打ち鳴らされる武具の音色、巨人たちの足音。
それが
神殿を攻撃されてはあっと言う間に破壊されてしまう。
打って出て、平地でのぶつかり合いに持ち込むべきだ。
この人数でどうせ防衛戦は無理だ。
一か所に留まれば、そのまま人海の波に囚われてしまう。
あなたたちは少人数で、小さい。その利点を活かして動くべきだ。
そして、この手のぶつかり合いで最も重要なのは、初手。
最初の激突で、なにか大一番を決めることで、その後の戦の
だから、あなたたちが取った手段は無茶無謀もいいところなものだ。
そのまま真っ向から激突し、中央を正面突破するのだ。
あなたたちはひたすら真っ直ぐ突進し続ける。
前にいるものは片っ端からぶっ殺す。
そして、一番奥にいる自称嵐の王とやらのところまで行くのだ。
「本当にこんなこと出来るのか!? 出来るのだよな!?」
レウナが必死の形相で問いかけて来る。
出来る出来ないじゃない。やるんだよ。
「無理でも無茶でも、これが一番勝算が高いならやるしかないですよ!」
サシャも必死の形相で走る。
実際、常識的にぶつかって常識的にやれる状況じゃない。
あなたたち側に、もう50人ほどいたらまともにやれたが。
なんせ、EBTGメンバーにプラスしてリフラが1人だ。
この人数では合戦と言えるものはできない。
「へぇっへっへっへ! 無茶だ無謀だド阿呆だ! とんだ大馬鹿ですぜ!」
リフラはへらへら笑いながら走っている。
魔法使いの癖に、その手の肝は据わっているらしい。
「来たれ来たれ。彼方より来よ、強壮なる
あなたが背負っているレインが、そのように唱える。
呪文発動のための精神集中には走っていられない。
そこであなたの背中にレインを乗せると言う荒業を取っている。
そして、発動したのは『神話級呪文』たる『竜心開城』。
その効果は非常に単純なものだ。
「グオオォォォ……! 忌々しい巨人ども……! 殺してくれるわ!」
「状況はよくわからんが、死ねいっ!」
「ガァァァァ! おれのブレスを喰らえ!」
あなたたちの周囲に召喚された、10体のレッド・ドラゴン。
そのいずれもが、100やそこらの非常に若い個体である。
ドラゴンと言う長命種族としてみれば、少年少女と言ってもいい。
しかし、レッド・ドラゴンはドラゴンと言う種の中でも強力な種だ。
たとえ若い個体であろうとも、その力は間違いなく驚異の一言。
居並ぶ敵の精鋭たちと比べても見劣りはしない。
この『神話級呪文』はまだ未完成で、とてもではないが発動不能だったらしいが。
接触した状態であれば、呪文回路を介して魔力を融通できる。
あなたが大量の魔力を提供することで、レインの魔法を無理やり発動したのだ。
「なにぃっ!? どこから羽トカゲどもが出て来たのだ!」
「馬鹿な! 妖術師が隠していたというのか! やれ! 殺せェ!」
「ぬうぉぉぉおおおお! たかがドラゴン風情で俺たちを止められると思うかぁ!」
巨人たちは負けじと武器を抜刀し、激突する。
アダルト・レッド・ドラゴンと巨人族の激突。
レッド・ドラゴンは比較的大型なので、巨人族とも見劣りはしない巨躯だ。
その、巨躯と巨躯の間をすり抜けて浸透していくあなたたち。
レッド・ドラゴンたちはそう長くは保つまい。
だが、それでいい。それで十分だ。
「ぬっ! 小人どもが前衛を抜けて来たか! なにをやっている! 潰してしまえ!」
「邪魔ぁぁぁ!」
サシャが前に飛び出す。
その強靱な脚力を用いた、弾丸のような踏み込み。
それによって、前へと出て来た
昨晩、あなたはサシャに備蓄食料を大量に提供した。
それをサシャはあなたが携帯している祭壇に捧げまくった。
そのおかげで、サシャは『
「『影分身の術』ゥ!」
サシャが8人に増えた。
そして、8人のサシャが嵐の巨人に激突した。
「死ね! でかぶつ!」
「泣き喚きなさいブタ!」
「さきに地獄に逝ったお仲間に合わせてあげるわ!」
「おまえの血で化粧をしてあげる!」
セリフが悪役過ぎる……。
サシャのサディズム精神全開の挑発はあまりにも悪党として堂に入っていた。
そんなところ堂に入らせなくていいから……。
しかし、そんな攻撃的な発言に見劣りしないだけの攻撃性能がサシャにはある。
