「ほっ、ほっ、本……めっ、めっ、めくる、めくる……」
「本をめくるとね、ページがあるんですよ。うわー、こわいなーって。それでね、さらにめくると、またページがあるんですね。私はもう怖くなっちゃって……」
レインがちょっとおかしくなってしまい。
サシャはサシャで別ベクトルにおかしくなってしまった。
かく言うあなたは平気だ。
一晩中、本のページをめくり続けるなんてちょろいちょろい。
この程度のことで音を上げるようでは、超人級冒険者など夢のまた夢。
あなたは超人級冒険者だ。このくらいじゃくじけないのだ。
「とても憔悴したような顔をされていますが……」
しかし、ダイアには心配されてしまった。
朝だから試合でもしようとか剣を片手に遊びに来たのだ。
なに、定速で一晩中本を捲っていただけだ。なにも心配いらない。
王宮ではエルフの美女メイドたちにちやほやされるし……。
悪い、やっぱつれぇわ。
「そりゃ、つらいでしょうよ」
「ちゃんと言えましたね……」
レインとサシャが正気に戻って、そのように労わってくれる。
ご主人様だし、頼れる先輩冒険者としてちょっと見栄を張ったが。
やっぱりつらいもんはつらいのである。どうも2人にはお見通しだったようだが。
「でも、一晩中がんばっただけはありますね。もう300年は捲れました。300年……」
「まぁ、昨日捲り始めた時点で午後を過ぎてたわけだし。今日1日根を詰めれば、あと700年分を捲るくらいは楽勝よ」
「ですね……これ、捲った状態で置いておけないんですか?」
サシャの問いに、あなたは1日置いておくくらいなら平気だと答えた。
おそらくだが、3日ほど触れないでいると初期状態に戻る。
常時持ち歩いていれば、1度めくった部分は自由自在に捲れる。魔力も不要だ。
なので、疲れ切ってしまったらリフレッシュを入れるのも手だろう。
「なるほど。とは言え、あんまり留守にはできませんしね。イロイにも会いたいですし。休憩はしつつがんばりましょう!」
「メロメロねぇ。あなたもそうだけど、そんなに赤ちゃんってかわいいもの?」
レインが呆れたように聞いて来る。
赤ん坊が縁遠かったからか。
あるいは純粋に赤ん坊が嫌いなのか。
レインには理解しがたい感情のようだ。
まぁ、そう言うこともあるなとあなたは理解する。
そんなレインに、赤ちゃんは可愛いと断言し。
同時に、可愛く思えなくても異常ではないので心配いらないとも付け足しておく。
「ふうん……そう言うものかしら」
まぁ、生後間もない赤ん坊よりも。
半年やら1年くらい経った方が可愛らしく映るようだし。
イロイはまだ赤ん坊過ぎると言うのもあるだろう。
本格的にかわいいのは1才になる手前あたりからだ。
「まぁ、イロイのおかげであなたたちの作業が捗るならそれでいいわ」
「はい。しっかり眠ってリフレッシュもしましたし、がんばりましょう」
「そうね。まぁ、起きた時の絶望感はハンパじゃなかったけどね……」
2人は寝起きだ。起きて来たと思ったらおかしくなっていたのだ。
まぁ、あなたが捲りまくっても終わらない『無尽の呪文書』に絶望していたらしいが。
さて、あなたは一晩中ページを捲り倒していた。
なので、あなたはそれはもう疲れていた。
ここらでひとつ、朝ご飯を食べてから眠りたい。
「では、私と試合をしてから朝ご飯にいたしましょう。いかがですか?」
朝ご飯食べてからがいいなぁ……。
そう思ったが、あなたはとやかく言わずにダイアの試合に付き合うことにした。
一晩ページを捲っていたので肩が凝っている。
それの解消に体を動かすのは具合がいい。
かるぅくダイアをべっこんぼっこんに痛めつけ。
しっかりと朝ご飯を食べ、適当に目を付けたメイドを部屋に連れ込んだ。
目についたメイドの中でいちばん可愛い子を選んだ。
メチャクチャ可愛かったし、手や肌も綺麗だった。
ちょっと庶民とは思えないような整い具合だった。
もしかしたら貴族が行儀見習いとかで来ているのかもしれない。
だが、あなたにはかかわりのないことだ。
あなたがなにをしても、クローナが責任を取ってくれる。
それこそがあなたに許された、救国の英雄の特権。
あなたこそは、トイネで唯一の
あなたがなにをしでかしても、クローナが責任問題を巻き取ってくれる。
ならば、せいぜいクローナに苦労をかけてやろうではないか。
あなたはそんな意図の下、メイドをつまみ食いした……。
ぐっすりと眠り、昼過ぎに目を覚ました。
あなたはメイドを呼びつけ、昼食の用意を頼んだ。
昼食を運んできてくれたメイドごと昼食を食べた。
