あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 岩塩鉱山において、古き時代の遺跡が発見された。

 そう言ったことは、まぁ、度々あるものだ。

 古の時代に作られたもの、それが現代に姿を現すことは、さして不思議なことではない。

 

 むしろ、エルグランドにおいては普通にありえることだ。

 エルグランドにおける迷宮、その多くは古い時代の遺跡なのだ。

 この大陸においてはあまり一般的ではない事柄のようだが。

 

「古代遺跡の探索か。迷宮でないなら探索してみてもいいな」

 

 夕食の席で、突如として現れた古代遺跡について話を振った。

 すると、レウナが真っ先にそのような反応を示した。

 

「いいですよね、古代遺跡……こう、古代のロマンとか眠ってそうな感じがして……! 」

 

 サシャは探索に乗り気のようだ。

 サシャは冒険に利ではなくロマンを求めるタイプだ。

 まぁ、生活になんの不安もない立場なので。

 ロマンだけを追求するのも自然な話と言えばそう。

 

 そもそも、衣食住を保証している主人のあなたがロマン派なのだ。

 サシャがそれに感化されてロマン派になるのは自然な話ではなかろうか。

 

「古代の遺跡……危険なモンスターなどが居ないとよいのですが……その確認のために入るべきではありますね……」

 

 フィリアは大変まっとうな視点で古代遺跡について考えていた。

 古代の遺跡にもいろいろと種類はあるものだが。

 後世に残すことを考慮した遺跡などには守護者がいることもある。

 そうした守護者が迷い出て来たら大変なことになる。

 

 なんせ、場所が岩塩鉱山の至近どころか内部なのだ。

 岩塩鉱山の稼働を止めるわけにはいかない以上、労働者を入れる必要がある。

 労働者たちが喪われれば、それだけで大いなる痛手となる。

 

 また、遺跡がかつての生活施設などであった場合。

 さすがに生物が残ってはいまいが、かつて生物であったものが残っていることはある。

 地下に封印されてしまった遺跡内部に取り残された者たち。

 そうし者たちが生者に対し強烈な怨念を抱いているのはよくあることだ。

 

 どうにせよ、腕利きを1度入れて安全確認は必要だ。

 

「古代遺跡かぁ……ヒマだし、俺らも見に行ってみっかぁ」

 

「ござるござる」

 

「やはり、遺跡探索か……いつ出発する? 私も同行する」

 

「リン」

 

 なぜか『ハンターズ』も探索に乗り気。

 いや、べつに探索禁止とか言うつもりはないので好きにすればいいのだが。

 『ハンターズ』はべつにお宝とか欲しくはないだろうに。

 

「エルグランドの迷宮って、古代遺跡が大半なんですよね? じゃあ、いずれ私たちもそうした遺跡を探索するようになるじゃないですか」

 

 と、メアリ。

 将来を見越した予行演習をしにいくと言うことらしい。

 なるほど、そう言うことなら止めはすまい。

 まぁ、なんせ地下部分に存在する遺跡なので。

 爆破とかはしないようにだけおねがいしたいところだ。

 

「はい、それはもちろん」

 

 メアリは大人しく聞き入れる。

 

「古代遺跡……! すごい……! いったいどんな過去の歴史が眠ってるんだろう! 私の自伝にふさわしい次章は決まった! 過去の記憶、ガンメタルグレイ! 滾る冒険の情熱、エカルラート! そして、色褪せぬ青春、セルリアンブルー! 弾けろ、私の冒険!」

 

「すまん、こいつ酔うと演劇役者みたいになるんだ」

 

 椅子に飛び乗って叫び出すリーゼ。それを引きずり下ろすリゼラ。

 どうやら『世界樹の王(エトラガーモ・タルリス・マギ)』のメンバーも探索に行く気らしい。

 一応護衛を頼んではいるのだが……まぁ、方便みたいなものだし……。

 さすがに、医師であるカイラまでも探索に行くことは認められないが、それでいいのではとも思う。

 カイラ1人居れば、助産も護衛も事足りるよね、みたいなところがあるので。

 

「ふむ。3チームが探索に乗り気か。しかし、さすがに3チーム混成と言うのは……」

 

 あなたの隣のイミテルがむずかしげな顔をする。

 たしかに、3チーム混成で挑むのはなかなかむずかしいだろう。

 フルメンバーと言うわけではないのだろうが。

 

