あなたは屋敷をふらふらと歩いて回る。
特に深い理由はない、ただの散策だ。
さきほどやった視察とはまた違う、ただのヒマつぶし。
イロイと顔をあわせたり、ブレウを気遣ったり。
産後ケアのおかげもあり、ブレウの体調は良好だ。
出産というのは危険もある行為なので、母子ともに無事なのは喜ばしい。
「で……調べものは順調なのか」
庭の木の上でだらだらしながらリンゴを齧るレウナ。
あなたはその横で木の枝に腰掛けながら、微妙、とだけ答えた。
あとはひたすら時間をかけて本を読んでいくフェイズだ。
資料の見当はついたので、目当ての記述を探していく感じ。
資料は集めただけでははじまらない。読まないといけない。そう言うことだ。
「そう言うものか。まぁ、がんばれ。私はこの大陸の言葉は読めんからな。むしろ、アルトスレアの共通語を読めるだけ褒めて欲しいくらいだ」
たしかにレウナの経歴的に読み書きを会得しているだけすごい。
よくぞまぁ読み書きを習得できたものだ。
「まぁ、教えてくれる相手には困らなかったからな……」
「へぇっへっへっへ、あたしゃには1回こっきりのお見限りだったじゃねえですかい。寂しいですぜ~」
「おまえ初回無料とか言って2回目から金取ろうとしたろうが……」
あなたとレウナの乗っている枝の、さらに上の枝。
そこにはあなたの屋敷に滞在中の、リフラ・ハーベスタル・ルイの姿。
毎日腹いっぱい飯を食べ、好きなだけ酒を飲み、好きなだけ寝る生活を満喫している。
すばらしい厚かましさだ。リフラの面の皮で防具作ったら最強の防具が作れそうなくらい。
「何かを教わるには、対価ってェもんが必要なんですぜ?」
「それはそうだが。タダで教えてくれるやつが他にもたくさんいたからな」
「そのあたりは誤算でしたぜ。みなさん公共心ってぇのが豊富でござんしたねェ」
「そうだな。まぁ、私も食堂の食事のために、大量のシカ肉とシシ肉を提供させられたがな……」
「ありがたく提供してくれるってェ話だったじゃねえですかい」
「真っ昼間に人が大量にいるホールで、全裸で土下座して提供迫った癖に何をぬかすか……断ったら私が悪者だったろうが!」
なるほど、やり口が汚い。だが、効果的だ。
あなたも身持ちの堅い女性相手にはたまにやる。
往来のど真ん中で泣きながら土下座すると、てきめんに効果がある。
あとは足にすがりついて吐くほど泣いたりとかもする。
周囲の目線に耐え切れなくなって、なんだかんだヤらせてくれるのだ。
まぁ、最近はそこまで行くこともなくなったが。
連れ込み宿の前で、もう動けない死ぬ! ここで休んでいかなくては!
とか喚いてヤらせてもらうことは未だにあるけど。
「へぇっへっへっへ、すげぇ厚顔無恥さ。あたしでも真似したくねぇや」
「そうだな。おまえが真似したら絶交だからな。2度と話しかけるな」
「安心してくだせぇ。やりませんから」
そこまでひどいだろうか。
全裸で土下座するリフラの方がひどいような。
「だが、なんのかんの言っても泣き落としは有効なのだよな……顔が、いいからな……」
「たしかにそれはありやすぜ。顔がいいってのは強ぇですぜ」
リフラとレウナがしみじみと言う。
2人とも結構な美人なので説得力が違う。
EBTG美人ランキングをやったら、リフラとレウナは間違いなくトップ争いだ。
レインもかなりの美人なのだが、リフラとレウナはさらにワンランク違う。
見てても飽きないくらいに美人だ。あなたが保障する。
「……まぁ、顔はさておいてだ」
「おっ、照れてやすぜ。よっ、見返り美人!」
「うっさいわ! は、話を戻すぞ! ええと、ああ、そうだ、その、調査だ! 調査!」
「へぇへぇ。調査ってのァ、たしかノグリアとか言うでかぶつのことでしたかい」
そう、そのノグリア。
やつが実在した証拠がつかめれば、あなたたちがいったあの場所が過去の世界と確証がつく。
「その確証がつくと、なんか得でもあるんですかい?」
そんなものはない。
「……じゃあ、なんのために調べてるんだ?」
最初はただの興味本位。
いまは……ただの意地?
