I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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かなり久しぶりの投稿です。肉体労働からデスクワークにジョブチェンジ。タイピングの勘を取り戻すために書いてます。
駄文ですが、どうぞよろしくお願いします。


第1話 エリート校(笑)に入学

 高度育成高等学校への道は、福田福助にとって新たな舞台の幕開けだった。

 この全寮制の国立校は、未来の日本を支える逸材を育成することを使命としている。そんなエリートの養成機関に、福助が今日から加わるのだ。

 

 ――エリートでない人間が作るエリート学校。笑いが止まらん。

 

 エリートたちが作る学校というのは、福助にとってはただの冗談材料。

 国主体とは言え、そこで指導する者たちがすべてエリートであるはずがない。なぜなら、エリートであれば、すでに国を背負っているはずなのだから。

 教員という職につくほとんどの人間が、社会の厳しさを知らずに教壇に立っている。そんな人たちが、どうして未来の担い手を育てられると言えるのか。

 このようなふざけた考えを本気で抱きながらも、福助はこの学校に入学することを決めた。

 

 すべてのエリートがエリートから育てられているわけではないため、彼の論は破綻しているのだが、自分に絶対の自信を持つ彼は自分の考えを信じて疑わない。

 

 日本の教育界をバカにしている彼が、なぜ高度育成高等学校に入学するのか。

 

 ――日本の教育の思い上がりを見てみたい。

 

 超上から目線のふざけた理由であったが、彼のクソのような性格を表すには十分な理由である。

 

 入学式の日、福助は胸を膨らませながら校門をくぐった。しかし、教室に入って、目の前に広がる光景は、彼の期待とは少し異なっていた。彼が目にしたのは、ただの高校生たち。想像していた集まりとは程遠い。

 

(なるほど、これがエリート育成機関。侮りがたし)

 

 入学初日にもかかわらず、教科書を開いて勉強する。日本経済や政治に関して、談義をする熱い生徒。

 意識高い系かよ、とツッコミを入れる気満々で構えていた彼にとって、今現実にある姿は、受け入れがたいものだった。

 

 見た目で判断することは良くないとされるが、典型的なおバカさんたちとほぼ同じような行動を取っている者が何名か紛れている。

 その面子が実はIQ200越えの天才児だった場合、福助は土下座して謝ろうと本気で思った。

 

「動物園だな」

「奇遇ね。私も全く同じことを思ったわ」

 

 福助の漏れた言葉に反応した人物がいた。

 福助の斜め後ろ。窓際後方2番目の席に位置する。

 端正な顔立ちの女性が不満そうな顔を浮かべていた。

 

「……えーっと」

「人に名前を尋ねるなら、自分からだと教わらなかったかしら?」

 

 高圧的な態度に、

 

(あ、この人困ったちゃんだ)

 

 と彼女の本質を一瞬で見抜いた。

 

「福田福助」

「堀北鈴音よ」

「綾小路清隆です」

 

 福助と鈴音に囲まれる位置に席がある少年が二人の自己紹介に合わせて、名乗った。

 鈴音の方は既に面識があるのか、「なぜ、貴方まで」と睨みつけている。

 

「二人はお知り合い?」

「ここに来るまでのバスが同じだっただけだ。名前も今聞いたしな」

「そうね、知り合いでも何でもないわ」

 

 クールなイケメンというのがピッタリな綾小路の説明に、鈴音も同意した。

 

「なるほど、なんとなくこのクラスカラーが分かった気がする」

 

 と福助が言うと、鈴音は「何か言いたげね」と突っ込んだ。

 

「エリート育成学校だと思っていたから、期待していたんだけどクラスはこれじゃない?」

「自分もそのクラスの一員であることを自覚すべきね」

「堀北、めっちゃブーメ――黙るので、ペン先をこちらに向けないで欲しい」

「綾小路くん、空気を読みなさい」

 

 鈴音の睨みつけに、綾小路の防御力は下がった。故に防御に専念する。お前は良いのかと反論したい気持ちをぐっとこらえて。

 

