あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 あなたは驚きの予定……『アルメガ』との決戦を知った。

 そして、仲間たちをトイネの方へと呼び寄せた。

 

 次はトイネの鉱山近傍の町で娼館巡りだ。

 思う存分に愉しめ! そのような甘言でみんなをおびき寄せた。

 いや、もちろん娼館に行くことは推奨する。

 みんな思う存分に遊んでほしいと代金も払う。

 

 だが、同時にあなたは日中のみんなに厳しい訓練を課した。

 みんなには強くて立派な冒険者になってほしい。そのための訓練だ。

 心を鬼にし、みんなが冒険者として誰にでも誇れる技術を身に着けるため……。

 

 間違っても、身重の妻の手前、娼館に行けないうっぷん晴らしではない。

 もはや他者を必要としなくなった寝取られ趣味のためでもない。

 あくまでも、純粋に、仲間たちに強くなってほしいから……!

 そのような純粋な想いであなたはみんなに訓練を課していた。

 

 たしかにあなたはちょっとばっかり興奮しているかもだが。

 これはあくまでもコラテラルダメージと言うか。

 そう、やむを得ない副作用と言うか、まぁ、そんな感じのアレソレだ。

 なので、これはしかたないことなのだ。間違っても趣味ではない。

 

 それに、冒険者が強くなってなにか不都合があるだろうか?

 あるわけがない。強ければ強いほど良いに決まっている。

 そのような理屈の下、あなたは仲間たちを鍛えに鍛えまくった。

 

 そして、EBTGのメンバーはあなたの厳しいシゴきのストレスを娼館通いで癒した。

 フィリアはザイン神の信徒をたっぷりと増やして満足した。

 娼館で宗教勧誘するな、教会で女抱くぞ。

 あなたはそんな何度目かも分からない感想を抱いた。

 

 ……教会で女を抱く。背徳的過ぎて気持ちいいかもしれない。

 しかし、神罰を招く可能性を考えると迂闊にはできない行為だ。

 あなたならば、神々の神罰であろうと弾けるほどの加護の魔法も使えるが……。

 あれは結局、神側もそれなりに手加減してくれているからこそだし……。

 

 まぁ、そう言った背徳的なお愉しみはともかく。

 あなたはトイネで自分の訓練もする傍ら、領主の仕事にもそれなりに精を出していた。

 いずれ、イミテルの子に継がせなければとは思っていたが。

 中継ぎの領主に投げてしまう選択肢もあると知ったら、その準備もしておきたい。

 

 と言うより、中継ぎに任せていいならさっさと投げてしまいたい。

 領地にいても代官に仕事を任せてはいけないという法もあるまい。

 ならば、引き継ぎのために必要な書類などのアレソレを用意しておかなくては。

 あなたはそう言った仕事に精を出していたのだった。

 

 

 

「我が鼓動よ。来客が来たぞ」

 

 執務室で書類を捌きがてらエロ本を読んでいたところ、イミテルがやって来た。

 あなたは澄ました顔で、さも真面目な本を読んでいたかのようにそっとエロ本を閉じる。

 本の装丁は流麗なものだし、全体的に格調高く見えるものだ。

 本棚に突っ込んであっても題名次第で真面目な本と思われるだろう。

 まぁ、あなたの読んでいた本の題名は『少女のおいしい乳房』とド直球のエロ本だが。

 しかし、題名はエルグランドの言葉で記されている。

 イミテルには謎の文字にしか見えない。問題ない。

 

「仕事中だったか、邪魔をしたな」

 

 問題ないよとあなたは優しく微笑んで返す。

 仕事こそしてたけど、エロ本も読んでたりと真面目に仕事はしていないし。

 

 しかし、わざわざイミテルが伝えに来るなんて。

 もう臨月も近いのだし、使用人に走らせればいいものを。

 

「少しは動いた方がいいと、医師の方……カイラからのお達しもあるのでな」

 

 そう言うものなのか。

 そう言った医療に関して、カイラのいうことに間違いはないだろう。

 それならそう言うものと受け入れるべきか。

 

「それでだ。仕事はひとまずそこまでにして、来客を迎えてはどうだ。以前にも来た、『ハンターズ』の一党だ」

 

 『ハンターズ』が?

