「ああまったく予想外だ……! 別大陸に『無尽の呪文書』と同種のレリックが存在し、挙句にそれを持ち出している大馬鹿野郎が存在するとはな……! それも! 僕の! 隣にだ!」
クローナがバチギレしながら愚痴を垂れ流している。
それに関してはマジでごめんけども。
しかし、まさかこんなことになるなんて思わなかったし。
その不測の事態を予測するのがデキるやつだというなら。
それこそ、不測の事態を予測して『無尽の呪文書』と同種のレリックを持っていないかクローナが確認するべきだったのだ。
「ああ、分かっている……だから、おまえの責任を問うつもりはない。だがな! 愚痴くらいは言わせろ! どんな奇跡的な確率でこんなことが起きるんだ!」
それに関してはあなたもそう思う。
まさか、この大陸に『真実の眼』と同種のレリックがあるとは。
「だいたい、それを持ち出すなどなにを考えているんだ? おまえは秘宝を破壊した自覚があるのか?」
あるけども。でも、壊しちゃったものはしょうがない。
そう言いながら、あなたは手にした『真実の眼』を開く。
かつては自動で記述が追加されていた紙面も、今は手動で開くばかり。
無限のページがあることと、過去の歴史がすべて記載されていること。
それ以外はもはやただのノートでしかない。
「……確認するが、おまえがそのレリックを持ち出した時、何か起きたか?」
特に何も起きなかったと思う。
いや、門番と思わしきモンスターがいたといえばいたが……。
ふつうに全部抹殺するか破壊するかしちゃったので。
「そうか。そうなると、何が起きるかを推測することもできんな……」
「ひとまず、目の前にあるパズルを解いてみるしかない……と思うわ」
「そうだな。ここで愚痴っていても始まるまい。行くとするか」
クローナが気を取り直し、壁面近くにあるパズルへと向かう。
あなたたちは揃ってそこに近寄り、パズルの内容を眺める。
どうやらスライドパズルの一種のようだが……。
4×4のシンプルな枠に収められた15枚のスライドパズルだ。
しかし、これをどういう順番で動かすのだろうか。
どうも、パズル盤面に彫り込まれた文様に意味があるようだが……。
「ふむ。これは古代巨人族の占星術に用いられたシンボルだな。巨人族は手足2本ずつ、あわせて4を神秘的な数字と考えた。それに反するように、腕と指の数をあわせた12を神秘的な数字と考える学派が存在する。この2つを併せ、16、あるいは14を数秘学の要点と考える。これは15枚あるので、おそらく前者、16を用いたパズルだろう。すると、1枚欠けている部分がなにか。天体16座の考えからすると……こうだろう」
クローナがシャカシャカとパズルを動かしていく。
しばらく動かした後、あなたにはまったくわからない形でパズルが整う。
そして、パズルの設置されている台座が地面に沈み込んで消え、階段が姿を現した……。
……ぜんぜんわからない。クローナがいてよかった。
あなただけだったら永遠に出られなかっただろう。
「古代遺跡の探索をするなら覚えておくといいぞ。こういったギミックの存在する遺跡はそう珍しくはないからな」
困ったことに本当のようだ。現代巨人語なら学園で覚えたのだが……。
まさか、古代巨人語と、それに付随して天文学、占星術まで学ぶ必要があるとは。
「まぁ、そのうち教えてあげるわよ。今回は女王様と私に任せておいてちょうだいな」
と、レインまでも胸を張る。
どうやらレインもわかるらしい。
「ええ、占星術関連は魔法とも関係の深い分野だし、もちろん覚えてるわよ。それにこれは結構基本的な知識だもの」
しかもどうやらパズルはそんなに難しいものでもないらしい。
なるほど、であれば専門家に任せるとしようではないか。
「えーと……これはホヘロスの文書にあった記述に由来するキーワードね。石占いの呪文だわ。手順部分が省かれているってことは……手順を再現するだけね。簡単だわ。まず石を優しく撫でて……」
「あ、これは私にもわかります。オベリスク文書ですね。たしか、数秘術を用いて読むんでしたよね。えーと……それは真実であり、偽りでなく、確実かつ真正。奇跡の成就によりて、上は下に、下は上に。なんとなればあらゆる真実、究極、最強、すべてをおのがものとし、すべての栄光、名誉、名声を手にし、そして神なる座に至ることを……」