「イチャイチャするなら、離れるけど?」

「……貴方、眼科に行った方が――」

「この程度でムキになるとか、お子様か。やはり推測は正しそう」

 

 お子様と言われ、鈴音の睨みつけがさらにひどくなるのだが、声を荒げるようなことはなかった。

 話の続きが気になるのか、綾小路が促してくる。

 

「それでその推測とは?」

「エリート育成学校であっても、すべての生徒を育成するのは無理みたいだ」

「100%望む進路へ行けるというのがこの学校の売りだったはずだが?」

「たぶん一部のクラス限定とかじゃない? 卒業時に特別クラスを作って、そのクラスが対象とか。誤魔化しようはいくらでもあるさ」

 

 その言葉に、鈴音がなるほどと納得する。目の前で普通の高校生らしく高校生しているクラスメイトを見て、エリート育成の理念に反しているのではと思っていた鈴音としても得心がいったようだ。

 

「それで、うちのクラスは多分アホを集めた落ちこぼれ集団だと思うよ」

「なんですって?」

「ほら、あそこでバカやってるやつ。もしあれが天才児だったら、これから3年間敬語で話すわ。で、あんな感じの奴が複数名見られる」

「……」

「……」

 

 鈴音も綾小路も福助の言葉を否定しようとは思わなかった。

 

「新入生のクラス構成なんて、基本的に2通り。評価基準を設けて、数値化し上から順に並べる。もしくは、均等化して各クラスのバランスを良くする」

「まあ、そんなもんだろう。二年時以降は人間関係も少しは加味されるかもな」

「それで、このクラスの面子をみるとどう考えてもパターン1だと考える。パターン2なら、今日で学校をやめるわ」

 

 明らかにおかしな人材が、各クラスにちりばめられているのであれば、学校側のエリートを見る目を疑うしかない。そんなレベルの学校に興味はないとばかりに、福助は退学宣言をはっきりと伝えた。

 

「……承知しかねるわ」

 

 堀北はすごく嫌そうに不服だと告げる。

 エリート学校にこれるだけの知性を持つ彼女からすれば、目の前の光景と福助の予想は否定できるものではない。

 しかし、それを認めてしまえば自分がアホの落ちこぼれだと認めることになる。それが嫌すぎて、我慢できないという葛藤と、福助の考えを否定できない知性がせめぎ合った結果、先ほどの3倍以上眉を顰めることになった。

 

「優秀な人間を育てるためには、踏み台が必要だと学校側が判断したんだろう。高校生という多感なお年頃、見下せる対象があった方が精神的に安定するという心理学的見地でもあったのかも」

 

 その言葉に、鈴音が大きく反応する。

 

「私たちが踏み台?」

「働きアリの法則さ。優秀な2割を作るための学校方針なのかも」

「そ、そんなこと――!」

「ここでの優秀さというのは学力だけではないと思う。満点が続出するようなあのクソ簡単な入試でクラス分けしたら、みんなが優秀クラスになるからね。たぶん、人間性とか協調性なんかもクラス分けの評価基準になっているんじゃないかな」

 

 自分が優秀だと自負している鈴音が反論しようとするが、福助の言葉に思いとどまる。

 そして聞き流すことが出来ない言葉があったからだ。

 

「あの入試が簡単?」

「え?」

「え?」

 

 福助と鈴音の間で齟齬が生まれる。

 

「綾小路はどうだった?」

「満点は無理だな」

「……もしかして二人ともおバカさん?」

 

 再度、鈴音が反論しようとしたところで、担任が教室に入ってきた。

 3人のおしゃべりがいったん終了する。

 

(この男、一体何者?)