 あなたたちEBTGからは、サシャ、レイン、フィリア、レウナ、クロモリの5人。

 『ハンターズ』は全員乗り気のようなので、モモロウ、トモ、アトリ、リン、キヨ、メアリの6人の大所帯。

 そして『世界樹の王』はリーゼ、リゼラ、トキ、チー、スアラの5人。

 

 全チーム合計16人と言うのは、ちょっと多過ぎる。

 さすがにこれを1つの混成チームにするのは無理がある。

 絶大なカリスマと戦闘力を持ったリーダーが居れば話はべつだが。

 残念ながら、この集団の中にそのレベルのリーダーはいない。

 

 あなたがリーダーとして統率すればイケる……かもしれないが。

 イミテルを置いていくわけにはいかないので無理だろう。

 この場面で置いて行ったら次はいったい何で暴行をされるか……。

 それに、こんなめんどくさそうな混成チーム率いたくないのでパスだ。

 

「ふむ。ならば、別々で挑めばいいだろう。なにも仲良しこよしでやれとは言うまい。競争して、いちばん最初にめぼしいものを見つけたやつが勝ちだ」

 

 と、アトリからの提案。まぁ、たしかにその通りか。

 では、あなたが領主として依頼を出すとしようではないか。

 

 依頼内容は、岩塩鉱山内部で発見された古代遺跡の探索。

 古代遺跡内部を探索し、危険なモンスターが居ればこれを排除。

 その際に得た宝物類に関しても、好きに持っていくといいだろう。

 

 とりあえず報酬金としては金貨100枚。

 そして、内部にて発見したモンスター類を討伐した場合は、その討伐難度に応じた報酬を与える。

 そのため、モンスター類を討伐した証拠となる部位等を確保してくること。

 

「その場合、非実体のモンスターはどうするんだ? 何も残らんぞ」

 

 非実体のモンスターに関してはどうにもこうにも。

 申し訳ないが、討伐した証拠を示せないものには報酬は払えない。

 なので、非実体系モンスターの討伐は損と言うことになる。

 

 まぁ、存在が確認されれば。

 後日あらためてそれら非実体モンスターの討伐を依頼することになるか。

 なので、今回の依頼では無視してもらうと言うことで……。

 

「それができればいいが……いや、まぁいいだろう。止むを得ん」

 

「大丈夫だ、俺たちは魔法を使えるようになったんだぜ! いまとなっては非実体のモンスターだろうが倒せる! なにも恐れることはねぇんだ!」

 

「ククク、拙者らは魔法使いになったんでござらぁ……!」

 

 などと張り切って見せる『ハンターズ』。

 全員が魔法を使えるようになったのは見ればわかる。

 ボルボレスアスの民でも、2年間みっちり修行すれば魔法が使えるようになるのだ。

 なかなか有益な情報だと言えるだろう。

 

 ただ、見る限りでは、キヨを除いて全員1階梯がようやく使えるくらいらしい。

 キヨはなんと2階梯まで使えるくらいの容量があるのを感じる。

 どうやらキヨには結構な才能があったらしい。

 2年で2階梯と言うのは結構な素質を感じさせる速さだ。

 

 まぁ、2年間魔法に専念して、さらには潤沢な資金を用いて種々の道具や勉強法を使って。

 それでようやく2階梯なのかとも思わなくはないが……。

 サシャがその環境に身を置いていたら、たぶん5階梯くらいまで伸びたと思う。

 

「そっか、依頼かぁ。なるほど」

 

「その場合、私はついていきませんからね~」

 

「ええっ!? カイラがいないのは困るよ!」

 

「私は医者ですからね~。患者を置いていくわけにはいきませんから~」

 

「ど、どうしよう……さすがにカイラ無しでの探索はきつい……! 臨時の神官とか探すべき……!?」

 

 『世界樹の王』はカイラの離脱で動揺が走っている。

 『世界樹の王』は非常に典型的な構成のチームだからしょうがない。

 

 前衛の壁役兼盾役であるリーゼとリゼラ。

 中衛に位置して補助的な攻撃役兼サポート役であるスアラとトキ。

 そして後方に位置して呪文による攻撃とサポートを行うチーとカイラ。

 

