あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 晩餐(ばんさん)は賑やかに続き、やがて酒も入り出す。

 食事類は下げられて、それらは使用人の腹に入ることとなる。

 その辺りも踏まえて余るほどに作った。

 使用人たちの腹も大いに満たしてくれるだろう。

 

 女性が酒を飲むのがはしたないとされる文化圏もあるが。

 どうもこの辺りではそうではないらしい。

 少なくともレインはがぶがぶ飲んでいるので問題なさそうだ。

 

 ちなみに、エルグランドではそう言った風習は全くない。

 酒をガバガバ飲んで娼婦や男娼を買う女も珍しくはない。

 そう言う意味ではあなたも安心して酒を飲める。

 そう言った風習がないのは安心できる要素と言える。

 

「うちのワインセラーを空っぽにしてやりましょう。あー、あのクズ秘蔵のワインが美味しい」

 

 レインはザーラン伯爵が(ぞう)していたワインをガバガバ飲んでいる。

 高級な品なのだろうが、まるで安酒のような飲み方である。

 

「ぷぇ……私、やっぱりお酒苦手です……」

 

 サシャは言葉通りに酒が苦手らしい。

 甘口のワインをちびちびと飲んでいる。

 

 そう言えば、以前にモモとトモといっしょに飲んだときもそうだった。

 薄い、水やら果汁で割った酒を舐めるように飲んでいた。

 まぁ、酒が飲めない類の人間もいるので、そう言うこともあるだろう。

 

 水がいい地域ではよい酒が造れるが。

 同時にうまいジュースも作れるのだ。

 この辺りは水が豊富だから、余計にジュースがうまい。

 酒が苦手でもなにも困らない。

 

「お姉様、このお酒おいしいですね」

 

 フィリアはカクテルをくぴくぴと飲んでいる。

 あなたが女をコマすためにおぼえた技術である。

 料理とも錬金術ともつかない、言ってみれば酒調合の技術。

 それはあなたをして極めたとは言えないほど奥深いものだ。

 飲み口がスッキリしていて、つい飲んでしまって酔いが回る。

 そう言うカクテルばかりを飲ませている。

 

 ほどよくフィリアに酔いが回ってきて、少しふらふらし出した。

 そこであなたはフィリアを抱き寄せ、耳元でささやいた。部屋に行かない? と。

 

「……はい。ぜひ」

 

 酔いとはまた違う理由でフィリアが頬を赤く染める。

 あなたは立ち上がり、他の面々にお先に失礼すると告げた。

 

「あら、もう?」

 

 昨晩はあまり寝ていないし、昼寝も長時間したわけではない。

 なのでとっても眠いのだと一応の言い訳を答える。

 

「そう言えば、あなたすごく眠そうだったものね。おやすみ、いい夜を」

 

 そう言ってワイングラスをレインが掲げた。

 いい夜に乾杯と言うことだろうか?

 

「おやすみなさい、ご主人様」

 

 おやすみ、と答えながらあなたはサシャの頭を撫でた。

 頭頂部についた耳の感触がくにくにふにふにとして心地いい。

 サシャも気持ちよさそうに撫でられている。とにかくカワイイ。

 

「私も、ちょっと酔って来ましたので、失礼します~」

 

 フィリアがちょっとふらつきつつ立ち上がったので、あなたはそっとフィリアを支える。

 そして、部屋まで送ろう、とフィリアの手を取ってエスコートを始めた。

 

 食堂を出ると、フィリアがあなたへとしなだれかかってきた。

 酒精の香りのほかに、フィリアの甘い香りがあなたの鼻をくすぐる。

 

「お姉様、ちょっと、寂しかったです……」

 

 最初にだいぶ無体を働いた後、フィリアとは1度も夜を共にしていない。

 そのため、フィリアはだいぶさびしい思いをしていたようだ。

 あなたは微笑むと、フィリアに熱い口づけをした。

 

「あ……ん、ぅ……」

 

 情熱的な舌使いで、あなたはフィリアの口内を嬲る。

 舌をからめながらフィリアを抱きすくめると、その背を優しく撫ぜた。

 その動作にぴくんとフィリアが震える。

 優しい触れ合いの中に、かすかな甘い快楽があった。

 

 今日はたくさん可愛がってあげる。朝まで寝かせないよ。

 

 そのように甘く囁くと、フィリアがぎゅうっと力強くあなたに抱き着いてきた。

 

「はい……いっぱい、可愛がってくださいね……」

 

 そう言って笑うフィリアの顔には、たしかな情欲の色があって、その瞳には甘い期待と、それと同じくらいの恐怖。

 どれくらい凄いことをされてしまうんだろう? そんな怖いもの見たさのような、甘い恐怖だ。

 あなたは嫣然(えんぜん)と微笑むと、フィリアを抱き上げた。これからは熱い夜が始まる。

 

「わぁぁ……えへへ、お姉様の腕、力強いです……」

 

 嬉しそうにフィリアが笑うと、あなたへと体を預けてくる。

 体から強張りも抜け、あなたにすべてを預ける姿勢を取る。

 これはもう好きにしてください、と言うサインだろう。

 

「私、女にしてはけっこ上背(うわぜい)があるから……こういう風に抱いてもらえるの、ちょっと憧れてたんです……」

 

 たしかにフィリアはけっこう背が高い。あなたよりも高い。

 とは言え、男なら特に抱き上げるのに苦労するほどでもないだろう。

 つまりは、愛しい人にはこうして欲しかったと、そう言う湾曲表現(わんきょくひょうげん)だ。

 あなたは腕の中のフィリアにキスを落とすと、足早に部屋へと向かう。

 

 今夜は眠れないな!

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