あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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「はぁ……なんでこう……あれか? 呪われた血族かなんかかよ?」

 

「それ、へたすると差別発言だから気を付けなよ。言わんとするところはわかるけど」

 

 でも、マヤはそこまで言うほどかな?

 ちょっと変わってるかもだけど、特殊性癖と言うほどではないような。

 

「まぁ、マヤさんの御両親には幸いかもしれんな……子孫残りそうだし」

 

「それはたしかにあるかもね」

 

 あの調子なら、虐められたあとは甘やかしてもらえるのだろう。

 その甘やかしもきっと、エッチな甘やかしなんだろうな……うらやましい。

 私も美少年になってきたら、マヤに虐められた後によしよししてもらえるだろうか。

 

 しかし性転換するのはなぁ……なかなかの悩みどころだ。

 そこでハウロの頭の上のネコが肉球でハウロの額をてしてし叩く。

 

「ねぇ、ご主人~。マヤはなにしに行ったの?」

 

「え、ああ……マヤが結婚したい男ができたから、そいつにつけるリング買いに行った」

 

「そうなの!? うわぁ~! それってすごくいいことだよ!」

 

「ああ、うん、そうだな……モモロウにとって幸いかは分からんが、マヤにとっては間違いなく幸いだな……ウン……」

 

 いまいち事態を把握してないらしいコタツ。

 彼……いや、彼女? まぁ、どっちでもいいか。

 人間とは違う種族とは言え、生殖の知識は普通あると思うが……。

 いや、人間の情緒は理解の範疇外なのだろうか?

 

「まぁ、モモロウにとっては前後両方から責められて大変かもだが、たぶん気持ちいいからセーフだろ」

 

「そうだね……ハウロにとってはどうなの?」

 

「ちょっと羨ましいかなってところはあるが……ううん……」

 

「?」

 

「まぁ、マヤが射精管理してくるとしてだぞ。まず間違いなくトモとやるプレイも様子を見るだろ」

 

「だろうね。どれくらいの距離感で観賞するかは知らないけど」

 

「その場合、まず間違いなくマヤは掘る方に興味を持つ」

 

「……なんで?」

 

「トモが上手すぎるからだ。あんなに気持ちよさそうにするなら、自分もやってあげようって善意でやる」

 

「ええ……」

 

「俺は……マヤに腰振りたいとは思う……だが、マヤに腰振られたら立ち直れないと思う……」

 

「下品だよ……」

 

 私は生粋の女なので、そのあたりの感覚はちょっとわからないのだが。

 元々は男のハウロには、壮絶な心理ダメージの入ることなのだろう。

 

「……まぁ、その辺りは置いといてだ。晩飯、食ってくだろ?」

 

「ハウロが作ってくれるの?」

 

「マヤが作ってくれる。俺も作るけどな」

 

「じゃあ、食べてくよ。女性の作ったものはかならず食べるよ」

 

「あー、そうか。あんた情報の方を積極的に食うタイプだもんな……」

 

「そうだね」

 

 料理の味の良し悪しとかどうでもいいよ。

 私はその料理に付属する情報の方を食べてるから。

 いや、美味しい料理にこだわりがないわけではないけど。

 それは自分でやればいいだけの話だからね……。

 

「あ、でも、ひとつだけおねがいが……」

 

「あ?」

 

「この大陸の基準で出されると多過ぎるから……少な目でよろしくね……」

 

「ああ、そうか。まぁ、マヤは小食だから、それと同じくらいにすればいいだろ」

 

「この大陸の一般人の小食ってどれくらいなのさ?」

 

「1食で食パンを2斤食うくらいだ」

 

「それはふつうに大食漢だよ」

 

 まぁ、2斤くらいならたしかに食べれはするけどさ。

 それが小食な一般人って、やっぱりボルボレスアスおかしいよ。

 

「食い切れんか?」

 

「いや、なんとか食べれるとは思うけど」

 

「じゃあ、それくらいか」

 

 それを標準にしてくるのは勘弁してほしいんだけど。

 まぁ、1食くらいなら……気合でなんとかなるかな。

 私は頷くと、夕食をごちそうになることを決めた。

 

 

 

 それからしばらく待って。

 マヤが食材を抱えて帰って来て。

 2人が夕食の支度をはじめる中、私はコタツとシチリンに囲まれていた。

 

「お姉さん、ご主人と仲良しなの? ボクとも仲良くなってくれるとうれしいな!」

 

「うん、私も仲良くしてくれるとうれしいな! よろしくね、コタツ……くん? ちゃん?」

 

「ボクはオスだよ。よろしくね!」

 

「よろしくね、コタツくん」

 

 握手をして、おっきいぷにぷにの肉球の感触に脳を焼かれる。

 これはじつにたまらない感触だ。大型サイズの肉球は天の国が見える。

 

「私はシチリンです! よろしくおねがいします!」

 

「よろしくね、シチリンくん」

 

 こちらも同様に握手をしておく。

 ボルボレスアスのネコもイヌも二足歩行が可能ではあるのだが。

 体重の重さや、骨格の長さの関係で、イヌの方は二足歩行が苦手だ。

 なので、こちらは四足獣の姿勢で私に前足を預けてくれる。こっちもじつにいい肉球だ。

 