「意地て」
「意地ってのァ大事ですぜ。なんのかんの言っても意地がねェと。あたしゃはそういうの、いいと思いやすぜ」
「ううむ。まぁ、べつに急ぎの用事があるわけでもなしにな……そこまで時間を食ってるわけでもなし、とやかく言うことでもないか」
「そもそもレウナさん、あんたなんでこんな……EBTGって言いましたかい? ともあれ、ヤリサーにいるんですかい?」
「ヤリサーて。ヤリサーておまえ……い、いや、それはいい……いる理由か……うーむ……」
「あ、分かりやしたぜ。こん人に借金があって首が回らねェんでやしょう?」
「おまえといっしょにするな」
「じゃあ、なんでですかい?」
「最初は我が神の使命のためで……あとは……そう、あとは……」
レウナが遠い目をしながら考え込む。
ラズル神の使命のためにあなたたちに同行しだしたレウナ。
それは今も有効なわけだが、冒険について来る理由は……?
言われてみると、たしかになんでレウナはEBTGにいるのだろう?
元々は、『アルメガ』と戦えばレウナが処女をくれるという約束だった。
それは今も有効なので、そのために近くにいるのはわかるのだが。
しかし、報酬の支払いのためにEBTGに所属する必要はないわけで。
「……それは……ああ、まぁ……ヒマだから、ヒマ潰しと言うか……惰性……?」
「へぇっへっへっへっへぇ! レウナさんも人のこと言えねぇ程度に博徒めいた生き方してやすねェ」
「ぐっ……反論はしたいが、内容が思い浮かばん……!」
「まァ、そんな感じなンでしたら、多少時間食ってもとやかく言う筋合いもねェんでしょう。気長に待ったらどうです?」
「そうだな……まぁ、そうか……ああ、だが、ひとつ聞かせろ。次の冒険の予定はどうなっている?」
レウナの問いに、あなたはここ数日で手に入れた情報について話す。
つまり、エルグランドの『真実の眼』と、この大陸の『無尽の呪文書』。
この2つの本当の名たる『叡王の碑文』。それが別大陸にもあること。
「ほう……それはまたごつい話だな……」
「へぇ、5大大陸すべてに共通のレリックですかい……そいつァ、まず間違いなくイモータル・レリックでやしょうね」
アルトスレアとボルボレスアス、そしてファートゥムの3つ。
その3つを手に入れることで、『アーカーシャ年代記』となる。
「アーカーシャ年代記とはな……世界のすべてが記されているという、概念上のものだったか?」
「へぇ、そいつァすげぇ。レウナさんが何歳までオネショしてたか調べるとしやしょう」
「ロクでもない使い方をするな」
その『アーカーシャ年代記』を手にすることで『嵐を齎す者』が手に入る。
この『嵐を齎す者』を手に入れると、全世界の女の子とエッチができる。
「なんて?」
「ちょっと、こう、文脈が突然断絶しやしたか?」
詳しく言うと、『嵐を齎す者』を使うと、法を制定できるらしい。
それがいったいどんな力なのかは不明だが。
なんせ、謎に包まれたルス・マクナの時代の究極破壊兵器だ。
それはもうすごいことができるに違いないだろう。
そもそも、本当に究極破壊兵器なのかも謎だし。
ヘタをしたら、究極破壊兵器を通り越した終末兵器なのかも。楽しみだ。
「あまりにもロクでもない……私は彼女を止めるべきか?」
「頑張ってくだせぇ。あたしは応援してますぜ」
「クソッ、役に立たん!」
そう言えば、『嵐を齎す者』は『アルメガ』を倒すのにも使うらしい。
なんか話しぶりからすると、『アルメガ』を倒せる特別な剣らしいが。
「なん……だと……!?」
「へぇ、そいつぁゴツイ話で」
「『アルメガ』を倒すための剣……だが、世界中の女を好きに出来てしまう剣だと……ど、どう、どうしたら……!?」
レウナが苦悩しだしてしまった。
あなたはそんなレウナに、心配はいらないと答えた。
全世界の女の子とエッチはするつもりだが。
無理強いはしないし、乱暴なことをするつもりはない。
あくまでも合意の上でのエッチをするつもりだ。
嫌がる子たちは後々じっくりナンパするし。
何か理由があってできない子も気長に待つ。
そうひどいことにはならないだろう。
「この補足はどのあたりに安心できる要素がある……?」
「さあ?」
レウナとリフラと目をあわせてそんな疑問を呈する。
ちゃんと合意を取ってえっちなことするのになにか問題が……?
