あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あなたはエヘンオホンゴホンと勢いよく咳ばらいをした。

 そして、これから攻め寄せて来る巨人をブチ殺すための対策をしよう! と声高に提案した。

 

「そうだな。とは言え、今これから大規模な準備など出来ないぞ」

 

 さすがに城砦を作ったりは無理だろう。

 だが、消耗品類を掻き集めておくくらいはできる。

 

 いや、城砦も作ろうと思えば作れる。

 創造系の高位魔法の中には大規模な建築が可能なものもあるし。

 かつて、ソーラスで使っていた家を建てた際に用いられた道具、『建築家の楽器』もある。

 アノール子爵としての権力を使って購入済みだ。

 あれを使えば城砦を1から創り上げることは可能だ。

 

 ただ、そんなことをしても役に立たないだろう。

 『建築家の楽器』で建立できる建築物は、普通の建材を用いた普通の建築物だ。

 人間相手の戦争ならばともかく、巨人相手には無力だ。

 

 一応、楽器のパワーを使用して建築物を保護すれば攻城戦も成立させられるが……。

 城を守るのはともかく、攻撃に出るための兵器がない。

 なにより、最大戦力たるあなたが城砦保護の演奏にかかり切りになってしまう。

 残念ながら、EBTGで楽器演奏が可能なのはあなただけなのだ。

 レインも手慰み程度に弾けるが、楽器のパワーを十全に発揮させられるレベルではない。

 

 やはり、あなたたちが打って出て、野戦でぶつかるしかない。

 元々EBTGは防衛戦よりも、正面戦闘に秀でるチームだ。

 その能力を十全に発揮するにはそちらの方がいいだろう。

 

「だろう、な……まぁ、あとは神官どもを神殿から逃がすくらいだが……逃げんだろうな」

 

「むしろ、自分たちから積極的に打って出ると思うんだけど」

 

「ザイン神の神官たちは、そう言う傾向がありますね……あなた様、いかがしますか?」

 

 クロモリの問いに、あなたは唸る。

 逃げて欲しいのはやまやまだが、たしかに逃げないだろう。

 フィリアも徹底抗戦だと言いたげな態度でいるわけだし。

 

 ただの神官ならまだしも、聖騎士たちの意思は堅いだろう。

 神官は自ら神へと信心を奉ずることを選んだ者たちではある。

 自ら選んだ、と言うのは堅い意志がありそうで、実はないこともある。

 

 親がそうだったから、とか、周りみんながそうだったからとか。

 そんな消極的な理由で選んだ信心の道もないとは言えない。

 高位の神官まで行くとそうではないことの方が多いが、皆無とは言えないし。

 そもそも、熱心に信仰していても、命を捨ててまでとはいかないものもいる。

 

 だが、聖騎士は神が選んだお堅い正義マンたちだ。

 融通の利かなさは、彼らの清廉にして堅固な信仰心の表れ。

 逃げろと言っても絶対に逃げないだろう、彼らは。

 彼らが愛好するトンボのシンボルは、不退転(ふたいてん)の意志の表れ。

 戦いに赴けば退かず、討ち死にしてもなお信仰を守ることを誓った穢れなき騎士たちだ。

 

「逃げないなら、あくまで補助的な役割に従事させておく、とか……」

 

「ですが、聖騎士たちの本懐はやはり接近戦ですから……弓や投石紐の扱いは弁えていても、剣や盾ほど熟達してはいないものですし……」

 

「そもそも、補助的な役割に従事させるにしても、城砦やら堀もないんだ。危険度は近接戦より少しマシくらいでしかないぞ」

 

 逃がすことくらいでしか命は守れない。

 だが、硬い意志の持ち主たる彼らは逃げてはくれまい。

 じゃあ、どうするかって……どうしたらいいのだろう。

 

 あなたは神官たちにも騎士たちにも死んでほしくない。

 だが、騎士たちは巨人たちとの戦いに命を賭すだろう。

 それをどうこうすることはあなたにもできまい。

 

 ……いや、1つだけ手があるか。

 

「へぇ、そんなもんがあるンですかい? その秘策ってのをお聞かせ願えやせんか?」

 

 リフラの問いに、あなたは頷いた。

 そして、あなたはその策を朗々と語って聞かせた。

 

「なるほど、その手はありね。妥当な提案だわ」

 

「常識的なだけに、神官の方々も騎士のお歴々も、頷かざるをえないですね」

 

「その提案ならいけそうだな、いくか」

 

 仲間たちの賛同も得られた。

 あなたは提案を神官たちの上の方……セマリア神官に談判をしに行くのだった。

 

 

 

 

「なるほど、巨人帝国の逆撃の可能性ですか……」

 