「コタツくんも、シチリンくんも、ハウロとの付き合いは長いの?」

 

「うん! ご主人が訓練所を出て、すぐにね! 特級狩人になるまで、ずっといっしょに頑張ってた相棒なんだ!」

 

「私もご主人様といっしょに戦いました! ご主人様は、ぐわーずどどーんどがーって感じで強いんですよ!」

 

「そう、ご主人はなにせ特級狩人! この町いちばんの狩人なんだよ!」

 

「すごいでしょ! すごいでしょ! ご主人さますごいでしょ!」

 

 ハウロのことを誇らしげに自慢してくる2匹。

 なんだこの大型小動物たちは、たまらんほどに可愛い。

 ハウロのことを命を預ける相棒としつつも、大好きなご主人様と慕っている感じ。

 ぐぅ、私もこの大陸のイヌネコをペットにして連れ歩きたい……。

 でも、この大陸の訓練済みのイヌネコは狩人にしか斡旋されない……富の独占だよこんなの。

 

「コタツくんも、シチリンくんも、そんなすごいハウロのことを傍で支え続けたすごい子なんだね。とってもすごいね!」

 

 私はそう言って2匹を褒めながら頭を撫でる。

 コタツは細い眼をさらに細めて私に撫でられ。

 シチリンは長い尻尾をふりふりと揺らして撫でられている。

 毛並みは柔らかで心地よい。最高だこれは。

 私は思う存分に2匹と交流を続けた……。

 

 

 それからしばらくして夕食ができ。

 私は2人の心づくしの夕食をいただいた。

 ボリュームが、うん、ちょっと、多かったけど。

 ちょっとおなかが苦しいくらいでセーフだった。

 

 普段はマヤとコタツとシチリンの食卓。

 そこにハウロと私と言う客人が来たこともあってかじつに賑やかな食卓に。

 久し振りに同席するハウロのことがうれしくてたまらなかったのだろう。

 コタツもシチリンも我先にとハウロに話しかけて楽しそうだった。

 そんな光景を見ているだけで心温まり、嫉妬で脳が焼けそうになる。

 

 夕食後にお茶を一杯いただき。

 それから少し休んで、私は帰宅することにした。

 

「じゃあ、私は帰るね。また明日来るよ」

 

「泊まって行ってもいいぞ?」

 

「帰らないと、嫁に殴られるんだ」

 

「なかなか厳しい嫁さんだな……こう、アマゾネス感ある美人だったが……そう言う、厳しさも独占欲のあらわれとか思うと、燃えるものがあるな……」

 

「かわいい子なんだけどね。尽くしてくれるいい奥さんでさ。でも嫉妬で殴ってくるところが可愛いやら痛いやらキツいやらで燃えるものがあるよね」

 

「割としんどいらしいことは伝わる」

 

「そりゃね。愛ゆえに、そして私が悪いのも分かってるけど、殴られて痛くないわけじゃないし……強くなっても痛いものは痛いんだよ……」

 

「まぁ、そうだよな……俺も未だにタンスに小指ぶつけると死ぬほど痛ぇもん。タンスは壊れる癖に、痛ぇのは昔のまんまなんだよな……タンス壊れないだけ昔の方がマシだったまである」

 

「わかる。いつもはドアノブ握り潰したりとかしないよう力加減できるけど、小指ぶつける時って無意識だから勢いよくぶつけて壊すんだよね……そして痛い……」

 

「痛いよな……」

 

「痛いよね……」

 

 超人だからこそ分かる苦しみに共感し頷き合う。

 そして、私は最後にハウロと軽くハグをしてから家に帰った。

 

 

 

 

 翌朝、私は再度ハウロの家を訪ねた。

 そして、マヤにあいさつをし、コタツとシチリンにもあいさつ。

 それからハウロを連れて、私は開拓村へと転移魔法で飛んだ。

 

「でも、いいの?」

 

「なにが?」

 

「コタツくんとシチリンくん。あの子たち、ついて行きたそうだったよ?」

 

「だよなぁ」

 

「なにか連れていけない理由でもあるの?」

 

「いやぁ、そんなもんねぇけどさぁ」

 

「じゃあ、なんで?」

 

 寂しそうで、でもついて行きたそうな顔をして。

 けど、主人であるハウロが言わない限りはわがままを言わない。

 そんな出来たパートナーの2匹を見て、私は胸を締め付けられた。

 どうして連れて来てあげられないのだろうかと。

 

「こう、なぁ。前回の時は、急ぎっつーか、まぁ、組合にバレないように夜逃げだったから連れていけなかったんだよな」

 

「うん、それはわかる」

 

 真龍ル・ロの撃破。ハウロの成し遂げた偉業だ。

 この大陸に伝わる伝説の飛竜は存在すらも疑われていたもの。

 それを突如として討伐したとなれば、組合側が騒ぐのもわかる。

 それがめんどくなって逃げるのも、まぁ、理屈としてはわかる。

 

