I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第12話 もしもしポリスメン

 中間テストは問題なく終了した。

 過去問ブーストもあって、クラス平均は80点オーバー。これはBクラスと同レベルである。

 赤点退学者もでることはなかった。過去問の影響は多大にあるが、なんと言っても福助の教え方がわかりやすく、そこに櫛田や堀北という美人が投入されたことで、男子のやる気はめきめきと上がり、最低点の須藤でも50点以上をすべての教科で揃えることになった。

 

 テストは問題なく終了した。

 ただし、問題がなかったわけではない。

 テスト期間中に設けられた、デート争奪戦に参加したクラスメイトで勝利者の二名が、権利を行使したことで問題が起こる。

 

 男子の部は、福助が強制不参加にさせられたため、その栄誉は平田に渡った。

 一部の男子からブーイングが酷かったが、平田としてはこの案の発案者のため、鈴音や桔梗に迷惑をかけるのを嫌ったらしく、自ら権利を勝ち取った。権利は対象の二人ではなく、彼女と噂される恵に相手に使っており、恵からの了承も得ているため、特に不満が出ることはなかった。

 

 問題は女子の方だ。

 元々成績がそれなりのものは、このバカげたイベントに参加していない。

 イベント参加者はDクラスの女子の中でも、成績が良くない、以下の5名だ。

 井の頭心、篠原さつき、佐藤麻耶、小野寺かや乃、佐倉愛里。

 佐倉と小野寺に関しては巻き込まれ事故のようなもので、勉強会に参加した際に、話半分に聞いていたデート争奪戦に適当に返事をしてしまったことが原因だ。

 あまり人付き合いが得意とは言えない彼女たちは、冗談でしたと言えずそのまま参加者として名を連ねることになる。

 

 そして不幸が起こる。

 

 成績は良くない自分だ、大丈夫関係ないと、ただ普通に勉強しただけだ。真面目に福助に従い、言われた通りに学習する。大学で教鞭をとれるほど優秀な福助の言うことをだ。

 そして基礎力が向上した結果、過去問ブーストの結果もあって、佐倉愛里は見事デート権を獲得した。

 

 どうしよう、正直渡されても困るというのが愛里の率直な感想だ。対象となっている平田と綾小路だが、他の男子を指定することも許されている。

 彼女のいる平田を誘って恵に喧嘩を売る度胸もなければ、話したこともない綾小路を誘うのも気が引ける。

 そもそも自分に誘われて嬉しい男子などいないと思っている彼女にとって、相手は誰であっても問題なのだ。

 

 しかし、権利は権利である。誰かに渡すこともできない。故に彼女が選んだのは、

 

「ふ、福田君……」

「How come?」

 

 福助であった。

 

 ◆

 

「す、すみません、わ、私なんかに付き合わせてしまって。本当によかったんですか?」

「女子に誘われて断るやつは、彼女持ちか、イケメンのどっちかだ。俺はどちらでもない。どんとこい」

 

 二人は学校の敷地内にあるショッピングモールに来ていた。この学校は生活空間としてレジャー施設も敷地内に完備しているため、流行りのものを買いそろえることも十分に可能であった。

 最近誤ってカメラを壊してしまったらしく、その修理についてきて欲しいというのが彼女の願いだ。

 何でも、店員の中にちょっと怖い人がいるらしく、男の人がいた方が安心すると愛里に打ち明けられた。

 普段、奥手な彼女であるが、福助とは会話ができる。その理由は、福助の対人コミュニケーション能力だ。

 言動の善し悪しはあるが、基本的に誰にでも平等に接する。勉強会でも、奥手な愛里と会話を成立させていたことから、その能力の高さがうかがえる。

 

「それで、そのカメラ店員ってどんな奴? 顔に入れ墨いれてる系の人?」

「ち、ちがいます。視線が少しいやらしいというか、わ、私の胸のあたりをちらちら見たり」

「分かります。俺も見るもん」

「……」

 