 突然の来客にあなたは首を傾げる。

 が、考えてみると、そろそろ春になる。

 冒険者学園は年次の変わる頃合いなので休みだ。

 

 遊びに来てもおかしいことはないか。

 しかし、アポイントメントくらい取ってくれてもいいのに。

 魔法の便せんでちょいと手紙を送るくらい出来たろうに。

 そう思いつつも立ち上がり、あなたは来客を迎えるべく応接室へと向かった。

 

 

 

「キミ、可愛いね。どこ住んでるの? 何歳? 仕事あがり何時? てか、手紙とか書けたりする?」

 

「そんな、お客様、困ります……」

 

 あなたはモモロウの両腕の上腕を掴んだ。

 そして、ぐっと圧縮した。

 

「ギエ――――ッ! あばらがづぶれるゥ゛ゥ゛ぅ゛!」

 

「いや――――っ!」

 

 メキメキと音を立てて圧縮されるモモロウ。

 モモロウに絡まれていたメイドが悲鳴を上げる。

 あなたはモモロウを横に放り投げ、メイドの肩を掴んで落ち着かせる。

 

「あ、ああ、領主様……」

 

 怖かったね、大丈夫、もう怖くないよ。

 不埒な客人にはちゃんと罰を与えるからね。

 これはお詫びのしるしだから、受け取ってね。

 そのように言って、あなたはメイドに銀貨を数枚握らせる。

 

「そ、そんな、私そんなつもりじゃ……」

 

 まぁまぁ、いいからいいから。

 今日はもうお部屋に戻って休んでいていいから。

 メイド長には言っておくし、ちゃんと休むこと。

 お金はなにか美味しいものを飲むのにでも使うといい。

 

「は、はい、領主様」

 

 そして、あなたはメイドの耳元で優しく囁く。

 モモロウに触られたところ、後で自分が上書きしてあげるからね、と。

 

「はい……おまちしております、領主様……」

 

 メイドは潤んだ瞳であなたを見上げ、甘い声で囁く。

 あなたはにっこりと微笑む。そのあなたの首に絡む縄。

 

「我が鼓動よ。メイドと仲がいいようだなぁ」

 

 うあああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛、苦じい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!

 あなたは首をメキメキと締め上げて来る縄に呻く。

 打撃や斬撃にはべらぼうに強いあなたも、首を絞められるのはキツい。

 酸欠ばっかりはいくら体を鍛えても耐えられないからしょうがない。

 

 後ろにイミテルがいるのを失念していた!

 いつもはついて歩いたりしていないから!

 客人が滅多に来ないから、こういうパターンがあるのを忘れてた!

 

 縄に輪を作って、そこに金属の棒を差し込んでグルグルとねじるのはキツい。

 止血に用いる止血帯と同じ理屈で首を絞めるのはキツ過ぎる。死んでしまう。

 

「ひぃぃぃっ! お、奥様!」

 

「ああ……うむ……夫をたぶらかした女と言うべきなのだろうが……まぁ、貴様が誘惑したということはないだろうからな……行け。部屋で休め」

 

「は、はいぃっ!」

 

 メイドはドタドタと走り去っていった。

 あなたは明滅する視界の中それを見送った。

 イミテルは手を緩めてくれそうもなかった。

 

 

 

「えーと……ああ、その……と、トモ、と申します、奥様。えーと……アノール子爵様とは、以前に冒険者学園に籍を置かれていた際に知己を得まして……」

 

「ああ、うむ……まぁ、そこまで硬くならなくともよい」

 

「は、はぁ」

 

 トモがあなたのことを心配そうに見つめる。

 首を絞められているせいで、もはや赤黒くなってきたあなたはジェスチャーでなんとか反応を返す。

 緩慢な仕草でしか動けず、不気味なジェスチャーになってしまった。

 

「げふっ、がふっ……ヒュー……ヒュー……」

 

 地面に転がっているモモロウと目線が合う。

 モモロウは鮮やかな血を吐いていた。ちょっと圧縮し過ぎたらしい。

 そんなモモロウを蹴って転がすメアリたち。扱いが雑過ぎる。

 

「して、用向きはなんだ」

 

「そのですね、僕たちは冒険者学園に在学していたのですが……3年次はこなさず、退学するつもりでして。それにあたって、子爵様にご挨拶をと思いまして」

 

「ほう。ずいぶんと律義だな」

 

「はい。それがその、私と、そちらで潰れている男は祖国に帰るつもりなのですが……えー……エルグランドに冒険に出向く予定の者がおりまして」

 

「我が鼓動の祖国にか。なるほど、それにあたって、我が鼓動の助力か助言を仰ぎに来たというわけだな」

 

「はい、ご賢察の通りでございます」

 

 なるほど、そう言う予定で。

 そもそも、モモロウたちが学園に入学したのは魔法が覚えたかったからだ。

 冒険者になりたかったから入学したわけではないのだ。

 ならば、魔法を覚えたらもはや用済みと自主退学は納得できる結論だ。

 実際、以前にもそうしようかなと話していたような記憶があるし。

 

「ええと、子爵様がエルグランドにお帰りになる際に、同道させていただければと……そう言ったつもりなのですが」

 

「ふむ」

 

 そこでイミテルがあなたの首を締め上げていた縄を外す。

 あなたは新鮮な酸素を吸い込んでぜぇぜぇと呼吸する。

 

「とのことだが、いいのか」

 