 あなたはセマリア神官を尋ね、包み隠さずに事情を離した。

 つまり、あなたたちが遠慮なしに巨人をぶっ殺したので逆撃の可能性高しと。

 同時に、あなたはその可能性の補強のためにいくらか手を打っていた。

 まぁ、単純にフィリアに頼んで、『神託』を下してもらっただけなのだが。

 ここ数日のうちに、巨人族の報復があるか? と言う問いだ。

 

 問いへの応えは、ある、とだけの簡潔なものだったが。

 神からの応えは確実なもの。信徒たちは信じなければならない。

 襲撃ではなく報復があると言うなら、その規模は大きいもののはずだ。

 

 少なくとも、先の先遣軍を超える規模なのは間違いない。

 その先遣軍にすら、城砦を落とされ、神殿も陥落寸前だったのだ。

 次にそれ以上の軍隊に攻め寄せられたら、もう保たないだろう。

 ここで無理に留まっても何の意味もないのは確実だ。

 

「しかし、この神殿を無為に落とさせるわけにはまいりません……われわれの送り出した救援要請を受けて送り出された部隊がそろそろ到着するはずです。彼らが居れば、まだいくらかは抗えるはず」

 

 もともと、あなたたちへの依頼はそれだった。

 救援要請を出し、それによってやってくる救援部隊の到着までの間の神殿の防衛。

 あなたたちが速めに逆撃に打って出たので、それは結局間に合わなかったわけだが。

 

 あなたはセマリア神官に、その救援部隊では足りないと断言した。

 おそらく、次の部隊は巨人族の面子に懸けて、相当な規模のものを送り出して来るだろう。

 下手をすれば、巨人族諸王のお出ましと言う可能性すらある。

 

 そんな攻勢に対しては、もっともっと大規模な救援が必要だ。

 そして、逆にこの攻勢を打ち破れれば、巨人族の勢いを大いに挫けるはず。

 さすがに諸王のお出ましの可能性は低いだろうが。

 まず間違いなく巨人族の威信をかけて送り出される部隊だ。

 これを返り討ちにすれば、人間側の士気は大いに上がり、巨人族の士気は下がる。

 

 いま、この瞬間こそが、勝負の時なのだ。

 

 あなたはセマリア神官に真剣な顔で提案した。

 今ここにいる神官、騎士たちのすべてを連れて、再度の救援要請に出向いてもらいたい。

 そして、その救援要請を申し出る場で、セマリア神官以下聖騎士たちには命を賭してもらいたい。

 

「命を賭す?」

 

 彼らには自裁(じさい)すると申し出てでも救援を引き出してもらわなければならない。

 高位の神官、騎士たちが命を賭してまでも行う嘆願だ。

 神殿上層部としても、国家としても、無視はできまい。

 

 あなたたちは、その救援が来るまで、この神殿で巨人族を迎え撃つ。

 可能な限りはこの神殿を守るが、保たなければ逃げなくてはなるまい。

 セマリア神官たちが、どれだけ早く救援を連れて来れるか……。

 それが神殿を守れるか否か、そして、あなたたちが無事帰れるかの分水嶺となる。

 

「承知しました。では、そのように致しましょう。神官、騎士たちを連れ、大神殿へと向かいます。その場で命を賭けて救援を引き出してごらんにいれましょう」

 

 セマリア神官はあっさりとそのように頷いた。

 あなたはあまりのあっさり具合に驚き、本当にいいのかと尋ね返した。

 

「はっはっは。あなたがおっしゃったことでしょうに。まぁ、なんでしょうな。ここが最後の賭け時だと、私は思うのです」

 

 最後?

 

「あなた方のお蔭で、神殿は窮地を脱しました。そして、『砕けぬ盾』を継承していただける後進も見つかった。この地上における私の役目は終わった……そう思っていたのです」

 

「そんな、セマリア上級神官殿、まさか死ぬおつもりなのですか?」

 

「いいえ、まさか。ただ、私が信仰の戦士として、最前線で盾を手に命を賭すことはもうなくなった。私は後進の育成ができる柄でもありませんので、こうして神殿のまとめ役の地位をいただいております。あとはただ、上級神官として余生を過ごすのだろうと……そう思っておりました」

 

「それは……では、セマリア上級神官殿は」

 

「私の命、最後の賭け時は、まさにここなのでしょう。私が信仰の戦士として、この地上でなによりも偉大な聖戦を成す時は、いまここなのだと、そのように思います」

 

 その瞳には、穏やかな色があった。

 だが、透徹した、ひどく透明な意志の輝きがあった。

 いろんなことを成して来て、すべてをやり切った者の瞳。

 

 セマリア神官は死を見つめている。

 死を覚悟しているのではない。

 死を受容し、その先に進もうとしている。

 

