽勝なのでしょうが……」
ミノタウロスが9メートルちょっとくらいか。
太陽の巨人が12メートルほど。魔法の巨人が15メートル。
ミノタウロスが明らかに現代より大きいのは分かっていたが。
太陽の巨人や魔法の巨人までも?
「太陽の巨人はあまり見かけませんが、身長8メートルほどが標準と聞きます。永遠に若く美しい外見を保つ祝福を賜っていると聞きますが、特徴はたしかにそんな感じですね」
そう言われてみるとそうかも。
人間とはサイズもカラーリングも違うので分かり難いが。
たしかに全員が全員若々しく美しい外見だ。
単純に若者たちだけが親衛隊に選ばれたのかと思っていたが。
フィリアの情報が正しいなら年齢はさまざまなのかも。
「魔法の巨人の標準は12メートルほどのはずです。こちらはきわめて希少なので、本当に12メートルが標準なのかは不明ではあるのですが……」
こちらは15メートル。たしかに標準より大きい。
まぁ、その標準が本当にアテになるかは不明だが。
やはり巨人とひとくくりに言っても生き物だ。
発育のいいもの、悪いもの、生来的に大きくなるもの、なれないものもいる。
しかし、1人しかいない魔法の巨人なら特別大きい個体なのかもと思うが。
30人はいたミノタウロスが標準の倍以上の体躯があり。
8人いた魔法の巨人が1.5倍の体躯を持つなら。
それはやはり全員が全員大きいと考えるのが自然だろう。
一応、特別大きな者だけを選抜した最精鋭部隊と言う可能性はなくはない。
人間にも巨人部隊とか言う誤解を招きそうな部隊があったりする。
身長が非常に高い者だけを選抜した編成された部隊のことだ。
巨人族の外人部隊ではない。ものすごく誤解を招く名前だが。
「ですが、低い可能性を考慮してもしかたありません。やはり、特別大きいのではなく、これが彼らにとっての普通なのでしょう」
だとすると、やはりここは本当に?
「そうとしか考えられませんが、しかし、過去にさかのぼるなど、ありえるのでしょうか?」
あるかないかで言えば、あるとは思う。
以前にジルの『プレーン・シフト/次元転移』でタイムスリップしたことがある。
その座標を記録さえしてしまえば、あなたも同様にタイムスリップはできた。
なので、転移先さえ確定していれば、できる……のか?
「なるほど……われわれ定命の存在に可能なのであれば、神々にはたやすいことでしょう。であれば、できるのでしょうね」
やはり、そうか。
あなたはフィリアの言に頷く。
この状況は、ザイン神の意図によるものか。
「おそらくは。これは私に下された試練なのでしょうか。私が『砕けぬ盾』を手にするにふさわしき者であるかを見定めるための……」
わからないが。
目の前にある事態は解決しなくてはいけない。
少なくとも、あの神殿にいた者たちを見捨てるのは寝覚めが悪い。
「そうですよね。見捨てようだなんて言われなくて安心しました」
まぁ、必要なら見捨てるけども。
自分たちに助けられるなら助ける。
そのくらいの善意の持ち合わせはある。
甘いと言われるかもしれないが。
助けられるなら助けるべきだろう。
それが人として当然では?
あなたが人の道理を説くことの是非はともかく。
「お姉様がそうした人だから、私は安心してお姉様に信を預けられます。お姉様のために戦っても、ザイン様の御心に背くことにはならないと思えますから」
それはちょっと照れる。
しかし、あなたがやらかしたことの被害者であるフィリアがそう言うとは。
なんともまたずいぶん信頼されたものである。
フィリアとはじめてであった時は敵同士だった。
あなたがフィリアの仲間を皆殺しにし、フィリアを確保。
そのあと、フィリアと強引にコトに及んで堕とした。
うーん! 説明のしようがないほどカス!
あなたは我がことながらどうしようもないなと笑った。
「あ、あはは……まぁ、はい……またやったら心底軽蔑しますが……ええ、はい……私にやったことですから……ええ……」
自分にやったことならまだしも許せる。
フィリアの考えとしてはそうらしい。
そのあたりはあなたに堕とされた……つまりは惚れた弱みのようだが。
「だって、お姉様は私のことを絶対に裏切らないでしょう?」
裏切るって、具体的にはどういうふうに?
「敗北必至の戦いであっても、お姉様は私のためなら戦ってくれる。違いますか?」
違わない。フィリアのためなら戦うだろう。
あなたにとってそれは当然のことだ。
あなたの命がぺら紙1枚よりも軽いのもあるが。
至極単純に、あなたはフィリアの御主人様だ。
あなたにはフィリアのために戦う義務がある。
そしてなにより、女の子を1人孤独に死なせるのはありえない。
あなたの助力で救われるなら、あなたは救うだろう。
神が救わないのならば、あなたが救うまでのこと。
「ふふ……だからです。命を懸けるって、たとえ蘇生魔法が使えるとしても、とても重い事です。だれかのために命を捨てられるのは尊い事なんです。それ以上の愛はありません」
エルグランドだとあんまりない概念かな……。
そうは思ったが、エルグランドでもたしかに重い行為ではあるか。
やはり死ぬといろいろと喪うので、軽くはない。
と言ってもすべてを喪うわけではないので、重大とまでは言えない。
全財産を擲つ方がよっぽど重いだろう。
「だから、私もお姉様に命を懸けたい。私の命ではお姉様の助けにはならないでしょうが……その覚悟はあるつもりです」
でも、死んだら悲しいからやめてね。
あなたは真剣にそう返した。
「もう! そこは感じ入るとか、感銘を受けるとか、そう言う風に感動するところですよ!」
怒られてしまったが、嫌なものは嫌だ。
女の子が死ぬのはとてもかなしい。
それだったら自分が死んだ方がマシだ。
「もうちょっと自分の命を大事にしてください」
してる方だと思うのだが……。
なんせここ5年くらいは1度も死んでない。
エルグランドの民がおかしいのはともかくとしても。
高位の冒険者なら年1とは言わずとも、それなりの頻度で死ぬと思うのだが。
「そう言うことじゃありません! もう! お姉様が死んだら、盛大な葬式あげますからね! その最中に蘇生してあげます!」
それ、すごく恥ずかしそうで嫌だなぁ……。
って言うか、それは生前葬と言うことになるのだろうか。
前半死んでて、後半生きてるなら、半死半生葬とか……?