 そのために夜逃げをし、夜逃げに際して2匹を連れ行けなかったのもわかる。

 2匹を連れて行ったらあからさまに移住だとわかってしまうし。

 体格の都合もあって、イヌはともかくネコは移動能力が大きく劣る。

 連れていけなかった理由はよくわかる。

 

「でも、今回は私の転移魔法で連れて行くんだから、問題ないでしょ?」

 

「ああ、そうだな」

 

「じゃあ、どうして?」

 

「うーん……こう、なぁ……言うのをさぁ……忘れてたって、言うかぁ……」

 

「は?」

 

「だから、つまりぃ……さっき出発するまで、あいつら連れてくの、忘れててぇ……思い出した時には、もう出発するって話になっててぇ……」

 

「は???」

 

「今さら、ついて来るか? なんて聞けなくってぇ……」

 

「殴られたいの?」

 

「すまん、俺が悪い」

 

「戻るよ」

 

「はい……」

 

 私はハウロの馬鹿を連れてまた転移した。

 そして、パートワンのシチリンくんを連れて戻って来た。

 パートニャーのコタツくんは、マヤを1人にしたら寂しそうだよ、とのことで残るらしい。

 なんてできたいい子なんだろう……度々様子を見に行くことにする……。

 

 ハウロを連れて、再度開拓村へ。

 そして、そこで私は開拓村の面々と少しばかりあいさつをした。

 この開拓村にはそこそこの期間を世話になっていた。

 そのため、開拓村のみんなは私のことをよく覚えていたようだ。

 ほどほどに交流をし、ボルボレスアスの息吹を堪能した。

 

 まだ見たいところがないわけじゃないけれど。

 まぁ、ボルボレスアスはこれでいいだろう。

 今度来る時は、仲間たちを連れて来たいところだ。

 

 

 

 

 転移魔法でリリコーシャ大陸へ。

 そして、私が姿を現したのは物々しい雰囲気の密林だった。

 以前とはまるきり雰囲気が違い、私は少し戸惑う。

 とりあえず、手近なところにいたベレー帽を被った女性に声をかける。

 

「こんにちは。物々しい雰囲気だけど……どうしたの?」

 

「うん? いや、僕たちにとっては因縁の宿敵みたいなのが現れると聞いてね……殺し合いの準備と言うわけさ」

 

 白手袋をした手で顎を撫でながら、少女がそんな答えを返す。

 因縁の宿敵と言うと……やっぱり『アルメガ』のことだろうか。

 まぁ、それ以外にはなさそうだ。

 

「なるほど。タイトっているかな?」

 

「ああ、いるよ。あちらに。陣頭指揮を執っているから忙しいとは思うけど」

 

「ありがとう。それじゃあ」

 

「かまわないよ」

 

 私はベレー帽の少女に礼を言ってその場を離れる。

 タイトが忙しいなら尋ねるのは少し申し訳ないか。

 ならばと、私は以前に逗留した宿舎の方へと向かうことにした。

 

 私が以前にこの基地で知己を得た友人、カリーナ・E・ディキンソン。

 彼女が使用している宿舎の前には、以前に私の娘カル=ロスたちが建てた公衆浴場がある。

 そこには娼婦としての私を買いまくり、いろいろとキツい感じのプレイをしているサツキもいる。

 

 そう思って訪ねたら、そこには鋼鉄の山が聳え立っていた……。

 

「……なにこれ?」

 

 これは、なんだろう。なんて言えばいいのか。

 平べったい箱型の鉄の塊に、長い円柱がついているけど……。

 これはいったい……なんなのだろう……?

 

 大きさは凄まじいとしか言いようがない。

 高さは10メートルくらい、幅は15メートルくらい、長さは40メートルくらいか。

 かなり大きめの家くらいのサイズがある。鉄製の家は住み難そうだけど……。

 

「あれ……お久しぶりですね。どうしました?」

 

 唖然として鋼鉄の箱を見上げていたら、声。

 そちらへと振り返ると、機械油でべとべとに汚れたカリーナの姿があった。

 

「や、カリーナ。この大陸の冒険を振り返る旅行中なんだけど……どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもないですよ。『アルメガ』が復活するそうじゃないですか!」

 

「うん、らしいけど」

 

「らしいけど、じゃないですよ! あいつは死んでなきゃあいけないんですよ! ブチ殺さなきゃいけないんです! 次こそ殺します!」

 

「う、うん」

 

 カリーナの瞳に宿る炎の熱はすさまじい。

 私は思わず気圧されてしまい、背後の鉄の箱を示す。

 

「と、ところで、これはなんなのかな?」

 

「ああ、それですか。それは私の愛車のヴォーダンですね」

 

 私のあからさまな話題反らしにカリーナは順当に乗って来た。

 愛車……これ車なの? ってことは、動く……兵器なのかな。

 

「これでグジャミソに轢き潰してやりますよ」

 

「う、うん」

 

 怖い。シンプルに怖い。

 いつもは穏やかないい子なのに。

 精神的に追い詰められたような状態で怖い。

 いや、実際に追い詰められた状況なのか。

 

 ……『アルメガ』って、『トラッパーズ』にとっては本当に不倶戴天の敵なんだなぁ。

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