「ふん、ただのつまらん換字式暗号か。これは……古代巨人王を称える碑文だな。解法もつまらんが、内容はさらにつまらんな……」
あなたたちの前で、次々とパズルやリドル、暗号が解かれていく。
すげーとか、やべーとか、かっけーとか、あなたたちは賑やかし役をやっていた。
悔しいけどしょうがないのだ。だってわかんないだもん……。
あなたとダイアとウィチヘンは、この知的労働に1ミリも寄与できなかった。
古代巨人語や占星術の勉強をしておけばよかった。
あなたは口惜しくてたまらなかった。
「ふ、ふふ、どうもおまえに勝ち誇れる分野があるのは心が晴れるな」
悔しがるあなたに勝ち誇るクローナ王子。
胸をそびやかして自慢気な顔をしている。
あなたはその立派な胸の先っぽを優しくなぞった。
「ふあっ……『熱線』」
クローナが甘い声を漏らした。
そして、直後に『熱線』をパナして来た。
あなたに直撃するが、装備の属性耐性で霧散した。
「くそっ!」
「お兄様、さすがに魔術を用いるのはいかがなものかと思います」
「効いとらんわ!」
まぁ、仮に効果が出たところでクローナの魔法ではダメージにもならないが。
たしかにこの状況で仲間に向かって魔法をパナすのはダメだろう。
「ええい! とにかく、次に僕の胸に触れたら不敬罪だからな! この国で最も高貴な乳房に触れる許可を出した覚えはないのだからな!」
くっ、残念……!
「ウィチヘン! 次にこのバカが無礼な真似をしたら貴様が止めるんだ!」
「えっ。アノール子爵をですか。第一戦闘団を雑に処理る人を?」
「それが貴様の仕事だ! やれ!」
「無理です、死にます、許してください陛下」
ウィチヘンが泣きそうな顔で拒否る。
これはどっちかと言うと、クローナが無茶振りをし過ぎな気がする。
あなただって、あなたと戦えと言われたら拒否るだろう。
いや、普通に強過ぎるし、めんどくさいので戦いたくない。
あなたくらいの冒険者は、大抵みんな耐性が完璧だ。
よって、実質的にほとんどすべての魔法が効かない。
そして、やろうと思えば物理攻撃に耐性を持つことすらできる。
その状態の冒険者との戦いは不毛を通り越した何かだ。
「お兄様、落ち着いてください。きっと、疲れているのです。気を休めてはいかがですか?」
「む。そう言われるとそうかもしれんな……たしかに、謎解きは頭を使って疲れる。おい、休憩にするぞ」
クローナの要請で、あなたたちは休憩をすることにした。
まぁ、急ぎで脱出しなければならない用事があるでもなし。
急いては事を仕損じるともいうし、休み休みやろうではないか。
あなたたちはその場に腰を下ろす。
足元には赤い毛足の長い絨毯が敷かれており、そこに座れば尻も痛くない。
軽く喉を潤すために、お茶なども用意した。
「便利だな、その魔法。お茶が暖かいまま仕舞えるのか」
クローナが『四次元ポケット』から取り出されたティーポットに感心したような顔をする。
クローナはそれなりの腕の魔法使いだ。
教えれば『四次元ポケット』も使えるだろう。
あなたはクローナに見えやすいよう、丁寧に呪文回路を見せてやった。
「ほう、分類としては召喚術か。なかなか使い出がありそうだ……おい、もしやおまえたち、武器を持ったまま入ってきていないだろうな」
武器持ったまま入っちゃだめなの!?
あなたは驚きの事実に目を見開く。
まさかダメだと思わなかった!
「むしろなんでいいと思った!」
逆に聞くが、割とみんな堂々と武器持ってるし。
そもそも王宮に入る時もボディチェックとかされなかったし。
私室に通された時も、まったくノーチェックだったのだが。
それなら普通は素通りオーケーだと思うだろう。
「ウィチヘン!」
「いやしかし、陛下……
「どこのだれが公妾だ!」
「逆にお聞きしますが、以前にアノール子爵を私室に招いて2人きりでご歓談されたはずでは……?」
「ぐっ……! た、たしかにそうだが……!」
たしかに、あなたは以前にクローナとヤることをヤっている。
こう、ものすごいボリュームがありつつもはじめてで。
ダイアそっくりの身体なのに、反応はぜんぜん違っていてこれが実にかわゆいというか。
ひとつ言えることは、最高だったということくらい、か!