手にした瑞穂狐とファルシオンの連撃、グレートクラブの打突、グレートソードの打ち込み、棘付きウォーチェインのブン回し、ウォーハンマーの振り下ろし……。
本体と影分身たちが手にした武器による凶悪な打ち込みが嵐の巨人を襲う。
その1つ1つが、ただの1撃で並みの巨人を木っ端微塵に粉砕する威力だ。
それが同時に8種類も、連撃で叩き込まれたのである。
「ぐばわっっ!!!!」
嵐の巨人が一瞬で肉片にまで粉砕され、そこらに散らばる。
そのおぞましい破壊の旋風の痕跡を抜け、あなたたちはさらに前へと。
「やらせはせん! やらせはせんぞぉぉぉ!」
さらに前へと飛び出して来る嵐の巨人。
親衛隊の層は厚いらしい。それも当然か。
なにせ、ノグリアとやらは自称でこそあれ、それにふさわしいだけの力を持った存在だ。
王を名乗るだけの力があり、王と敬われるだけの財力があり、配下たちがいる。
魔法の武具で武装した親衛隊たちの忠誠は確かなものだろう。
殺して突破するほかにない。
「お次はあたしだ! 大盤振る舞い! 全部持っていきやがれ! 数拡大! 威力拡大! 『死の光線/デス・ビーム』!」
リフラの手から極太の怪光線が5条放たれる。
それは嵐の巨人の胸甲に激突すると、それを一瞬で爆砕。
その下の肉体をも一瞬で消し飛ばし、その胸に風穴を開けた。
リフラは十分に腕利きの魔法使いだ。
その魔力をありったけぶち込んだらしい。
あなたがパナしている無法な威力の魔法に匹敵するだけの魔力をぶち込んだのだ。
この無法な威力も納得と言うほかないだろう。
「次から次へと! 俺は前の阿呆どもとは比較にならんぞ! 蹴散らしてくれる!」
さらに1人、親衛隊が前へと。
「甘いのよ! こっちはフリーハンドよ! 『魔流星』! 『迅速』! 『魔流星』!」
そして、あなたが背負っているレインが無茶苦茶をやった。
9階梯呪文『魔流星』の発動、そこに一瞬の迅速を得られる『迅速』の魔法の発動。
以前に、カイラが使っていたのが印象深い魔法だ。
ごく一瞬だけ、速度を倍加するような効果の魔法である。
それによって強引にもう1度魔法を発動させることができる。
レインはその魔法により、『魔流星』禁断の2度打ちを実現してみせたのだ。
放たれる総計8発の凶悪な破壊のエネルギーを宿した火球の弾丸。
それを前に驚愕に驚き戸惑っている嵐の巨人に激突。
爆炎が花開き、嵐の巨人を一瞬で飲み込み、ズタボロに変える。
「ぐうっ……」
あなたの上でレインがうめき声をあげ、項垂れる。
『迅速』には結構キツいアフターリスクがあるらしい。
そのアフターリスクでレインは参ってしまっているらしい。
だが、その甲斐はあった。
都合3人の嵐の巨人の親衛隊の突破。
あなたたちの前に、圧倒的な巨躯を誇る巨人の姿。
鋭い眼光を宿した瞳があなたたちを睥睨している。
「小賢しい小人どもめが……この嵐の王に、強引に
嵐の巨人の王、ノグリア。
あなたたちは軍勢を突破し、その御前に立つことに成功したのだった。
「嵐の王、ノグリア! 私はフィリア! フィリア・ユールス! 私はいまこの地にて最も強き信仰の戦士! まぎれなき正義の従僕たる聖騎士! 我が名誉にかけ、おまえに決闘を挑みます!」
あなたたちの最も背後に位置していたフィリアがそのように宣言する。
手にはバスタードソードとヒーターシールドを手にし。
その身には歴戦の傷を残した鎧を纏い、その胸に確かな信仰の光を宿す。
そこにあるのは、まぎれもない希望の戦士。
秩序と善の体現者にして、決して消えることの無い最後の希望。
いかなる悪をも許さず、いかなる弱き者をも守る光。
聖騎士。そのように謳われる者たちそのものの姿だった。
「小癪な小人めが! 貴様は誰を前にして物を言っているか理解しておらぬようだな! 嵐の王の御前である、ひれ伏せ!」
そのように、ノグリアは叫び。
しかし、フィリアはその瞳に更なる炎を宿し、叫ぶ。
「いいえ、いいえ! おまえの好きにはさせない! この『砕けぬ盾』を恐れぬのならば、かかって来なさい! そうでなくば、臆病者の
フィリアの大音声での宣言。
それと同時、手にした盾が眩い光を放つ。
その盾から放たれる神秘のパワー、恐るべきプレッシャー。
それは光の粒子となって宙を舞い、輝きを放つ。
