I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第11話 鼻フックかましていい?

「さて、これより『Dクラス想像以上にバカだよね、どうしよう会議』を開催しようと思う」

 

 残念会の出席者は以下の5名である。

 議長役、福田福助。議長補佐、綾小路清隆。補佐の補佐、堀北鈴音。書記、平田洋介。単純に顔、櫛田桔梗。

 

「酷い名前だな」

「異論があるなら、綾小路に会議名の変更と進行役、決定事項実行役の素敵な仕事を与えてあげる」

「素晴らしいネーミングセンスだ。さすが福田」

「そうだろ、そうだろ」

「この茶番は何かしら?」

「あはは、福田君がいると賑やかでいいよね。ただ、ノートに書かれている役職に異議を申し立てていいかな?」

「櫛田さんが笑顔で怒ってる」

「マスコットの方が良かったか?」

「うん、そう言うことじゃないかな」

 

 笑顔で睨みを利かせる桔梗。ある種、彼女の特技かもしれない。

 

「補佐って必要か?」

「それを言うなら、補佐の補佐も不要でしょう」

「黙れ、クソども」

 

 議長の強権が発動し、会議が進行される。

 

「兼ねてより思っていたが、うちのクラスはなんて、なんてバカなんだ」

「いや、それでも勉強会の効果もあって、成果は出ていると思うよ。あと1週間頑張れば、少なくとも退学者は出ないと思う」

「平田、将来的なことを考えろ。高校が始まって1か月ちょっと範囲で、ギリギリだぞ。これから先範囲はどんどん広くなる」

 

 テストが終わった時点から、次のテストが行われるまでが範囲。普通の高校であれば、そのように範囲を仕切ることはある。習った部分の確認をするという意味でのテストだ、その方が評価する側も分かりやすい。

 しかし、エリート学校は違う。新しく習った部分は当然として、過去の範囲から出題など当たり前だ。大前提として、どの大学であっても入れるような学力を身に付けさせるのが目的なのだから、いちいち生徒に合わせてなどいられない。習った範囲はすべてテスト範囲。それが普通なのだ。

 しかし、おバカ組では増え続けるテスト範囲に対応できなくなる時が来る。

 今回の中間テストのようにテスト範囲が過去と同じで固定という特別な現象は起きないことは、すでに入手した過去問の内容を見ても明らかだった。

 過去問を入手するという当たり前のことを行うかどうか、その検証の一環として学校は見ているかもしれないと福助は考えている。

 

「この際、おバカさんを切り捨てるという手はありだろうか?」

「なしだな」

「なしね」

「私としては皆で一緒に頑張りたいな」

「僕もできればみんなで卒業したい」

 

 不要な人間を切る。これは実社会ではありふれたことだが、なかなかどうして難しいものだ。

 

「であれば、ここは顔担当の4人にひと肌脱いでもらうしかない」

「嫌な予感しかない」

 

 福助は外村たちにインストールさせたアプリをみんなに見せ、実際に使って見せる。

 すでに話を聞かされていた桔梗は、顔を大きく引きつらせている。こいつ、本気かと。

 

「4人にはこの登場キャラのモデルになってもらいたい。さわやかイケメン平田、無口イケメン綾小路、愛嬌の櫛田、クールビューティー堀北とキャラ性には困らない」

「福田君、これってあれだよね?」

「あれです」

「絶対に嫌!」

 

 桔梗が珍しく声を荒げた。

 その様子で察したのか、他3人が怪訝な視線を福助に向ける。

 

「人間の3大欲求。性とは抗えぬ本能。故に、ちょっと気になるクラスの美男美女が、あられもない姿や言葉で勉強を教えるというのは、効率的――」

「却下よ」

「ああ」

「さすがに僕もやめて欲しい」

 

 非難の視線が酷い。

 

「ぶっちゃけ、俺は櫛田や堀北ときゅんきゅんしたい。現実では無理だから」

「自分の欲望に正直だな」

「うん、無理♪」

「私もお断りよ」

「ちっ!」

 

 受け入れられるとは思ってもいなかったが、クラスのためという大義があればワンチャンと思っていた福助の予想が外れた。

 