「まず、世界中の女を好きに出来ることが……いや、いい。たぶん説明しても、あなたはわかってくれない……」
「そもそも、こん人は法を守るべきもんだと認識してるんですかい?」
「してないと思うぞ。必要とあらば破るものくらいにしか思っとらんだろうよ」
いや、さすがに法を守るべきだとは思っている。
だが、必要とあらば破ると言うのも、まぁ、その通りだ。
それはさておくとして、あなたは『叡王の碑文』を集めなくてはならない。
そのため、身重の妻を置いて別大陸に行くと言うのもどうかとは思うが……。
やはり、『アルメガ』との戦いに備えることを思えば、早めに手にしたいところだ。
ふつうにいったいどんな効果があるのかも気になるので、『嵐を齎す者』は欲しい。
全世界の女の子とエッチできるようになると、『アルメガ』が倒せるようになる?
法を覆す力があるとは言っていたが、どう言う風に覆すのか。
「そうか……まぁ、たしかにその通りにすべきなのだろうな……」
「よくわかんねぇや。紅組勝て、白組勝て。どっちもがんばってくだせぇ」
「なんだその雑な応援は。たしかに服が赤と白だが……」
「で、その『AOの碑文』ってか言うのを集めるんでしたか。内容は、面接必勝法とかですかい? 遊ぶ金が欲しかったんでさぁ」
「このバカの言うことは気にするな。各大陸にあるとして……どこに探しに行くんだ?」
近いからボルボレスアス。
気候条件が近いので体がそこまできつくない。
まぁ、アルトスレアと違って、コネがそこまでないのが難点だが……。
大陸を超えての大冒険はやはり身体的にキツイものがある。
それも地道で長い調査が必要になるだろう冒険だ。
それを考えると、少しでも環境からくる負担の小さいボルボレスアスがいいだろう。
「なるほど、頷ける話だ」
「でも、いいんですかい? 乳飲み子置いて、別大陸に冒険なんて」
「リフラ……おまえ、たまには常識的なことも言えるのか……」
「ええ、たまには常識的な発言も出して置かねぇと、カビが湧きやすからね」
「シーズン外れの服か何かと思ってるのか?」
あなたはリフラの疑問に苦々しい顔になる。
たしかに、イロイを置いていくのはとても心苦しい。
この時期の赤ちゃんの成長は速いものだ。それを見逃すのはとても惜しい。
そして、トイネには、この大陸の本妻たるイミテルがいるのだ。
彼女を置いて、また長期間の別大陸への冒険……寂しがらせてしまうだろう。
そして次はナックルダスター付きで何発殴られることやら……。
むしろ、ナックルダスターでは済まずにマジモンの武器で殴られるんじゃあ……。
「……ナックルダスターで殴られる?」
「こいつの嫁はモンクだ」
「だからって旦那をマジの武器で殴りますかね」
「殴るんだ、それが」
あなたは悪いことをした自覚があるので甘んじて殴られるが。
だからと言って、クロモリと違って殴られることに喜びは感じない。
プレイの最中にある愛ある打撃ならともかく。
ダメージを加えることが目的の打撃を喜ぶ趣味はない。
ふつうにクソ痛いので、できれば殴られたくないのが本音である。
だが、それはそれとして、『アルメガ』との戦いには備えなくてはならない。
理想と現実の板挟みはなかなかつらいものだが……。
デキる冒険者たるあなたは、迫りくる脅威たる『アルメガ』の対策に手を抜くべきではないと考えている。
それが本当に、あなたたちの生きる範囲内で復活するのかは不明だが。
カル=ロスたちの情報によると、ここ半年以内に復活するらしいし。
復活しないだろうとタカをくくって、痛い目を見るのは愚かなことだ。
しっかりと準備をして、その末に何の意味もないことがわかり。
杞憂だったね、と笑い合える方がずっといいのだ。
そのために殴られるならしかたがない。
そう考えるべきだと、冒険者たるあなたの合理的思考はささやく。
でも殴られたくはないのが本音である。
あなたはとてもつらい。
だが、世の中には結末が分かっていてもやらなければならないこともある。
とても嫌だが、やりたくないが。それでも……。
「……まぁ、なんだ。その時は私も殴られてやる。私にもいくらかの責任がある……と思うからな」
レウナが気遣ってくれたのが、ありがたかった……。
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