あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 休憩がてら、あなたはサシャに剣技をどう扱うべきかと言う点について論じた。

 

「剣技をどう扱うべきか?」

 

 戦いの組み立て方と言ってもいい。

 剣を手札のひとつとして使うのか。

 それとも戦いの根幹として扱うのかだ。

 

 あなたは剣を単なる手札のひとつとして捉えている。

 最も扱い慣れた武器でこそあれ、それだけに頼ることは無い。

 必要なら槍でも槌でも使うし、弓だろうが銃だろうが使う。

 剣だけに頼ることはしない。

 

「なるほど……私も他の武器を使えるようになった方がいいでしょうか?」

 

 その辺りは実際に戦っていく中で分かってくる。

 戦っているうちに、槍が欲しいとか弓が欲しいとか分かる。

 『ポケット』が使えない者は手荷物の大きさの関係で諦める場合もあるが。

 

「たしかに長い槍とか棍棒とかいくつも持ち歩けないですもんね……でも『ポケット』が使えれば違いますね」

 

 そう言うことである。

 なので、自分のスタイルにそれが必要かどうかを考える。

 そして、その上でそれを用いるメリットデメリットを考える。

 とは言え、基本的には武器は2種類程度。

 多くても4種類程度までに抑えるべきであるとあなたは論じた。

 

「えっと、理由については……」

 

 これは単純に修練に注ぐ時間の都合だ。

 あなたも最初は剣と棍棒、そして弓の3種類のみに絞っていた。

 斬撃の方が効く相手、打撃の方が効く相手。

 そして距離を取ろうとする手合いや空を飛ぶ連中。

 そうした各種の状況を考え、さらに生まれついての強靭な肉体と俊敏性。

 そうした要素から、あなたは懐に飛び込むスタイルを想定した。

 

 かつての未熟だったころのあなたは純戦士だった。

 そして身体能力こそ優れていても、手足の長さは見た目通り。

 剣先を取り合うような戦い方は不利だった。

 生まれ持った身体能力と俊敏性で一気に飛び込む。

 そして頑健な肉体で耐えてブチのめす。

 そんなストロングスタイルが最も強かったのだ。

 

「な、なんか屈強な重戦士みたいな戦い方をしてたんですね……」

 

 実際そうである。あなたはかつて重戦士だった。

 頑丈な全身鎧に身を包んで堅牢な防護で攻撃に耐え。

 大きく重い大剣と、重厚なバトルハンマーで相手を押し潰す。

 そんな脳みそまで筋肉の香りがする戦法をしていた。

 

 やがて純粋な戦士としてやっていくことに限界を感じた。

 そこでようやく魔法を磨き出し、あなたは重厚な鎧を捨てた。

 魔法の扱い易い軽鎧に変え、武装も長剣と槍に変えた。

 その上で魔法を交えて戦うスタイルになった。

 

 今は武器戦闘は補助程度とし、魔法を主体としている。

 魔法剣士と言う意味で一番近かったのは中期頃だろうか。

 人によっては今が一番魔法剣士っぽいというかもだが。

 

「うーん、なるほど……私も、体格は小さいですけど力はかなりあるし、俊敏さもあると思うので、重たい武装で飛び込んで耐えて戦う方がいいのでしょうか」

 

 その辺りはやってみないと分からない。

 こればっかりは当人の資質と性格が問われる。

 

 できるからと言って得意ではない。

 そう言うこともあるのだ。

 

 あなたはどの戦い方でもそれなりに適応した。

 しかし、重武装スタイルが馴染めないという人間もいる。

 あなたの父なんかは重い武装をすることすら出来なかった。

 そのように生来の素質からスタイルが限定されることもある。

 

「実際に試してみるまで分からないですか。それはまぁ、たしかにそうですよね。うーん……」

 

 しかも、それ以外にも考えることはいっぱいあるのだ。

 剣を扱うにしても、どういう剣を、どのようにして使うかと言う問題もある。

 もっと言ってしまえば、今のサシャの戦闘方法と今の剣は合致していないのだ。

 

「え? 私の剣と戦闘スタイルが合致してない?」

 

 剣が両刃なのは、カッコいいからではない。

 当然ながら、片方が刃毀れしたらもう片方を使うわけでもない。

 いや、そう言う面がまったくないとは言わないが。

 

 両刃の剣は、一方を表刃、もう一方を裏刃と言う。

 それを両方ともに扱うからこそ両刃として作られている。

 正面から打ちあっている最中に剣を翻して裏刃で脇下を裂くみたいな剣技があるのだ。

 

 サシャは今のところ片方しか刃を使っていない。

 なら、片刃の剣を使った方がいい。

 加えて言えば、剣技が斬撃主体なのだ。

 片刃の剣の方が構造的に頑丈なので、負荷の大きい斬撃に耐えやすい。

 

 さらに考えるべき点は、剣を扱う中で、どれを主体としていくかである。

 純粋な剣技の総合力で勝負していくのか。

 あるひとつの技を磨き抜いて、その技で勝負するのか。

 剣技を主体としてなんらかの奇策を織り交ぜるのか。

 

 まぁ、このあたりは上級者くらいになってからの話だ。

 いまのサシャはまだまだ初心者なので気が早い。

 いまはとりあえず、得意技を見つけるくらいでいいのではないだろうか。

 

「得意技ですか……必殺技みたいな感じですか?」

 

 まあ、そんな大仰なものではないかもしれないが。

 殺傷力に優れた小技の1つや2つは持っていて損がない。

 あなたのおすすめは、突き、刺突だ。

 一般的には女なら刺突を極める方がいい。

 

「突きですか。どんな理由があるんですか?」

 

 単純な話、刺突がもっとも殺傷力が高い。

 そのため、筋力の不足を補うことができる。

 また、放ち方次第ではあるがリーチも長い。

 難点は、突きは危険度が高いということだろうか。

 

 サシャの場合、増強の甲斐あって筋力の不足はない。

 だが、手足の長さは変えられない。リーチの不足は大きい。

 長い武器を使うか、突きを主体とするか、相手の懐に飛び込むか。

 リーチ不足を補うなにかしらの対応は必要だろう。

 

 まぁ、まだ成長しそうな気配もあるので。

 体の成長を気長に待ってみるのもいいかもしれない。

 

「成長ですかぁ……私、まだ背が伸びるでしょうか?」

 

 サシャの母、ブレウは結構背が高かった。

 娘のサシャもそれなりに伸びるのではないだろうか。

 まあ、気長に待ってみてもいいだろう。

 

 まだまだ時間はある。急ぐ必要はない。

 頭をたくさん捻って編み出した戦法を試していくのも楽しいものである。

 いろいろと工夫をしていくのも剣士の定め。頑張って欲しい。

 

「はい、がんばります」

 

 素直でかわいいサシャの頭を撫で、あなたは訓練の再開を宣言した。

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