あなたはメアリに別れのキスをして『明けの黄金亭』を後にした。
伯爵家に戻り……いや、今はあなたの屋敷だった。
屋敷へと戻り、最後の準備を済ませよう。
明日の冒険に備えなければならない。
「あ、ご主人様。おかえりなさい」
いつもの談話室に戻ると、サシャが本を読んでいた。
サシャは時間が余ると大体本を読んでいる。
あなたはサシャの頭を撫でて、よく頑張っていると褒めた。
冒険者と言うのは勤勉でなければ大成しない。
やはり、頭は悪いよりも優れていた方がいい。
「そう言うものなんですか? 頭が悪くても戦士とかはやっていけるものかと……」
そんなことは無い。
たしかに魔法使いの方が理知的かもだが。
戦士だって適当に武器を振り回しているわけではない。
知識を持つというのと、頭が悪いのはまたべつではあるが。
戦士にだって知識も知能もあった方がいいのは当たり前だ。
ただ圧倒的に強いだけでは冒険者として成功できない。
圧倒的に強い上で、豊富な知識を持たなくてはいけない。
さらにさまざまな技能を兼ね備えることで冒険者として大成出来るのだ。
そもそも強さなんてシンプルな努力で補えるものだ。
言ってみれば、だれだって簡単に得られるのである。
そう簡単には得られない知識を持つ方が大変だ。
楽な道に逃げるようでは三流と言う他にない。
「楽な道に逃げるようでは、三流……」
強さだけを求めるのは他を諦めると言うこと。
それは今の自分に満足してさらなる成長を求めていない。
今の自分に満足し、そこで停滞してしまうようではだめだ。
常に全力で走り続けることでしか辿り着けない場所もある。
あるいは、その地位に留まり続けるためには走り続ける必要がある。
これはもう圧倒的な強者の意見と言うか。
超人たちだからこその意見ではあるのだが。
努力をしない者に成功は掴めない。
努力がそのまま報われるとは限らないが。
かと言って努力しなければ報われることはない。
そうした現実を理解し。
無限の努力を続けられる者。
ある意味でぶっ壊れた精神の持ち主でない限り、超人には至れない。
もちろん、ある程度のところで妥協するのならばそれでもいい。
戦士としての道に自分を局限するのも悪くはない。
道を限定すれば成長も早いし、戦士としての大成は速い。
それは妥協ではあるが、戦士としての道に専心するのも間違いではない。
かつてのあなたもほとんど専業の戦士だった。
魔法の心得はあったが、ほとんど使わなかったし。
専業戦士としての限界を感じて、魔法にも手を出した。
そこから、魔法剣士へと次第に
「私は、どうすべきですか?」
それはサシャ自身が考えることだ。
どういう道を進むのでもあなたは認める。
それに、今すぐ決める必要はないだろう。
あなたもかつては戦士としてのみ戦っていた。
それに限界を感じてから魔法を覚えたのだ。
今はまず戦士としての道を歩み、それに限界を感じてから魔法の道を進んでもいい。
「なるほど……」
また、そう言った巨視的な視点は置いておくにしても。
頭がいいとか、勤勉さというのは重要な素質だ。
なぜ? という問題に対しての、考え方の糸口をつかむにはやはり頭がよく、知識があった方がいい。
「疑問に対する解決策、ですか。頭のよさとかよりも、調べる根気があればいずれは解決しませんか?」
そもそも世の人間は疑問を抱いても解決しない層の方が多い。
あれはなぜああなのか? と思ってそこで終わりだ。
調べるとか、誰かに聞くとか、そう言うことをしない。
不思議だなぁ、と思って、そこから先にはいかない。
「ええ……」
人間なんて根本的に
人に聞くような意欲のある者でも、覚える気力がない者も多い。
そう言うのは同じことを何回も聞いて、いずれ見限られる。
まぁ、そう言う怠惰さを見越して遊ぶやつもいる。
真面目な剣技を教えていると見せかけつつ、じつは光戦技カッコいいポーズを教えてたり。
割と悪質な行為の気はするが、カッコいいからしょうがないのかも。
「あの、光戦技カッコいいポーズって?」
光戦技カッコいいポーズとは、そのまんまである。
見栄えが良くてカッコいい戦闘技術を開発する集団。
そいつらが編み出した、とっても見栄えのするポーズである。
あなたは所属していないが、
「機関誌って。本を出してるんですか」
毎年2冊の刊行だが、戦士ギルドも
やっぱり見栄えがいいので、これに憧れて戦士を志す者も多い。
魔法ギルドも同様に、光魔法カッコいいポーズを開発している。
あなたはこちらも機関誌を購読している……というか、あなたも寄稿している。
「意外とおちゃめなことしてるんですね」
そう言う楽しみを求めるのも大事なことだ。
純粋に剣技の強さだけを求めるのもいいが、見栄えも求めて遊んでみたりするのはいい気晴らしになる。
機会があったら光戦技カッコいいポーズを教えてあげようとあなたはサシャに約束した。
「あ、あはは……ちょっと楽しみです」
それはよかったとあなたはサシャに笑いかけた。
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