「仕方がない、ポイントを吐き出そう」

「うわぁ~」

 

 金で女を買うとかぬかしましたよ、このクズ、と桔梗の顔には書いてあった。

 

「櫛田さん、顔、顔。可愛い顔が台無しですよ」

「櫛田さんがそうなるのは仕方がないわ。私もそうなったもの」

「平田、なぜ俺は侮蔑の顔に興奮できる性癖に生まれなかったんだっ!」

「僕に言われても……」

 

 確かに困る話だ。

 

「冗談は、これくらいにしよう」

「全然、冗談じゃないだろ」

「俺の精神が崩壊したら、卒業後に全世界に公開するかもしれない。少子化が加速しますな~」

「酷い技術の脅迫だよ!?」

「最低だわ、この男」

 

 女子陣から非難の嵐だ。

 

「まあまあ、櫛田さんも堀北さんも落ち着いて。いくら福田君だってそこまでしないよ」

「いくらという言葉に色んな意味が詰まっていそうだな」

「言葉の揚げ足取りはしないでくれ、綾小路君。それに君も櫛田さんや堀北さんのような魅力的な女性とデートできると言われたら、勉強を頑張れるだろ?」

「なぜ平田が言うと、こうもいやらしさがでないのだろう?」

「み、魅力的だなんて……」

「……」

 

 桔梗は演技で喜んでいるが、堀北は若干嫌そうな顔をしている。あまり男に褒められるというのが慣れていないからかもしれない。

 

「確かに、櫛田か堀北がデートしてくれるなら、頑張れるかもな」

「綾小路君!?」

「ちょっと貴方まで、何を言っているのかしら!?」

 

 綾小路が同意するとは思っていなかったのか、二人は目を見開いて驚いている。

 

「そういう男子生徒はたくさんいるという話だ。俺を含めてな」

「ちょいちょい、イケメンムーブかましてくるのなんでなん? 鼻フックかましていい?」

「お前、本気でする気だろ? やめろ」

 

 校内で噂になっているイケメンランキング。2位に平田が、5位に綾小路がランクインしている。

 圏外の福助からすれば、嫉妬ものであり、鼻フックを全力で遂行するのにためらいはない。

 

「3バカ+αはそれで釣れるか? 女子は平田と綾小路でいけるかな?」

「……それで皆が頑張れるなら。で、でも、頑張って欲しいから希望した人の中で一番テストの点が良かった人ってことで」

 

 顔を赤らめる桔梗。これが演技だと分かっている二人は、彼女のその演技力に心の中で賞賛を送る。

 

「私も櫛田さんと同じ条件で良いわ。私を選ぶような人はいないでしょうけど」

 

 少し顔を赤らめる鈴音。桔梗と違うのは、単純にこういったことになれていないからだろう。

 

「ちなみに最終兵器がある。50点を切りそうなやつには渡してくれ。ただし、今回だけしか使えない奥の手だから、デートでほいほい作戦は継続したい」

 

 その後、中間テストの過去問を事情の知らなかった平田と堀北に渡す。最初から寄越せと堀北は不服そうにしていたが、将来的なことを考えて今のうちに勉強の習慣を付けさせるというのは間違いではないとして、咎めるようなことはしなかった。

 

「なあ、さっきの条件って俺に適用されると思う?」

「思わない」

 

 今まで行われたすべてのテストで満点を取っている福助に、可愛い女の子からご褒美は与えられないらしい。

 

 ◆

 

「おじゃましまーす」

「……なんで制服? 私服が見たかった」

 

 桔梗が福助の部屋にやって来た。理由は一本の電話からだ。

 桔梗の裏の顔を知る福助であれば、ストレス発散にちょうどいいだろうという考えだ。

 

 ――あのさ、今晩あんたのところに愚痴を言いに行くから。

 ――ふざけんな。

 

 そんなやりとりがあっての今がある。

 

「他の人に見られたら誤解されるでしょ? 制服なら勉強を教わっていたで、通せるし。幸いあんたは頭がいい」

「もうちょっと、誤解されるようなやり取りがしたい」

「死ね」

 