「ま、まぁ、まぁいい。ぶ、武器を持ったまま部屋に入ったことは許そう……うむ……」
クローナからのお許しが出たのでよしと言うことになった。
「は、話は変わるが……その、おまえの持っている『真実の眼』なるレリックには、記録された呪文を呪文書のように読み出して会得する機能はあるか?」
あからさまな話題転換だが、あなたはそれに乗ってやった。
クローナの言うような機能はたしかにある。
呪文書と同じく、記述のある呪文を取り込むことが可能だ。
取り込んだ呪文を、ストックの形で体内にチャージすることも可能。
ただ、お目当てのページまで記述を探す必要があるので、非常に手間。
しかも、ストックの形でチャージするには魔力をリチャージする必要があるし……。
それに、エルグランドの魔法は基本が殺傷のためにある。
そして、そう言った殺意極まる魔法は後代のものの方が優れている場合が多い。
『滅びの呪文』のように過去にも優れた破壊の呪文はあるが。
小回りの良さや使い勝手の良さは現代のそれが勝る。
やはり『真実の眼』に記録されている呪文は使いにくいのだ。
そのため、あなたはその機能をまともに使ったことがない。
しかし、この大陸の呪文は利便性が高い。
『無尽の呪文書』なら使い出のありそうな機能だ。
「ふむ。そう言うものか」
きっとえっちな使い方ができる呪文もあるだろう。
こう、一時的に巨乳にしたり、貧乳にしたりとか。
そんな呪文があるならぜひ使いたい。
よもや、クローナが魔法使いになった理由も……?
「いいか、アノール子爵よ。誰もがおまえのような愚か者ではないのだ。この国の民がおまえのレベルにまで落ちたらこの世の終わりだぞ」
ひどい言われようだ。
だったら何のために魔法使いに?
「知的好奇心もそうだが、過去の事例に学ぶことで得られる知見が値千金の価値があるという程度はおまえもわかっているだろう」
なるほど、まじめだ。
顔よりでかいおっぱいじゃないと興奮できないとかだったらおもしろかったのに。
クローナは全体的に隙が無くて面白みがない。
ダイアみたいにビックリするほどバカなら面白いのに。
まぁ、面白いの白くないので人生やってるわけでもないだろうからしょうがないのか。
「ところでだが、おまえはたしか、あちらこちらの大陸を冒険したのだったな」
突然の話題転換にあなたは首を傾げる。
だが、たしかにあちらこちらの大陸を旅したのはたしかだ。
あなたが行ったことのない大陸はファートゥムくらいだ。
「この大陸と、エルグランドに、自動書記のレリックが存在したわけだが。もしや、他の大陸にもあるのか」
生憎と聞いたことはない。
だが、この2つのレリックの符合を考えるに、あってもおかしくはない。
そう考えると、各大陸のこの記録書を探す冒険も楽しそうだ。
各大陸の超古代文明の記述とか見れそう。
エルグランドでは第2期文明ベエラ・ドオ・デラの時代からしか残っていないのだ。
第1期文明、ルス・マクナは神々の永遠の盟約が結ばれた以外、ほとんど謎なのだ。
場合によってはルス・マクナより以前に結ばれたとも言われるし……。
「ふむ、おまえでも知らんわけか……おまえで知らんなら、ほかのだれも知らんのだろうな。ダイア、もしや知っていたりするか?」
「いいえ、さっぱりです!」
「だろうな」
力強く宣言するダイア、あっさり納得するクローナ。
この2人、見た目よりもずっと仲がいいらしい。
もともとそんな気はしていたが、王族と言う中にあっては希有なことの気もする。
そんな2人も、王位継承にあたっては真剣に殺し合った。
王族の独特の感性と言うか、玉座を見据えた覚悟と言うか。
なんと言うか、恐ろしいものが垣間見える世界だ。
願わくば、このままこのおだやかな関係が続いて欲しいものだ。
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