情事の跡で汚れてしまったので、湯浴みに。
湯浴み係の女の子たちを全員腰砕けにした。
着付け係の女の子も腰砕けにした。
それから、サシャとレインが作業をしている部屋へと向かう。
「フフフ、なかなかやるじゃない、サシャ。でも、この程度が私の本気だとは思わないことね」
「はぁ、はい」
「私が勝ったら、サシャにはいい酒でも奢ってもらおうかしら」
「はぁ。じゃあ、私が勝ったら、レインさんはさらにもう1枚脱いでください」
「フフフ、やってやるわ」
そこではサシャとレインがチャタラをしていた。
話しぶりと、レインの様子からして、賭けチャタラのようだ。
チャタラとはこの大陸特有のボードゲームだ。
6種類の駒を、8×8マスの盤上で交互に動かして、王をとったら勝ち。
1対1のものと、4人対戦形式があり、4人対戦ではサイコロも使う。
また4人対戦の場合は駒は5種類しか使わない。
チェスに似ているが、違うところもあるボードゲームである。
傍らに『無尽の呪文書』が置かれている。
どうやら、ページをめくる作業の息抜きをしていたらしい。
あなたはそんな2人に、息抜き? 次は自分と交代してよ、なんて声をかけた。
「あ、ご主人様。おはようございます。すっかりリフレッシュした感じですね」
「あら、おはよう。見ての通り、サシャと激戦を繰り広げていたところよ」
あなたはチャタラの盤面を見る。レインはボロ負けしていた。
これが激戦なら、アリの巣に水を流し込むのも激戦だろう。
レインはチャタラがクソザコだった。その割になぜか自信があるが。
レインはすでに半裸くらいにまで剥かれている。
帽子に手袋、靴下、 ブーツにベルト、ブローチが傍に置かれている。
全部サシャに負けて剥かれたものだと思われる。
こんだけボロ負けしといて、よく自信が保てるものだ。
「まぁ、一進一退ってところかしらね。私が勝ったら、サシャには1杯奢ってもらおうと思うのよね」
「はぁ。お金を取ったら可哀想ですし、かといって他に欲しいものもないので服を脱いでもらってます」
助けてくれ。サシャの目線はあなたにそう語り掛けていた。
たぶん、レインのもう1回もう1回から逃れられずに苦労しているのだろう。
ページをめくる作業に戻れば、さすがにレインもチャタラを挑まないだろうが……。
それでも戻りたくないくらいに嫌気が差しているらしい。
まぁ、気持ちはわかる。あなたもページ捲りはもうしたくないし。
なので、次は自分と勝負だとレインに持ちかけた。
あちらこちらでコレクションして来た酒を振る舞ってやろう。
「いいわね。負けないわよ?」
なんて言うレイン。よくそこまで大言壮語できるものだ。
あなたは挑戦的に笑って、ならば3枚脱いでもらおうかと交換条件を出す。
「いいわよ、そのかわり、私は1本もらおうかしら」
では、交渉成立だ。
あなたはサシャに交代を告げた。
「はい、よろしくおねがいします」
「かかってらっしゃい。相手になってあげるわ」
その後、レインは予定通り負けた。
「くっ……! やっぱりあなた、チャタラがメチャクチャに強いのよね……なんだってこんなに強いのかしら……やっぱり年季? でも、エルグランドにはチャタラはないのよね。代わりにチェスってゲームが流行っているって言うし……もしかして、チェスを勉強すればチャタラも強くなるのかしら……」
あなたに秒でボコられたレインがそんな調子で考え込む。
あなたは容赦なくレインから服をむしり取ったので全裸だ。
まぁ、勝手知ったる間柄だし、レインは元々貴種の生まれ。
メイドの存在なんて空気も同然に扱うくらいの精神性がある。
なので、あなたを前に頬を赤らめるくらいはしても、手で胸を隠すくらいで平然としていた。
あなたはあなたで、手でブラジャーの代わりをする行為、手ブラに見入っていた。
これはまったくたまらないエッチさである。最高。
「くっ……そろそろ服着てもいいかしら?」
ダメだ。
「あと、何分くらいやったら着てもいいの?」
あと3時間。
「3時間!? そんな、さすがに3時間は……」
あなたはテーブルの上に酒のパックを置く。
そして、以前に日本と言う国で買って来た酒だと教える。
その名をデーモンキラー。それほど高い酒ではない。
味もほどほどなのだが……なんというか、うますぎなくてちょうどいい酒だ。
日常で呑むのにちょうどよいというか。
この国の酒飲みたちはこんな酒を飲んでいるのだなとか。
そんな感じの納得と同時、気負わず飲める酒として具合がよく感じた。
ここはひとつ、レインもぐっと行ってみて欲しい。