 無言で胸を隠す。彼女の服装は、体型が出るようなものではなく、全体的にゆったりとしたものだ。女性特有の部分には装飾が付けられており、直接見ただけでは分からないような作りになっている。

 

「男の性。セクハラなのは自覚している」

「正直に言えば良いというわけでもない気がしますが……」

「すまん」

「き、気を付けて頂ければ大丈夫です」

「それはもちろん。実際今まで気づかなかったでしょ?」

「……はい」

 

 ドヤ顔している福助に、呆れる愛里。そういう問題ではないのだと声を大にして言いたいが、彼女の気質からそれは無理だった。

 

「まあ、佐倉は美人でもあるからな。見ちゃうのはしょうがない」

「ふぇ!?」

「え、驚くところ? 自分の顔を鏡で見て、他の人より優れてるとか思ったことない? どんだけ目が悪いの?」

 

 さも当然のように愛里の容姿を褒める。

 事実、佐倉愛里はDクラスでも上位に入るほど、顔立ちが整っている。しかし、彼女が人目をさけるような行動を取っているため、伊達メガネや前髪で顔を隠しており、周囲の人間からは容姿が優れていると思われていない。

 

「天才が天才を自覚するように、美形は美形を自覚して欲しい。誇れとは言わないけど、自覚はして欲しい」

「……他人から言われたことがないので」

「むむ、容姿は絶対的なものではなく、相対的なものであるということか。なるほど、他人がいて初めて優劣が生まれるのだから、間違ってない。すまん、俺が間違っていた。これからは福田に美人と認められたと思って生きて欲しい。お望みとあらば、佐倉がいかに美人かを日本人の平均的な顔立ちと比較し、論文として提出しよう」

「い、いえ大丈夫です。ふ、福田君に、ほ、褒められただけで、ま、満足です」

 

 自分に関する考察レポートなど、嫌がらせ以外の何ものでもない。愛里は全力で拒絶した。

 

「それで? 視線以外もあるんだろ? 山内とか山内とか山内とかいるもんな、視線で悩むなら、まずあいつをどうにかする。わざわざ男手を必要とした以上、視線以上の嫌がらせがあると思うんだが?」

「……はい」

 

 福助の洞察力に驚きながら、愛里はぽつぽつと語り始める。

 実は、中学時代にグラビアアイドルをしていたこと。この学校では外部と連絡が禁止されているため、事務所を通した活動は停止しているが、ブログは別だということ。

 学校内で自撮りしては、ブログサイトにアップし、いろんな感想を見ていること。そして、その中に明らかに怪しげな発言をしている人がいるということ。

 

「この学校のセキュリティが本気で心配だ。ブログ許すなよ、情報駄々洩れじゃねえか。そして学校内の施設で働く人間の身辺調査くらいしろよ。日本の未来だぞ? 国がサポートしてるんだから、考えろよ」

 

 なんちゃってエリート校の在り方に文句が出てくる。愛里もブログに関しては、どうかなと思っていたところで、やっぱりダメなんだと自覚した。

 

「俺も画像処理の関係上、自社のサーバ使ってるけど、マジでセキュリティ大丈夫かよ? 本気でデータ抜き取ってやろうかな」

「え、えーっと……」

「ああ、こっちの話。それで、佐倉のネットストーカーの発言から、施設で働いている人間である可能性が高いと。しかも、これから行くカメラ修理の店員が怪しいと?」

「は、はい」

 

 そんな簡単にバレるような人間を雇うなよ。学校に呆れながらも、解決策を考える。

 考えるまでもない、福助はスマホを取り出すと、

 

「チャバティ、ここでの(・・・・)教師の仕事しろ。最悪、もしもしポリスメン案件」

 

 休日に理不尽な呼び出しを行い、事件を解決に導くのだった。

 

 ◆

 

 愛里によるブログサイトの書き込み内容と、それをもとに学校側が件の従業員を調査した結果、彼のPCから愛里に宛てたであろうラブレターや、盗撮写真が出てきたため、警察に引き渡されて事件は終息した。チャバティの計らいで、問題を大きくするようにはしないということ。愛里にブログへの掲載を禁止することなど、少しばかりの説教を終えて、二人はデートを続けることになった。