 すべてのラインに2名ずつ置いて厚みのある陣形を取り。

 同時に、そのすべてが補助的行動と攻撃的行動をとれる。

 攻守ともにハイレベルでまとまったチームであり、連携の巧みさがそのまま強さとなるチーム。

 

 逆を言うと、連携できないと脆い。

 

 つまり、1人欠けた時点で、チーム全体の戦闘力が大きく落ちしてしまうのだ。

 リーゼやリゼラ、スアラとトキと言った、ある程度ほかのメンバーで代役ができるとこならまだしも。

 後衛のチーとカイラは他のメンバーでは代役ができない。

 その2人が欠けたら、チームはそのまま勢いよく瓦解するだろう。

 特にカイラは回復魔法や医療が行えるチーム全体の耐久力を担保する人員。その欠員は痛すぎる。

 

「あ、あの! この近辺に、腕利きの神官とかっていませんか!」

 

 一応、ザイン神の教会に7階梯まで使える司祭ならいる。

 

「腕利きだけど冒険には連れて行けなさそう……!」

 

「絶対来てくれないだろ……」

 

「それ以外の神官の人って……?」

 

 残念ながら、冒険に同行してくれるだろう腕利きはいない。

 3~4階梯くらいまでの使い手なら探せばそれなりにいるが。

 5階梯あたりからは一気に数が減ってくるものだ。

 

 あなたの領地はそれほど大きな町はないし。

 それに従って人口もそれなりの数でしかない。

 母数が小さいので腕利きの数も少ないのだ。

 

 そうした腕利きも、現役の冒険者とは限らない。

 高齢で引退した元冒険者とか。

 冒険者じゃなくて生粋の聖職者とか。

 そう言ったこともあるのだから。

 

「うう、どうしよう……」

 

「どうにか臨時メンバーを入れたい……それを探すところからか?」

 

「うへ~……そんなことしてる間に先を越されちゃうよ~。まずは様子見、威力偵察をしてみるって言うのもいいんじゃないかなぁ?」

 

「それで手に負えなさそうだったら臨時メンバーを探すことを視野に入れるべきね……ポーションで済みそうなら、それで済ませるのも手ね」

 

「出費は手痛いがな……それに見合うだけのリターンがあるかどうかが問題だ」

 

 『世界樹の王』のメンバーの活発な意見の交換。

 じつにいいチームの動き方だ。なんというか、冒険者らしいと言うか。

 見ているだけでワクワクしてくるようなところがある。

 

 いまのあなたはできることが増えすぎて、自分1人で大体なんとでもなる。

 周囲の仲間たちも、できることが増えまくって大体なんでもできる。

 結果、雑に突っ込んでもなんとかなるので作戦会議が雑なこと雑なこと。

 

 先日の『砕けぬ盾』にまつわる冒険の事前準備も雑だった。

 移動は魔法、食料も魔法、情報収集も魔法。雑なことこの上ない。

 なんと言うか、冒険の妙味を大いに損なっている気がしなくもない。

 

「うーん。私たちは私たちで……ちょっと層が薄いですよね……」

 

「そうね。人数が少なくて1人1人の負担が大きいと言うか」

 

「せめてあと1人……前衛に立てる人か、後衛に立てる人……どっちでもいいので専門職並みの腕利きがいてくだされば……」

 

「私たち並みの実力者を求めるのは、ちょっと荷が重過ぎるんじゃないか」

 

「うう、私がふがいないばかりに申し訳ありません……」

 

「いえ、それはしょうがないですよ。うーん、どっちでもいいからどっちかのチームから1人欲しいくらいですね……」

 

 そして、EBTGはあなたの抜けた穴について四苦八苦していた。

 もともと、EBTGはあなたありきで成立していたチームだ。

 実質のリーダーたるあなたを中心に構築されているので当然と言えばそう。

 腕利きの魔法剣士1名の抜けた穴を塞げる人材が欲しいのは自然な話だ。

 しかし、超英雄級冒険者たるEBTGの補欠人員を求めるのは無理がある。

 

 各チームそれぞれに欠点があり、難点がある状態。

 この状態での冒険、なかなか大変なのではないだろうか。

 

 あなたはお手並み拝見だ……と内心でほくそ笑んだ。

 さて、いったいだれが勝利を掴んでくれるのだろうか?

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