あなたたちの四方を覆う壁が産まれ、そこに領域を区切る。
ザイン神のイモータル・レリック、神器『砕けぬ盾』の最大の力。
『誉れ高き決闘』の力は、決闘の強制にある。
この盾を持つ者に一騎打ちを挑まれたならば、よほどの意思持つ者でない限りは抗えない。
そして、抗って逃げたとしても、その魂に傷をつけるのだ。
この盾の持ち主との決闘から逃げた者は、その生命に負の影響を負う。
その影響から逃れるならば、一騎打ちを受けるしかないのだ。
ノグリアは周囲を覆った壁を血走った眼でにらみつける。
彼の魂に打ち込まれた楔の効果は、彼も理解しているだろう。
彼はもはや、この決闘に応じる以外の手立ては存在しない。
逃れれば力を減じる羽目になる。
ならば、打ち破って堂々と脱するだけのこと。
なにより、一騎打ちであれば勝ちはゆるぎない。
戦士として十分な力量を持つノグリアはフィリアを前にそのように理解しただろう。
「おまえに決闘のルールを伝えます! 立ち合い人2名と共に決闘に臨み、勝敗は先に戦いの場に立てなくなった者の敗北としましょう! 私はこの2人を立ち会い人に選びます!」
フィリアが示すのは、あなたとレインである。
あなたはレインを傍に降ろしつつ、前へと一歩踏み出る。
ノグリアがあなたとレインを見やり、フンと鼻で笑った。
そして、手振りで親衛隊の者から2名を誘い込んだ。
「小なりと浅知恵が回るようだな、小人め。だが、この圧倒的な力の差、それが分からぬ限りは愚か者であることに違いはない……その愚かさの代償、すぐさま払わせてくれよう」
そのように口にしながら、ノグリアが手にした剣を掲げる。
親衛隊の巨人2名が傍に立ち、ウォーアックスとグレートソードを掲げる。
その威圧に満ちた姿は、親衛隊の巨人が特に腕利きの2名であることを匂わせる。
迂闊にぶつかれば危ういだろう。
そして、あなたが本気を出したならばともかく。
EBTGメンバーとして遜色ない程度の実力では。
負けも十分にあり得るほどの強力な巨人である。
あなたは剣を抜き放ち、レインは手にしたロッドを構える。
フィリアは剣を手に堂々たる態度で聖騎士らしく振る舞う。
「ほんとのほんとに……頼むわよ!」
「分かってますから」
「お願いだからね! 本気で! マジで頼むわよ!」
レインが必死で言う。あなたもわかったわかったと応じる。
レインは悲壮な顔で言うが、納得したんだからちゃんとやって欲しい。
「では、ノグリア! いざ、立ち会うとしましょう!」
「参れ! 小人!」
あなたとフィリアはレインを挟んで走り出す。
3人で手と手を取り合い、渾身の力を込めての走り出し。
レインが必死の形相で呪文回路を形成。
「いちっ! にのっ! さーんっ! たりゃああああ――――!」
フィリアのカウントダウンと、裂帛の気合。
あなたも同様にカウントダウンし、気合の咆哮。
それと同時に、あなたたちは手を振り抜く。
「へっ、『変幻自在』ぃ!」
レインが魔法を発動しながら、あなたたちの手によってぶん投げられた。
勢いよく吹っ飛んで行くレインの姿。よく飛ぶ。
魔法使いだからか、あるいは運動不足だからか、レインは背の割に体重が軽い。
「なっ、なにぃぃぃっ!?」
術者だろう人間が自分たちへと向かってぶん投げられる光景。
それにさすがのノグリアも瞠目して驚きの声を発する。
だが、その身に刻んだ戦闘経験とて伊達ではない。
投擲物と同様に、手にした武器でもっての打ち払いを選択。
しかし、ノグリアの武器の間合いに入ろうとした瞬間、レインの姿が掻き消える。
「なにっ!? 秘術か!」
ノグリアが周囲を探し、その首を巡らせる。
親衛隊の巨人もまた同様にレインの姿を探し。
その一瞬後のこと。
突如としてノグリアの身体が縮む。
「な、なんだこれは!? 馬鹿な! 待て、なぜ俺が! う、うおぉぉおおぉぉぉぉお――――!」
壮絶な絶叫と共に、ノグリアが瞬く間に縮んでいく。
やがて、小さな球体同然にまで縮み、ノグリアの面影はなくなり。
そして、その球体は地面へと、とぷん、と潜り込んでしまった。
あなたたちはノグリアの封じ込めに成功した。
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