 そう言って桔梗は福助のベッドに腰を下ろす。

 ソファは置いていなく、ベッドに直列に置かれたPC用デスクとチェアー。福助が椅子に座っているため、桔梗はベッドを選択したのだった。

 

「……部屋の配置を間違えた」

「はあ?」

「ベッドとデスクを向かい合うように並べてれば、櫛田の下着が見えたかも」

「……あんたも山内や池と同じクズなのね」

 

 パタパタと足を動かす桔梗。スカートが短いので、対面に座っていれば幸せな気持ちになれたことだろう。

 

「自覚はある。正直、俺って天才じゃなかったら、かなり危ない奴になっていたと思う」

「今でも十分危ないけど、さすがに襲ってはこないでしょ……来ないよね?」

 

 桔梗は池や山内の部屋に単身で乗り込むほど、愚かではない。それくらいの危機管理は出来ている。

 福助の部屋に1人でやって来たのは、いくらオープンスケベであっても、襲ってはこないという信頼の表れだ。若干、揺らいでいるが。

 

「襲うくらいなら、ポイント払ってOKしてくれそうな人に頼むわ」

「まあ、それもそうか。というか、あんたをおとしたら、玉の輿決定じゃない?」

「俺のことを好きになる女性を好きになることはない」

「……ちょっと分かる。私も私のことを好きになる男と付き合いたくないもん」

 

 自分がよく見られたい、好きになってもらいたい。そんな気持ちは二人もある。

 だけど、自分を嫌というほど理解している二人は、そんな自分を好きになる人間を好きになれないのだ。

 

「はぁ~櫛田の太ももに挟まれたい」

「本当に最低だね」

「これくらい言っておけば、これから櫛田の罵詈雑言の対象になっても耐えられる」

「どういう考えよ?」

 

 愚痴に来ると宣言されていた以上、暴言が飛んでくるのは分かっている。

 その対応策として、事前に理由を作っておけば、改めてダメージを受けることがないという戦法だ。ただ欲望が漏れただけという可能性もある。

 

 それから桔梗のストレス発散大会が始まった。

 山内のセクハラ発言といやらしい視線に対する暴言に始まり、池の不必要なスキンシップに対する怒り。果ては鈴音の存在に対する生理的な嫌悪。

 他にも、クラスの女子の陰口や、勉強できない男子たちに対する不満をネチネチと言い続けた。

 

「はぁ~最悪」

「お前がな」

「うっさい」

「お前、絶対に将来ホストに行くなよ。破産するから。簡単に煽てられて、貢ぎに貢ぎそう」

「私は私を無条件で褒めてもらえることが好きなの。お金払って褒めてもらいたいわけじゃない。そのための努力。私の努力をバカにしないで」

「どこにキレてんだよ」

 

 この女、面倒くせぇと福助が心の底から思った瞬間である。同族嫌悪が酷い。

 

「なんかちょっとスッキリした」

「ちょっとかよ。どれだけため込んでんだよ。逆にそこまでストレス抱えても、よしよしされたい精神が凄い」

「尊敬されて注目されるのが何よりも好きなんだからしょうがないじゃない」

「まあ、好きなことに全力を傾けるのは嫌いじゃない」

「じゃあ、もっと褒めて。私を気持ちよくさせて」

「……なぜだろう、誤解できる言葉なのに、全然興奮しないぞ」

「……」

 

 ちょっと狙っていった感のある桔梗だが、何とも言えない表情をする。

 クズと罵っては、まるで自分が誘っている変態のようにとらえられるし、だからといって性に正直な男を反応させられないのは、自分が可愛いと自覚している彼女からすれば、自尊心を傷つけることになる。

 その二つの葛藤が、彼女に無言の選択をさせる。

 

「今日は帰る。また来るから」

「なんだろう、この付き合って半年くらいのカップルの感じ」

「キモ。じゃあね」

 

 それだけ言って今日は部屋から出て行った。

 それからしばらくして寝る時になって、

 

「あ、ちょっといい匂いする」

 

 桔梗の残り香を堪能する変態が、そこにはいた。

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