 と言っても、カメラの修理依頼を出した後は特にすることもないため、カフェでお茶をしているところだ。

 

「コイバナしよ、コイバナ」

「申し訳ありません、私恋愛経験ないです」

「根暗コミュ障だもんね」

「はぅ!」

 

 愛里は25のダメージを受けた。彼女のHPは最大27である。

 

「仕方がない。自称恋愛マスターの恋愛遍歴を教えてしんぜよう」

「自称なんですね」

「お口チャック。あ、そう言えば俺が海外の大学を出ていることはご存じ?」

「はい。クラスで噂になってますし」

「では、大学に入学した11歳。有名大学に飛び級で入学した日本人としてあちらでは結構有名でした」

 

 それはそうだろうと、愛里はうなずく。特に否定することもない。

 

「物をはっきりと言う俺の気質が好まれたのか、意外と友人はできたんですよ。一部差別はあったけどね」

「そうなんですね」

「その時に気の合った友人たちとバカみたいな話で盛り上がった結果、会社を興すことになって、目立つからという理由で社長に就任」

「す、凄いですね……」

 

 そんな理由で社長になれるんですね。

 

「ムカついたんで顎で使いまくった結果、会社は急成長。俺の口座の残高も、学生どころか一般会社員でも引くほどのレベルになったわけ」

 

 怖くてどのくらいか聞けない愛里。自分のお小遣いの何百倍だろうと、変な計算式を構築する。

 

「さて問題です。お金を持っている将来有望な少年を、向こうのレディたちはどうしたでしょうか?」

「友――」

「はい、残念。既成事実を作って、お金をふんだくろうとしました」

 

 友達から交際を、などと普通のことを考えていた愛里をきっぱりと否定する。

 

「やばいときは薬とか盛られました。初めて襲われたときに精通したのはいい思い出です」

「……」

 

 少し頬を染める愛里。

 

「それからは狩りの始まりです。友人の友人のそのまた友人の友達を名乗る女性がなんと多いことか。あまり危険なため、傭兵会社の特殊訓練に放り込まれました。護身術はここで身に付けた」

「ひぇ~」

「で、この後に――」

「あ、もう大丈夫です。福田君がいかにモテていたかはわかりました」

「本当に? まだとっておきが……」

「結構ですっ!」

 

 彼女には珍しく声を張り上げる。

 他人の恋愛自慢はつまらなかったかと、福助も反省するが、問題はそこではない。

 

「佐倉もグラビアアイドルで売れっ子になったら、逆バージョンがよってくるから。金を持っている奴もまたハンターだからな」

「全然、嬉しくない情報です」

「なんだって? では、札束でビシバシ叩いてくる紳士な経営者とか、権力を使って女性を喜ばせまくった業界人のリストとかは要らないみたいだ」

「……欲しいです。事務所の先輩も被害にあいそうになったって」

「卒業するときに、渡すよ。今、スマホに送っても、卒業時は没収だからね」

「ありがとうございます」

 

 ふぅ~と一つ息をはく。

 その時になって、ようやく愛里はあることに気付いた。

 

(あれ、私、普通にしゃべれてる?)

 

「さて俺だけ話しててもあれだし、佐倉のことを聞こうかな」

「わ、私のことですか?」

「そ。なんでグラビアをやるようになったとかでもいいし、この学校に来た理由でもいい。クラスのあの人が気になってるなんて話は大歓迎だ」

 

 なるほど、これがコミュニケーション能力の高さか、と愛里は実感した。

 対人能力が低い自分に対しても、普通に接する。特別な感情を抱いているとかではなく、普通に話している。

 頭の良い人物だと思っていたが、それだけの人間ではないことを愛里は改めて気づいた。

 

「わ、私、自分を変えたくて……」

「変わってなくない? 俺が知る限り、佐倉が他のクラスメイトとコミュニケーションをとっている姿が思い浮かばないんだが」

「はぅ!」

 