 イミテルの問いにあなたはもちろんだと頷く。

 『引き上げ』の魔法に同行したいだけなら断る理由もないだろう。

 とは言え、すぐに帰る予定があるわけでもない。

 申し訳ないが、しばらく滞在していてほしい。

 帰る時にはちゃんと連れていってあげるから。

 

「ありがとうございます、子爵様」

 

 などと頭を深々と下げるトモ。

 そんなに堅苦しくなくていいとあなたも優しく言う。

 トモはあなたに軽く苦笑気味に微笑んだ。

 分かってはいるけどむずかしいよと、そう言う笑みだった。

 

「さて……それで……次に、この不埒な女はなんだ」

 

 そこで次にイミテルが話題に上げたのは、足元に転がっているヤツ。

 マゼンタカラーの頭髪を持つその少女をあなたは知っている。

 

 学園の色狂い、レナイア・アルカソニア・イナシル・バトリーだ。

 あなたのいろんな意味での後継者、学園のコウハイちゃんである。

 モモロウたちの1年次先輩なので、彼女はすでに卒業済みのはずだ。

 

 順を追って話すと、先ほどレナイアはイミテルを見るなりニヤけた笑みを浮かべだした。

 そして、妊婦いいよね……いい……とか言って馴れ馴れしく近寄って来たのだ。

 イミテルはそのレナイアにあまりにも鋭いフックを叩き込んで轟沈させた。

 

「えー、っと……」

 

 トモが目線を送って来た。あなたは頷く。

 あなたはイミテルに、この異常者はマフルージャのバトリー家の人間であると教える。

 

「……バトリー家と言うと、マフルージャのザルクセン家の流れも汲む名門貴族ではないか」

 

 その通りだ。

 話を聞くに、と言うか以前に遊びに行った際に見た限りでは。

 あそこは血が煮詰まり過ぎたせいで、異常者の巣窟になっている。

 レナイアもたぶんその関係で色狂いなんだと思う。

 

「……殴ってしまったのだが」

 

 他国の貴族を問答無用でぶん殴るのは普通に国際問題だ。

 まぁ、正式な来訪というわけでもないので内々には済ませられるが。

 レナイアが問題にしようと思えば、いくらでも問題にできる状況だ。

 

 そして、レナイアが問題にするかと言えば、ほぼ確実にする。

 取り下げて欲しければ謝罪ックスが必要とか言い出す。絶対に。

 イミテルが身重とか関係ない。むしろおなかの中の子も同時に抱けるからお得とか言い出す。

 実際にそんなこと言って妊婦に手を出そうとしてたし。

 その時はあなたがこっそり気絶させて妊婦は逃がしたが……。

 

 あなたは自分に任せろと提案した。

 

「なんとか取りなしてくれるのか……すまない、頼む……」

 

 あなたは頷いて、レナイアを起こしにかかった。

 まぁ、魔法で強制的に覚醒させるだけなのだが。

 

「んん……はっ! あ、ここは。センパイちゃん」

 

 あなたはレナイアに頷く。

 そして、無言でレナイアを殴りつけた。

 

「ぐふっ! な、なにを!」

 

 このトイネにおいて、弱者にはなんの権利もないのだ。

 略奪愛をしようと言うなら、強者であることは大前提。

 イミテルに殴り負けるような弱者に女を抱く資格はない!

 

「な、な、なんですってーっ!?」

 

 まぁ、実際のところイミテルはふつうに英雄級の拳士だ。

 たとえ身重だろうと、本職の戦士でない格下の神官には負けない。

 だからレナイアが殴り負けるのは当然の結果ではあるのだが……。

 

 あなたはそんなレナイアに、クイクイと指先で挑発の仕草をする。

 どうしてもヤリたかったら、かかってくるといい。相手になってやろう。

 もちろん、どちらの意味でもだ。

 

「どちらの意味でも!」

 

 どちらの意味でも。

 

「うおおおおお! センパイちゃんにガニ股腰ヘコダブルピース謝罪させてからの謝罪ックスだぁぁぁ!」

 

 レナイアが勢いよく飛び掛かってくる。

 あなたはレナイアを殴って気絶させた。よし、勝った。

 そして、次にメイドを呼んで地下牢にぶち込んでおくように指示した。

 ブチ込む際は、服も剥いて、全裸で鎖もつけておくように。

 

「お、おい、いいのか?」

 

 問題ない。目が覚めたら、ガニ股腰ヘコダブルピース謝罪させる。

 そして、そのまましばらく反省していろと放置すれば勝手に興奮して終わる。

 

「異常者の扱いに手慣れ過ぎている……」

 

「思考のステージが同じだからじゃないでしょうか……」

 

「うぅ、不敬罪でしょっ引きたいが、深い納得しか出て来ない……」

 

 イミテルとトモが嘆いているのが印象的だった。

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