あなたはエルグランドの冒険者だ   作:朱鷺野理桜

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 光魔法フォースレイ。そう言う技がある。

 魔法なのに技なのか。そう言う疑問もあるだろう。

 だが、それはたしかに技だ。

 魔法自体は単なる『魔法の矢』なのだから。

 

 いったいどういう技か。

 『魔法の矢』を形成し、これを握りつぶす。

 しかる後、これを光線のようにして放つ。

 拳から光の奔流(ほんりゅう)が放たれるのでカッコいい。

 

 難点は、魔法の威力が強過ぎると危険なこと。

 あまりに強いと、最悪は即死することだろう。

 もちろん敵ではなくて、自分が。

 『魔法の矢』なんか握りつぶしたら自分にダメージがあるのは当たり前だ。

 

「か、かっこいい……! ご主人様! カッコいいです!」

 

 だが、見ているサシャからは大好評を得られたのであなたは満足した。

 ちょっとヒリヒリする手を握って隠し、あなたは次に剣を抜く。

 

 そして、剣を視線の高さにまで持ち上げる。

 こっそりサシャの目線の位置を確認。

 サシャが145センチ。おおよその相対距離。あなたの身長。

 それらの情報を踏まえ、サシャの視点からはあなたの持つ剣が、ちょうどあなたの眼の少し下の位置に見えるように持つ。

 

 そしてあなたは剣の表面にゆっくりと手を滑らせる。

 すると、あなたの手が移動した矢先から、バチバチと音を立てて剣に紫電が(はし)る。

 

 電撃属性付与。エルグランドに存在する付与技術の一種だ。

 一時的に武器に属性を付与する技術。

 一見してそうは見えないが魔法ではない。

 まぁ、あなたに蓄えられた魔法そのものを消費してはいる。

 魔力を使わないだけで魔法なのかもしれない。

 

 先端まで付与されると同時、あなたは剣に血ぶりをくれてやるような動作をした。

 そして、あなたはゆるりと剣を無形に構える。

 

 意味はまったくない。

 

 ただ、血ぶりの動作と同時に紫電が奔る。

 無形に構えた時、地面を焼き焦がすさまを見せられる。

 つまり、とにかくカッコいい。

 難点はチンタラ付与しているせいで魔法のストックを本来の50倍くらい浪費するくらいだろうか。

 本来なら一瞬で付与できるのだが、ゆっくりやった方がカッコいい。

 だからゆっくりやる。それだけの話だ。

 

「わぁぁ……! ご主人様、物語の騎士みたいです! カッコいいです!」

 

 そう言ってはしゃぐサシャは可愛らしい。

 レインはあなたが披露した付与の技術を見て興味深そうな顔をしている。

 レインからすると非常に有用な技術に見えるのだろう。

 まぁ、無意味とは言わないが、かなり弱い技術なので使い道はほぼ無いのだが……。

 フィリアはこんな技術もあるんだ~、くらいの感想のようで、面白げに見ている。

 

「なかなか面白い技術ね。どれくらい威力があるの?」

 

 比較対象がないので何とも言えないところである。

 ただ、おおよそだが『魔法の矢』一発分くらいの威力はある。

 かつては凄く強力に思えた技術だが、今となっては雀の涙の威力と言える。

 

「へぇ……武器にそれだけ付与するのは凄いわね」

 

「魔法の矢1発分はたしかに……それ、他の人の武器にも付与できるんですか?」

 

 それは無理だ。

 あくまで自分の武器にしか付与できない。

 ちなみに武器とは言うが、厳密に言うと腕に付与している。

 だから他人には付与不能だ。

 逆に、腕に付与するので素手でもいける。

 

「あー、なるほど。分類で言うと、付与と言うより自分専用の強化魔法なのね」

 

「たしかにそれなら付与不能でもおかしくないですね……なんだか、エルグランドの魔法って自分専用って趣が強いですよね」

 

 フィリアの感覚は正しい。

 エルグランドの魔法はほぼ自分専用だ。

 いや、攻撃魔法は自分に向けて撃つものではないが。

 補助や回復、強化と言ったものはほぼ自分専用だ。

 

 一部の強力な回復魔法、解呪や転移と言った魔法。

 そう言ったごくわずかな例外が他人にも使える。

 と言うより、範囲が広いので他人にも効果が出ると言うべきか……。

 

 ただ、あなたはいくつかの自作魔法を制作している。

 あなたが娼婦ギルドに所属する前、魔法使いギルドに所属していた頃のことだ。

 そこでギルドの高弟にまで上り詰めて、魔法製作の儀式を施してもらった。

 

 その自作魔法を使えば仲間に付与魔法をかけることも一応は可能だ。

 厳密に言うと、自分専用の付与魔法を無理やり範囲型にしているだけだが。

 効果は同じだけど、消費魔力量が数百倍から数千倍とかクソみたいな燃費になっているのがデメリットだ。

 

「へぇー。エルグランドの強化魔法って興味あるわ。かけてもらえない?」

 