あなたはプンプン怒っているフィリアをよそに、そんなしょうもないことを考えていた……。
巨人の戦利品をすべて回収。
戦利品は『四次元ポケット』にぶち込んだ。
なんせ超巨大サイズの装備品だ。その重量もすさまじい。
標準的な人間サイズの10倍はザラにあるのだ。
『ポケット』になんか入れてられない。
「でも、このサイズならすごい額になるわ……! 材料費だけで20倍近くかかるんだもの! プレート・メイルなら金貨2000枚はくだらないわ!」
なんて目を輝かせて力説するレイン。
買い取ってくれる人なんかいるんだろうか……。
まぁ、材料費が凄まじいから、価値はあるのか。
それに、魔法で巨大化して戦う者もいたりする。
そう言った魔法には大抵の場合、武具を巨大化する効果はない。
ちゃんと巨大化したサイズに見合った武具が必要なのだ。
だから、その手の魔法を使う者なら買う……のかなぁ?
フィリアも以前に魔法で大型化して戦っていた。
やはりでかいものは強い。そう言うシンプルな理屈だ。
まぁ、フィリアの場合は武具の拡大効果もあったので武具はそのまま使っていたが。
「ふふ、研究費用の捻出も目途が立って来たわね……今回の戦いで、新しく作った魔法の実験もしたいところだし」
そう言えば、前にそんなことも言っていた。
あなたが療養から帰って来た時の話だ。
なんか変な形の触媒を使う魔法らしいが。
「ええ、それはもうすごい威力の魔法を見せてあげるわ。期待しててもいいわよ」
などと言って胸を張るレイン。じつにいい大きさだ。
あなたはレインの胸を見つめながら、期待してるよと頷いた。
「まぁ、今のところまだお披露目をしてないから、あくまで威力は机上の空論なんだけどね……『
じつに楽しみだ。
エクスプロージョンと言うからにはやはり爆発なのだろうが。
どれくらいド派手な大爆発を見せてくれるのだろう?
あなたは今から楽しみでしょうがなかった。
戦利品の回収後、死体の処理も行った。
通常の戦場ならば、単に疫病防止とかなのだが。
こういった高位の冒険者が絡む、強大なクリーチャー相手ではまた話が違う。
巨人たちにだって、もちろん神官がいるわけで。
そして、そうした神官の中には蘇生魔法が使えるのももちろんいる。
死体をそのままにすれば、蘇生されてしまうのだ。
さすがに一朝一夕で回復はできないだろうが……。
手厚い看護と補助があれば、1週間ほどで戦線に復帰できるだろう。
そこで死体を完膚なきまでに焼き払っておけば、相手は苦労する。
死者蘇生は何種類かあるが、死体が一切ない場合、最高位の蘇生魔法が必須。
9階梯呪文となると使い手が限られるし、使用する魔力量は莫大。
相手に9階梯呪文の使用を強要させるという意味で、死体の処理には十分な意味がある。
「だからと言って、これの処理は手間ね……いけるかしら? 『物体縮小』」
身長12メートルの太陽の巨人の死体。
それを前にレインが魔法を使うと、なんと死体がみるみるうちに縮んでいく!
やがて、太陽の巨人の死体が、並みの人間の半分の大きさになってしまった。
「3階梯呪文の『物体縮小』よ。生物には効かないんだけど……」
死んだら生物だって物体だから効くと。
「試しにやったら効いたのよね、ラッキーだわ」
しかし、それよりもっといい手がある。
あなたはこの大陸に来てから使ってみたかった呪文を起動。
「ちょ、ちょっと……」
レインが呪文回路を見て引いた顔をする。
あなたは構わず呪文回路を起動させ、目の前にあった魔法の巨人の死体を対象にする。
あなたの発した邪悪なエネルギーが巨人の死体に宿り、びくんと蠢いた。
のそのそと魔法の巨人が動き出し、その体をゆっくりと起こす。
その瞳には理知の色はなく、ただ死に濁った物質が収まっているだけ。
あなたの使った魔法、『死体操作』の呪文の効果だ。
まぁ、率直に言って、アンデッドを作成する魔法なわけだが。
「あ、あなたねぇ……それは悪の呪文よ。あんまり褒められた行為ではないわよ」
まぁ、それはわかってるが。
しかし、使ってみたかったのだ。
「……気持ちはわかるけど。私も昔、ネズミの死体で試したことあるから。でも、堂々とはやらないようにしてちょうだいね……」
もちろんだ。
あなたはそのように頷くと、魔法の巨人の死体に命じる。
つまり、仲間の死体を全部一か所にまとめろ、と。
アンデッドはのっそりと動き出し、死体を一か所にまとめ始めた。
さすがは巨人だ。やはり馬力が違う。
あなたは巨人を使役して死体処理を行った。
自分の手でやった方が明らかに早いが。
それはそれとして、結構楽しかった。
なお、死体は魔法で塵も残さず焼き払った。
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