あなたが下着を仕立てたり。
合間にナンパをしたり。
使用人を食ったり。
そんな傍ら、宣言通りに訓練も行っていた。
冒険中に使う技術は実地でしか覚えられないものもある。
一方で、町中で訓練できるものもある。
施していたのは町中でも出来るもの。
つまりは
気配察知、罠察知、罠解除。
そうした、一見して非常に地味な……。
華々しい冒険譚を夢に描く者には好まれない技術だ。
だが、冒険とは地味なものだ。
いつだって華々しい活躍があるとは限らない。
あなただって、華々しい冒険ばかりして来たわけではない。
ロックピックを何本もダメにした挙句に宝箱を諦めたり。
罠にかかって壁の中に叩き込まれて即死したり。
なにがなんでもお宝を持って帰ろうとして潰れたり。
欲を掻いて荷物を持ち過ぎ、階段から転げ落ちて死んだり。
死んだ魚のように濁った眼になるまで武器の訓練をしたり。
喉が枯れるまで魔法を唱え続けたりもした。
そんな地道な積み重ねがあって、今のあなたがある。
基礎や基本、その積み重ねを怠るものに栄光などありはしないのだ。
「ご主人様、できました!」
いまは開錠の技術を教えている。
適当に
ちんけな鍵でも初心者にはなかなか難しいものだ。
開錠技術は基本を覚えたら、あとは地道に磨くしかない。
やはり実際に開けるのが一番早く身につくし。
10個の錠前を開錠できたサシャが報告してきたので、あなたはサシャを褒めた。
あなたは基本、ペットは褒めて伸ばすタイプである。
人によっては付け上がるからほどほどにしたり。
あなたに忠告してきたりもするが、あなたはこのやり方を変えない。
調子に乗ったらベッドの中で分からせる。
なので、むしろ付け上がって欲しいまである。
あなたはサシャにご褒美をあげようと提案した。
訓練で物を与えていてはキリがない。
なので訓練成功のご褒美はささやかなものだ。
夕食のメニューの希望を聞くとか、下着のデザインを凝ったりとか、そのくらい。
なにがいいかを尋ねると、サシャはちょっと考えてから、提案した。
「その、では……ご主人様、じっとしていてもらえますか?」
あなたは目を丸くし、頷いた。
いったいなにをされるのだろう?
最高に楽しみだった。
仕立てていたサシャの下着を一旦机の上に置く。
あなたはサシャに向けて椅子を動かして体を正対させる。
サシャは緊張したような顔つきをしていた。
深呼吸をして、よしっ、と意気込みを見せた。
そして、サシャはあなたの膝によじ上ると、ぎゅっと身を寄せて来た。
サシャの甘酸っぱい少女の香りがなんともたまらない。もう最高。
これで終わりなのだろうか? 抱き締め合うのもそれはそれで心地いいので嫌いではない。
しかし、サシャはそっとあなたの頬に手を這わせてくる。
その小さな手であなたの頬を包み込んだ。サシャの暖かい手が心地よい。
そして、眼を閉じて顔を寄せてくる。
あなたも弁えたもので、そっと眼を閉じてサシャを受け入れた。
「ん……ちゅ……」
まだまだ拙くて、勢いばっかりが先行した、なんともへたくそなキスだ。
だが、それがいい。むしろ、不慣れな少女が一生懸命がんばっている感じがしてたまらない。
おずおずと、おっかなびっくりに。
サシャがあなたの口内へと舌を滑り込ませて来る。
あなたはされるがままにサシャの舌を受け入れる。
すると、サシャが舌を絡めて来た。
サシャがここまでしてくれるなんて!
あなたは感激に震えながら、サシャと濃厚なキスを交わした。
「ぁ……れろ、ん、は……」
触れているところから、サシャの鼓動が聞こえてくる。
どきどきと強く早い
「ん、ぷは……」
サシャが唇を離す。
あなたとサシャの唇の間に
頬を赤く染めたサシャは照れ臭そうに笑う。
そして、その細腕であなたを抱き締めた。
「え、えへへ……その……私から、しちゃいました。なんだか、恥ずかしいですね……」
嬉しかったよ、とあなたはほほえんでサシャを抱き締めた。
あなたの膝に座るサシャの重み。
服越しに伝わる熱。どれも心地よい。
「うぐっ、くっ……! くぅぅっ! あっ」
一方、あなたとサシャの濃厚なキスシーンを見せつけられていたフィリアがロックピックをへし折った。
あなたのペットはサシャとフィリアの2人なので、訓練を施すとなったらもちろんフィリアもいる。
先にできた方がご褒美をもらえるのだ。
開錠は大抵フィリアが負ける。不器用らしい。
罠の解除などもフィリアは負ける。
探知はフィリアの方がうまいが、サシャもそこまで劣るわけではない。
壁の掘削はハーブによる増強のお蔭でサシャの方がうまいというか、筋力の分だけ早い。
「うふふ……」
フィリアに勝ち誇ったような顔をしているサシャもかわいいものだ。
可愛いペットたちに取り合いの対象にされるのも胸が満たされる。
やはりあなたも女なので、自分を巡って争う姿には自尊心などが満たされる心地がするのだ。
「その、ご主人様、よければ、今晩……」
なんて、サシャにお誘いまでされてしまっては頷くしかない。
あなたはもちろんと頷き、サシャにキスをした。
愛を交わし合うあなたとサシャの姿に、フィリアは泣きながら開錠の訓練を続けていた。
悔しさをバネにして頑張って欲しい。その時、ご褒美はフィリアのものである。
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