「たしかに興味ありますね」

 

 サシャも興味ありげな雰囲気をしているので、あなたは披露することにした。

 エルグランドでは魔法使いの基本中の基本と言える魔法『ワイズマン』を。

 

 ワイズマンの魔法は非常にシンプルな魔法だ。

 端的に言うと、一時的に頭をよくする魔法である。

 脳を強制的に賦活・活性化させることで、学習能力を飛躍的に向上させることができる。

 同時に、魔力の質を高めることができる。

 魔力にも質というものがあるのだ。

 魔力の質が高ければ高いほど魔法の威力・持続時間は伸びる。

 まぁ、そこまで飛躍的には向上しないが……。

 

「うわ。わっ、なにこれ。すごい! 頭がすごく冴えるわ!」

 

「ほんとだ……な、なんでしょう、すっごく頭がよくなった気がします!」

 

「たしかにすごく頭が冴えますね。なんと言うか、すごく集中できてる時の自分……? って感じです」

 

 全員が驚いてくれたようだ。

 魔法威力の強化などを行っていないので、そこまで劇的な効果ではないのだが。

 しかし、それは超人的な能力を持つあなたにしてみればの話。

 全員の思考能力と学習能力は並みの人間の10倍近い数値にまで強化されているはずだ。

 頭がよくなった気がする、というのは気のせいではなく事実なのである。

 

 そこで、あなたは全員を呼んだ理由について説明する。

 レインがあなたの持つ強化魔法に興味を持ってくれたおかげで、ずいぶんと話が早く進められる。

 あなたは、この手の強化魔法は一切使うつもりがないという話だ。

 

「え? なんで? こんなに強力なのに」

 

 強力なのはたしかだ。しかし、強力過ぎるのだ、いくらなんでも。

 あなたのきわめて高純度・高品質の魔力は魔法の威力を引き上げる。

 道具の力を借りない限り、威力を弱めることもできないのだ。

 

 この手の強化魔法は、他にも速度を引き上げたり、筋力を引き上げたりと言ったものがある。

 それらすべてをかけてやれば、サシャ1人でも『銀牙』を皆殺しにすることが出来ただろう。

 

「そんなに……?」

 

 そんなにである。

 ハッキリ言って、そんなものを使っていたら成長もクソもない。

 圧倒的な力で正面から蹂躙しておしまいだ。

 たぶんフィリアとレインの出番もない。

 サシャだけで全部片付く。

 みんなの出番を確保と言うわけでもないが、そうでもしないと進歩はない。

 

 それに伴って、あなたも手加減して戦う。

 魔法の威力を絞るのは無理なので、基本的に剣だけで戦う。

 その戦闘にしても、可能な限り威力を絞って、サシャと同じくらいの強さで戦う。

 

「そこまでするの?」

 

 そこまでしないと、サシャとレインとフィリアのやることは1つになる。

 つまり、もう全部あなた1人でいいんじゃないかな? と呟くくらいだ。

 

 ただこれに関しては、将来的にエルグランドに連れ帰るつもりのペットたちのことを考えてだった。

 口には出さないが、あなたはサシャを堕としてエルグランドに連れ帰る気満々だった。フィリアはもう確定事項。

 エルグランドでも通用する冒険者になって欲しい……そう言う想いの下に決めた方針なのであった。

 

「まぁ、既にだいぶあなた1人でいいんじゃないかな疑惑はあるのだけど……そうね、私たちの成長のためと言うことなら……」

 

「私は回復魔法が使えますけど、攻撃魔法と剣士としての戦闘はお姉様ができちゃいますもんね……」

 

「……ご主人様、回復魔法も使えますよ。瀕死の私を一発で治しちゃうやつを、1日に何十回も」

 

「もう全部お姉様1人でいいんじゃないかな」

 

 フィリアが諦めたような笑顔で述べた。まぁ、その通りだ。

 武器も手加減をするために適当なものを使う予定だ。

 

「でも、そうすると剣士2人と魔法使いと神官が1人ね。バランスはいいんじゃないかしら」

 

「そうですね。開錠技術とかが使える野臥せりがいれば、バランスの取れた王道パーティーって感じでしょうか」

 

「そう言う開錠技術とかの方はどうするんですか、ご主人様」

 

 戦闘には直接関係しないので、その辺りは気にせず使う予定である。

 ただ、サシャとフィリアの成長のこともあるので、基本的には2人に任せる。

 2人では対処不能、となったら使う感じで行く。

 

「なるほど」

 

 同様に、絶体絶命の状況になったら縛りも解く。

 全てを焼き尽くす暴力で万事を解決して見せよう。

 

「そうなったら私たちの負け、って感じかしらね」

 

「私たちが不甲斐ない戦いをしたら、お姉様が本気を出す……ですもんね。わかりました、がんばりましょう!」

 

「はい、がんばりましょう!」

 

 サシャとフィリアは気合を入れる様子を見せた。

 向上心が旺盛なのはいいことである。

 あなたは2人への期待を込めて激励をした。

 

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