 彼は、死後ザイン神に召し上げられるのかもしれない。

 ザイン神の領域で、永遠にして無限の聖戦を成す。

 彼にとり、この地上はその前座にしかすぎなくなったのかもしれない。

 彼は自分の命の使いどころを見定めたのだ。

 

「あなた方がこの神殿を守ってくださると言うのです。私が命を賭けずしてどうします。かならずや救援を連れてまいります」

 

 セマリア神官はそのように頷くと、出立の準備をするべく動き出した。

 同時に、この神殿の神官、騎士たちにも出立の準備をするように号令を下した。

 

 急速に、次の戦いへの準備が整おうとしていた。

 

 

 

 

 セマリア神官が、神殿の神官たち騎士たちを連れて出立していった。

 本当に最低限の荷物を手に、相当な強行軍で向かうつもりらしい。

 旅人が同じ程度の荷物を手にしていたら、旅を舐めてるのか? と言いたくなるほどの軽装だ。

 

 高位の神官がいるので、飲食には困らないし、疲労も魔法で癒せるだろうが……。

 それでも相当な無茶をしてでも救援要請をしに行くようだ。

 下手をしたら、数日程度の旅程でも死人が出るんじゃあ……そんな不安にすら駆られた。

 

「これで、後顧の憂いなく戦えるな……リフラ、これで満足か?」

 

「ええ、ええ、満足ですぜ。ただ、ションベンちびりそうだ。あーあー、なんだって命を賭けて戦うなんてカッコつけちまったんだ、ばっかでぇー」

 

 などとぼやくリフラ。

 

「よし、こうなったら恥のかき捨てってやつでさ。あたしに金を恵んでくだせぇ。できる限りたくさん」

 

 かと思ったら、あなたに向かって金をせびりに来た。

 本当にどんな状況でもうまくやっていけそうなやつだ。

 あなたは苦笑して、無事に生き延びれたらいくらでも酒と飯を奢るよと答えた。小遣いもやろうではないか。

 

「へぇっへっへっへ……言ってみるもんですねェ。ちなみに、お小遣いってのァ、どんだけいただけるんで?」

 

 金貨掴み取りとかどうだろう。

 

「夢のある話ですねぇ。そいつは素敵でさ、楽しくなってきやしたね」

 

 あなたも楽しくなってきた。

 ぐふぐふふとあなたは内心で笑う。

 

 先ほど、リフラの処女を報酬にもらうんだろうと疑われた時のことだ。

 その目線を受けて、なんとかリフラとヤれないかと考えた時に光明が差した。

 あなたが女の子と自由にイイコトができないのは『アルメガ』のせいだ。

 『アルメガ』に生命力を送ってしまうので、迂闊に女を抱けない。

 

 だが、よくよく考えたらなのだが。

 リフラは星屑戦争の立役者である。

 つまり、対『アルメガ』戦争の最先鋒に立っていたのだ。

 

 そんな彼女が『アルメガ』の傀儡の可能性があるだろうか?

 まずない。傀儡だったらさっさと自害でもさせていただろう。

 彼女が『アルメガ』との戦いを全うできた時点で違うと分かる。

 

 つまり、リフラとイイコトしても『アルメガ』に生命力の流れる心配がない……!

 

 この大陸で知り合った女の子とイイコトができる……!

 リフラは豊満で美味しそうだし、美人だし、エッチそうだし……。

 彼女を前にして、我慢しなくていいのは最高過ぎる!

 

 楽しみだ……楽しみだ!

 巨人どもをぶっ殺して、リフラとイイコトしよう!

 そして、リフラにたっぷりとお小遣いをあげよう!

 

 屋敷に招いて、たっぷりのごはんとお小遣いで歓待しよう。

 そうすれば、居心地のいいあなたの屋敷でだらだらと滞在してくれるのでは?

 なんせ『トラッパーズ』の前哨基地でだらだらしていたのだし。

 あなたの屋敷なら住環境はよりよいのだから、過ごしやすいだろう。

 

 その間、ちょっとイイコトの1発や2発頼んでも……しかたないか!

 その時にお小遣いをたっぷりと弾んでも……しかたないか!

 リフラの豊満なお胸に溺れても……しかたないか!

 

 あなたはぐへへうへへと笑う。

 仲間たちの疑いの目線は悲しかったが。

 このような気付きももたらしてくれる。

 よい気付きに巡り合えて、最高の気分だ。

 

 この戦い、なんとしても生きて帰らなくては。

 リフラと約束をしたのだ。彼女の信義に応えたい。

 その後に、その重そうなお乳の1つや2つをひと揉みふた揉み、ひと吸いふた吸い……。

 そう考えただけで滾ってくる。

 

 この戦い、なんとしても生きて帰らなくては……!

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