 

 学校に関して説明を始めた担任の話を聞きながら、鈴音は福助の背中を睨み続けるのだった。

 

 ◆

 

 学校生活に関する説明が終わり、入学式までの自由時間になったところで、福助を含めた3人は先ほどの続きを始めた。

 

「チャバティの話と配られた資料から、俺の推測は確実だと言っていいと思う」

「教師をあだ名で呼ぶのはどうかと思うけど?」

 

 鈴音の正論を無視して、福助が話を続ける。

 

「気になった点は。毎月ポイントが支給されるという発言と10万ポイントが平等に振り込まれるという発言を分けた意味だ」

「普通なら毎月10万が振り込まれると言った方が分かりやすい」

「綾小路の言う通り。つまり毎月振り込まれるポイントは変動すると考えていい」

「それはそうでしょうけど、それだけだと貴方の推測とは関係ないわ」

 

 自分が落ちこぼれであると頑なに認めたくない鈴音に、綾小路が若干呆れた目を向けた。睨み返されて、縮こまったが。

 

「そこでもう一つ気になったところ。実力で生徒を測るというチャバティの発言が真実なら、平等に10万ポイントはおかしい。入学試験で、順位付けは完了しているはずなのに」

「生徒別にポイントを振り込むのが面倒という可能性は?」

「その可能性もなくはないけど、エリートを育てようという学校の発想とは思えない。わざわざすべての生徒に一律にポイントを渡した意味があると考える方が自然だ」

「その通りだと思うわ」

 

 同意すべきときは、ちゃんと同意するのかと綾小路が感心した目で鈴音を見ると、睨みつけられて顔を背ける。

 なんだこのバカップルと、美男美女は爆発しろと心の中で呪詛を見き散らす福助は、話を続ける。

 

「一律のポイントは各個人に充てられたものではなく、クラス単位で振り分けられたものというのが、俺の予想。そして、ポイントが変動するという先の予想を考えれば、減点制なのかもしれない」

「減点制……なるほど、査定基準があって、不備があった者には点数を引くと」

「でもそれなら、結局個人の評価なのだから、クラスは関係ないんじゃないかしら?」

「個人評価で優劣を決めるなら、クラス分けをする意味がない。大学のように単位制にして生徒の自主性に任せる方が効率的だ。海外のように飛び級もしやすいしね」

「…………」

「理解はするけど納得する気がないことを、睨みつけるという行為で表現することに関して、どう思う?」

「ノーコメント」

 

 美少女に睨みつけられる男二人。

 

「話を戻すけど、クラスが分けられているならクラス単位の評価基準がある。仮に支給された10万ポイントをクラス評価としよう。後で他のクラスの人に確認を取るけど、もしかしたら他のクラスは10万ではないかもしれない」

「入学時点で優劣があるからか。倍の20万とか支払われているかもな」

「月20万なんて高校生に何の意味があるのかって話だけど」

「友人をポイントで買うとか」

「…………」

「…………」

 

 綾小路の発言に、福助と鈴音がドン引きした。

 

「冗談だ」

「全く冗談に聞こえない」

「同感ね」

「うっ」

 

 二人にお前、友達いないだろという視線を向けられて対応に困る綾小路。

 

「ちなみに堀北ならおいくら万で綾小路と友達契約を結ぶ?」

「いくら払われても無理ね」

「綾小路。次の恋があるさ」

「なんで俺が振られたみたいになるんだ?」

 

 がっくりと肩を落とした綾小路を無視して、本題に戻る。

 

「それで貴方の予想を確定させる根拠は何なのかしら?」

「各クラスポイント10万と仮定して、一か月後、変動ポイントでクラスの優劣が決まると思う。40,30、20、10みたいに既に優劣が付いている可能性もあるが、実力主義を謳っている以上、チャンスはあるはずだ。学校側の見立てが正しかったのか、それをこれから1か月で証明されることになる」

「……一考の余地ありね」

「素直になるって大事だよ」

「…………」

 

(また睨む。この子、クソ面倒くせぇ奴だ)

 

「個人の評価もさることながら、団体としての能力も求められる。まあ、社会では当然のことだね」

「随分、上から目線ね」

「そりゃあ、俺はこの学校の誰よりも上だからね」

「はあ?」

 

 睨みつけると威圧するを同時に行う鈴音。彼女のプライドか、何か逆鱗に触れたのか綾小路に対して行っていたものと違う凄味があった。

 

「11歳でアメリカの大学に入学して、14で博士号をもらって、その分野で特許まで取っちゃって、なんなら在学中に起業してアメリカで上場までさせちゃった敏腕経営者の顔を持つ、天才児。それが俺」