「もらうわ」
酒の入っている紙の箱をナイフで開け、レインがグイッと中身を飲む。
「ふうん。米から作ったお酒ね。醸造酒だわ。生酒じゃない、濾したものね。うん、たしかにこれはほどほどにいいお酒だわ」
なんだかんだと味の分かるレインがそのように評する。
あなたはテーブルの上に、さらにデーモンキラーのパックを並べる。
日本のデーモンたる、赤い肌の角ある異形が描かれたパックだ。
「負けたのに、もらっていいの?」
遠慮せず飲んでもいい。
そのかわり、もうしばらくその格好でいてね。
「ええ……」
じゃあ、酒は没収。
そう言って手を伸ばすと、レインが手を払いのけて来た。
「この格好でいるわ」
大変結構。
あなたとレインは揃って大馬鹿だった。
レインとあなたが酒盛りをしていると、サシャがすすーっと参加して来た。
サシャはあまり酒は飲まないが、酒のツマミは割と好んで食べる。
そして、ツマミで喉が渇いてきたら、水やジュースではなく、酒を選ぶ程度には酒がイケる口にもなって来た。
「レインさんって綺麗な体してますよね。いいなぁ」
「改まってそう言われると、少し恥ずかしいわね……サシャだっていい体してるじゃない。こう、強そうで」
「そうですか? 最近、また体重が増えたんですよ。ますます強くなれましたかね」
自信ありげにサシャがそう頷く。
サシャは自分が強くなることに対するモチベーションが高い。
サシャがと言うより、獣人全体の特性なのかも。
「でも、こう、レインさんのすらっとした体形と言うか……こう、バランスのいい美しさとかも、ちょっと憧れるんですよね……こう、猫みたいなしなやかさと言うか……」
「あー、うん?」
「ご主人様の妖精みたいに可憐な体とかも、こう……すごくいいですよね~……」
「うん……うん?」
「こう、抱き締めた時に、うそっ! 細すぎ! ってびっくりするくらい華奢な感じが、うまく説明できない気持ちよさがあって……自分がなりたいわけじゃないんですけど、抱き締める時に気持ちいいって言うか……」
「それはわかる。なにこの細さ冗談でしょ……? ってなるもの。私より手足長くて、胸は私よりあるのに、腰は私より細いのよね……ずるくない?」
「ずるいですよね……えっちすぎます……もう、たまらないですよね……薬師様の胸も、こう、重っ! ってびっくりします」
「たしかに、クロモリの胸ってすごいわよね……何センチくらいあるのかしら、あれ」
「ご主人様知ってます?」
なぜか猥談に移行して来た。
いや、レインは猥談と言うより単なる雑談の調子だが。
サシャの方は明らかに性欲の意図がある猥談だ。
さておき、あなたは脳裏にクロモリの体形を思い描く。
クロモリの肢体、ガリガリに痩せこけていた姿にむちっと肉が付き。
元からたぷんと実っていた胸が、さらにどたぷんとなってきた昨今。
クロモリのボディを示す数値は上から……158、4.0、4.2、161、104、65、63、92、21.5、21.0と言ったところか……。
「待て待って待ちなさい。なんか謎の数値混じってるけど?」
「4.0って何の数字ですか……」
視力。
「視力……視力って数値化できるものなんですね……スリーサイズはどうなってるんですか?」
104、63、92だ。
胸だけ大きくてバランスが悪くてエッチだ。
「エッチですね……こう、着替える時とか、思わずまじまじと見ちゃいます」
「まじまじと見るのはさすがに不躾でしょ」
「レインさんは見ないんですか?」
「見ないわよ。人の着替えじろじろ見ないでしょ?」
「見ますけど?」
あなたも見る。ガン見だ。
「あなたたちは特殊な部類に入ることを自覚なさい。この女好きども」
レインに呆れられてしまった。
そして、サシャは地味にショックを受けていた。
最近のサシャはだいぶ女好き傾向が出ていたのだが。
あんまり自覚がなかったらしい。
まぁ、いいではないか。
あなたに染まったということで。
悪い意味で。
「うう、うれしくない……!」
サシャは微妙に嫌そうに嘆いていた。
それはそれでちょっと傷付いた。
それから、あなたたちは他愛のない雑談をしながら酒を飲み。
その傍ら、雑に『無尽の呪文書』を捲る作業をした。
そんな、真面目じゃない作業を進める日だった。
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2000文字前後
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