 福助は誰にでも普通に接する。しかし、彼は気遣いができる人間ではない。

 悩みを打ち明けた少女に、無慈悲に真実を告げるなど、コミュニケーション能力が高い人間がすることではない。

 愛里の感じ取った福助の能力は、ただのまがい物だったようだ。

 

「もしかして、変わる変わる詐欺?」

「か、変わるつもりは……あります。ただ――」

「踏み出す一歩って奴ね。まあ、陰キャ、根暗の永遠のテーマだよなー」

「福田君は、新しいことをするときに怖いと思ったりしないですか?」

「ないかな? そもそもやりたくてやってるわけだし、やりたくないならやらないから」

「圧倒的強者の発言……」

 

 参考にはならないなと、愛里が考えていると福助が問いかけてくる。

 

「根暗の原因って自分で分かる?」

「……自信のなさ、かな?」

「君はグラビアアイドルだ。世間的な認知はともかくとして、事務所の人間に認められる程度には、つまり金を稼げると思われる程度には容姿とスタイルが良い。これは自信にならないの?」

「……で、でも本当の私は、こんなですから」

「なら本当の自分に不満があって、グラビアアイドルになったわけだ。これは自分を変えるという意味では十分すぎるほどだけど?」

 

 愛里もそれは分かっている。しかし、偽りの自分をどんなに着飾っても、服を脱いでしまえば、ただの自分。そこに自信がないのだから、変わったとは思えないのだ。

 

「ありのままの自分を受け入れてもらいたいと思いながらも、そんな人はいないって思ってしまって、自分を偽ってるだけなのかもしれません」

「まあ、誰しも嫌われるよりは好かれたいと思うのが当然だ。好かれるように自分を変えるのは間違いじゃない」

「福田君は違いますよね?」

「俺の場合は能力があるからね。個人開発で稼げる以上、他人との関係が破綻しても問題ないと思っているのかもしれない」

 

 福助が愛里の目をまっすぐ見ながら続ける。

 

「ただ、俺だって好んで嫌われようとは思わない。逆に媚びを売って好かれようとも思わない。自分が自分のままで、周りに人が居なくなったら、それだけの人間ってだけさ」

「強いですね」

「強くはないさ。あくまで一人で生きていける能力を持っているから、そう考えられるだけ。つまりは保険がある状態。佐倉だって、預金に数百万入っていれば、財布の1万を失っても絶望はしないだろ? もったいないと思うことはあっても。俺はそういう状態」

「す、すごく、大人って感じがします」

「守備力0で攻撃力100なんて人間は破滅まっしぐらだよ。要はバランス。佐倉はまだ、守備100なだけさ」

「守備100ですか……ふふ」

「あ、グラビアでえちえちだから、80くらいかも」

「…………」

 

 佐倉愛里は生まれて初めて、人間に対してゴミを見るような視線を向けたかもしれない。

 

「ちなみに佐倉のアイドル名は?」

「教えません」

「個人撮影会とかは?」

「絶対にしません」

「俺のことは嫌い?」

 

 その言葉に、愛里は少しだけ笑う。

 

「嫌いじゃないですけど、変態さんだとは思います。きっと今まで色んなところで台無しにしてきたのが私でも分かります」

「……貴重な意見だ。ちなみに俺がモテないのは――」

「余計な一言が多いです。もうちょっとがんばれって思っちゃいます」

 

 机に額を打ち付ける。笑顔の愛里にライフを削り切られたようだ。

 

「福田君、今日はありがとうございました。少し、頑張れる気がします」

「ちょっと教会で懺悔してくる」

 

 そこで二人は分かれた。その後、愛里はクラスメイトで自分と似たようなタイプの長谷部波瑠加と仲良くなり、よく話すようになった。彼女なりに自分を変えようとした結果だ。

 福助は存在しない教会を探し、その日の休日を無駄にするのだった。

 




最終話までざっくり書き終えました。35話前後ですかね。矛盾修正作業が結構大変そうです。エタらないように頑張ります。
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