 

 小学生の時は卓球で全国に、中学時代は野球部でエースで背番号は4番、今はインターハイで怪我をしてリハビリ中などと、妄言を吐いているクラスメイトの声が聞こえてくる中、福助の発言を理解するまで鈴音と綾小路は10秒ほどの時間を要した。

 

「……冗談だろ」

「まじまじ」

「証拠は?」

「ネット検索でもすれば出てくるんじゃね?」

 

 戸惑いながら、支給されているスマホでネット検索をする鈴音。打鍵を数回したのち、その目は大きく見開かれた。

 

「……本当だったわ」

「……マジか」

 

 目の前の人物が、超大物の人物であるという事実に驚きを隠せない二人。

 

「客観的に見て、俺がこの学校で一番でしょ? 実績あるエリートだもの」

 

 将来性という話ではなく、現実としてスーパーエリート。自尊心の強い鈴音でも、彼の言葉を否定する材料を持ち合わせていなかった。

 

「ちょっと待て、そんなお前が落ちこぼれと予想しているクラスに配属される理由がないぞ」

「それは査定した人間の目が節穴というのもあるけど、俺の性格が問題だと思う」

「いや、ちょっとやそっと性格が悪いとは言え……ごめんなさい」

 

 そんな性格くらいでと言おうとした綾小路の目が自然と美少女に注がれてしまった。美少女に惹かれるというのは男なら仕方が無きことだが、今のタイミングは最悪だ。

 なにしろ美少女が殺気を飛ばしているのだから。

 

「不慮の事故が起こらないことを願うことね。殺すわよ」

 

 犯人が自白していくスタイルの殺人予告。

 

「……申し訳ありませんでした。許してください」

「つまりはこういうこと。この学校の評価基準に社交性とか、人間性みたいな部分が多分に評価されるみたい。こっちに戻って来た時に通った中学で、問題とか起こしたし。苛められたら、ぶっ壊せが信条だからね。彼らには悪いことをしたと思っている気がしないわけでもない」

「……何をしたのか、聞くのが怖いからやめておく。そしてお前が問題児だというのは分かった」

 

 Dクラスに配属されてしかるべきという結論が出るのであった。

 

「人の優劣は何で評価するかで大きく変わる。堀北はコミュニケーションを重要視していないみたいだけど、そんな考えは社会では通用しないよ。『私は優秀だから一人で大丈夫』なんてのは優秀さをはき違えてる子供の戯言だから」

「……肝に銘じるわ」

 

 実績のある人間に反論など無意味である。プロ野球選手に、お前、野球って知っているかと、素人がしゃしゃり出てくることほど滑稽なことはない。鈴音もそれは理解しているようだ。

 

「いや~来月が楽しみだね。この学校の評価基準があっているのか、はたまたそれを覆すだけの能力を持った人間がこのクラスにいるのか。気になります!」

「他人事みたいに言ってるな。お前の推測が正しければ、支給ポイントが減らされて、お前も困ることになるんだぞ」

「クラス単位ではね。おそらく個人で取得する方法もあると思うよ。まあ、なきゃないで、この学校のシステムにハッキングでも――おっと、真摯な努力でポイントを稼ぐさ。生徒間でやりとりもあるみたいだし、上の学年に勝負ごとを吹っ掛けてもいいしね。プライドが高そうな人がねらい目だね」

「物騒な言葉が聞こえたわね」

「日本のエリート校のセキュリティを信じてるよ。さぞ堅牢であるだろうね。ちょっと楽しみ」

「平気で犯罪を犯しますという人間と友達になれそうにない件に関して」

「殺しを脅し文句に使う美少女がいるし、バレなきゃ犯罪じゃない♪」

 

 そこを同列にするのはどうだろうか、綾小路はそれから物騒な二人のことを考えながら入学式を待つのだった。

 




会話を先に書いてから肉付けしていきました。なので地の文が単調に……文章ってやっぱり難しいですよね。

1年生編で終わる予定です。感想があると作者のやる気が爆上がりします。
どうぞよろしくお願いいたします。
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